白血病の看護|症状と看護過程における問題、看護計画とケアについて(2017/05/31)
白血病は小児から高齢者まで発生する血液の「がん」です。小児から青年層における白血病は最も頻度の高いがんで、男性の発症率の方が高い傾向にあります。これは、骨髄性白血病が喫煙と関連があるためです。白血病の発症により全身的に現れる初期症状の観察や、治療による副作用における苦痛や不安などの軽減が図れるよう看護ケアを行っていく必要があります。
目次
1、白血病とは
白血病とは、白血球が腫瘍性に増殖し、その結果正常では出現しない幼若白血球が抹消血液中に増加する造血臓器の疾患です。造血幹細胞が血球になる過程で大量の白血病細胞に分化し、血液を介して全身に増殖していきます。また、白血球のみではなく、赤血球、血小板が腫瘍性に増殖した状態も白血病に分類され、それぞれ赤白血病、巨核球生白血病と呼ばれます。白血病は急性型と慢性型があり、「急性リンパ性白血病(ALL)」、「慢性リンパ性白血病(CLL)」、「急性骨髄性白血病(AML)」、「慢性骨髄性白血病(CML)」の4つに大別されます。
2、白血病の診断と治療
2−1、白血病の発症要因
ウイルス、体質的要因、放射線などが推定されていますが明らかにはされていません。診断は末梢血・骨髄穿刺により行います。白血病と診断されると治療の結果や病状の把握のため、頻回に採血を行わなければならないので、患者さんに検査の必要性をきちんと説明し理解してもらうことが大切です。特に小児においては理解が難しいことがあるため、家族の協力が重要となります。
2−2、化学療法
白血病の治療の中心は白血病細胞を破壊させる化学療法です。副腎皮質ホルモン剤、アルキル化剤、代謝拮抗薬などの薬剤を併用して使用する多剤併用療法が行われます。急性型と慢性型では使用する薬剤が異なり、それぞれに出現する副作用も異なります。このため、個々の治療プロトコルをきちんと確認・把握し、的確な観察と対応が必要となります。
白血病の治療は白血病細胞をできるだけ減少させることを目的として、寛解導入療法が行われます。完全寛解→地固め療法→寛解維持療法→強化療法を定期的に行なっていきます。
引用元:LifePalette(ライフパレット)
2−3、骨髄移植による治療
急性白血病では寛解の後に造血幹細胞移植を、慢性骨髄性白血病では、慢性期に根治治療として骨髄移植を行います 。骨髄移植では大量の抗がん剤投与、放射線治療を行い、骨髄を他人のものと置き換えることで造血機能を回復させることを目的とします。私たち医療者は、骨髄移植に対する不安や精神面の把握を行い、抗がん剤による副作用の観察から移植後の感染や出血の予防・観察と継続的に援助を行っていく必要があります。
3、白血病の症状
3−1、急性白血病
初期症状として、正常造血抑制のために生じる症状と白血病細胞の各臓器への浸潤による症状とがあります。白血病には様々な分類がありますが、症状としてはほとんど類似しています。貧血、易感染状態、易出血など正常な血球が不足していることが原因によるものも多く現れます。
①貧血 | 貧血の原因は、幼若細胞の増加による赤血球前駆細胞の減少です。ヘモグロビンの値とともに全身の観察を行うことが大切です。 |
②感染 | 白血病細胞の増加により、リンパ球・好中球が減少するため易感染状態となります。好中球は通常白血球の50%以上を占めますが、500/㎟以下に減少すると感染状態となります。(腫瘍性細胞増殖→白血球減少) |
③出血 | 幼若な白血球の増加→骨髄巨核球の減少→血小板産生阻害によって起こります。=血小板減少 |
④身体的症状 | 1.骨・関節の痛み
2.痛みを伴わないリンパ節腫大 3.発熱あるいは夜間発汗 4.気分の落ち込み・疲労感 5.腹痛 6.体重減少あるいは活動性の低下 |
3−2、慢性白血病
慢性白血病は成熟細胞まで分化する細胞の増殖が特徴で経過は慢性です。血液幹細胞で白血病化が起こりますが、急性白血病と異なり、白血病裂孔はなく、造血幹細胞の残存がほとんど見られません。
慢性白血病は経過が緩慢であり、外来治療が継続されていきます。治療による副作用の観察と、インターフェロン製剤の自己注射がきちんとできているかの確認、急性転化の徴候を早期に発見することが重要です。急性転化になると、白血病細胞が増え続け、急性白血病のような状態となります。抗がん剤等の効果が期待できず、余命は数ヶ月となります。
■急性転化の徴候について
1. 原因不明の発熱
2.貧血症状の急速な発現・憎悪
3.赤血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリット値の急激な減少
4.白血球の著名な増加
5.出血傾向の出現
6.血小板減少または著名な増加
7.脾腫の急速な増大
4、看護過程
患者背景 | 現病歴・既往歴・病態・疾患についての理解度・セルフケア能力・行動・職業・生活環境 |
全身状態 | 血液検査・全身症状・局所症状・バイタルサイン・食事の状態・排泄状態・検査データ・化学療法の副作用と合併症 |
活動・休息 | ADLの影響・活動範囲・睡眠状況 |
知覚・認知 | 病態・治療についての知識と理解、治療の副作用・症状による苦痛 |
