手術室看護|役割や給料、認定看護師など詳しくご紹介!(2015/05/12)
これから手術室で勤務しようと考えている看護学生や転職を考えている看護師の方のために、業務の内容や給与、求人など、さまざまな観点から詳しく説明していきたいと思います。
勤務先によって良い点・悪い点があるのは当然ですが、手術室勤務の場合、それが顕著であると言えるため、希望する前に全てを知っておきましょう。
目次
1、手術室の看護師について
手術室勤務の看護師は、業務内容や必要なスキルなど、病棟勤務とは異なる点が非常に多く、特殊な仕事と言えます。主な業務内容は「医師の補助」となりますが、円滑に手術が行えるよう、医師が次に何を必要としているのかを察知する能力が必要になります。
また、心臓血管外科や消化器外科、泌尿器科、脳神経外科など全ての診療科目の手術を扱うため、各手術の流れを把握しておかなければいけません。このように、決して簡単な仕事ではないのです。
しかしながら、やりがいが多いのも事実。努力次第では、1年目や2年目でも容易に信頼を得ることができ、優秀な看護師として認知されることも多くあるのです。
1-1、必要なスキル・知識
手術室勤務の場合、手術を円滑に行えるよう、多くの専門的なスキルが求められます。どのようなスキル・知識が必要なのか、下記にて紹介します。
■使用器具や器械の知識
上述したように、診療科目に応じた特殊な器具・器械を扱うことから、それらの名前はもちろん、どのような時に使用するのか、役割は何かなど、熟知しておかなければなりません。場数を踏めば自然と覚えるものですが、初勤務の時に慌てることがないよう事前に覚えておく必要があります。また、医療技術の発展に伴い、新しい器具・器械がどんどん増えていくため、常に勉強する意欲と記憶力が必須となります。
■流れを把握し、次を予測する能力
手術の進行度を見ながら、医師が次に何を必要とするのか予想する能力が問われます。医師が要求した瞬間に差し出すことが不可欠。さらに、「ハサミ」と言われた時には”メッツェン”、”クーパー”、”直剪”なのか、看護師側が判断しなければならないため、確実に手術の流れを把握しておかなければいけません。
■医師や他の看護師との連携能力
手術室においてチームワークは非常に大切で、周りを見る能力「観察力」が問われます。他の看護師がどこにいて何をしようとしているのかを把握するのはもちろん、自分の最善の役割は何なのか等、常に周囲を見ながら適切な行動が必要となります。
■閉鎖空間における総合的な体力
心臓血管外科などの場合、8時間立ちっぱなしということがザラにあります。さらに、閉鎖空間におけるストレスにも耐えなければなりません。手術を行うのは医師ですが、同等の体力・精神力を持っていなくては手術室勤務は勤まりません。
2、手術室における看護師の役割
手術室勤務の看護師は主に「器械出し」と「外回り」の2つの役割が存在します。それぞれの業務は異なるため、各業務がどのような役割を果たすのか具体的に説明していきます。
2-1、器械出しの役割
器械出しは、手術で使用する器具を適切なタイミングで医師に手渡すのが主な役割となりますが、簡単な補佐処置を任されることもあるなど、手術における医師のサポートがメインとなります。
■診療科目に応じた器具の判断
手術前に医師との打ち合わせにより、必要な物品や器具を確認します。術中においては医師の要求する器具を素早く渡すことができるよう配置。緊急時に備えた各器械の準備も看護師の役割です。
■医師への手術器具の手渡し
最も重要な役割となるのが医師へ器具を差し出すことです。必要な器具を要求された時に探すのではなく、あらかじめ予想・判断した上で、瞬間的に手渡すことが必要です。
■術中の減菌状態の保持
術中は全ての物品・器具を減菌状態に保っておかなければいけません。医師のサポートだけでなく、各器具における減菌状態の保持も看護師の重要な役割です。
■器具を用いた疾患部への直接援助
新米看護師には無縁ですが、熟練の看護師の場合は医師から直接的な援助を求められることがあります。
外回りの役割
医師のサポートである器械出しに対し、外回りの役割は手術室全体のサポートとなります。手術における全体像をしっかりと把握しておく必要があるため、主にベテランの看護師が行うことが多いのが特徴です。
■出血量の確認
出血量や出血によるガーゼの枚数のカウント、各種バイタルのチェックも行います。
■輸血の準備・指示
