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はやり目とは?流行性角結膜炎の症状や看護の5ポイントを解説(2021/04/21)

公開日: : 看護用語 神奈川県 眼科 

とても感染力が強く、昔から俗に「はやり目」と呼ばれている眼感染症があります。看護師ははやり目の感染を拡大させないために、正しい知識を身につけておきましょう。

はやり目の基本情報や感染経路、症状、看護のポイントをまとめましたので、実際の看護の参考にしてください。

 

1、はやり目とは

はやり目とは、アデノウイルスD種の8、37、53、54、56、64/19a型による流行性角結膜炎のことです。

このアデノウイルスによる流行性角結膜炎は、非常に感染力が強いために、昔から俗に「はやり目」と呼ばれていました。

引用:2.結膜炎とは | ウイルス性結膜炎 | 目についての健康情報 | 公益社団法人 日本眼科医会

角膜とは一般的に「黒目」と呼ばれている部位です。結膜は目を覆う薄い透明の膜で、まぶたの裏側から白目の表面を覆っています。

アデノウイルスによって、この角膜と結膜に炎症を起こす疾患が「はやり目=流行性角結膜炎」となります。

はやり目は8月を中心にした夏に流行する傾向があり、1~5歳の小児の患者が多いですが、成人の患者も少なくありません。はやり目は幅広い年代で感染が起こります。

 

1-1、はやり目の感染経路

はやり目(流行性角結膜炎)の感染経路は接触感染です。ウイルスが身の回りの物を介して、目に付着することで感染します。

・ウイルスがついた手で目を触る

・ウイルスに汚染されたタオルや洗面器からウイルスが目に付着する

・消毒が適切でないプールに入る

接触感染で感染が広がりますので、接触が密になりやすい家庭や職場、病院などではやり目が広がることが多いです。

 

2、はやり目の症状

はやり目(流行性角結膜炎)の潜伏期間は8~14日間と長めです。そして、突然発症します。結膜(白目の部分)が急激に充血します。また、起床時には目を開けられないくらい眼脂(めやに)が出ることも特徴です。それ以外にもいろいろな症状が出ます。

・結膜の充血

・眼瞼浮腫
・眼脂
・流涙

・眼痛

・耳前リンパ節の腫脹・圧痛

はやり目は感染力が強いので、片方の目に感染が起こると、もう片方の目にも感染が起こることが多いです。しかし、最初に感染が起こった目の方が、症状が強く出る傾向があります。

また、眼瞼結膜には充血だけでなく、ウイルスに対するリンパ球の反応である「ろ胞」というぶつぶつの隆起ができます。

時々、結膜の炎症が出血性となることがあります。また、新生児や乳幼児のはやり目は、炎症が強くなることで偽膜性結膜炎を起こして、細菌との混合感染が起こり、角膜穿孔を起こすことがあります。

一般的に発症から1週間で症状はピークを迎えます。その後は徐々に快方に向かい、2~3週間程度で完治します。

ただ、結膜の炎症が治まっても、角膜炎が続くと、点状表層角膜炎が起こることがあります。点状表層角膜炎になると、角膜に小さな斑点状の淡い混濁が残り、眩しさや目のかすみなどの症状が現れます。角膜の混濁とそれに伴う眩しさや目のかすみの症状は、数ヶ月から半年程度続くことがあります。

 

2-1、はやり目の治療法

はやり目(流行性角結膜炎)の治療法は対症療法が基本になります。現時点ではやり目の原因ウイルスであるアデノウイルスへの有効な薬剤はありません。

そのため、炎症の改善のために、抗炎症剤の点眼を行うのが一般的な治療方法になります。また、角膜の炎症や混濁が見られるときは、ステロイド剤の点眼を行います。

炎症が強くなり、細菌との混合感染が疑われる時は抗菌剤の点眼を行うことがあります。

これらの点眼による治療は、あくまでも対症療法ですので、点眼を行ったとしても、症状は2週間程度は持続します。

 

3、はやり目のの看護のポイント

はやり目(流行性角結膜炎)の看護のポイントを見ていきましょう。眼科でははやり目の患者さんは珍しくありませんし、眼科以外の診療科の外来でも、また病棟でもはやり目を発症する患者さんはいます。

そのため、看護師は眼科はもちろん、それ以外の診療科でもはやり目(流行性角結膜炎)の看護のポイントを知っておく必要があります。

 

 

