関節リウマチの看護|寛解目指し、療養生活の局面のサポートを(2017/01/11)
関節リウマチは膠原病の1つで、30~60代の女性に多く、薬物療法やリハビリを続けながら療養生活を送ることになる病気です。
進行すると関節の変形にもつながり、日常生活を送るのにも支障が生じる可能性もあり、早期発見して早めに治療を開始することや、円滑な薬物療法やリハビリを進めるために、患者自身への指導や働きかけが重要なポイントとなってきます。患者が少しでも前向きに治療に取り組めるように、局面的にサポートする姿勢が求められます。
目次
1、関節リウマチとは
関節リウマチは膠原病の中では最も多い病気と言われており、かかると免疫細胞が身体の組織を攻撃して関節内に炎症を引き起こします。
炎症が発生してから変形に至るまで、10年ほどの年月を有すると言われており、早期発見をして早い時期から薬を投与すれば、進行を抑え、症状が軽減または消失する寛解状態を目指すことも可能です。症状を放置して関節に大きな変形が起こると、手術をする必要性が生じるケースもあります。
関節リウマチはどこの関節でも起こる可能性がありますが、症状の半数程度は、手首や手指の関節の腫れ、痛みが始まります。また、症状が左右対称に起こることも特徴に挙げられます。
出典:269号関節リウマチ – 社会医療法人 峰和会 鈴鹿回生病院
原因は未だ分かっていませんが、ホルモンの影響や感染症の病歴などが環境要因に挙げられており、そこに疲労やストレス、妊娠、出産などの刺激によって免疫の働きが活発化して発症すると考えられています。主に血液検査や画像検査を行い、結果をもとに診断します。
2、関節リウマチにおける看護ケアのポイント
関節リウマチの患者をケアする局面は多岐に渡ります。以下に、患者への応対や働きかけのポイントを示していきたいと思います。
2-1、初期症状を見極める
前述したように、関節リウマチは早期発見されることが重要です。ですが、関節リウマチの初期症状が起きていても「指を使いすぎている」と思い込んでリウマチにかかっているのに気づかないという問題点が指摘されています。
≪初期症状≫
・ 目覚め直後の手のこわばり
・ 腕が伸ばせない ・ 階段の昇り降りがつらい ・ 関節の腫れ ・ 関節を押すと痛みが発生する |
手がかじかんだようだ、朝食の支度や着替えがスムーズにできないほど手が動かない、といったことを患者が訴えている場合、関節リウマチに罹患している可能性を考慮して医師に伝えるようにしましょう。
2-2、薬物療法を受ける患者への配慮
関節リウマチの治療は、薬物療法が中心です。使われる薬のうち、腫れや痛みを抑えて骨の破壊を防いだり、関節を動かしやすくする効果を見込める抗リウマチ薬のうち、免疫抑制薬は妊娠中の患者には適用されません。
胎児の発育への影響があることから、妊娠中に限らず患者が妊娠を希望している期間も使用できませんので、そのような患者の事情を聞き取ったり、得た情報を現場スタッフ間で迅速に共有できるように体制を整えておくことが、治療をよりスムーズに進めるカギとなります。
一方、抗リウマチ薬には、生物を活用して人工的につくられたたんぱくから成る生物学的製剤もあります。生物学的製剤はバイオテクノロジーにより、遺伝子工学の手法でつくられており、関節リウマチ治療を飛躍的に進歩させた功労者とされていますが、感染症やアナフィラキシーを起こすなどの副作用があります。
感染症にかかったことがあったり、肺の病気に罹患している患者には、副作用の少ない種類の製剤を用いる必要がありますので、やはり患者情報の収集とスムーズな伝達を現場全体で進めていくことが重要です。
製剤の中には自己注射ができる種類もあり、病院に通う時間がなかなかとれない患者は自分で注射をして薬を体内に取り入れることもできます。自己注射を希望する患者に対しては、医療現場で事前にしっかりと指導をしておくことも肝心です。また、患者が副作用を恐れて薬の服用を中止したり、回数や量を加減してしまわないように、医師とともにきちんと指導しておくことも、治療を進める上で重要なポイントとなります。
患者は定期的に血液や尿の検査を受けますが、これは病気の状態だけでなく、薬の効果を確かめたり、副作用が出ていないかどうかをチェックする機会でもあります。検査データも十分に活用しつつ、患者の治療や薬に対する不安や疑問に応えられる機会を設けることが大切です。
2-3、医師と患者のコミュニケーションをサポート
関節リウマチの治療は、症状をコントロールする→関節破壊の進行を抑える→身体の機能障害を予防する→QOL(生活の質)を向上させ、職場に復帰するなど社会活動ができるようになる…という風に目標を掲げて段階的に進めていく流れが想定されます。
出典:リウマチについて 医療法人社団星輝会松原リウマチ科・整形外科
各段階において目標を達成するために、腫れや痛みのある関節の数や血液検査の数値、医師の評価、患者の自己評価などから病気の活動具合を判断して、薬の調整などを図っていきます。
このような段階を踏んで治療を進める際には、医師と患者のコミュニケーションが円滑にとれていることが、不可欠となります。看護師には、両者のコミュニケーションを進めるためのサポート役を果たすことも、求められます。
2-4、チーム医療のコーディネート
関節リウマチの痛みを取り除くためには、薬物療法や手術のほか、地道なリハビリを続けていくことも重要です。生活動作をスムーズにする方法や関節への負担を軽くするための姿勢や道具などの取り入れ方など、自立した日常生活を送るための術は作業療法士が指導します。
少しでも円滑に療養生活を送れるように、このような専門の医療スタッフも巻き込んで患者をサポートするチーム医療の充実が求められます。
患者と身近に接する看護師として、患者がリハビリや日々の生活面について悩みを抱えていたり、困っている様子を察したら、きちんと相談に乗った上で的確な助言が期待できる専門スタッフに引継ぎができるように、コーディネートしましょう。
2-5、患者の精神面をサポート
リウマチは働き盛り世代の女性の罹患率が高く、リウマチになったことで戸惑い苦しみ、仕事や結婚など自身の人生設計に不安を感じるケースも見受けられます。このような患者の気持ちを汲み取った上でケアにあたることも、重要なことです。
関節リウマチは、患者が病気と向き合う姿勢によって治療の成否も影響されると言われます。関節リウマチと向き合いながら仕事や家事、子育てをこなしたり、社会生活に積極的に参加する患者もたくさんいますので、患者が冷静にリウマチと向き合い、付き合っていけるような心構えを持てるように、精神的サポートを心がけましょう。
まとめ
関節リウマチと闘うには、息の長い治療や地道なリハビリなどに取り組む姿勢が必要となりますので、治療面だけでなく患者の日常生活や社会生活、精神面など多様な分野でケアがカギとなってくる可能性があります。
時には患者と医師、チーム医療スタッフとのコーディネーター役になったり、時には相談役になったりと、看護師の果たす役割も多岐に渡ります。少しでも早く患者が寛解状態に近づけるように、そして身体的な機能の回復だけでなく社会的な復帰が実現できるように、さまざまな役割を買って出てサポートしましょう。
埼玉県在住。埼玉県内の大学病院(整形外科)で正看護師として5年勤務した後、結婚・出産を機に離職。現在は2児のママとして、育児をしながらライターとして活動している。趣味はヨガ。産後の体型維持のために始めたものの、今では体幹トレーニングなど、スポーツとしての楽しみを感じている。
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