【2024年最新】IgA血管炎の看護|原因や症状、ガイドラインや看護ポイント(2021/02/26)
あなたはIgA血管炎という疾患について、正しい知識を持っていますか?今、IgA血管炎の患者さんを受け持つことになったら、適切な看護ができるでしょうか?
IgA血管炎の基礎知識とガイドラインによる治療、IgA血管炎の看護のポイントをまとめましたので、実際の看護の参考にしてください。
1、IgA血管炎とは
IgA血管炎とは、紫斑、関節痛、腹痛、腎障害を主症状とするIgAが関与する全身性の小型血管炎です。一昔前はヘノッホ・シェーンライン紫斑病、アナフィラクトイド紫斑病、アレルギー紫斑病と呼ばれていた疾患です。
IgA(Immunoglobulin A=免疫グロブリンA)とは、粘膜表面に分泌されて消化管や気管での生体防御に関与する抗体の一種です。このIgAを含む免疫複合体が小血管に付着することで、炎症を起こします。
IgA血管炎は小児に多いという特徴があります。3~10歳が好発年齢であり、約半数は5歳以下で発症します。年間10万人当たり10~20人が発症し、男女比は1.5~2:1となっていますので、男児の方がやや多い傾向があります。
また、冬に発症することが多く、夏は発症例が少ないという特徴があります。
1-1、IgA血管炎の症状
IgA血管炎の症状は、紫斑・関節炎・腹痛・腎炎の4つがあります。
■紫斑(頻度100%)
下肢、特に足関節を中心に、触れることができて少し盛り上がりがある紫斑が両側性対称性に出現します。最初は小さな蕁麻疹のような発疹ができ、紫斑以外にも丘疹・膨疹・紅斑・血管性浮腫などが現れることがあります。
また、下肢だけではなく、体幹や上肢、全身に及ぶことがあり、成人の場合は壊死性や出血性の紫斑になることが多いです。
紫斑は3~10日程度続きます。
■関節炎(頻度80%)
関節炎もIgA血管炎の主な症状です。足関節や手関節、膝関節、肘関節などに痛みが生じます。基本的には両側性であり、痛みのために歩行が困難になることもあります。
■腹痛(頻度60%)
血管炎の消化器壁の出血と浮腫によって、腹痛や嘔吐、血便、下血の症状が現れます。また、腸重積症や腸管穿孔、イレウス、壊死性腸炎、大量下血、腸管虚血、蛋白漏出性胃腸症など重症化することもあります。
■腎炎(頻度50%)
尿蛋白や血尿が見られます。腎炎やネフローゼ症候群を発症することもあります。腎炎やネフローゼ症候群を発症すると、高血圧や浮腫、頭痛などの症状が現れることもあります。
成人の糸球体腎炎の中で、IgA血管炎が原因のものは、0.6~2%とされています。1)
IgA血管炎の予後は比較的良好ですが、成人の場合は腎障害を残すことがありますので注意が必要です。
■限局性浮腫
IgA血管炎では限局性浮腫も生じます。頭部や顔面、背部に疼痛を伴う大きな浮腫が現れます。疼痛はあるものの、発赤はないことが特徴です。
1-2、IgA血管炎の原因
IgA血管炎は明確な原因はまだ分かっていませんが、IgAが関与する免疫複合体病と考えられています。
小児の場合、約半数が先行感染として上気道炎(扁桃炎)の既往があることがわかっています。先行感染の上気道炎の病原体には、次のようなものがあります。
・A群溶連菌
・ブドウ球菌
・マイコプラズマ
・水痘ウイルス
・肝炎ウイルス
・麻疹ウイルス
・風疹ウイルス
・アデノウイルス
先行感染からIgA血管炎発症までの期間は1~2週間とされています。
特に、β-溶連菌の感染がIgA血管炎の発症の引き金になることが多く、IgA血管炎の30~50%でβ-溶連菌の先行感染が認められています。²)
このほか、薬剤アレルギーや悪性腫瘍、食物なども原因になることがあります。これらの病原体や物質はIgAと結合する抗原と考えられています。IgAと抗原が結合した免疫複合が血管の壁に付着し、炎症反応が生じてIgA血管炎を発症します。
2、IgA血管炎のガイドラインと治療法
IgA血管炎の治療方法は日本循環器学会の「血管炎症候群の診療ガイドライン(2017年改訂版)」でエビデンスに基づいたものが示されています。
ガイドラインによるとIgA血管炎に対する特別な治療法はなく、安静を保ち、症状に応じた対症療法を行うことになります。
IgA 血管炎に対する特別な治療はない.安静を保ち症状に応じて対症療法を行う.食物,薬剤などの原因が明らかな場合はその原因物質を避ける.