周囲の状況 | 家族構成・家族や友人などの支援者の有無、職業・経済状況、社旗的役割への影響、 |
5、看護計画
白血病における3大症状を理解し看護計画として立案しましょう。骨髄移植における看護援助については、下記の看護計画と合わせて計画の統合などを行い、観察・ケアを行います。その他の計画については個々に合わせた問題や必要な看護ケアを立案、援助していきましょう。
5−1、目標:感染の予防と早期発見ができる
■観察:OP
1.検査データ
2.血液データ(WBC(neutrophilも含)、RBC、Hb、Plt、CRP)
3.骨髄検査データ
4.胸部レントゲン
5.バイタルサイン
6.感染兆候を示す症状:発熱・倦怠感・悪寒・頭痛・咳・痰・咽頭痛
7.IN-OUT バランス
8.腹部症状
9.関節や筋肉の痛み
10.リンパ節腫長
11.皮膚・粘膜の状態
13.栄養状態
14.真菌感染の有無
15.易感染状態についての理解度
16.セルフケア能力・行動
17.家族の理解や協力の程度
■看護ケア:TP
1.全身状態の管理
2.医療処置による感染予防
3.カテーテル刺入部からの感染予防
4.日常生活ケア
5.精神的ストレスの軽減
6.家族にも協力してもらえるよう関わりを持ち、家族背景などを配慮した援助を行う
■説明・指導:EP
1.感染しやすい状態であることを患者さん・家族に説明する
2.感染予防についての説明と指導を行う(マスクの着用、うがい、手洗いの必要性)
3.なま物は禁であり、加熱された物を摂取することを説明する
4.感染予防のため、面会制限があることを説明・理解してもらう
5—2、目標:血小板減少による出血の早期発見と対処ができる
■観察:OP
1.バイタルサイン
2.吐物・便や尿に潜血がないか
3.皮膚や粘膜への出血班の有無
4.血液データ
5.輸血時のアレルギー反応の出現の有無
■看護ケア:TP
1.駆血帯や血圧計のマンシェットの圧迫を最小限にする
2.採血や注射の後はしっかり圧迫止血する
3.転倒などによる打撲を避けるため、ベッドサイドの環境整備を行う
4.皮膚への摩擦を避ける
5.歯ブラシは柔らかいものを使用し、力を強くかけない
6.輸血施行時はバイタルサイン、アレルギー反応に注意しながら行う
7.出血時は速やかに確実な止血を行う
■説明・指導:EP
1.日常生活における出血の危険性について説明する
2.出血兆候の早期発見のための具体的な症状や方法を説明・指導する
5−3、目標:貧血による諸症状の早期発見ができる
■観察:OP
1.血液データ
2.バイタルサイン
3.めまい、ふらつきの有無
4.動機、倦怠感の有無
5.頭痛、顔色
6.嘔気・嘔吐の有無と程度
■看護ケア:TP
医師の指示のもと造血剤を使用する
めまいやふらつきなどの自覚症状がある時は安静が保てるよう配慮する
■説明・指導:EP
ふらつきなどの自覚症状がある時はベッド上安静が良いことを説明する
5−4、目標:治療とその副作用による苦痛の軽減が図れる
■観察:OP
1.バイタルサイン
2.消化器症状(悪心・嘔吐・食欲不振)
3.食事摂取量
4.尿量
5.IN-OUTバランス
6.血液検査データ(肝障害・腎機能障害)
■看護ケア:TP
1.嘔気がひどい時は制吐剤を使用する
2.患者さんの食べられそうな物を検討、少量ずつでも摂取できるよう援助する
3.水分が取れていない時や嘔吐が頻回にある場合には医師に報告し輸液などによる水分補給を行う
4.治療や闘病生活での精神的ストレスに配慮し、気分転換が図れるようコミュニケーションをとる。可能であれば院内のレクリエーションなどに誘う
■説明・指導:EP
1.悪心・嘔吐がある時は医療者に報告するよう説明する
2.食欲不振時は食べたいものがあれば伝えてもらうよう説明する
3.腰椎穿刺などの検査を行う前に患者さん及び家族にどのような検査を行うのか説明し、理解と協力を得る
まとめ
白血病は治療に長い月日を費やさやなければなりません。このため、患者さんのみならず家族にとっても大変な生活を余儀なくされます。特に小児においては、母親が病院へ泊まり込みすることによる兄弟への弊害が問題となります。患者さんへの援助はもちろんのこと、家族への援助も個々に合わせて行っていく必要があります。また、骨髄移植を受ける患者さんは、ドナーが見つからなければ移植することができません。化学療法による苦痛のみならず、これからの治療やその計画の進行についての不安を少しでも軽減できるようコミュニケーションを密に取りながらケアにあたりましょう。また、白血病が治癒した後の外来通院における継続した援助も大切です。
参考文献
造血細胞移植後患者のヘルスプロモーションにおける看護 (日本がん看護学会誌|外崎明子|2003)
1986年生まれ。北海道札幌市出身・在住。同市内の看護学校を卒業後、北海道大学病院の内科で2年勤務。その後、同市内の個人病院で6年間勤務し、結婚・出産を機に離職。現在は育児をしながら、看護師としての経験を生かし、WEBライターとして活動中。
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