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いまさら聞けない!看護計画

終末期の患者・家族に対する看護計画と適切なケアの実施(2015/04/22)

公開日: : 最終更新日:2020/06/05 看護計画 全科共通 

終末期看護

終末期にある患者に対し、どのようにケアしていけば良いのか、熟練の看護師でも悩むことが多くあります。患者それぞれ病状や精神状態がさまざまであり、各人に応じたケアが求められることが困難さをもたらす要因です。

ターミナルケアは非常に難しいものであるため、患者・家族、双方により良い生活を提供できるよう、当記事をしっかり読んで学んでください。

 

1、終末期(ターミナル期)とは

終末期というのは、①老衰、②病気、③障害、などの理由により、治療による改善の余地がなく、余命2週間~半年程度で死を迎えるだろうと予想される時期のことを言います。

この時期にある患者のケアを「ターミナルケア」と呼び、延命を図るのではなく、肉体的・精神的苦痛を和らげてあげることで、QOL(Quality of Life)、つまり生活の質を向上させてあげることを第一とします。

 

1-1、終末期の定義

全日本病院協会 終末期に関するガイドライン」で、以下の三つの条件に全てあてはまる場合に終末期であると定義されています。

Ⅰ.医師が客観的な情報を基に、治療により病気の回復が期待できないと判断すること

Ⅱ.患者が意識や判断力を失った場合を除き、患者・家族・医師・看護師等の関係者が納得すること

Ⅲ.患者・家族・医師・看護師等の関係者が死を予測し対応を考えること

 

1-2、ターミナルケア開始条件

ターミナルケアを始めるにあたり、基本的に下記の2つの条件があてはまる場合にのみ開始されます。

Ⅰ.医師が病状、身体及び精神状態に関する客観的データをもとに、回復の見込みがないと診 断し、その「診断名」と「診断日」が明確になっていること。

Ⅱ.入所者本人または入所者の意思を代弁できる者(家族など)の意思確認ができていること。(日常的会話などの記録・法的な文書・本人の日記等・ 家族からの代弁等)

 

1-3、終末期間における時期

余命2週間~半年程度を終末期と定義されていますが、細かく分けると「前期」、「中期」、「後期」、「死亡直前期」と区別されています。

前期・・・余命6ヶ月~数カ月と考えられる時期

中期・・・死期まであと数週間と考えられる時期

後期・・・死期まであと数日と考えられる時期

死亡直前期・・・ 死期まで2日以内と考えられる時期

 

1-4、ターミナルケアを行う施設

ターミナルケア(終末期医療)を専門的に行う施設は「ホスピス」と呼ばれており、主に5種類の施設形態・ケア体制があります。各利点に応じて、患者・家族に各施設形態を提案することも看護師の立派な役割です。

 

①病院内病棟

大型病院など、病棟や階を定めて病院内でターミナルケアを行います。窓から見える良い眺めによる精神的な安らぎを与えるための1つのケアとして、主に最上階または上層部に配置されています。これらの病棟・階層は「緩和ケア病棟」もしくは「PCU」と呼ばれています。

 

②病院内独立型

一般病棟と同じ敷地内に、独立した形で建物を持つホスピスのことで、同建物は一般的な家のように寛げる環境が提供されています。より自分らしく生きるための施設環境が特徴です。

 

③病院内緩和ケアチーム

緩和ケア病棟としての承認施設基準を満たした病棟を持たず、緩和ケア専任として従事するスタッフ(緩和ケア医・看護師・精神科医・薬剤師・ソーシャルワーカー)が、チームを組んで緩和ケアを行うことを意味しています。場合によっては、緩和ケアだけでなく治療が行われることもあります。

 

④在宅ホスピス

その名の通り、住み慣れた家での緩和ケア体制のことです。看護師やケアマネジャーが自宅に訪問し、ご家族のいる中で安心した状態で療養を行います。

 

⑤完全独立型

終末期にある患者のターミナルケアを主とする施設のことで、一般的に呼ばれるホスピスはこれにあたります。現段階では施設数がまだ少なく、神奈川県(ピースハウス病院)、京都府(薬師山病院)、三重県(三重聖十字病院)、福岡県(聖ヨハネ病院)、大分県(大分ゆふみ病院)など限定的です。

 

1-5、ホスピスの働き

ホスピスは、もともと中世ヨーロッパで旅の巡礼者を宿泊させた小さな教会のことを指していました。巡礼者が、不調や病気により旅立つことが出来ない場合に、そのままそこに置いて、ケアや看病をしたことから、看護収容施設全般をホスピスと呼ぶようになりました。なお、ホスピスには英語の頭文字をとって7つの意味が存在します。

