看護研修・セミナー受講の意義(目的)と主な開催者について(2022/10/17)
医療に携わる者として、また患者の命を預かる者として、日々の勉強は欠かすことはできません。不適切な看護を提供すると、患者のQOL低下や離床の遅延だけでなく、場合によっては命に関わる問題を起こしてしまう可能性がありますので、自己研鑽も仕事の一部として捉える必要があります。
現在、全国各地で看護におけるさまざまな研修が開催されていますので、新人看護師やブランクのある看護師は特に、積極的に参加し、患者に適切な看護を提供できるよう努めてください。
1、看護研修とは
看護研修とは、看護に関する知識や技術の習得のために行われるもので、形態としては講義やディスカッションを通した「セミナー形式」と、実際に手技に触れる「実施形式」などがあります。
■セミナー形式
セミナー形式では、講義がメインとなりますが、近年ではインターネットの普及に伴い、オンラインセミナーを開催するところが増えてきています。オンラインセミナーであれば、現地に行く必要がないため、忙しい方や大都市以外にお住まいの方にとっては非常に便利なサービスと言えるでしょう。
現地でのセミナーには、講義のほかにもディスカッションで行うものもあります。まだまだ一般的ではありませんが、ディスカッションによりさらに深い情報を得ることができ、また自己主張力やコミュニケーション力を高めることもできます。
■実施形式
実施形式は、臨床における看護技術の習得を目的として開催されます。点滴・採血をはじめとする基本的な看護技術はもちろん、感染症予防のためのカテーテル類の管理や急変時の細やかな対応など、学べる看護技術は多岐に渡ります。
特に不慣れな新人看護師にとっては、非常に重要な研修と言えるでしょう。院内での業務では、先輩看護師が多忙なために教えてくれないということはよくあることです。しっかりと教わることが看護技術の向上には不可欠ですので、特定の看護技術に不安がある方は、積極的に参加するようにしましょう。
2、看護研修を受ける意義
看護研修を受けることの意義には、大きく分けて「知識・技術の習得」「他社・他病院との比較」「自信の獲得」の3つがあります。特に「自信の獲得」は非常に大きな要素であり、自信がつくと業務の効率化はもちろん、患者への負担減や不安がなくなることでのストレス緩和に繋がります。
■知識・技術の習得
看護研修を受けることの最も大きな目的となるのが、知識・技術の習得ですが、特に最新の知識・技術が習得できる点に価値があります。医療の進歩ならびに医療機器の進化に伴い、看護における技術もどんどん変わってきています。一昔前では良しとされていた技術も、数多くの研究を経て、現在では禁忌または準禁忌となるものも存在します。
長年定着している技術、あるいは最新の技術を学びそれを業務に活かすことで、患者によりよい看護を提供することができ、知識の習得においても最新の情報を取得することで、それは看護に活かすことができますので、知識・技術の習得は研修の最も大きな意義であると言えるでしょう。
■他者・他病院との比較
院内での看護業務においては、先輩看護師から後輩看護師に知識・技術を教わるため、ある程度マニュアル化されていますが、それが必ずしも最良の看護とは限りません。時に「これは本当に正しいのか」と疑問に思うこともあるはずです。
看護研修ではグループディスカッションを行うものや、講義の後に話し合いが設けられるものなどがあり、そこでは講義者または受講者と意見交換を行うことができます。他者あるいは他の病院でどのような看護ケアが行われているのかを知る良い機会となり、多くの情報を得ることで看護判断力の構築にも繋がりますので、自分が行う看護ケアの正当性について見つめ直す良い機会になります。
■自信の獲得
思うように看護ケアができないと不安が募り、ストレスとなって重くのしかかりますが、1つの看護技術をスムーズに行えると、それは自信に繋がり、かかるストレス量は必然と軽減していきます。医療に従事するという立場・責任から、看護師のストレス量は非常に大きいものですので、患者のためはもちろん、自分のためにも研修を受ける意味は大いにあります。
2-1、看護研修による学び・気づきの一例
このように看護研修を受けることで、定着している情報・技術または最新の情報・技術が習得でき、また他者との比較による看護判断力の構築、さらには自信の獲得など、さまざまなメリットがあります。
