はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師とは?資格取得方法も!(2021/03/31)
リハビリ・代替医療の国家資格の中には、はり師(鍼師)、きゅう師(灸師)、あん摩マッサージ指圧師があります。この3つの国家資格について、具体的によくわからないという人も多いのではないでしょうか?
はり師(鍼師)・きゅう師(灸師)・あん摩マッサージ指圧師の資格の詳細や仕事内容、資格取得方法をまとめました。
目次
1、はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師とは
はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師とは、「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」によって定められた3つの国家資格です。
健康増進と病気の予防・治療を目的とし、日本古来からの伝われる東洋医学体系をもとに、自然治癒力を高めるための物理療法を行うことができる資格です。
1-1、はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師は「あはき師」
はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師は3つの国家資格です。
・はり師(鍼師)
・きゅう師(灸師)
・あん摩マッサージ指圧師
この3つの資格はすべて東洋医学をベースにした資格であり、資格取得者は視覚障害者が多かったこと、さらに3つすべての資格を取得する人も少なくないことなどから、はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師のそれぞれの頭文字を取って、まとめて「あはき師」と呼ぶことが多いです。
そのほか、三療師や鍼灸マッサージ師と呼ぶこともあります。また、はり師ときゅう師の2つの資格を合わせて、鍼灸師(しんきゅうし)呼ぶこともあります。
1-2、はり師(鍼師)とは
はり師とは、鍼治療を専門的に行う国家資格を持つ人です。鍼は中国古来から行われてきた伝統医療で、日本には6世紀ごろに伝わりました。
経穴(ツボ)に細い金属製の針を刺して刺激を与えることで、自然治癒力を高め、体の不調を改善させます。
はり師の施術は医師の同意書や診断書があれば、神経痛やリウマチ、頸腕症候群、五十肩、腰痛症、頸椎捻挫後遺症等の慢性疼痛の疾患で健康保険が適用になります。
1-3、きゅう師(灸師)とは
きゅう師とは灸治療を専門的に行う国家資格を持つ人のことです。法律上では「きゅう師」ではなく「きゆう師」となっていますが、読み方は「きゅう師」になります。
灸治療とは、経穴(ツボ)の皮膚の上にもぐさ(艾)を直接置いて燃焼させて、温熱刺激で、体の自然治癒力を高め、身体の調子を整える療法です。
きゅう師の施術もはり師と同様に、医師の同意書や診断書があれば、慢性疼痛の疾患では健康保険が適用になります。
1-4、あん摩マッサージ指圧師とは
あん摩マッサージ指圧師とは、あん摩・マッサージ・指圧を用いて施術を行う国家資格を持つ人のことです。法律上の正式名称は「あん摩マツサージ指圧師」と記載します。
あん摩・マッサージ・指圧はすべて手や指などを用いて、「押す・さする・もむ・たたく」など身体の表面から刺激を与え、身体の不調を改善し、健康の維持増進、病気の予防などを図る施術です。基本的に何らかの器具は用いることはありません。
ただ、あん摩・マッサージ・指圧はそれぞれ似て非なるものです。
あん摩は古代中国発祥で、奈良時代に日本に伝わってきたものです。衣服の上から全身を揉む・なでる・押すなどの施術を行います。身体の中心から末端に向かって行うことが特徴です。
マッサージはヨーロッパ発祥で、明治時代にフランス式のマッサージが日本に伝わりました。直接皮膚の上から行うこと、身体の末端から中心に向かって行うこと、クリームやオイルを使うことがあること等が特徴です。
指圧はあん摩の「押す」が独自の発展を遂げた施術と言われています。
あん摩マッサージ指圧師の施術は、医師が発行した同意書・診断書があれば、医療上マッサージを必要とする症例(筋麻痺や関節拘縮など)の場合は健康保険の対象になります。
1-5、はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師の職場
はり師・きゅう師・あん摩マッサージ師は、幅広い場所で活躍しています。
<はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師の職場>
・鍼灸マッサージ治療院
・病院
・在宅リハビリテーション
・スポーツリハビリテーション
・スポーツトレーナー
・養成学校での教員(教員養成科進学後)
・治療院の開業
国家資格を取得したはあはき師(はり師・きゅう師・あん摩マッサージ師)は開業権を認められていますので、独立開業することが可能です。
2、はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師の資格取得方法
はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師は、すべて国家資格です。そのため、はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師の資格を取得するためには、国家試験に合格し、はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師のそれぞれの名簿に登録して、厚生労働大臣の免許を受ける必要があります。
2-1、はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師の受験資格
はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師のそれぞれの国家試験を受験するためには、大学入学できる人(高卒または高卒認定試験合格)で、文部科学大臣が認定した学校、または厚生労働大臣が認定した養成施設(専門学校)で3年以上学び、必要な知識・技術を習得しなければいけません。
<文科省管轄>
・鍼灸大学(4年課程)
・鍼灸短期大学(3年課程)
・特別支援学校理療科(視覚障碍者)
<厚労省管轄>
・鍼灸専門学校
はり師ときゅう師はそれぞれ別の国家資格になりますが、養成カリキュラムの単位が完全互換されていますので、3年間(鍼灸大学は4年間)のカリキュラムではり師ときゅう師の2つの国家試験の受験資格を得ることができます。
あん摩マッサージ指圧師の養成学校は全国でもあまり多くありません。ただ、3年間のカリキュラムであん摩マッサージ指圧師と一緒に鍼灸師の国家試験受験資格を得ることができる学校もあります。筑波技術大学にもあん摩マッサージ指圧師の養成コースはありますが、視覚障害者のみが入学できます。
基本的には、はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師は3年課程(大学のみ4年)で受験資格を得ることができますが、著しい視覚障害者の場合は高校入学できる者で、あん摩マッサージ指圧師は3年以上、鍼灸師は5年以上養成課程のある学校・施設で学ぶ必要があります。
2-2、はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師の国家試験
はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師の国家試験は、厚生労働大臣から指定試験機関として指定された公益財団法人 東洋療法研修試験財団が行います。
年に1回、通常は2月下旬に行われます。はり師・きゅう師の試験内容は13科目中1科目(はり理論かきゅう理論か)以外は同じですので、はり師ときゅう師の2つの国家試験を受ける人は、同日に試験を受けることが可能です。
あん摩マッサージ指圧師の試験が土曜日、はり師・きゅう師の試験が日曜日と2日連続で行われます。
まとめ
はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師とは何か?また、はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師の資格取得方法などを説明しました。
はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師は国家資格です。一昔前は視覚障害者が就業していることが多かったですが、現在は視覚障害者だけでなく視覚障害がない晴眼者のあはき師が増えてきています。今後ははり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師はさらに多方面で活躍していくはずです。
参考文献
東京都在住、正看護師。自身が幼少期にアトピー体質だったこともあり、看護学生の頃から皮膚科への就職を熱願。看護学校を経て、看護師国家資格取得後に都内の皮膚科クリニックへ就職。ネット上に間違った情報が散見することに疑問を感じ、現在は同クリニックで働きながら、正しい情報を広めるべく、ライターとしても活動している。
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