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看護におけるアドヒアランスの意味と向上に向けた取り組み(2016/03/11)

公開日: : 最終更新日:2017/12/09 看護用語 東京都 全科共通 

アドヒアランスの看護
医療現場で重要視されているアドヒアランス。アドヒアランス不良となると、合併症の発症や原疾患の再発など、患者にとっても看護師など医療従事者にとっても、なにひとつ良いことはありません。

アドヒアランス向上のためには、さまざまな点に留意する必要がありますので、合併症の発症や原疾患の再発などを防ぐために、アドヒアランス向上に向けて取り組んでいってください。

 

1、アドヒアランスとは

アドヒアランスとは、服薬や行動制限などにおいて患者が“自らの意思で遵守する”という概念のことです。服薬の遵守は疾患の治療において非常に大切で、遵守されなければ治療が円滑に行われず、時として症状の悪化を招くことがあります。

また、行動制限においても同様に、遵守されなければ症状の悪化はもちろん、転倒や転落などの二次的事故の発生を助長することになります。

それゆえ、患者のアドヒアランスを向上させるために、薬剤の効能や副作用、服用する時間、服用しなかった場合に起こりうること、行動制限の意味、行動可能範囲の理解など、詳細に説明し患者の同意を得た上で、患者が自ら率先して実施するよう援助することが大切なのです。

 

2、コンプライアンスからアドヒアランスへ

今ではアドヒアランスが主流となっていますが、以前は「コンプライアンス」という言葉が使われていました。コンプライアンスとは、服薬や行動制限を“遵守する”という意味を持ち、アドヒアランスと類似した意味合いで用いられていますが、類似していながらこれら二つには大きな違いが存在します。

コンプライアンス 患者が服薬や行動制限などにおいて医療従事者の指示に“従っているか”を評価すること。従っていない場合をノンコンプライアンスと言う。
アドヒアランス 患者が服薬や行動制限などにおいて医療従事者の指示に“自らの意思で実施しているか”を評価すること。自らの意思で実施していない場合をノンアドヒアランスと言う。

このように、コンプライアンスは“遵守する”ことのみを評価するのに対し、アドヒアランスは“意欲的に遵守する”ことを評価するという一歩進んだ考え方なのです。

これまでノンコンプライアンスの問題は患者側にあると強調されてきたことで、現場ではコンプライアンスを向上する取り組みがあまり行われていませんでした。

そこで、患者側に問題があるという概念を脱却し、患者側・医療従事者側、患者・医療従事者の相互関係という3つの因子から、いかに患者が自らの意思で積極的に治療に参加するかを評価するアドヒアランスの概念が生まれたのです。

病院や看護師など医療従事者に求められるコンプライアンス

 

3、アドヒアランス向上に向けた取り組み

アドヒアランスを向上させるためには、①患者側の問題、②医療従事者側の問題、③患者・医療従事者の相互関係、の3つの因子を解決する必要があります。

なお、アドヒアランスの項目には、服薬・行動制限・食事・運動・休養・受診などがありますが、以下には服薬に関するノンアドヒアランスの問題とアドヒアランス向上への取り組みについてご説明します。

 

患者側の問題

患者側の問題には、「無関心」「懸念(副作用・依存性など)」「疾患の重要性の否定」「経済的懸念」「指示に対する誤解」「効能・効果への不信」「物理的困難(嚥下困難・遠方による薬剤の受け取り困難など)」「症状の軽減・変化・消失」「指示忘れ」「頻回投薬への嫌悪」「不快な味・臭い」などがあります。

これらを解決するためには、現病、薬剤の効能・副作用、服薬を中止した場合に起こりうること、服用時間の重要性、継続的な服薬による症状の変化過程など、患者が正確かつ詳細に把握することが不可欠です。

また、経済的負担の軽減のための薬剤変更、嚥下困難を軽減するための薬剤の変更(小さな薬剤へ)などの工夫も必要です。

 

医療従事者側の問題

医療従事者側の問題は主に患者に対するアセスメント不足が原因です。なぜ服薬を中止したのか、その問題(上記の患者側の問題)が何かをしっかりアセスメントしなければ、問題解決には至りません。

医療従事者側の責任として正確かつ詳細な指示説明がありますが、それに加え、患者を綿密にアセスメントすることで、アドヒアランスの向上を図ることができます。

 

患者・医療従事者の相互関係

患者が服薬に関して正確かつ詳細に把握していても、医療従事者に対して信用がなければ、服薬の情報に対する不信感を持つようになります。また、心理的観点から医療従事者と患者の間に信頼関係が築かれていなければ意欲が低下し、継続的に服薬指示を遵守することができません。

しかしながら、信頼関係を築かれれば、患者は医療従事者からの情報の正当性や信憑性が増し、意欲向上に伴って継続的に服薬指示を遵守することができます。

 

まとめ

アメリカではノンアドヒアランスにより毎年12万5000人もの患者が心血管系疾患のため死亡していると推定されており、日本においても重症疾患患者のノンアドヒアランスによる死亡例は多数にのぼっています。

アドヒアランスを向上させることは容易ではありませんが、アドヒアランスを向上させることができれば患者の症状の増悪を防ぎ、死亡率も大きく減少させることができます。

看護師自身が豊富な知識を持っていなければ、アドヒアランスの向上を図ることがより困難となるため、まずは服薬(薬剤)・行動制限・食事・運動・休養などについての知識を深めることから始めてください。

山岸愛梨 看護師

東京都在住、正看護師。自身が幼少期にアトピー体質だったこともあり、看護学生の頃から皮膚科への就職を熱願。看護学校を経て、看護師国家資格取得後に都内の皮膚科クリニックへ就職。ネット上に間違った情報が散見することに疑問を感じ、現在は同クリニックで働きながら、正しい情報を広めるべく、ライターとしても活動している。

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