一例として、コミュニケーションにおける看護研修を受講した場合に、得ることのできる知識や技術について以下にご紹介します。
対象との関係の形成 | ・ 非言語的コミュニケーションの意義
・ コミュニケーションの援助的関わり ・ 対象のペースや待つことの重要性 ・ 受容・傾聴・共感の重要性 ・ 基本的コミュニケーション技術の向上 ・ 患者理解の重要性 ・ 信頼関係形成のための基盤づくり ・ 意図的な関わり合いの重要性 ・ 観察の重要性と観察による患者情報の取得 ・ 個別性のあるコミュニケーション技術の向上 |
自身の成長の変化 | ・ 自己分析・自己洞察力の向上
・ リラックスした関わり合い、関係の構築 ・ コミュニケーションにおける自己課題の発見 ・ 自己表現力の向上、自身の不安軽減 |
自己のコミュニケーションに対する気づき(反省点) | ・ 自己中心的、一方的なコミュニケーション
・ 受動的、消極的なコミュニケーション ・ 言語的会話を重視するコミュニケーション手段 ・ 不信感を与える無意識的なコミュニケーション ・ 非尊重的なコミュニケーション |
コミュニケーションは、ベテラン看護師でも困難な看護技術の一つであり、向上には他者の実践例から学ぶのが最も効率的です。ネット上でもある程度、情報を取得することはできますが、コミュニケーションのような専門性の高い技術に関しては特に、研修を通して実践的に学ぶのが効率的であり効果的です。
3、看護研修を受講できる場
看護研修は全国にある看護協会や病院のほかにも、看護に特化した出版社が開催することもあり、いずれも容易に受講することができます。
≪代表的な主催者≫
日本看護協会
(オンデマンド) |
日本看護協会では、インターネット配信研修(オンデマンド)を実施しています。申し込み必須。受講料が無料の講義もあります。 |
東京都看護協会 | 東京都看護協会では、「看護実践」「教育・指導」「マネジメント」の3つのカテゴリーを主体に研修を行っています。受講費は異なりますが、非会員の方でも参加することができます。 |
大阪府看護協会 | 大阪府看護協会では、幅広い分野を取り扱い、また新人から熟練者まで多岐に渡る研修を実施しています。東京都看護協会と同様に、非会員の方でも参加することができます。(会員のみもあり) |
メディカ出版 | 主に臨床における身近で実践的な看護技術についてのセミナーを開催しています。開催地は主に「東京」「大阪」「名古屋」「福岡」と局所的ではありますが、実践的な看護技術を学びたいという方にとってはうってつけと言えるでしょう。 |
日総研 | 日総研では、各領域における看護技術はもちろん、看護記録や病院管理など、幅広いセミナーを開催しています。また、開催地も幅広いため(北海道や沖縄もあり)、大都市以外に住んでいる方も参加しやすいという特徴があります。 |
開催される研修・セミナーの多くは、およそ2~3か月前に申し込み開始となりますが、人気のあるものはすぐに申し込み終了となってしまいますので、参加予定の研修・セミナーの申し込み日はしっかりと確認しておきましょう。
まとめ
看護研修では、さまざまな知識・技術を即座に習得することができます。中には1回の受講に2万前後の費用がかかるものもありますが、その分、得られるものは大きいため、特定の分野に関して不安があるという方は、その分野の研修やセミナーを積極的に受講するようにしましょう。
また、ブランクのある方も積極的に参加してください。看護技術においては、ある程度体に染みついていますが、現役時と比べると技術力は大きく低下しています。
知識においては、1年も経過していれば多くのことを忘れてしまっていますので、復職前に書籍での復習はもちろん、研修やセミナー(および復職支援研修)に参加し、現役に近い状態で復職できるよう準備しておきましょう。
東京都在住、正看護師。自身が幼少期にアトピー体質だったこともあり、看護学生の頃から皮膚科への就職を熱願。看護学校を経て、看護師国家資格取得後に都内の皮膚科クリニックへ就職。ネット上に間違った情報が散見することに疑問を感じ、現在は同クリニックで働きながら、正しい情報を広めるべく、ライターとしても活動している。
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