  • “H” hospitality (親切なもてなし)
  • “O” organized care (組織的なケア)
  • “S” symptom control (症状をコントロールする)
  • “P” psychological support (精神的な支え)
  • “I” individualized care (個別性の尊重)
  • “C” communication (コミュニケーション
  • “E” education (教育)

 

2、終末期の看護計画

看護計画の立案にあたり、最も重要となるのが「アセスメント」です。終末期にある患者の病状や精神状態は各人で異なるため、各患者に合わせた立案が必要ですが、一般的なアセスメントとして以下の事項が挙げられます。

 

①患者本人または家族の意思

  • 利用者本人の意思確認
  • 家族間における合意
  • 受ける医療(緩和ケア)の希望
  • 療養の場(ホスピスなど)の選択
  • 医療体制の希望

 

②総合的な症状・状態の変化

  • ADLの変化(食事・入浴など生活上、不可欠な基本的行動の推察・判断。)
  • 精神症状の変化(活気など、精神にまつわる症状の推察・判断。)

 

③トータルペインの有無

  • 身体的苦痛(痛み、息苦しさ、だるさ、薬による副作用、不眠など。)
  • 精神的苦痛(死に対する不安、恐怖、苛立ち、孤独感、疑念。その他、鬱状態も含む。)
  • 社会的苦痛(社会的地位や役割の喪失、収入など経済的問題、相続など家族内の問題など。)
  • 霊的苦痛(後悔、自責の念、人生の意味、苦しみの意味、死生観に対する悩みなど。)

 

3、ターミナルケアにおける看護師の役割

ターミナルケアにおいて、医師と看護師の役割が区別されています。看護師がどこまで踏み込んでいいのか、迷われる方も多いと思うので、以下に医師と看護師の基本ケアにおける役割を記載します。

■医師

  1. 終末期の診断、患者本人・家族への説明と記録
  2. ターミナルケアカンファレンスへの参加
  3. 適宜の診察、家族への病状説明と記録
  4. 医療的処置・緩和ケアにおける指示
  5. 患者本人の苦痛の軽減
  6. 臨終時の対応
  7. 死亡診断書などの関係書類の作成

 

■看護師

  1. 医師の病状説明時の立ち会い
  2. ターミナルケアカンファレンスへの参加
  3. 家族へのターミナルケアに関する説明と記録
  4. 医師との連携(医療的処置・緩和ケア)
  5. ターミナルケアに関する看護計画書の作成
  6. ターミナルケアの実施と記録
  7. 心身の状態に応じた看護ケアの実施と記録
  8. 臨終時の対応とエンゼルケアの実施

 

4、終末期のケア・看護

終末期にある患者のケアは非常に難しいものです。死に直面すると人は情緒不安定になり、良かれと思ってやったことが相手にとっては苦痛ということもよくある話です。それゆえ、患者・家族ともに良いケアをしていくためには、様々なことを十二分に配慮しなければいけません。

 

4-1、総合的なケアのポイント

終末期におけるケアは患者が感じる苦痛の種類(後述)によって様々ですが、総合的な観点から言うと、「①親身になって話を聞く」、「②心の整理を手伝う」、「③患者のために行動する」、この3つの事柄が重要です。

 

①親身になって話を聞く

終末期にある患者の心は、不安や苦悩、孤独感で満ち溢れています。中には我を忘れて奇行に走る人もいます。死に直面しているのですから当然と言えば当然。そこで重要となってくるのが、話を聞くということです。人間誰しもがそうですが、悩みやストレスを抱えている時、誰かに話を聞いてもらいたいものです。死に直面する患者も然り、心の内を話せる相手が欲しいのです。

家族には話したくないことを抱えている患者は多く、その話を親身になって聞いてあげることで、死を迎えるまでの有意義な生活を支援することできるのです。

 

②心の整理を手伝う

いろいろと聞いていくうちに、後悔していることや、果たせなかった夢などの話が出てきます。死に対して準備が出来ていない要因がそれらにあるため、それぞれにおける整理を手伝ってあげることも非常に大切です。どうすれば良いのか一緒の考え、できることは率先して手伝ってあげることが、患者にとっては嬉しいことなのです。

 

③患者・家族のために行動する

当たり前のことかもしれませんが、仕事の一環としての作業的サポートではなく、思いやりの心を持ってサポートしてあげることが何より大切です。自分のために親身になってくれる人がいる、そう思うことで安心感が生まれます。また、患者と家族の関係をより良くできるのは看護師だけです。親身になって行動すれば、家族の絆を深めていくことも可能なのです。

 

