CPM(持続的他動運動)の看護|目的や方法、看護の6つのポイント(2020/11/12)
CPMとは機械を用いて関節の屈曲・伸展を行うリハビリ方法のことです。膝関節の術後に用いられることが多いです。CPMは効果的なリハビリ方法ですが、正しく使用しないと、CPMのリハビリ効果が半減したり、安全に使用できなかったりするので、看護師はCPMについて正しい知識を身につけておきましょう。CPMの基礎知識や目的、方法、看護のポイントをまとめましたので、実際の看護の参考にしてください。
1、CPM(持続的他動運動)とは
CPM(Continuous Passive Motion=持続的他動運動)とは、機械を用いて、関節の屈曲・伸展運動を他動的にゆっくりとしたペースで連続して行う訓練方法のことです。
出典:整形外科用機器「CPM(下肢用)」(ガデリウス・メディカル株式会社)
このCPMは看護師や理学療法士などが患者の脚を持って行う徒手でのROM訓練に比べると、次のようなメリットがあります。
①支持面積が大きく安定感がある
②ゆっくりとした一定のペースで屈曲・伸展を行うことができる ③可動域を一定に保つことができる |
CPMには上肢用もありますが、臨床では下肢用が用いられることが多く、膝関節の術後のリハビリに使われることが多いです。CPMの性質上、膝関節のためにCPMを用いると、自動的に股関節の屈曲・伸展運動も行うことになります。
2、CPM(持続的他動運動)の目的
CPMの目的は、次の4つ1)の目的があります。
1.関節可動域の拡大
3.関節軟骨の修復や術後の腫脹の軽減 4.疼痛の軽減 |
膝関節の手術後は、術直後からリハビリを始めることで、膝関節の屈曲角度が改善し、治癒効果を高めて早い時期に社会復帰ができるとされています。特に、人工膝関節全置換術(TKA)の手術後は、数時間から十数時間にわたってCPMを行う必要があるという研究結果2)もあります。TKAの場合、術後2日目からCPMを行ってリハビリを始めるのが一般的です。
3、CPM(持続的他動運動)の方法
CPMの準備は医師や理学療法士が行うこともありますが、基本的には病棟で看護師がCPMをセットして行うケースが多いので、CPMの方法を理解しておきましょう。
①CPMに関する医師の指示(関節可動域や時間等)を確認する
②バイタルサインや患部の状態をチェックする
③患者にCPMを実施することやコントローラーの使用方法を説明する
③CPMをベッドにセットする
④患者の患足をCPMにセットして、しっかり固定する
⑤CPMの速度や屈曲の角度、時間などをセットする
⑥最初の数分は疼痛の状態やズレがないかを確認するためにベッドサイドでつきそう
⑦コントローラーを患者に渡し、ナースコールを手元に置いてベッドサイドを離れる
⑧終了時間になったら、ベッドサイド訪問し、CPMの機械を外して片付ける
⑨関節可動域や疼痛の程度などを看護記録に残す
これが、基本的なCPMの方法になります。
4、CPM(持続的他動運動)の看護の6つのポイント
CPMを行う時の看護のポイントを確認しておきましょう。看護師が看護のポイントを押さえておくことで、安全に、そしてより効果的にCPMでのリハビリを進めていくことができます。
①不安の軽減に努める
CPMを実施する場合は、患者の不安軽減に努めましょう。術後2日目ごろからCPMを開始することが多いですが、術後すぐに関節の曲げ伸ばしをすることに不安・恐怖を感じる患者はとても多いです。
「とても痛いのではないか?」、「傷が開いて出血するのではないか?」、「脱臼してしまうかもしれない」のような不安を持ったままだと、CPMを拒否したり、CPMをスタートしてもすぐに自分で緊急停止してしまって、リハビリがなかなか進みません。
そのため、看護師はCPMを行う前に、CPMの目的や安全に行える効果的なリハビリ方法であることをしっかりと説明して、患者の不安を軽減しておく必要があります。また、初回はコントローラーを渡してすぐに退室するのではなく、患者がCPMの運動に慣れて不安がなくなるまで、ベッドサイドで長く付きそうなどの配慮をすると良いでしょう。
②実施前に医師の指示をしっかり確認する
CPMを行う前には、医師の指示をしっかり確認しましょう。特に、関節可動域については、必ず医師の指示を守らなくてはいけません。
