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PCA(自己調節鎮痛法)の看護|ポンプ使用方法と使用薬剤の副作用・管理(2017/08/28)

公開日: : 最終更新日:2020/09/06 北海道 看護技術 全科共通 

PCA看護

癌や術後の疼痛を患者自身がオピオイドなどを調節して使用する、PCA(自己調節鎮痛法)をご存知でしょうか。PCAとはどういう目的で、どんな機器や薬品を使用して行うのか、また看護師がどのように管理に関わるべきかお伝えします。

 

1、PCA(自己調節鎮痛法)とは

PCAはPatient Controlled Analgesiaの略で、自己調節鎮痛法と呼ばれています。従来は術後や癌による疼痛が発生した場合、入院患者はナースコールを押すかナースステーションに行って担当看護師に痛みを伝え、それから看護師が医師の指示を確認して頓服やレスキューを用意するという流れでした。常に十分な看護師数を確保している医療機関は少なく、特に準夜帯の看護師はオペから帰室した患者のチェックや、夕食の介助、そして寝たきり患者の体位交換や経管栄養管理など、バタバタしています。そのような中で、患者が看護師に遠慮することなく痛みを伝えることはなかなか難しいことですし、看護師としても訴えを聞いてからすぐに対応できるとは限りません。

 

疼痛は患者にしかわからないことですし、感受性も人それぞれ違います。また、在宅でのペインコントロールは内服や貼付剤によるものが主で、自分の使いたいタイミングに静脈内投与を行うことは困難でした。そのため、ペインコントロールのために入院が必要になるなど、できるだけ自宅での生活を望むターミナル期にある患者のQOLとしては十分ではありませんでした。

そこで、患者自身が自分の疼痛の程度に応じて鎮痛剤を使用する方法であるPCAが導入されたのです。海外では1970年代に既に開始されていましたが、日本では近年ようやくPCAに関する知識の普及とポンプの開発により、医療現場で導入されるようになりました。

 

1-1、PCAのメリットとデメリット

PCAは、医師や看護師に気兼ねすることなく、夜間でも自分が痛みを感じたときすぐに薬剤を使用することができることが最大のメリットです。他にもどのようなメリットがあり、反対にどのようなデメリットがあるのでしょうか。

 

<PCAのメリット>

・看護師に遠慮せずに鎮痛剤を投与できるので、疼痛を我慢する必要がない。

・専用機器(PCAポンプ)によって、迅速に安全に鎮痛剤を投与できる。

・使用した薬剤の量や時間から、ペインコントロールを評価できる。

・処置や体動・リハビリなどの前に、予防的に鎮痛剤を使用できる。

・静脈・硬膜外投与によって、経口投与より高い鎮痛効果が得られる。

訪問看護師や往診医師・薬剤師・MEなどと連携をとることで、在宅での緩和ケアにも使用できる。

・看護師の業務負担が軽減される。

・忙しい中でのオピオイドなどの取り扱い回数を減らし、薬剤を安全・確実に投与できる。

 

<PCAのデメリット>

・患者本人の理解度や認知機能によっては、過剰に鎮痛剤を使用してしまう。

・痛み以外の理由によってボタンを押した場合も、鎮痛剤が投与されてしまう。

・専用機器(PCAポンプ)を常に身に付けていなければならない。

・長期の使用は、感染源となりうる。

・専用機器に慣れるまで、スタッフの教育が必要。

 

2、PCAのポンプ使用方法

PCAを行う際には、専用の機器が必要となります。通常のシリンジポンプと違い、PCAポンプには下の3つの機能が付いています。この機能のおかげで、オピオイドなどの厳格な管理が必要な鎮痛剤の使用を、患者自身に任せることができるのです。

 

<PCAポンプの例>

出典:PCAポンプ アイフューザープラス(JMS)

 

<PCAポンプの機能>

①持続投与機能 患者がボタンを押さなくても、常に一定量を投与する。血中濃度を常に一定以上に保ち、睡眠中や作用時間の短い薬剤でも効果が切れるのを予防する。
②ボーラス投与機能 疼痛を感じたときにボタンを押し、一定量をボーラスする。
③ロックアウト時間機能 過剰投与にならないようにするため、前回投与時間との間隔をおく。この時間帯はボタンを押しても鎮痛剤は投与されない。

 