・関節痛:非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
・皮膚症状:抗ヒスタミン薬
・腹部症状:ステロイド
・腎症状:ステロイドや抗血小板薬、免疫抑制剤
これらの治療法が主に用いられます。
IgA血管炎では、なぜ安静が必要なのでしょうか?それはIgA血管炎で急性期に動くと、紫斑が悪化することがあるからです。症状が紫斑のみであれば、厳しい安静は必要ありませんが、IgAは安静が基本になります。
また、日本皮膚科学会も「血管炎・血管障害診療ガイドライン 2016 年改訂版」の中で、IgA血管炎の治し方をアルゴリズムで示しています。
腎症の有無、消化器症状の有無、関節症状の有無で治療方法を分けています。
IgA血管炎はどれくらいで治るのでしょうか?IgA血管炎は4週間程度で症状が治まりますし、基本的に予後は良好です。80~90%は適切な治療によって寛解します。しかし、稀に数年間にわたり再燃を繰り返して、末期の腎不全に陥ることもあります。
3、IgA血管炎の看護の7つのポイント
IgA血管炎の患者に対して適切な看護ができるように、看護のポイントを押さえておきましょう。
■異常の早期発見
IgA血管炎ではバイタルサインを含め、全身状態をしっかり観察しましょう。IgA血管炎では腸重積症や腸管穿孔、イレウス、壊死性腸炎、大量下血など緊急手術が必要になるほどの重篤な症状が現れることがあります。また、急性腎炎やネフローゼ症候群が悪化するリスクもあります。
そのため、看護師は患者の全身状態を観察し、異常の早期発見に努めなければいけません。
IgA血管炎は5歳未満の小児に多い疾患です。小児は自覚症状があっても、それを言語化して伝えることが難しいです。また、症状が増悪する時のスピードは成人よりも速いことが多いです。看護師は患者の変化・バイタルサインなどを注視し、注意を払う必要があります。
■ステロイドの副作用に対する看護
IgA血管炎ではステロイド薬を用いることが多いです。腎炎が悪化している場合は、ステロイドパルス療法を行うこともあります。
ステロイド療法を行うと、次のような症状が出てくることがあります。
・満月様顔貌(ムーンフェイス)
・中心性肥満
・多毛
・ニキビ
・高血糖
・高血圧
顔が丸くなったり、お腹が出て、ニキビができやすくなるなど外見上の変化が出てくることがありますので、患者にはこれはステロイド使用によるものであり、ステロイドを減量できれば元に戻ることを説明しましょう。
また、高血糖や高血圧、脂質異常症などが現れますので、バイタルサインや血液検査などの変化にも注意が必要です。
■疼痛コントロール
IgA血管炎では80%の頻度で関節炎が現れます。関節炎によって、歩行困難になり、ADLが低下することがあります。看護師はペインスケールなどを用いて、患者の疼痛を的確に把握し、NSAIDsの適切な投与や安楽な体位などで、疼痛をコントロールしていきましょう。
患者に痛みは我慢する必要はないこと、痛み止めを使えることはきちんと説明しておく必要があります。
■感染予防のための看護
IgA血管炎では免疫抑制剤やステロイド薬の使用で、易感染状態になります。
看護師はスタンダードプリコーションを徹底するのはもちろんですが、患者や家族にも手洗いなどの感染予防法を指導するようにしてください。
■衣類の調整
IgA血管炎では下肢を中心に紫斑が現れます。紫斑は下着や靴下、ズボンのウエスト部分などの締め付けによって増強することがあります。
そのため、看護師は患者の衣類を調整し、締め付けの少ないものを家族に用意してもらうなど、紫斑が強く出ないように注意しましょう。
■適切な情報提供
IgA血管炎の患者と家族は、強い不安を抱いていることが多いです。突然、紫斑が出て、動くのが辛いほど関節が痛くなり、腹部症状が出て、しかも原因は不明となれば、不安になるのは当然のことです。
だから、IgA血管炎の患者と家族には適切な情報提供をし、必要であれば、何度でも医師に病状説明(インフォームドコンセント)をしてもらうように調整してください。
また、なぜ安静が必要なのか?なぜステロイド療法を行うのか?などを説明しておくと、積極的に治療に参加してもらえるようになりますので、その意味でも適切な情報提供は重要になります。
■家族への看護
IgA血管炎は小児に多い疾患です。子どもが入院すると、付き添いが必要になることも少なくありません。そして、家族の疲労・ストレスはどんどん蓄積していきます。
看護師は家族の疲労・ストレスを考慮し、家族の安心と満足が得られる入院環境を調整し、家族へのケアを行っていく必要があります。
まとめ
IgA血管炎の基礎知識や症状・原因、ガイドラインや治療方法、7つの看護のポイントをまとめました。
IgA血管炎の発症率は10万人当たり10~20人ですので、患者はあまり多くありませんが、看護師として適切な看護・より良い看護ができるように、正しい知識を身に着けておきましょう。
参考文献
1)IgA血管炎|大阪大学大学院医学系研究科 呼吸器・免疫内科学
2)血管炎・血管障害診療ガイドライン 2016 年改訂版|日本皮膚科学会
・血管炎症候群の診療ガイドライン(2017年改訂版)|日本循環器学会
1983年生まれ。宮城県石巻市出身。正看護師歴10年。看護短大を経て、仙台市立病院の小児科で勤務。その後、小児科での経験を生かし、保育園看護師として同市内の保育園に就職。現在は1児のママとして、育児の傍らWEBライター・ブロガーとして活動している。
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