出血量が多い際には、輸血の準備と指示を行います。適切なタイミングで輸血の指示をする必要があるため、豊富な知識と経験が不可欠です。
■術中の体位交換
長時間の手術による褥創の予防や患者さんの負担軽減のため、特殊な手術における体位固定など、負担を軽減した上で円滑に手術ができるよう患者さんの体位交換を行います。
■ライトの調節
疾患部位へのライトの明るさや焦点の調節なども外回りの役割となります。
■薬剤や器械類の補充
手術前に予想される必要な物品や薬剤、器具、器械を準備しますが、進行具合や病態によっては不足品が出てくることがあります。これら不足品を補充するのも役割の1つです。
■看護記録の作成
術中における記録には、執刀医が行う「手術記録」、麻酔医が行う「麻酔チャート」、そして看護師が行う「看護記録」があります。出血・輸血量や体位など、看護師として行ったデータを記録し、手術後に病棟へ渡します。
⇒看護記録の構成・SOAP / POSの書き方、法に基づく保存期間
■術前・術後訪問
手術を受ける患者さんの不安を少しでも解消できるようメンタルケアを行い、術後にはアフターケアを行います。術中だけでなく手術全体を通したマネージメントが、器械出しと大きく異なる点と言えます。
3、手術看護における認定看護師
日本看護協会が行う認定看護師の中に「手術看護」分野が存在します。2015年時点では約320人が当該分野において認定を受けていますが、特殊な分野であるため、他と比べると未だ認定人数が少ないのが現状です。
しかしながら、手術看護における認定看護師の必要性は年々高くなっており、手術室勤務においてのエキスパートとして、多くの病院が求めているため、キャリアアップを目指すなら是非とも認定を受けたい資格です。
3-1、手術看護分野における役割
まず、認定看護師としての役割には「実践」、「指導」、「相談」の3つがあります。これは、全分野において共通した役割であり、患者や家族、看護師に対する指導や相談などコンサルテーション業務も加わることで、高度な看護知識と熟練の技術をもとに質の高い看護ケアを提供することを役割としています。
実践 | 特定の看護分野において、個人、家族及び集団に対し、熟練した看護技術を用いて水準の高い看護を実践する。 |
指導 | 特定の看護分野において、看護実践を通して看護者に対し指導を行う。 |
相談 | 特定の看護分野において、看護者に対しコンサルテーションを行う。 |
≪手術看護分野における役割≫
続いて、手術看護分野にのみ特化した役割を紹介します。「器械出し」や「外回り」はもちろんのこと、患者さんの安全管理や手術全体を通したケアに加え、他看護師の育成・指導など、幅広く効果的に実践することが手術看護における認定看護師の役割となります。
徹底した安全管理 | 手術侵襲を最小限に抑え、二次的合併症を予防するために、体温・体位管理、手術機材・機器の適切な管理など、徹底した安全管理を行います。
|
手術全体を通した看護ケア | 周手術期(術前・中・後)における継続看護を行い、術前には患者さんに対する的確なメンタルケア、術後間もなくは病棟看護師と連携した上で、総合的に看護ケアしていきます。 |
他の看護師の指導 | 全ての分野共通の役割にあるように、手術看護においても指導は大きな役割を担っています。手術を安全かつ円滑に遂行できるよう、また、周手術期における効果的な継続看護ができるよう、他の看護師に指導を行います。 |
3-2、認定看護師になるためには
手術看護における認定看護師になるためには、特定の教育機関で6か月以上(615時間以上)の研修を受けなければなりません。研修が終了すると、認定看護師試験を受けることができ、それに合格すれば晴れて認定看護師になることが出来ます。
≪研修における入学条件≫
①保健師、助産師、及び看護師のいずれかの免許を保有していること
②実務経験5年以上(うち3年以上は手術看護の経験)
③現在、手術看護部門で勤務していることが望ましい。
≪手術看護の教育機関≫
都道府県 | 教育機関名 |
東京都 | 東京女子医科大学 |
福井県 | 福井大学 |
兵庫県 | 学校法人 兵庫医科大学 |
≪認定看護師試験≫
上記の教育機関で実施される教育過程を終えた後、認定看護師試験を受けることができます。試験内容は経験に基づいた基本的な問題が多いため、そこまで難しくはないものの、教育過程をしっかりと受講しておく必要があります。
4、手術室勤務の求人
