アデノウイルスの看護|症状や子供と大人の感染、看護の3ポイント(2021/05/26)
風邪の原因の1つであるアデノウイルスですが、「アデノウイルスという名前は聞いたことがあるけれど、具体的にどのようなウイルスでどのような症状が出るのか分からない」という人も多いと思います。
アデノウイルスの基本情報や症状、子供と大人の感染、看護のポイントについてまとめました。実際の看護の参考にしてください。
目次
1、アデノウイルスとは
アデノウイルスとは呼吸器や目、消化器、泌尿器などに感染を起こすウイルスで、風邪の原因ウイルスの1つです。
エンベロープを持たない2本鎖のDNAウイルスで、A~Gの7種に分類され、現在は80を超える型が存在することが確認されています。アデノウイルスはとても多くの型が存在するため、免疫がつきにくく、何度もアデノウイルスに感染するという特徴があります。
アデノウイルスの「アデノ」はもともと「腺」という意味を持ち、アデノイドと深い関係があるという考えから「アデノウイルス」という名前が付けられました。
2、アデノウイルスの症状
引用:咽頭結膜熱に気をつけよう!/衛研ニュースNo.177|神奈川県衛生研究所
アデノウイルスは風邪の原因ウイルスの1つです。
5~7日の潜伏期間を経て発症します。アデノウイルスは次の3つの症状が特徴となります。
・高熱(38℃以上)
・咽頭炎
・結膜炎
アデノウイルスに感染して発症すると、突然38℃~40℃の高熱が出ます。人によっては、朝は微熱で午後になると高熱になるという熱型を繰り返すことがあります。
また、咽頭炎が起こり喉の痛みの症状が出ることも多いです。アデノウイルスによる咽頭炎は、扁桃腺に白い膿が付着することが特徴です。
アデノウイルスは目にも感染しやすく、目に感染すると、結膜炎を起こして眼脂が多くなります。アデノウイルスが目で感染を起こした場合は、咽頭結膜炎(プール熱)や流行性角結膜炎(はやり目)という疾患名になります。プール熱はアデノウイルスが原因の疾患の中で、最も有名なものですね。
2-1、アデノウイルスによる疾患と症状
アデノウイルスに感染した場合の疾患とそれぞれの代表的な症状を見ていきましょう。
■咽頭結膜炎
咽頭結膜炎は38℃以上の高熱と、咽頭痛と扁桃腺の腫脹、目の充血や眼脂の増加が主な症状です。プール熱と呼ばれることが多く、夏に流行することが多いです。
■流行性角結膜炎
アデノウイルスは「はやり目」と呼ばれる流行性角結膜炎の原因にもなります。目の充血や眼脂などが主な症状になります。
■呼吸器感染症(上気道炎、気管支炎)
アデノウイルスは呼吸器感染症も引き起こします。症状には個人差はあるものの、発熱や咳、咽頭炎、扁桃炎、鼻水などがあります。高熱や悪寒、頭痛、筋肉痛などの症状が現れることもあります。
また、肺炎を起こすこともあります。5歳以下の乳幼児は肺炎を起こしやすく、アデノウイルスの中でも7型による肺炎は重症化する傾向があり、死に至るリスクがあります。
■胃腸炎
アデノウイルスは胃腸炎を引き起こすこともあります。
嘔吐や嘔気、気分不快、下痢、微熱、腹痛などのロタウイルスの症状に似た症状が現れることが特徴です。乳幼児の場合、腸重積をに至ることもあります。アデノウイルスは乳幼児の嘔吐下痢症の主な原因の1つです。
■出血性膀胱炎
アデノウイルスが膀胱などの泌尿器で感染を起こすと、出血性膀胱炎を引き起こします。出血性膀胱炎になると、血尿と排尿痛、頻尿、尿意頻発の症状が出ます。
■無菌性髄膜炎
アデノウイルスは、プール熱(咽頭結膜炎)から無菌性髄膜炎に移行することもあります。無菌性髄膜炎になると、高熱や頸部硬直、激しい頭痛などの症状が現れます。
2-2、アデノウイルスの治療法
アデノウイルスの治療は基本的に対症療法になります。
アデノウイルスに対する特効薬はありませんし、ワクチンもありません。
解熱剤や抗炎症薬などを用いて治療をしますが、一般的には1~2週間程度で快方に向かい、治癒します。
3、アデノウイルスの感染は子供だけではない
