アデノイド顔貌とは?手術などの治療法を小児と大人に分けて解説!(2021/06/03)
「アデノイド顔貌」という言葉は耳にしたことがあるけれど、詳しくはよく分からないという人もいると思います。アデノイド顔貌は口呼吸が癖になっている人に多い顔つきです。
アデノイド顔貌とはどんな顔つきのことなのか?また、原因や症状、手術などの治療法を小児と大人に分けて解説していきます。
目次
1、アデノイド顔貌とは
アデノイド顔貌とは、アデノイド(咽頭扁桃)が肥大することで起こる特徴的な顔つきのことです。
1-1、アデノイド顔貌の特徴
引用:口呼吸の弊害と鼻呼吸への治療法|ホワイトファミリー歯科
アデノイド顔貌とは、次のような顔つきのことを指します。
・下顎が引っ込んでいる
・上顎が下顎よりも出ている
・歯並びが悪く、かみ合わせ悪い
・上の前歯が出ている
・面長
・鼻は小さくて幅が狭い
・鼻の穴が小さい
・唇がめくれあがって厚い
・唇が乾燥している
・鼻の下が長い
・口が半開きになっている
下顎が引っ込んでいるため、アデノイド顔貌の人の横顔は顎がなく、上顎が前に出ているように見えるという特徴があります。
また、口が閉じにくく、口がポカンと半開きになっていることも多いです。
1-2、アデノイドとは
引用:アデノイド増殖症 (あでのいどぞうしょくしょう) | 社会福祉法人 恩賜財団 済生会
アデノイドとは、鼻の奥にある咽頭扁桃というリンパ組織です。リンパ組織ですから、免疫に関係がある器官です。
免疫力が弱い幼児期に働きが活発になり、2歳ごろから肥大していき、4~6歳ごろにアデノイドの肥大はピークになります。しかし、年齢と共に徐々に縮小していき、一般的には思春期ごろには消失してしまいます。
1-3、アデノイド顔貌の原因
アデノイド顔貌の原因は、アデノイドの肥大です。
通常はアデノイド肥大は5~6歳がピークで、自然に縮小していきます。
しかし、アデノイドが細菌やウイルスで繰り返し炎症を起こすと、病的に肥大することがあります。そして、アデノイドが病的に肥大すると、自然に小さくなることはほとんどありません。
アデノイドが肥大すると、鼻の奥(鼻腔の一部)をふさぐ形になります。
そうすると、鼻が詰まった状態になりますので、自然に口呼吸になります。
長期間口呼吸をしていると、呼吸のために常に口が半開きの状態になりますので、顔の筋肉が弛緩して、筋力が低下します。このことで、アデノイド顔貌になるのです。
また、アデノイドが肥大していなくても、口呼吸を長期間続ければ、アデノイド顔貌になります。
ただ単に口呼吸が癖になっていたり、鼻炎などでいつも鼻が詰まっていて、口呼吸をしていることでも、アデノイド顔貌になることがあるのです。
1-4、アデノイド顔貌に多い症状
アデノイド顔貌は、ただ単に「下顎が引っ込んでいて、口が半開きで、上顎が出ている」ような顔になるというだけではありません。
健康上の問題も出てくることもあります。
・急性中耳炎
・滲出性中耳炎
・いびき
・睡眠時無呼吸症候群
・副鼻腔炎
・鼻づまり
・ドライマウス
・虫歯の増加
・口臭の悪化
・感染症にかかりやすくなる
・嚥下障害
■急性中耳炎や滲出性中耳炎
アデノイドが肥大すると、耳管を圧迫しますので、急性中耳炎になりやすくなります。また、慢性的な耳管狭窄症になることで、滲出液が中耳に溜まり、滲出性中耳炎になって難聴の症状が現れます。
■いびきや睡眠時無呼吸症候群
アデノイドが肥大していると、鼻腔の入り口が狭くなりますので、子どもでも睡眠時にいびきをかいたり、睡眠時無呼吸症候群を発症することもあります。
睡眠時無呼吸症候群になると、睡眠が浅くなり寝不足になるため、日中の集中力低下などの症状が出ることもあります。
■副鼻腔炎や鼻づまり
アデノイド顔貌の人は副鼻腔炎や鼻づまりになりやすいです。
アデノイドが肥大していると、鼻水が鼻腔内にたまりやすくなります。
また、アデノイドの慢性炎症から副鼻腔炎を起こすこともあります。
■ドライマウスや虫歯の増加、口臭の悪化
アデノイド顔貌の人は口呼吸が癖になっています。