4-2、身体的苦痛におけるケア

肉体的苦痛を緩和させてあげるためには、細やかな配慮が必要です。さまざまな状況に即座に対応できるよう、各状況に応じた配慮を知っておきましょう。

  • 痛み(モルヒネなどの経口薬の投与、マッサージ・指圧・温罨法、補完代替医療(CAM)、体位の工夫)
  • 倦怠感(体位の変更、マッサージ・指圧・温罨法)
  • 床ずれ(体位の変更、マットレスなどの導入)
  • 呼吸困難(オピオイドなどの投与、窓の開閉(新鮮な空気を取り込む)、安楽な体位の確保、痰の除去)
  • 食思不振口腔ケア、好物を近くに配置、食べやすいものを提供(ゼリーなど))
  • 排泄障害便秘薬・下剤の投与、浣腸の使用)

 

※各症状が現れた時、必ず患者の意思を尊重するようにしてください。また、無理に勧めるのではなく、提案という形で、やんわりと勧めるようにしましょう。

 

4-3、精神的苦痛におけるケア

精神的苦痛に対するケアは、主に状態に応じた薬物の投与や、カウンセリング、環境の変更などが主となります。

  • ストレス(ケア環境の改善、カウンセリング、短期的な心理療法)
  • せん妄(転倒転落予防のためのベッド周囲の安全管理、照明調節等の環境調整、鎮痛剤の投与・または薬物療法の実施)
  • うつ・不安・恐怖(抗うつ薬・抗不安薬の投与、カウンセリング、短期的な心理療法)

 

4-4、社会的・霊的苦痛におけるケア

社会的苦痛や霊的苦痛においては、コミュニケーションを通して緩和させてあげることが最も有効です。それゆえ、終末期にある患者に対するコミュニケーション能力が問われ、看護においては最も難しい部分でもあります。どのようにコミュニケーションを図れば良いのか、以下にポイントを列挙します。

患者と視線の高さを同じにする

患者の横に座り、話しを傾聴する

タッチングをしながら話す

共感的な態度で接する

患者の状況を理解し共感的な態度で接する

その他、自然と触れ合えるような環境作りも大切です。死期に迫る患者は、不安や孤独感でいっぱいであり、話し相手は欲しいものです。家族が常に付き添うことができない患者は特に会話を求める傾向にあります。各患者によって感情や思考は異なるため、ターミナルケアにおけるコミュニケーション能力は経験でしか培われません。それゆえ、特に看護実績が少ない方は、恐れず積極的にコミュニケーションをとることが大切です。

看護コミュニケーションの目的と意義、信頼獲得のための術

 

5、扶養家族のケア

終末期にある患者だけでなく、その家族も多大な精神的ショックを受けます。特にターミナルケア開始の旨を説明する際、または直後には激しく精神的不安定な状態になります。そのため、患者だけでなく家族のケアも看護師にとって非常に大きな役割を担っており、双方にとってより良いケアを提供することが大切なのです。

 

①患者の死を受け入れ、共に過ごせるよう支援すること

患者の死が間近に迫っているということを家族が受け止めていくために重要なことは、医師や看護師が患者の病状などにおける十分な説明を家族にすること。また、面会時以外の様子や今後予想される事柄を随時丁寧に伝えることで、患者の死を家族は受け入れることができます。

さらに、お互いが一緒に寄り添いながら余命を悔いなく過ごせるよう、患者と家族の間に入り、その感情をそれぞれ受け止め、両者の関係を調整することが大切でし。生活全般における清拭などのケアを一緒に行うなど、患者・家族の双方が十分な時間を共有できるようサポートしていくことが看護師にとっての重要な役割となります。

 

②患者の死後も安穏に過ごせるよう支援すること

家族は患者の死後、「あれで良かったのか」、「もっとしてあげられることがあったのではないか」など、後悔の念を抱く場合があります。これに対して思い悩み続け、生活に支障をきたす方もいらっしゃいます。そのため、看護師は家族に対して、後悔の念を抱くことなく、また思い悩むことなく、患者の死を受け入れ安穏に過ごせるよう、患者に対するこれまでの家族の支援を支持・肯定することが大切なのです。

 

まとめ

ターミナルケアにおける看護師の役割は非常に大きく、医師以上と言えます。患者・家族の双方にとって良い環境下で生活できるように万全の体勢でケア提供しなければいけません。

しかしながら、”過度なケアもまた危険である”ということを忘れないでください。最終的には患者と家族の問題であり、立ち入り過ぎるとかえって邪魔になりかねません。それゆえ、看護師は程よい距離で”サポート”することが求められるのです。

ターミナルケアは非常に難しく、熟練の看護師でも勉強の毎日です。患者の状況になってみなければ、最高の援助を提供することは出来ません。ですが、思いやりの心をもって、より良い生活のために考え、提案・実践していけば、いれず必ず喜ばれるサポートを提供することができるはずです。

ターミナル期における看護・介護ケアとプラン作成のポイント

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