フィードバックの看護|フィードバックと振り返りを生かした看護過程の5つのポイント(2018/12/01)
私達は社会生活の中で様々な振り返りや他人からの評価を得て自分自身や企業のなかでそれらを共有・改善していく事でより良いサービス等の提供に役立てています。今回は、看護の現場におけるフィードバックについて考えていきます。
目次
1、フィードバックとは
フィードバックとは、仕事における作業や言動を第三者が評価し当事者に伝えることです。自分自身の行動を振り返って評価することも含まれます。私達が仕事をしていく上で周囲からのフィードバックは個々や会社・組織の成長に欠かせないものです。良い点・悪い点についてのフィードバックをうまく活用することでより良いサービスや物を提供することに繋がります。
2、看護におけるフィードバック
私達の仕事は患者の命を預かる大切な役割があり、適切な対応・正しいことを行う必要があります。看護師間だけでなく、医師や他の部署との連携により患者に適したより良い医療を提供する事が求められます。このため、看護におけるフィードバックは大切な作業と言えます。
2−1、フィードバックを行う際のポイント
フィードバックにはポジティブフィードバックとネガティブフィードバックがあります。良い部分と不足している部分をフィードバックすることでチーム力の向上や同じ失敗を繰り返さない等の効果を期待できます。では、フィードバックを行う際にはどのような事に注意が必要なのでしょうか。
①良い点、悪い点をバランスよく伝えること
②どんな行動や判断をしてどんな結果がもたらされたのかを具体的に伝えること
③自分の感じた気持ちを相手に伝えること
④全体で共有すること
フィードバックは本人に伝えるものです。グループにフィードバックを与える場合にも、グループがもたらした結果は誰の行動によるものなのかを明確にする必要があります。ポジティブフィードバックを行う際は、漠然と褒めるのではなく、何がどうよかったのかを伝えましょう。また、ネガティブフィードバックでは、「誰の行動」がその人に対する批判ではないということに注意する必要があります。あくまでも起こった問題における原因分析の1つであり、人格を否定するようなものであってはならないということです。両者に共通して言えることは、「具体的な事実を伝える」ということです。これらを踏まえて有効なフィードバックを行っていきましょう。
2−2、フィードバックからの振り返り
看護における振り返りとは、自分の行なった言動について内省し次の看護実践へと生かしていくことです。フィードバックされたものを自分自身の中で何がどのように良かったのか、悪かったのかを見つめ直すことで今後業務を行っていく上で看護の質の向上につながります。また、私たちが対応する状況は止まっていることはなく常に流動的であるため、実践しながら考えて行動しています。自分が何を感じたのか、どんなことができたのか、状況との対話や自己との対話を心がけながら仕事を進めていくとともに、仕事を終えた後、気になったことなどをふり返って他者と共有し状況により適した解決ができるようになっていきます。
引用元:Reflective Practice – University Study
3、看護過程
看護過程は目標を達成するための一連の行為であり、患者さんの看護上の問題を明確にし、計画的に看護を実施・評価するための系統的かつ組織的な活動です。私たちは患者さんが持つ何らかの課題や問題を解決するため、複数ある看護問題の優先順位を判断し、具体的な計画を作成して実践していく必要があります。
3−1、フィードバックと看護過程
看護過程におけるプロセスは6つの段階に分けられます。下記の図のようにまずは情報収集から始め、アセスメント、問題の計画立案、評価・修正を行います。看護過程は問題解決過程であり、フィードバックと振り返りを行うことで患者さんへのより良い看護実践に繋がっていきます。
➀アセスメント
患者に関する情報の収集と解釈・分析・評価 ②看護診断 アセスメントの結果、看護により解決可能な問題を決める ③看護計画 看護診断で優先順位を考慮し目標を設定、目標達成のために適切な看護を考えて計画する ④看護介入 看護計画で決定した看護目標を達成するための看護実践 ⑤看護評価 実施した看護の効果を評価し必要があれば修正する |
