療養型病院の看護師の役割・仕事内容、求人選びの4ポイント(2017/10/31)
療養型病院で働く看護師の役割や具体的な仕事内容、やりがい、求人選びのポイント、療養型病院の看護師の実態を知るための看護研究をまとめました。療養型病院で働いてみたい人は、ぜひ参考にしてください。
目次
1、療養型病院の看護師の役割
療養型病院は急性期病院のように入院日数が決まっているわけではないので、数ヶ月以上、場合によっては年単位で患者が入院していることが特徴です。また、寝たきりで意識レベルが低い患者も少なくありません。このような特徴がある療養型病院の看護師の役割は3つあります。
■その人らしさを支える
療養型病院の患者はADLが低く、意識がなく寝たきりであることも少なくありません。また、意識があっても、長期にわたる入院生活の中で自分らしさを維持するのは難しいこともあります。看護師は患者の自分らしさが保てるようなケアを行っていかなくてはいけません。
■意思決定を援助する
療養型病院では長期入院は可能でも、一生そこに入院するわけではありません。自宅へ戻ったり、転院したり、介護施設へ移動することを考えていく必要があります。
そのような時に、看護師は患者と家族が後悔しない意思決定ができるように支援していかなければいけません。
■異常の早期発見
療養型病院の患者は状態が安定しているものの、意識がなく自分で症状を訴えることができない人も多いです。また、状態が安定しているがゆえに、ちょっとした変化があっても見逃されやすいので、看護師は患者をしっかり観察し異常の早期発見に努めていく必要があります。
■家族への支援
患者の家族は、患者の長期療養を支えていくことに疲労を感じているケースが少なくありません。また、経済的な負担も大きいです。看護師は家族と密にコミュニケーションをとって社会資源を紹介したり、MSWへつなぐ役割があります。
■介護士への指導
療養型病院では介護士(看護助手)が働いています。介護士は、国家資格である介護福祉士の資格を持っている人もいますが、介護職員初任者研修(ホームヘルパー2級)を受けただけの人も多いです。看護師は、介護士へ褥瘡予防や食事介助の注意点などを指導していく必要があります。
2、療養型病院の看護師の仕事内容の特徴
療養型病院の看護師の仕事内容の特徴を3つ説明していきます。いろいろな職場の看護師の仕事内容と比べてみると、違いがよくわかると思います。
■ルーティンワークが多い
療養型病院の患者は状態が安定しているので、急性期のような急変があることは少ないですし、手術や緊急検査もありません。そのため、ルーティンワークが多くなります。
1.バイタルサインを測る
2.清潔ケアと同時に皮膚処置をする 3.経管栄養を投与する 4.食事介助をする 5.内服薬を投与する 6.痰の吸引をする |
このような仕事を毎日繰り返し行っていきます。
■日常生活援助(介護業務)が多い
療養型病院には介護士がいますが、看護師も清潔ケアやオムツ交換、食事介助などの日常生活援助(介護業務)を行います。軽症な患者は介護士が対応し、人工呼吸器がついているような患者は看護師が対応することが多いです。
■医療行為は少なめ
療養型病院の患者は状態が安定していますので、採血の頻度は少なく、点滴をする人も少ないです。またそのほかの医療行為を行う機会も多くありません。
3、療養型病院の看護師のやりがい
療養型病院では急性期病院のように、患者さんがメキメキ回復していくわけではありません。基本は現状維持です。また、歩いて退院していく機会も多くありません。そのため、急性期病院のようなやりがいを感じにくいですが、療養型病院には療養型病院なりのやりがいがあります。
■個別性のある看護ができる
療養型病院の患者は入院期間が長いので、1人1人と向き合った看護をすることができます。そのため、個別性を考慮したケアができます。テンプレート通り、クリニカルパスに沿っただけの看護をするよりも、個別性のある看護ができれば、やりがいを感じることができますよね。
■ちょっとした変化に気づく
療養型病院の患者は、意識がなく自分で症状を伝えられません。また、日々の変化もとても少ないのですが、看護師はしっかり患者の状態を把握し、観察することで、ちょっとした変化に気づき、褥瘡や誤嚥を予防できたり、急変を未然に防ぐことができたりします。患者のほんの少しの変化に気づき、それを良い看護につなげることができたら、やりがいを感じることができると思います。他の看護師がやりがいを感じる瞬間を読んでみるとよく分かります。
4、療養型病院の看護師の求人選びの4つのポイント
療養型病院で働きたい看護師のために、求人選びのポイントをご紹介します。療養型病院の看護師求人を探す時の参考にしてください。
■残業時間はどのくらいか
療養型病院での仕事はルーティンワークが多く、イレギュラーな仕事は多くないので、基本的に残業は少なめです。そのため、子育てとの両立もしやすいです。ただ、絶対に残業が少ないと決まっているわけではないので、念のため残業時間を確認してください。
■患者との接し方はどうか
療養型病院の中には、高尚な理念を掲げておきながら、看護師や介護士が患者の前で舌打ちをしたり、ため息をつきながら患者と接するような病院もあります。そのような病院では、個別性のある看護なんてできませんし、そこで働いているだけで嫌な気持ちになります。療養型病院を選ぶ時には、どのように患者と接しているか、どんな看護をしているかを確認しましょう。
■介護士と関係は良いか
療養型病院の中には、看護師と介護士の仲が悪く、険悪な状態のところがあります。療養型病院では介護士の協力がないと仕事がスムーズに進みませんので、看護師と介護士が仲良く協力して仕事をしている病院を選んでください。
■福利厚生はどうか
療養型病院は個人病院など小規模な病院が多く、大病院に比べてボーナスが少ない、子育て支援がない、各種手当が最低限しかないなど、福利厚生が充実していないことが多いです。
ボーナスが少ないと、年収が前職よりも大幅に下がってしまうこともありますので、福利厚生について細かく調べておきましょう。
5、療養型病院の看護師の実情を知るための看護研究
療養型病院の看護師について、さらに具体的に知りたい時には、療養型病院の看護研究を読んでみると良いでしょう。
・医療型療養病床での看取りにおける看護師・介護福祉士の役割(Palliative Care Research 11巻1号 |渡邊千春、栗和田直樹、細貝智恵子、石岡幸恵|2016)
・ 医療療養病床における看護活動の現状と課題および教育支援のあり方(岐阜県立看護大学紀要 第 14 巻 1 号|古川 直美、坪井 桂子、浅井 恵理 他|2014)
・療養病床における看護職と介護職の協働―当事者の認識と評価―(Proceedings16巻|吉岡なみ子|2011年)
・療養型病院における看護職、介護職のリハビリテーションケアの実態(青森県立保健大学雑誌|藤田あけみ、石鍋圭子、川口徹、細川満子、三津谷恵、杉沢利雄|2007年)
これらの看護研究を読むと、具体的な仕事内容や役割などが見えてくると思います。
まとめ
療養型病院の看護師の役割や仕事内容、やりがい、求人選びのポイントをまとめました。療養型病院はバタバタしておらず、比較的ゆとりを持って働くことができますので、子育て中だったり、体力に自信がない看護師さんは療養型病院で働くことをおすすめします。
東京都在住、正看護師。自身が幼少期にアトピー体質だったこともあり、看護学生の頃から皮膚科への就職を熱願。看護学校を経て、看護師国家資格取得後に都内の皮膚科クリニックへ就職。ネット上に間違った情報が散見することに疑問を感じ、現在は同クリニックで働きながら、正しい情報を広めるべく、ライターとしても活動している。
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