グループホームで勤務する看護師は、3つの緊急事態を予測しよう!(2018/04/16)
グループホームは、障害のある人が共同生活を行う住まいの場であり、原則はADLの自立している利用者に対し、家事等の日常生活上の支援を提供するものです。今回はグループホームでの看護師の仕事や業務内容・給与など、転職の際に気になる情報をまとめました。
1、グループホームって、どんなところ
グループホームは、軽度の障害を有し独りで暮らすには不安のある高齢者が、主に家事援助などの支援を受けながら利用する生活の場です。利用者像としては、食事や入浴の支援を想定していますが、年々利用者の障害は重くなっているのが現状です。
<グループホームの概要>
◯グループホーム、ケアホームは、障害のある方が地域の中で家庭的な雰囲気の下、共同生活を行う住まいの場
◯1つの住居の利用者数の平均は5名程度
具体的な利用者像 |
具体的な支援内容 |
必要な設備等 |
・単身での生活は不安があるため、一定の支援を受けながら地域の中で暮らしたい方
・一定の介護が必要であるが、施設ではなく、地域の中で暮らしたい方 ・施設を退所して、地域生活へ移行したいがいきなりの単身生活には不安がある方 など |
・グループホームは介護を要しない者に対し、家事等の日常生活上の支援を提供。
・ケアホームは、介護を必要とする者に対し、食事や入浴、排せつ等の介護を併せて提供 |
・共同生活住居ごとに1以上のユニットが必要
・ユニットの入居定員は2人以上10人以下 ・居室及び居室に近接して設けられる相互に交流を図ることができる設備を設ける ・居室の定員:原則1人 ・居室面積:収納設備を除き7.43㎡ |
グループホームは一般的に住宅街に立地することが多く、1施設における人数は原則10名以下となっています。ですから、特別養護老人ホームや有料老人ホームなどの施設に比べると小規模で、担当する利用者(入所者)の数も少ないのが特徴です。身寄りのない独居の高齢者が生活保護を受けてグループホームに入所していることも多く、ニーズは年々高まっています。
2、グループホームの看護師の配置基準
グループホームでは、利用者9人に対しスタッフ3人が必要とされていますが、この3人を全て看護師にする必要はありません。厚労省発表の『指定認知症対応型共同生活介護等に関するQ&Aについて』中の医療連携体制加算について内で説明されていますが、看護師を設置していると、加算をとることができるということです。
しかし、年々障害の重い入所者が増えてインスリン管理などを必要とする入所者も増加しており、介護士のみで入所者の生活を指させることは難しくなっています。看護師を常駐させるには交替要因なども必要となるため、実際は日中のみ看護師が勤務し、夜間はオンコール体制をとっていることが多いです。
3、グループホームの看護師の仕事内容
グループホームでは、原則として介護(ケア)を必要とすることは少なく、ADLの介助については介護士の担当となります。では、看護師の役割・実際の業務内容は何があるのでしょうか。
<グループホームにおける看護師の業務>
①バイタルサインの測定 → 入浴の可否や受診の必要性を判断
②服薬管理(血糖測定やインスリン注射を含む) ⑤急変対応、医療機関への付き添い ⑥突発的な出来事への対応(膀胱留置カテーテルの抜去や外傷など) ⑦定期通院の付き添い ⑧家族との連絡調整 |
グループホームは、生活の場です。ですから、普段は検査や処置といった医療行為がルーティンワークとしてあるわけではありません。グループホームにおいて看護師が必要とされる本当の意味は緊急事態への対応です。
<グループホームで発生する3つの緊急事態とは!?>
・誤嚥による窒息
・急な意識レベルの低下 ・転倒による外傷 |
これらは、頻度は高くないもののグループホームに勤務していると年に数回発生します。そんなときに対応するのが、私達看護師なのです。中央配管システムのないグループホームでもポータブルの吸引機を常備しているくらい、窒息は身近に潜む問題です。また、高齢者が多いために脳血管疾患によるレベル低下、転倒による外傷なども看護師の介入が必要とされる緊急事態です。
4、グループホームの看護記録
グループホームでは、「こう書かなくてはいけない」といった看護記録はありません。自分の不在時に誰が読んでもわかる記録を残しておくということは必要ですが、医療機関のようにSOAPやPOSの書き方をしなくてはいけないという決まりはありません。ですから、看護計画や看護記録といった形式的なもののため残業は少なく、ブランクがあって看護診断がわからいない人やデスクワークが苦手な人にとって、生活重視の場で勤務する方がストレスは少ないかもしれません。
5、グループホームの看護師の給料
グループホームは、原則1施設で9人までとなっています。裕福な人が入るというよりは、孤独な人、生活保護を受給している人が多いということもありますし、経営的に余裕のある施設は多くありません。そのため、看護師を常勤で配置することが難しく、パート勤務の看護師のみでやりくりしているホームもあります。転職先としてグループホームを検討するのであれば、年収ではなく仕事の内容や自分にとっての適性で選択することをお勧めします。
まとめ
「医療の第一線で働くには荷が重い」「ゆったりと人に向き合いたい」という人は、これまでせっかくの看護師という資格を活かすことができずにいました。看護師の活躍する場は病院だけとは限りません。高齢社会となった現代では、高齢者の生活を支える場で働くことも可能です。
グループホームの良いところは、医療現場ではないところです。高い年収を期待することは難しいですが、医療機関(特に急性期)での勤務に抵抗のある人やブランクの長い人にとっては、家事育児の経験と看護師資格の両方を活かせる場となるでしょう。
参考サイト
グループホームとケアホームの現状等について(厚生労働省|2013年7月26日)
医療連携体制加算について(指定認知症対応型共同生活介護等に関するQ&Aについて|厚生労働省|2006年5月2日)
グループホーム 設置・運営マニュアル(『質の高い』グループホームを創るための設置・運営マニュアルの作成、および、グループホーム・ケアホームの世話人・生活支援員および管理責任者、管理者向け研修の実施|障害のある人と援助者でつくる 日本グループホーム学会|2007年)
東京都在住、正看護師。自身が幼少期にアトピー体質だったこともあり、看護学生の頃から皮膚科への就職を熱願。看護学校を経て、看護師国家資格取得後に都内の皮膚科クリニックへ就職。ネット上に間違った情報が散見することに疑問を感じ、現在は同クリニックで働きながら、正しい情報を広めるべく、ライターとしても活動している。
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