ナースのヒント
専門看護師・認定看護師のまとめ

【2024年最新】感染管理認定看護師|役割や受験資格と教育機関一覧と入学・資格取得に際する試験対策(2015/11/20)

公開日: : 最終更新日:2024/05/28 北海道 専門/認定看護師 全科共通 

感染管理認定看護師

感染症の予防や蔓延時に適切に対処できる能力を有する感染管理認定看護師は、すべての医療機関にとって必要不可欠な存在であり、年々その需要は増加しています。

感染管理認定看護師になるためには、指定の教育機関で課程を修了し試験に合格しなければいけないため、高い壁を感じる人も多いのではないでしょうか。

当ページでは、教育機関への入学試験・課程修了後の認定審査(筆記試験)の対策について詳しく解説していますので、感染管理認定看護師を目指している方は、ぜひ最後までお読みいただき参考にしてください。

 

1、感染管理認定看護師とは

感染管理認定看護師は、1998年より日本看護協会によって認定され、感染管理において熟練した看護技術および知識を有する者(教育課程を経て)にのみ与えられる資格のことです。認定が開始された当時、院内感染の発生率は非常に高く、感染の拡大が問題視されていました。

感染の予防対策や継続的な管理、再発予防における発生状況の検査・集計(サーベイランス)などの知識・技術は、看護経験の積み重ねだけでは習得し難く、それゆえ医療施設において感染管理におけるキーパーソンとなる人材の育成を目的として、他の領域に先駆けて早々に制定されたのです。

感染管理認定看護師は、「疫学」、「感染管理学」、「感染症学」、「微生物学」、「統計学」、「医療関連感染サーベイランス」、「医療管理学」、「職業感染管理」、「感染防止技術」、「感染管理指導・相談」、「洗浄・消毒・滅菌技術」、「ファシリティマネジメント」など、感染に関するさまざまな知識・技術を包括的に習得した上でなることができる感染管理のスペシャリストであり、院内感染が後を絶たない昨今、各医療機関における感染看護認定看護師の必要性はますます高まっています。

 

専門看護師と認定看護師どっちが上?という疑問を持つ人がいます。感染管理の分野では、専門看護師は感染症看護専門看護師、認定看護師は感染管理認定看護師の資格があります。
どちらが上でどちらが下かというのはありません。認定看護師は臨床現場におけるスペシャリストであり、専門看護師は看護全体スペシャリストになりますので、活躍する領域が違うのです。ただ、認定看護師の資格取得のための研修期間は6ヶ月以上、専門看護師は修士課程で2年間(38単位)学ぶことが必要ですから、資格取得の難易度としては専門看護師のほうが高いです。

 

2、役割・活動内容・仕事内容

感染管理認定看護師の目標は、確実な感染対策を支援することです。そのために、感染管理認定看護師は院内における感染リスクを低減し、「実践」・「指導」・「相談」の3つの内容に則って、「①予防・対策」「②医療関連感染の発生の監視」「③職業感染対策」「④すべての職員への感染対策指導」「⑤病院環境のファシリテーター」「⑥感染管理システムの構築」、の6つの業務を包括的かつ実践的に行うのが感染管理認定看護師の主な役割・仕事内容です。

 

①予防・対策

すべての人の血液・体液・汗を除く分泌液・粘膜・排泄物・損傷のある皮膚は感染性があると捉え、手技時や術前・術後のみならず日常生活においても感染症の発症・蔓延に努め、感染時には迅速に標準予防策ならびに感染経路別予防策を実施するとともに、職員に対して適切な実施を促す。

 

②医療関連感染の発生の監視

全体的な院内感染の発生状況のみならず、中心静脈カテーテル関連血液感染、手術部位感染人工呼吸器関連など、多方面から包括的にサーベイランスを行い、得たデータをもとに日常的な対策案を具体化・実施する。

 

③職業感染対策

針刺しによる医療従事者などへの感染を防止するために、リキャップの禁止や注射針専用の破棄容器の適切な配置、安全器材の活用など、感染予防対策を講じると共に、指導と監察を行う。

 

④すべての職員への感染対策指導

病棟のラウンド・点検を行い、感染対策が適切に行われているか確認し、不備がある場合には院内感染予防の観点から指摘・改善指導・教育を行う。また、院内感染の重大性を周知させるために啓発活動や感染対策教育における企画・運営を行う。

 