■院内感染の防止

はやり目は感染力が非常に強いため、院内感染のリスクが大きい感染症です。そのため、看護師は院内感染を防止しなくてはいけません。

スタンダードプリコーションを徹底する

・患者本人にアルコール消毒薬で手指消毒をしてもらう

・診療やケアに使った物品はアルコール綿で消毒する

・患者が触れた共用部分もアルコール消毒をする

・入院患者がはやり目を発症したら、できる限り個室管理にする

はやり目は健康な人が感染しても、自然に治癒する感染症ですが、院内感染を起こすと、炎症が強くなって、角膜穿孔など重症化する可能性もあります。

また、院内感染が広がり、病棟閉鎖に追い込まれた事例もあります。

そのため、看護師ははやり目の感染力の強さをしっかりと理解し、患者さんの安全のためにも、自分たち医療職者の身を守るためにも、院内感染の防止に努める必要があります。

 

■患者への指導

はやり目の患者に対しては、感染を拡大させないための指導をしなければいけません。

・はやり目は感染力が強いこと

・接触感染を起こすこと

これらを理解してもらい、手洗いを頻回にすること、アルコールで手指消毒を頻回にすることや目をできるだけ触らないようにすること、目を拭いたティッシュなどきちんと捨てること等を説明してください。

 

■家庭内感染の予防の指導

はやり目は家庭内感染を起こすことが多いです。

外来患者に対しては、先ほどの患者指導に加えて、タオルや洗面器等は顔につくものは、ほかの家族と共有しないように指導します。

患者だけでなく、家族も手洗いや手指消毒をしっかり行うように伝えましょう。

また、入浴は家族の中で最後にするか、シャワーだけで済ませるようにして下さい。

この時、患者の年齢・理解度も考慮して、必要があれば、患者だけでなく家族にも一緒に説明して、理解してもらう必要があります。

また、入院患者がはやり目を発症した場合は、面会に来た家族に対しても、同じように説明してください。

 

■出席停止の説明

はやり目(流行性角結膜炎)は学校保健法で第三種に指定されています。

そのため、はやり目と診断されたら、「伝染の恐れがないと、医師が認めるまで」出席停止となります。

そのため、眼科や小児科ではやり目の小児患者がいたら、忘れずに学校保健法に基づき、学校は出席停止になることを説明してください。

成人の場合、「出勤停止」の法的根拠はありません。

ただ、医師から感染予防の観点から出勤停止を指示されることがありますし、飲食業や医療関係、介護福祉関係、教育関係の職場では、職場の規則として出勤停止になる場合がありますので、それを指導しておく必要があります。

 

■患者の精神的なケア

はやり目(流行性角結膜炎)の患者に対しては、感染拡大防止を重視して、看護・対応をすることが多いです。

しかし、看護師は患者の精神的なケアを忘れてはいけません。

患者ははやり目を発症し、眼脂が出て、目の痛み・違和感などの苦痛を感じています。さらに、感染拡大防止のために隔離されたり、身の回りを消毒しなくてはいけなかったり、自分1人だけ専用物品を用意されたりします。

そうすると、患者は「自分はばい菌扱いされている」と感じることがあります。

患者にそう感じさせないためにも、看護師は隔離などの必要性をきちんと理解してもらい、さらに精神的なケアも行っていくようにしましょう。

 

まとめ

はやり目(流行性角結膜炎)の基本情報と症状、看護のポイントなどをまとめました。はやり目は病棟閉鎖を起こすリスクがあるほど感染力が強い感染症です。

看護師は院内感染を起こさないように、環境整備など感染予防のためのケアを行っていきましょう。

 

参考文献

流行性角結膜炎とは|国立感染症研究所

流行性角結膜炎|KOMPAS 慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイト

5.流行性角結膜炎 | ウイルス性結膜炎 | 目についての健康情報 | 公益社団法人 日本眼科医会

東京都感染症情報センター 流行性角結膜炎 Epidemic keratoconjunctivitis (EKC)

・流行性角結膜炎に対する院内感染対策|筑波大学附属病院

ⅩⅠ-7 流行性角結膜炎(EKC) |都立墨東病院

飯島由紀

1988年生まれ、神奈川県横浜市出身。総合病院での臨床経験8年。母が看護師ということもあり、幼少期から看護師に憧れを持つ。看護専門学校を卒業後、横浜市内の総合病院(耳鼻咽喉科)に就職。現在は同病院で働きながら、看護師としての経験を生かし、ライターとしても活動している。

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