指示よりも関節可動域を狭くしてしまったら、効果的なリハビリを行うことができません。逆に関節可動域を広く設定してしまったら、関節に負担をかけてしまうことになります。また、CPM実施中に「痛みもないし、もっと関節可動域を広げられそうだから」という理由で、医師の指示以上の可動域にCPMの設定を変えるのも止めましょう。これは、患者にもきちんと説明しておく必要があります。リハビリを積極的に進めたいという意欲がある患者は、コントローラーで設定を勝手に変更し、関節可動域を広げようとすることがあるので、注意しなければいけません。
③無理はしないように説明する
CPMを行う患者に対しては、看護師は無理をしないように説明しておきましょう。
痛みが強くなったり、関節に違和感が出ているのに、「リハビリに必要だから」、「お医者さんの指示だから」などの理由で、我慢してCPMを続ける患者がいます。それではCPMが逆効果になりかねませんから、そのような時には無理をせずにコントローラーで緊急停止をして、看護師をすぐに呼ぶように、しっかり指導しておく必要があります。
④疼痛コントロールを行う
CPMの看護のポイントの4つ目は、疼痛コントロールを行うことです。術直後にCPMを行う場合、痛みが強くて思ったようにCPMを行うことができないというケースが少なくありません。だから、看護師はCPMを行う時には痛みをできるだけ軽減できるように、鎮痛薬の投与時間を計算して、CPMを行う時間を決めたり、必要ならCPMの実施前にレスキュー薬を投与するなどの工夫をして、疼痛コントロールを行いましょう。
また、CPMの前後にクーリングを行ったり、安楽な体位を取るように指導することも大切です。患者のCPMに対する恐怖を解消して、積極的にCPMを行うためにも、疼痛コントロールは非常に重要になります。
⑤ズレないようにしっかり固定する
CPMを実施する時は、看護師はCPMの機械がズレないようにしっかり固定してください。膝関節用のCPMはベッド上で使っていると、足元の方向に少しずつ動いてずれていくことが多いです。
CPMの機械自体が動いてしまうと、患者の膝関節とCPMの膝関節を置くべき部分がズレてしまい、きちんと屈曲・伸展運動を行えなくなってしまいます。そのため、体交枕などを用いて、CPMの機械が動かないようにしっかりと固定するようにしましょう。また、もし動いてズレてしまった時はセッティングし直す必要があるので、ナースコールで看護師を呼ぶように、患者に指導しておきましょう。
⑥皮膚の損傷が起こらないように注意する
CPMを行う時には、ベルトで下肢とCPMの機械を固定する必要があります。
ズレないようにある程度しっかり固定しなければいけませんが、固定がきつすぎると、表皮剥離や褥瘡を起こすリスクがあります。逆に、固定が緩すぎても、ベルトと皮膚の間に摩擦を起こすので、表皮剥離の可能性が出てきます。看護師はCPMによる皮膚損傷が起こらないように注意しなければいけません。
CPMの機械やベルトは皮膚に刺激を与えないように柔らかい生地を用いていますが、それでも、皮膚損傷のリスクはあります。看護師は皮膚損傷が起こらないように注意しながら固定し、必要があれば、保護クリームやフィルムを貼るなどの工夫をすると良いでしょう。
まとめ
CPMの基礎知識や目的、方法、看護のポイントをまとめましたが、いかがでしたか?
CPMは膝関節の手術後によく用いられるリハビリ方法ですので、看護師は正しく使用できるように正しい知識を身につけておきましょう。特に、整形外科病棟の看護師は、CPMを用いる機会が多いと思いますので、CPMについてもう一度勉強しておきましょう。
参考文献
1)機器を用いた訓練―CPM;持続的他動運動訓練(総合リハビリテーション 20巻9号|中村耕三、大井淑雄|1992年9月)
2)人工膝関節全置換術患者に対する持続的他動運動の効果((第49回日本理学療法学術大会 抄録集 Vol.41 Suppl. No.2|小田太史、石丸将久、佐賀里昭、東友美、内藤誠、古賀彩佳、川嵜真理子、小路永知寿、吉田佳弘|2014年)
埼玉県在住。埼玉県内の大学病院(整形外科)で正看護師として5年勤務した後、結婚・出産を機に離職。現在は2児のママとして、育児をしながらライターとして活動している。趣味はヨガ。産後の体型維持のために始めたものの、今では体幹トレーニングなど、スポーツとしての楽しみを感じている。
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