⑤病院環境のファシリテーター

病院の衛生管理におけるファシリテーターとして、日常的な感染リスクの低減のために、集団による問題解決・知識創造活動など、率先して病院全体の環境改善を行う。

 

⑥感染管理システムの構築

各種マニュアルの作成、サーベイランスの方法、アウトブレイク時の対応など、院内感染対策における体制を整備し、問題発生時には迅速かつ適切な改変を行うとともに、すべての職員への周知を促す。

 

感染管理認定看護師の支援が進んでいます。2021年度~2023年度までの3年間、感染管理認定看護師要請推進事業が進んでいて、200床未満の病院や施設で感染管理認定看護師を資格を取得させて配置すると、日本看護協会から100万円の助成金がでるという支援です。新型コロナウイルスの流行もあり、感染管理認定看護師の需要が高まっています。

 

3、認定取得へ向けた取り組み

感染管理認定看護師になるためには、看護師としての経験・技術を有した上で、日本看護協会が認める教育機関での課程を修了し、認定審査(筆記試験)に合格する必要があります。

第一段階として、6か月(615時間以上)に及ぶ教育課程を修了することが必須となりますが、各教育機関への入学に際して以下のような入学要件が定められているため、誰でも入学・履修できるわけではありません。

 

3-1、受験資格・受講資格

感染管理認定看護師の養成課程の受験資格・受講資格は、次の条件を満たす必要があります。

1.看護師免許取得後、実務研修が通算5年以上あること
(うち3年以上は認定看護分野の実務研修)
2.通算3年以上、感染管理に関わる活動実績(感染対策委員会、ICT、リンクナース会等)を有すること。
3.感染予防・管理等において自身が実施したケア等の改善実績を1事例以上有すること。
4.医療関連感染サーベイランス実施における一連の流れを理解していることが望ましい。
5.現在、医療施設等において、専任または兼任として感染管理に関わる活動に携わっていることが望ましい。

認定看護師の資格取得のためには、1.の「実務経験5年(うち認定分野3年)」というのが大原則になりますが、それ以外にも細かい条件を満たしておく必要があります。

 

3-2、A課程のカリキュラム

A課程の感染管理認定看護師は、いわゆる従来の感染管理認定看護師になります。研修時間は6ヶ月以上1年以内で、研修時間は合計615時間(+305時間)となります。

A課程は2026年度で教育が終了することが決まっています。

 

■カリキュラム

科目 科目名 単位数 総単位数
共通科目 必修 医療安全学:医療倫理 15 105時間
(+305時間) 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

医療安全学:医療安全管理 15
医療安全学:看護管理 15
チーム医療論(特定行為実践) 15
相談(特定行為実践) 15
臨床薬理学:薬理作用 15
指導 15
選択 特定行為実践 15
臨床薬理学:薬物動態 15
臨床薬理学:薬物治療・管理 30
臨床病態生理学 40
臨床推論 45
臨床推論:医療面接 15
フィジカルアセスメント:基礎 30
フィジカルアセスメント:応用 30
疾病・臨床病態概論 40
疾病・臨床病態概論:状況 15
医療情報論 15
対人関係 15
専門基礎科目 感染管理学 15 120時間
疫学と統計学 30
微生物学 15
感染症学概論 15
感染症学各論 30
医療管理学 15
専門科目 医療関連感染サーベイランス概論 15 120時間
医療関連感染サーベイランス各論 30
感染防止技術 30
職業感染管理 15
感染管理指導と相談 15
洗浄・消毒・滅菌とファシリティ・マネジメント 15
学内演習 総合実習 90 90時間
実習 臨地実習 180 180時間

※単位は教育機関によって異なる

 

教育機関

都道府県 教育機関名
北海道 北海道医療大学認定看護師研修センター
神奈川県 神奈川県立保健福祉大学実践教育センター
北里大学看護キャリア開発・研究センター認定看護師教育課程
石川県 石川県立看護大学付属看護キャリア支援センター
宮崎県 宮崎県立看護大学 看護研究・研修センター
沖縄県 沖縄県看護協会

 

3-3、B課程のカリキュラム

B課程は従来の感染管理認定看護師のカリキュラムに、特定行為研修を組み合わせたものです。研修時間は801時間になり、研修期間は1年以内となります。感染管理認定看護師のB課程を修了すると、「栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連」と「感染に係る薬剤投与関連」の特定行為を行うことができるようになります。特定認定看護師と名乗ることも可能です。

 