手術室勤務の看護師の求人の絶対数は、病棟や外来などと比べて少ないのが特徴です。しかしながら、看護師不足である上、特殊な仕事であることから、手術室勤務を希望する看護師数より求人数の方が多いため、人気の病院でない限り採用は確実と言えるでしょう。
また、覚えることが非常に多いため、新卒や若い人の方が採用されやすいという特徴もあります。病院によって、日勤のみ、交代制など勤務形態が異なり、常勤・パート・契約社員といったように雇用形態も異なるため、よく確認しておきましょう。
4-1、手術室勤務のメリット・デメリット
≪メリット≫
■スキルアップに繋がる
病棟では経験することが出来ない解剖の知識、器具・器械の知識、観察力・洞察力、精神力・体力など、手術室は看護師としてスキルアップを図るのに最適な場と言えます。もちろん、病棟に移った後もこれらのスキルは必ず役に立ちます。
■残業がない
手術室勤務の場合、多くは残業がなく日勤となるため、規則的な生活を送ることが出来ます。それゆえ、子育てしながら働くということも可能です。
■基本給が高い
後述しますが、年収という観点からみれば病棟勤務とほぼ同額と言えます。しかしながら、病棟勤務は残業手当により年収が高くなっているのに対し、手術室勤務は残業がなく(または少ない)ほぼ年収が同額なので、基本給そのものが高く設定されているのです。もちろん、病院によって異なりますが、比較的良い給与条件だと言えます。
≪デメリット≫
■オンコールがある
手術室勤務の懸念点となるのがオンコール。土日祝日に24時間のオンコール体制をとっている病院は多く、オンコールが入ると休日を返上して出勤しなければいけません。病院の規模や看護師数によって異なりますが、オンコールは平均して月に3回程度とみていいでしょう。
■精神的ストレスが多い
患者さんの命を預かる立場にあるため、緊張感があり罵声が飛び交うこともあります。それゆえ、精神的なストレスは必然とのしかかってきます。これが原因となって辞めていく看護師は少なくありません。
■コミュニケーションが少ない
密閉された手術室においては、患者さんとコミュニケーションをとる機会がほとんどありません。それゆえ、話すことが好きな人にとっては大きなデメリットと言えるでしょう。しかしながら、話すことが苦手な人にとってはメリットとも言えます。
4-2、手術室勤務の給料・年収
手術室勤務と病棟勤務では、年収に大きな差はありません。看護師の平均年収は約470万であり、病棟勤務の場合も同等と言えます。ただし、年収の中で大きな割合を持っているのがオンコールであるため、日数が少ない場合には平均年収を下回ることもあります。
オンコールの場合、土日祝は24時間体制をとっているため、待機料という名目で出勤の有無に関わらず2000円~4,000円が支払われます。休日に出勤した際には超過勤務扱いとして実働分が支給されます。
このように、オンコールの日数によって年収が上下しますが、看護師の平均年収分はもらえると考えてよいでしょう。ただし、約470万というのは全看護師に対する平均であるため、新卒や経験が浅い方はこれよりも安くなります。
4-3、求人探しのポイント
何をもって勤務先を選ぶかによって求人探しのポイントは変わってきますが、手術勤務の場合、「年収」、「オンコール・日直の回数」、「診療科目数」がポイントとなるのではないでしょうか。病院によって条件は様々ですが、基本的には病院の規模によって、下記のような特徴があるため、これらを基に求人を探してみてはいかがでしょうか。
≪大規模病院≫
|
≪中小規模病院≫
|
特にオンコールや日直に関しては、求人情報欄には詳しく記載されていないケースがほとんどであるため、応募もしくは面接の際に尋ねてみることをお勧めします。
まとめ
手術室勤務は少し特殊な労働環境であり、病棟勤務と比べて体力・ストレスの負担は大きいと言えます。しかしながら、残業が無い(少ない)という点や、スキルアップという点では非常に有意義な仕事であるのも事実です。
手術室で働きたい看護学生や転職を考えている看護師の方は、当ページに記載してある手術室勤務の概要をしっかりと踏まえた上で、希望の勤務条件にあてはまる求人にどんどん募集していきましょう。
jdepo福岡県福岡市在住、看護師歴8年。福岡市内の一般病院でICUとして2年、手術室看護師として6年就業。現在はツアーナースとして各地で看護業務を行いながら、九州各地の病院・クリニックへの取材、ライター活動などを行っている。
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