アデノウイルスは子供が感染・発症しやすいウイルスです。でも、大人も感染します。
引用:IASR 38(7), 2017【特集】アデノウイルス感染症 2008~2017年6月|国立感染症研究所
子供のアデノウイルスによる咽頭結膜炎(プール熱)は1~5歳までの幼児に多く、特に1歳が多いことが分かっています。
ただ、流行性角結膜炎については、子供だけでなく大人も感染しやすいです。また、出血性膀胱炎も、大人が感染しやすい傾向があります。
大人が流行性角結膜炎や流行性角膜炎以外でアデノウイルスに感染する場合は、二次感染が多いです。
子供がアデノウイルスに感染し、家庭内でその子供から感染して発症するケースです。
大人がアデノウイルスに感染すると、重症化しやすいので、注意が必要です。
4、アデノウイルスの看護のポイント
4-1、家庭での看護の指導
アデノウイルス感染症では入院になることはほとんどありません。
基本的に外来受診になり、家庭での療養になります。
そのため、看護師は患者の保護者・家族に家庭での看護の指導を行いましょう。
アデノウイルス感染症で最も注意しなければいけないことが脱水です。
アデノウイルス感染症では高熱が出ます。また、咽頭痛により、食事・飲水が困難になることもあります。さらにアデノウイルスは胃腸炎を引き起こし、下痢や嘔吐の症状が出ることもあります。
そのため、アデノウイルス感染症を発症すると、脱水になりやすいのです。
特に、乳幼児は成人に比べて体内の水分量が多く、発汗機能や腎機能が未発達ですので、注意が必要です。
脱水の注意と共に、次のことを指導しておくと良いでしょう。
・食べやすいものを用意する
・ゼリーなどで水分補給をさせる
・経口補水液などを用意しておく
また、尿量が減る、傾眠傾向、皮膚や粘膜が乾燥している等の脱水の受診の目安などを伝えておくことも重要です。
家庭での看護のポイントを指導する時には、相手がきちんと理解できているかを確認しながら行いましょう。また、相手に共感する姿勢を示し、質問しやすい雰囲気を作ることを心がけましょう。さらに、最後には疑問点・不明点がないかを確認してください。
4-2、二次感染の予防の指導
アデノウイルスは感染力が強いので、家庭内での二次感染を予防しなければいけません。
・飛沫感染
・糞口感染
・接触感染
そのため、アデノウイルスの二次感染の予防の基本は手洗いです。流水と石鹸による手洗いの励行を指導しましょう。
また、オムツをしている乳幼児が患者の場合、オムツ交換の際には使い捨ての手袋とマスクを使用するように指導しましょう。
また、タオルの共用を避けることも、家庭内での感染を予防するためには重要です。
4-3、アデノウイルスの出席停止の指導
アデノウイルス感染症は学校保健安全法により、出席停止に措置をとらなければいけないことがあります。アデノウイルス感染症の中で出席停止になるのは、咽頭結膜炎と流行性角結膜炎です。
・咽頭結膜炎(第二種):主要症状が消退した後2日を経過するまで
・流行性角結膜炎(第三種):医師が感染のおそれがないと認めるまで
アデノウイルス感染症の中でも、この2つの疾患は上記の出席停止措置が取られますので、看護師は保護者・家族にきちんと指導しておきましょう。
まとめ
アデノウイルスの基本情報や症状、子供と大人の感染、看護のポイントをまとめました。
アデノウイルスは風邪の原因ウイルスですが、重症化するリスクもありますので、看護師は脱水予防などを中心に、保護者・家族にきちんと看護のポイントを指導しておくようにしましょう。
参考文献
・IASR 38(7), 2017【特集】アデノウイルス感染症 2008~2017年6月|国立感染症研究所
1983年生まれ。宮城県石巻市出身。正看護師歴10年。看護短大を経て、仙台市立病院の小児科で勤務。その後、小児科での経験を生かし、保育園看護師として同市内の保育園に就職。現在は1児のママとして、育児の傍らWEBライター・ブロガーとして活動している。
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