ナースのヒント
いまさら聞けない!看護用語

【ダブルチェック看護まとめ】方法、意味、医療安全(2015/12/09)

公開日: : 最終更新日:2020/06/05 看護用語 東京都 全科共通 

ダブルチェック

ダブルチェックとは、その名の通り「二重に確認すること」をいいます。医療システムが発達して、機械に頼る業務が増えたとしても、結局は以前から実行されてきたアナログ方式での確認業務が、医療事故の防止には欠かせません。

看護師は、医療施設内において、医療行為や与薬業務などを行う最終提供者です。医療機関で従事する看護師として、常に人の命に影響を及ぼす医療行為や与薬業務を行っている現場であることを認識して取り組まなくてはいけません。

私達看護師は、ミスが起きない様に実施直前にダブルチェックを行って、安全性と確実性を確認することが大切です。

 

1、ダブルチェックの有効性

2人で同じものをチェックする事で、確実にミスの回数は減少します。例えば1人で100回に1回ミスをするとします。

これに同じミスの頻度のもう1人が加わり、ダブルチェックを実施すると、ミスの頻度は100回に1回から、10,000回に1回へと激減するのです。

この、エラーの頻度の低下こそダブルチェックの有効性であり、何故ダブルチェックが必要であるのか、といった理由なのです。

 

2、ダブルチェック機能が低下する問題点2つ

しかし、非常に有効に活用できるはずのダブルチェックにも問題点があります。

問題点の1つは、2人で確認作業をすると「ベテランの人がチェックしてくれているから大丈夫だろう」といった相手への依存や思い込みが出てしまうこと。こうなるとダブルチェックの効果は低下してしまいます。ダブルチェックを行う2人は、依存心なくお互いに独立して確認をしなければなりません。

問題点のもう1つは、ダブルチェックを実施する看護師が、チェックするだけの能力を持ち合わせているか?ということ。ダブルチェックを行う場合、なぜ、なんのために?とチェック項目やチェックすることの意味を考え、充分に理解して実施しないと、機械的なチェックになってしまい、その有効性は低くなります。

薬剤の知識、効果、副作用といった情報から、投与する患者の病態の知識まで理解して、チェックできる能力を持っていなければ「違っているのでは?」と声に出すことは出来ません。

ダブルチェックを実施したけれど、ヒヤリハットになった、インシデントに至ってしまったという場合は、これらの問題点を見なおしてみるのも必要かもしれません。

 

3、ダブルチェックの方法

ダブルチェックの方法にも色々ありますが、2人で同時にチェックを行うドリル式と、2人が時間差でチェックするリチェック式の2つが代表的なものです。

どちらの方法で行うにしても、2人で声を出しあって、指先確認をしながら実施します。声に出して確認し、チェックをしたと第3者に伝えることでチェックの意識を高め、責任や行為を明確にします。

 

4、ダブルチェック定着の為の体制作りが成功のカギ

有効性の高いダブルチェックですが問題点もあります。それは、2人で行うため仕事量が増えてしまうということ。みんな忙しく走り回っている中、輸液の薬剤確認に人を捕まえるのが難しい場合も往々にしてあります。

そういった点を払しょくするために、効率的で有効なダブルチェック体制を作り上げることや、定着させる事が必要になります。例えば、

  • マニュアルを作って方法を統一する。
  • ダブルチェックを実施するケースや範囲を決める。
  • ダブルチェックのトレーニングを行い、スタッフの意識改革をしていく。
  • 看護師間だけではなく、患者さんやその家族の方にも名前を確認してもらうなど、参加していただく。

といった工夫を積極的に取り入れていきましょう。

個人個人の意識がもちろん不可欠なダブルチェックですが、忙しい中であっても、ダブルチェックの為の時間を効率よく取れる環境づくりも重要です。

山岸愛梨 看護師

東京都在住、正看護師。自身が幼少期にアトピー体質だったこともあり、看護学生の頃から皮膚科への就職を熱願。看護学校を経て、看護師国家資格取得後に都内の皮膚科クリニックへ就職。ネット上に間違った情報が散見することに疑問を感じ、現在は同クリニックで働きながら、正しい情報を広めるべく、ライターとしても活動している。

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

ナースのヒント の最新記事を毎日お届けします

こちらの記事もおすすめ

在宅酸素療法の看護 看護計画

在宅酸素療法の看護計画|HOTの指導・管理・適応基準と4つの注意点

酸素吸入は医療現場のみならず、近年在宅で酸素を使用する患者さんが増えています。低酸素血症が持

記事を読む

看護用語

クレブシエラ属とは?クレブシエラ属の原因や症状・治療法を解説

院内感染の原因菌にはいろいろなものがありますが、その中の1つにクレブシエラ属があります。「ク

記事を読む

帝王切開(カイザー)の看護 看護用語

帝王切開(カイザー)の手技・麻酔リスクと術前~術後の看護

経膣分娩が困難な場合の代替処置として行われる帝王切開。医療技術の進歩に伴い、帝王切開による死

記事を読む

看護用語

CRT(心臓再同期療法)の看護|適応や4つの看護ポイント

CRTとは心室を同時にペーシングすることで、重症心不全で低下したポンプ機能を改善する治療方法

記事を読む

看護用語

VT(心室頻拍)の看護|原因や心電図波形、看護師の対応4ステップ

VTは心室期外収縮が連続して起こっている状態のことで、そのまま放っておくと、死に至ることもあ

記事を読む

風疹・麻疹看護 看護用語

【2024年最新】麻疹・風疹の看護|予防接種や症状・合併症、発熱時の看護

麻疹(はしか)や風疹は予防接種がありますので、そこまで感染者数

授乳看護 看護技術

【2024年最新】授乳の看護|目標や姿勢、観察項目と看護ポイント

産科病棟で勤務している看護師は、出産後の母親の授乳の看護ケアを

食中毒看護 看護用語

【2024年最新】食中毒の看護|原因・症状・看護・予防

食中毒は腹痛や嘔吐、下痢などを引き起こす疾患です。 以前

スキンケアの看護 看護計画

【2024年最新】スキンケアの看護|看護目標・計画と手順・資格

あなたはスキンケアに力を入れて看護していますか?入院中の患者さ

腹痛の看護 看護計画

【2024年最新】腹痛の看護|観察ポイントやアセスメント・部位別疾患と看護計画

腹痛の患者さんを看ることは多いと思いますが、あなたはきちんと腹