乳児院で働く看護師が知っておくべき6つの要点(2018/05/15)
「乳児院」と聞いてみなさんはどのような仕事を思い浮かべますか?看護師の職場は病院に限らず介護施設や老人福祉施設、保育園、幼稚園、乳児院などにもあります。様々な看護職の中で、ここでは乳児院についてご紹介します。これから「乳児院で働いてみたい!」とお考えの看護師さんの参考にしていただけたらと思います。
目次
1、乳児院とは
乳児院とは、棄児、両親の病気あるいは死亡などの理由、または保護者の何らかの事情で家庭において養育することができない乳幼児を預かって養育する施設で、児童福祉法37条に定められた入所型の児童福祉施設です。乳幼児の基本的な養育機能に加えて障害児・病児・被虐待児などに対応できる専門的養育機能を持ちます。医療を目的とするものではありませんが、乳幼児の養育には医学的配慮、看護上の配慮が必要です。
乳児院は、主に出生後すぐから1歳未満の乳児を24時間体制で養育します。1歳以上の児童は通常、児童養護施設で養育されますが、乳児院でも必要な場合には小学校入学前まで継続して養育を行うこともあります。
2、乳児院での看護
乳児院で養育されるのは、何らかの理由により親と過ごすことができない子供達です。このため、その子供達にとって乳児院は家庭の代わりになります。親の代わりを看護師や保育士が担っているのです。親のように愛情を注ぎ、子供が安全に過ごせるようサポートしていく必要があります。普段の関わりから一人一人の様子を把握しておくことで身体的、精神的な変化の発見につながります。
3、乳児院での看護師の役割
乳児院には看護師の他に保育士や栄養士、臨床心理士、児童相談員、委託医など様々な職種が存在します。それぞれの職種の役割分担や関わりを知っておくと上手く連携が取れて円滑に仕事を進められますね。主に看護師と関わると思われるのが保育士です。
保育士は保育のプロです。乳幼児のお世話を行うのが主な仕事です。
①子供の遊び
②食事介助
③着替え
④授乳
⑤散歩
⑥しつけ
これらを行うのが保育士の役割です。保育士は子供達のために様々なことを考えてお世話をしていく役割を担っています。
一方、看護師としての役割はどうでしょうか。
子供の日々の体調管理や日常生活ケアはもちろんのこと、心のケアも必要とされます。乳幼児は体の不調を自分から訴えることが難しいため、鳴き声の変化や普段との様子の違い等、ちょっとした変化に気付き体調の変化を判断できる能力が求められます。乳児院の看護師は、施設毎に最低限の看護師しか配置していないため、求められる責任は大きくなると言えます。
- 身体的発育
- 栄養状態
- 精神運動発達
- 行動発達
- 日常生活上の感染予防
病院との大きな違いは、乳児院は「家」として存在しているものであり、病院と違って必ずしも医療が必要な子供がいるというわけではない点です。私たち看護師は、通常の看護業務よりも子供達の体調管理・健康管理を主にしていく役割を担っています。看護師としてある程度の臨床経験と予防医療に関する知識や技術を持ち合わせていることが必要です。
4、乳児院における看護師の配置基準
乳児院の看護師の配置基準には、最低基準と措置基準がありますがどちらも同じ基準となっています。看護師の乳児院での配置基準は以下のようになっています。
4ー1、最低基準
・乳児10人以上:乳児10人で2人以上(以下10人毎に1人)
・乳児10人未満:乳児7人以上で看護師1人以上(7:1)
4ー2、措置基準
・乳児10人以上:乳児定員10人で2人以上(以下10人毎に1人)
・乳児10人未満:看護師1人以上(乳児7人に対して看護師1人以上)
5、乳児院での看護師の給料
これまでの経験や資格を活かして乳児院で働こうと考えたら当然お給料の額も気になりますね。
乳児院で働く看護師の年収は、転職先によって異なりますが、400万円から450万円前後と言われています。一般病院と比較すると3年から5年目の看護師と一緒かそれより少ないぐらいの年収と言えるでしょう。しかし、乳児院の数が病院に比べて少ないことや乳児院自体の求人案件も少ない上に、人気が高い職種であるため、競争率が高い看護求人でもあります。定着率が高くなかなか空きができないことが一つの原因ではないでしょうか。転職して年収をアップさせたいとお考えの看護師には給料面で見るとあまり期待できないかもしれませんが、子供が好きだという人にとっては、やりがいのある職場でしょう。求人が少なく人気が高い転職先となると、個人で探すのは難しいのが現状です。色々な条件を考慮した上で乳児院への転職を決めたのであれば、やはり看護師求人サイトへの登録が良いのではなかと思われます。ご自分の条件や要望を提示して希望に合ったところを紹介してもらえます。
6、乳児院での勤務
乳児院は24時間体制で運営されているため、一般病院と基本的には一緒ということになります。基本的には1日の労働時間は8時間ですが、シフト勤務(日勤、夜勤の交代制)を採用しています。小さいお子さんがいる等、家庭との兼ね合いを考えると仕事と家庭を両立させていくことは難しい職場であると言えます。基本的には各勤務帯につき看護師は一人であるため、急に休むことができないためです。「夜勤が厳しい」という場合には、転職サービスを利用して日勤専従の乳児院看護師を探してもらうのも一つの方法です。
7、看護師として働くメリット・デメリット
どのような職場で働くにしても良い面とそうでない面があります。病院と乳児院とではどのような面でメリット・デメリットがあるのでしょうか。これらについても知っておくと転職活動をする際や働き始めてからの参考になるでしょう。
- 病院で働く時のような過度なストレスがない
・健康管理がメインの仕事であるため命に直接関わるような処置を行うことがありません。しかし、何が起こるかわからないのが子供です。子供達の様子についてはきちんと把握しておくことが必要です。特に重症心身障害児を預かっている施設では、迅速な対応が求められるため観察力や状況に応じた判断力がなくてはなりません。
- 子供達の成長を日々感じ取れる
・親代わりとなって養育する場であるため、子供達が日々成長していく姿を直に見て感じられるところに喜びとやりがいがあるのではないでしょうか。
- 給料が少なめ
・先にもご紹介したように、給料は病院勤務に比べると少ないのが現状です。
- 看護師の募集求人が少ない
- 各勤務帯につき看護師は一人である
まとめ
私たち看護師は、乳児院では基本的に健康管理や発育状況などに注意を払って日常生活援助を行っていく必要があります。施設には寝室・病室・観察室・日光浴室などを設けることが義務付けられています。子供の成長に合わせた各職種からの関わりや援助を行い、愛情を持って子供達と接していくことで健やかな発育、社会への適応性を養うなどの自立支援に取り組んでいくことが大切です。
参考文献
社会的養護の施設等について(厚生労働省)
乳児院での保育実践における看護ニーズの検討(川崎医療福祉学会誌Vol18 No2 383-392|若井和子 小河孝則|2009年)
社会的養護の現状 (1)施設数、里親数、児童数等(児童家庭福祉の動向と課題 139ページ|厚生労働省雇用均等・児童家庭局|2017年4月25日)
1983年生まれ。宮城県石巻市出身。正看護師歴10年。看護短大を経て、仙台市立病院の小児科で勤務。その後、小児科での経験を生かし、保育園看護師として同市内の保育園に就職。現在は1児のママとして、育児の傍らWEBライター・ブロガーとして活動している。
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