■カリキュラム

科目 科目名 単位数 総単位数
共通科目























臨床病態生理学 40 380時間
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

臨床推論 45
臨床推論:医療面接 15
フィジカルアセスメント:基礎 30
フィジカルアセスメント:応用 30
臨床薬理学:薬物動態 15
臨床薬理学:薬理作用 15
臨床薬理学:薬物治療・管理 30
疾病・臨床病態概論 40
疾病・臨床病態概論:状況別 15
医療安全学:医療倫理 15
医療安全学:医療安全管理 15
チーム医療論(特定行為実践) 15
特定行為実践 15
指導 15
相談 15
認定看護
分野
専門科目
感染管理学 15 195時間
疫学・統計学 30
微生物学 30
医療関連感染サーベイランス 45
感染防止技術 30
職業感染管理 15
感染管理指導と相談 15
洗浄・消毒・滅菌とファシリティ・マネジメント 15
特定行為
研修別科目
栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連 22 120時間
感染に係る薬剤投与関連 39
学内演習 統合演習 15 15時間
実習 臨地実習 180 180時間

※単位は教育機関によって異なる

 

■教育機関

都道府県 教育機関名
栃木県 獨協医科大学 地域共創看護教育センター
群馬県 高崎健康福祉大学看護実践開発センター認定看護師教育課程
東京都 日本看護協会看護研修学校
新潟県 新潟大学大学院保健学研究科保健医療高度専門職教育センター
長野県 長野県看護大学看護実践国際研究センター
三重県 公立大学法人三重県立看護大学地域交流センター
大阪府 大阪府看護協会認定看護師教育課程
兵庫県 公益社団法人 日本看護協会神戸研修センター
山口県 山口県立大学看護研修センター
福岡県 国際医療福祉大学九州地区生涯教育センター

3-4、教育機関への入学試験対策

教育機関にて課程を受けるためにはまず、各教育機関が実施する入試に合格しなければならず、これは多くの看護師にとっての悩みの種と言えます。というのも、課程修了後に行われる認定審査(筆記試験)では、課程の中で勉強した問題が大半を占め、範囲を特定しやすいため、すべての領域において90%以上の合格率を誇っています。

しかしながら、教育機関への入学試験では範囲が非常に広く、年度ごとに大きく変更されることがあるため、合格率はおおよそ20%~50%程度(未公表)と低いのが実情です。

入学試験には主に「①学科試験(筆記)」「②小論文800~1200文字程度)」「③面接」で構成されており、中でも難しく配点割合が高いのが「学科試験(筆記)」です。各教育機関によって出題範囲・問題は異なりますので、入学を希望する教育機関の出題傾向をしっかりとリサーチしておく必要があります。

 

①学科試験(筆記)

学科試験で好成績を残すためには、まず感染に関連した看護師国家試験出題基準を再確認するとともに、各教育機関の過去問を入手することが第一となります。

看護師国家試験出題基準(感染関連)
必須問題 感染に関する問題
薬理学 おもな抗生物質の概要
微生物学 微生物に関する知識全般
公衆衛生学 保健活動、感染対策に関する法規(感染症法・予防接種法・学校保健衛生法)
関係法規 労働安全衛生法(伝染病患者における就業禁止関連)
基礎看護学

基礎看護技術

感染予防技術、看護の管理(安全管理)
成人看護学総論

成人看護学

人口静態・動態と成人の疫病(感染症関連)、血液(成人T細胞白血病輸血)、呼吸器(肺炎結核)、消化器(肝炎)、アレルギー・膠原病(抗原と抗体)、皮膚(感染症・皮膚の整理とスキンケア帯状疱疹患者の看護)、目・耳鼻咽喉・歯(炎症性の疾患・口腔清掃)、女性生殖器(外陰炎・クラミジア感染症・真菌性膣炎・トリコモナス膣炎)など
小児看護 感染症の小児の看護、小児の生理(免疫)、幼児の看護(予防接種)

※年次により改変

 

過去問に関しては、前年度分の過去問を一般公開している場合や入学説明会に参加することで閲覧できる場合など、各教育機関によって入手方法が異なります。おおむね、入学説明会に参加すれば入手できますので、入学を希望する教育機関の説明会には必ず参加しておきましょう。

 

②小論文

小論文では、テーマに対して自分なりに問題を提起し、その根拠を示すとともに読み手を納得させることが求められます。テーマは毎年、各教育機関で異なるため、とにかく書く練習をするしかありません。また、都度、小論文に精通した専門家に校正してもらう必要があります。