具体的な看護計画の立案は、統一したケアを行っていく上で非常に大切です。チームや組織として同一のケアを実施した結果、何がどうなったのか、どのような問題が起こったのかを把握し問題解決のためのふり返り・フィードバックを行っていく必要があります。
引用元:看護過程とSOAPの基本
4、看護症例からのフィードバック
看護師は、看護実践をしているその時その場で専門的で的確な判断をする事が求められます。看護実践における行為の振り返りやフィードバックを行うことで、看護実践能力の向上につなげる事が期待できます。ここでは、医療事故が起こった場合、どのようにフィードバックを行なっていくかをみていきましょう。
4−1、フィードバックの手順
医療のリスクを分析するためには、事故事例についての迅速な情報交換と個別事例の背景要因にまでさかのぼった原因分析が事故防止には不可欠です。
1、事例の情報収集を行い、物事が起こった経緯や状況など全体の把握を行います
2、いつ、どこで、誰が、誰に、何をしたかを確認していきます(事実の把握)
3、事実を項目ごとに書き出します(直接要因・間接要因)
4、起こった事を時系列に並べます(実施状況の把握)
5、問題が発生した時間の経過と事実を確認します
以上の分析ができたら、実際にフィードバックを行なっていきます。ポジティブフィードバックであってもネガティブフィードバックであってもステップは同じです。
1、問題行動を具体的に指摘します
2、問題行動がもたらす良くない結果を知らせます
3、今後どのような行動をとって欲しいかを伝えます
4、チームや部署全体で共有します
フィードバックの特徴は客観的であることです。相手が自分で考える余地があり、受け入れやすいという点がフィードバックの効果的とされる理由です。普段から様々な事例についてのフィードバックを行うことでその精度が上がり、看護や医療全体の質の向上に役立っていくでしょう。
まとめ
フィードバックはどのような場面においてもその質や伝える事の困難さがあり、それをうまく返していく表現が必要とされます。私達医療者は質の高い看護を実践・提供するために患者さんや家族、医療者間でのコミュニケーションや患者さんからの反応を普段から気にかけていく事が大切です。そして、様々な状況に対応できる能力を身につけていきましょう。
参考文献
インシデント管理システム~報告によるフィードバックとレスポンス(RESILIENT MEDICAL)
看護学教員による実習記録への フィードバックに関する研究(群馬県立県民健康科学大学紀要 第9巻 13~33|高橋裕子、松田安弘、山下鴨子、吉富美佐江|2014年)
看護教育における省察的実践理論の展開(永井 睦子|日本プライマリ・ケア連合学会誌Vol.33 No.4|2010年)
東京都医療安全推進事業報告書(東京都医療安全推進事業評価委員会|2006年3月)
東京都在住、正看護師。自身が幼少期にアトピー体質だったこともあり、看護学生の頃から皮膚科への就職を熱願。看護学校を経て、看護師国家資格取得後に都内の皮膚科クリニックへ就職。ネット上に間違った情報が散見することに疑問を感じ、現在は同クリニックで働きながら、正しい情報を広めるべく、ライターとしても活動している。
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
ナースのヒント の最新記事を毎日お届けします
こちらの記事もおすすめ
- 看護用語
-
「カットダウン法でやります」、医師からそのような言葉を聞いて、「カットダウンとは?どんな方法
- 看護計画
-
掻痒感は苦痛を感じますし、なかなか眠れないなどQOLを大きく低下させるものです。でも、掻痒感
- 看護用語
-
1999年、大学病院で肺手術と心臓手術の患者を取り違えて手術するという医療事故が発生したこと
- 看護技術
-
【2023年最新】胸腔穿刺の看護|穿刺部位や手技、合併症や看護手順
胸腔内に空気や水が貯留した結果、呼吸状態・循環動態が悪化してしまうことがあります。そこで、穿刺をして
- 看護用語
-
PCIの看護|その目的と手術法、合併症を踏まえたケア・観察項目
1977年、スイスの医師グルンチッヒ(Dr. Andreas R.Gruzig )によって初