口呼吸をすると、口の中が乾いて、ドライマウスになります。
また、口内細菌が繁殖しやすくなるので、虫歯や歯周病のリスクが上がりますし、口臭がきつくなることもあります。
■感染症にかかりやすくなる
アデノイド顔貌の人は、風邪にかかりやすくなります。
鼻呼吸の場合、ほこりやウイルスなどの侵入を鼻毛がフィルターの役割を果たして防いでくれます。
でも、口呼吸はフィルターなしでダイレクトに吸い込みますので、風邪をひきやすくなるのです。
■嚥下障害
アデノイド肥大が原因でアデノイド顔貌になっている人は、食べものを飲み込みにくいという問題を抱えていることもあります。
2、アデノイド顔貌の手術や治療法:小児の場合
アデノイド顔貌の治療法は小児と大人で選択肢が異なります。
まずは、小児のアデノイド顔貌の治療法を説明していきます。
■口呼吸を治す
アデノイドは4~6歳ごろに肥大がピークになり、その後は小さくなっていきます。
このアデノイド肥大がピークになった頃に、口呼吸になる小児は少なくありません。
この時に、口呼吸が癖になると、アデノイドが縮小しても口呼吸が続いてアデノイド顔貌になってしまいます。
だから、小児は口呼吸を鼻呼吸にするだけで、アデノイド顔貌になるのを防ぐことができます。
■アデノイド肥大を治療する
小児はアデノイド肥大を治療することで、アデノイド顔貌を治療することができます。
アデノイドが小さくなれば、アデノイド顔貌になることはありません。
小児の場合、アデノイド肥大は軽度であればそのまま自然治癒を待つことが多いです。
しかし、睡眠時無呼吸症候群や滲出性中耳炎などの症状が出ている場合は、抗炎症薬や抗生剤などを用いて、薬物治療をすることもあります。
また、薬物治療で治療効果が得られない場合は、手術をして、アデノイドを切除することもあります。
■鼻詰まりを治療する
アデノイド顔貌の原因(口呼吸の原因)がアデノイドの肥大ではなく、鼻炎など鼻詰まりが原因の場合、鼻詰まりを治療すれば、アデノイド顔貌の治療になります。
鼻炎が原因で鼻づまりになっているなら、鼻炎の治療をすれば、鼻詰まりは治ります。
3、アデノイド顔貌の手術や治療法:大人の場合
大人になってからのアデノイド顔貌の治療は、既にアデノイド顔貌での骨格が固まっているため、簡単なことではありません。しかし、治療することはできます。
■歯列矯正
アデノイド顔貌の人は歯並びが悪いことが多いです。
歯列矯正をして歯並びをきれいにするだけで、アデノイド顔貌が目立たなくなることがあります。また、歯列矯正をすることで、鼻呼吸を促すことも可能です。
■上下顎骨体移動治療(外科手術)
上下顎骨体移動治療とは、手術で上の顎を奥に下げたり、下の顎を前に出したりする治療方法です。
全身麻酔で行いますし、口の中を切開しますので、傷跡は目立ちません。
顎変形症という診断がつけば、保険適用で手術を受けることができます。
■オトガイ形成術
下顎が奥に引っ込んでいる場合は、オトガイ形成術という手術で下顎の先端を前に出すこともできます。このオトガイ形成術でツンとした顎を作ることができ、アデノイド顔貌を治療することができます。
まとめ
アデノイド顔貌の特徴や原因・症状、アデノイド顔貌の手術などの治療法を小児と大人に分けてまとめました。
アデノイド顔貌は小児と大人では治療法・手術が異なりますので、まずは医師に相談すると良いでしょう。
参考文献
・アデノイド増殖症 (あでのいどぞうしょくしょう) | 社会福祉法人 恩賜財団 済生会
・アデノイド増殖症 : 耳鼻咽喉科の病気 | 耳鼻咽喉科専門 医療法人財団 神尾記念病院
1988年生まれ、神奈川県横浜市出身。総合病院での臨床経験8年。母が看護師ということもあり、幼少期から看護師に憧れを持つ。看護専門学校を卒業後、横浜市内の総合病院(耳鼻咽喉科)に就職。現在は同病院で働きながら、看護師としての経験を生かし、ライターとしても活動している。
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