小論文で高得点をとるためのポイントは、

  • テーマに込められた“意図”を読み取る
  • 自分の意見や考えを“論理的”かつ分かりやすく書く
  • 制限時間内にできるかぎり指定の“文字数”に近づける
  • 作文に求められるような感性豊かな“言い回し”を使わない

など、たくさんあります。

ただし、小論文で高得点をとるには多大な時間を費やすくことになり、さらに教育機関によって異なりますが、小論文の配点割合は全体の3割程度なので、時間がない場合には小論文はほどほどにし、配点割合が5割の学科試験に注力するのが効率的かつ効果的な勉強法と言えるでしょう。ただし、言うまでもありませんが、配点割合が3割だからと言って小論文を疎かにしすぎるのは論外です。

 

③面接

面接では、主に事前に提出した書類(志望理由など)をもとに質疑応答が行われるため、提出書類に書いたことは何を聞かれても矛盾なく的確に応えられるように準備してください。面接では、感染管理における経験や知識ではなく“人間性”がみられます。経験はともかく、知識は教育課程を履修することで習得できますので、いかに自分が感染管理において豊富な経験・知識を有しているかを話しても効果は薄いと言えます。

それよりも、「なぜ認定看護師になりたいのか」、「認定看護師になって何がしたいのか」、「教育課程で何を学び、どのように活用していくのか」など、将来に対する姿勢・展望を具体的に伝えることが重要です。また、社会人としての適切なマナーを身につけているかも見られますので、面接試験の対応やマナーの基礎もしっかりと復習しておきましょう。

 

3-5、認定審査対策

教育課程を修了した後に行われる認定審査(筆記試験)では、四肢択一・マークシート方式で行われ、計40の問題が出題されます(制限時間100分)。

出題方式 問題数 配点
問題1:客観式一般問題 20問 50点
問題2:客観式状況設定 20問 100点
40問 150点

また、合否の基準は、A評価:120点以上、B評価:120~105点、C評価:105点未満となり、A評価・B評価、つまり105点以上が合格となります。合格率は例年90%ですので、そこまで心配する必要はありません。

認定審査では、教育課程の範囲(感染管理カリキュラム)が出題されますが、教育課程でしっかり学び、復習をすれば容易に基準点を超えることができます。ただし、認定看護師を目指す方の多くは、教育課程修了後に職場復帰をし、学んだ内容を忘れがちなので、認定審査を受ける際は、しっかりと勉強しておきましょう。

なお、認定審査の過去問(前年度分のみ)は、課程を修了した後に受講した教育機関で閲覧することができます。

 

4、感染管理認定看護師の求人・転職について

認定看護師の数ある領域の中で最も需要が高いのが「感染管理」領域です。感染症は私たちにとって身近な疾患であり、さらに感染経路は多岐に渡り、一度院内感染が発生すると瞬く間に広がり収集がつかなくなる非常に厄介な疾患であることから、予防法や蔓延の対処法に精通した感染管理認定看護師は、すべての病院にとって無くてはならない存在なのです。

認定看護師制度は広く周知されるようになりましたが、それでも優遇面においては未だ確立されていなく、感染管理認定看護師になったとしても給料が大きく増加することはありませんが、転職に困ることはまずないと言っても過言ではありません。また、同一医療機関で長期的に働く場合にも優遇処置がとられることが多いため、安定的に仕事をすることができます。

 

まとめ

感染管理認定看護師の人数は2015年時点で1053人で、21領域中、最も多くの看護師が認定を受けています。しかしながら、それでもまだ不足状態にあります。

感染管理認定看護師になるためには、6か月以上にもおよぶ教育課程を修了し、試験に合格する必要があり、また費用もかかりますが、必ず役に立つ資格ですので、患者や医療関係者のため、ご自身のために、ぜひ資格取得に向けて勉学に励んでくださいね。

 

参考文献

資格認定制度 | 日本看護協会 認定看護師

資格認定制度 | 日本看護協会  感染管理認定看護師養成推進事業

資格認定制度 | 日本看護協会 認定看護師制度の改正

岡本麻衣 看護師

1986年生まれ。北海道札幌市出身・在住。同市内の看護学校を卒業後、北海道大学病院の内科で2年勤務。その後、同市内の個人病院で6年間勤務し、結婚・出産を機に離職。現在は育児をしながら、看護師としての経験を生かし、WEBライターとして活動中。

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