医師があらかじめ薬剤と共に以下を設定します。

①1時間あたりの持続投与量、

②1回のボーラス投与量、

③ロックアウト時間

患者は疼痛を感じたとき、これから疼痛の生じる動作をするとき、または疼痛の増悪する時間帯のわかっている場合は事前に患者自身がボタンを押してオピオイドなどの鎮痛剤をボーラス投与することができます。

 

3、PCAの使用薬剤・副作用

3-1、PCAの使用薬剤

PCAに使用される薬剤は主に、硬膜外投与の場合は局所麻酔とオピオイドの併用、静脈投与の場合はオピオイドとなっています。麻薬は麻薬及び向精神薬取締法で指定された薬品のことを指し、全てのオピオイドが麻薬ではありませんが、下にあるモルヒネとフェンタニルは医療用麻薬なので、厳重な管理が法令で定められています。通常なら入院によって金庫保管が義務付けられていて厳重管理のもとで投与されるオピオイドを、PCA機器によって自宅に持ち帰ることができるようになったのです。

 

<PCAの使用薬剤>

〇局所麻酔薬

・リドカイン

・メピバカイン

・ブピバカイン

〇オピオイド

・モルヒネ

・フェンタニル

 

3-2、副作用

PCAにはオピオイドを使用するため、どうしても副作用が出現します。主なオピオイドによる副作用は下の通りです。PCAは静脈か硬膜外に投与されることが多いのですが、末梢神経ブロック、皮下投与といったルートもあります。投与方法によって生じる作用効果や手技による有害事象は違いますので、それぞれに対する観察が必要です。

 

<PCA薬剤による副作用>

・呼吸抑制

・傾眠

めまい

・振戦、悪寒

・口渇

掻痒感

イレウス

・悪心、嘔吐

頭痛

便秘下痢

血圧低下

・神経損傷

排尿障害尿閉

 

4、PCA 看護管理

看護師は、PCAポンプによって確実に鎮痛剤が注入されており、患者の疼痛コントロールが良好に保たれていることを確認する必要があります。そのためには、PCA機器が正常に稼働していることを確認し、カテーテルの閉塞や屈曲がないように管理することが求められます。PCAの使用薬剤による副作用症状が現れていないか観察し、早期に発見するように努めなければなりません。また、薬剤だけではなく硬膜外投与中においては感染や硬膜外血腫による症状の有無にも注意が必要です。

 

<PCAの患者の管理・観察点>

■確実に薬剤が投与されているか確認する。

①カテーテルの固定が確実にされているか確認し、適宜固定テープを張り替える。

②漏れやチューブの閉塞・屈曲の有無を確認する。

③カテーテル挿入部の皮膚の状態を観察する。

④薬剤の残量と使用量を確認する。

⑤ポンプの設定、正常な作動を確認する。

 

■疼痛コントロールの状態を客観的に把握する。

①疼痛の部位や程度を、ペインスケールを用いて表してもらう。

②どの時間帯、どのような動きによって疼痛が増悪するか把握する。

③持続投与量に対し、ボーラス投与している回数・時間帯などのデータをとる。

④①~③から、患者・医師・薬剤師と共にペインコントロールの評価・修正す

 

■薬剤による副作用、カテーテル挿入や漏れによる有害事象がないか確認する

 

まとめ

疼痛は、我慢する必要はありません。疼痛ケア・緩和ケアは治療のどの段階においても必要なケアですが、実際は病状が進行して積極的治療が困難となった時点で緩和ケアに移行することが多く、理解度は医療機関・医師によってまだまだ差があります。PCAが日本国内どこでも同じレベルで提供されるには時間がかかりそうですが、患者の疼痛を軽減して療養生活をよりよくするものであることは確かです。

 

参考サイト

PCA 法について(JMS)

PCA説明会(名古屋市立大学大学院医学研究科麻酔科学集中治療医学分野|除民恵|2011年)

PCA(Patient Controlled Analgesia:自己調節鎮痛法)について(亀田グループポータル|2008年)

岡本麻衣 看護師

1986年生まれ。北海道札幌市出身・在住。同市内の看護学校を卒業後、北海道大学病院の内科で2年勤務。その後、同市内の個人病院で6年間勤務し、結婚・出産を機に離職。現在は育児をしながら、看護師としての経験を生かし、WEBライターとして活動中。

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