ホスピス(緩和ケア病棟)で求められるのは、10種の業務と人としての誠実さ(2017/12/19)
医療は日進月歩を遂げていますが、全ての病気を治すことはできませんし、人は必ず死を迎えます。今回は人生の最期をホスピスで迎える患者に寄り添う看護師の役割、そして実際の仕事内容や給与についてまとめました。
目次
1、ホスピス(緩和ケア病棟)とは
厚労省の統計によると、40歳から89歳までの死因の第一は悪性新生物です。内視鏡下で生検と同時に全て取りきって治療が終了する早期胃癌も、癌は癌です。一方で、発見されたときには全身転移していて、根本治療のできないくらいに進行している場合も癌です。
内視鏡下で取り切れる癌を治療しない人はいないでしょうけれど、癌が全身転移していると宣告された患者がどこまでの治療を行うのか・・・それは患者個々によって違います。1日でも長く生きるためにできる限りの治療をするのも、残された時間を穏やかに家族と暮らすことを選択するのも、どちらもその人の生き方なのです。
しかし、現実は終末期の患者が自宅にいる場合、家族の負担は想像を絶するものになります。痛みを訴える患者の場合は、その苦しむ姿とともに過ごすことになりますし、疼痛コントロールも自宅にいながら行うことになります。そのため、ホスピス(緩和ケア病棟)が必要とされているのです。まだ必要としている患者数に対してホスピスの数は不足しており、看護師も常に募集をかけている状態です。需要と供給のバランスがとれるようになるまでは、長い年月を必要とするかもしれません。
2、ホスピス(緩和ケア病棟)で勤務する看護師の役割
ホスピスでは、抗癌剤などの積極的治療は行いませんが、患者の苦痛を取り除くための対象療法は行います。特に疼痛コントロールは穏やかな最期を迎えるためには必須。また、身体的な看護だけがホスピスでの看護師の役割ではありません。時には宗教観・人生観に寄り添う必要がありますし、逆に適度な距離をとることも求められます。そして看護の対象は、患者のみならず家族をも含みます。疾患や薬剤に関する知識だけではなく、人と人との関わりをより求められるホスピスでは、緩和ケア認定看護師の需要も高まっています。
3、ホスピス(緩和ケア病棟)で勤務する看護師の仕事内容とは?
ホスピスでは、一般病棟と違って治療・処置・検査などに追われることはありません。その代り、患者に寄り添うことが仕事になります。時には患者の苦しみや苛立ちは看護師に向けられます。癌に苦しむ患者を支える家族が看護の対象となることもあります。では、具体的な看護師の仕事内容はどうなっているのでしょうか。
<ホスピスの看護師が行う10種の仕事>
・バイタルサインの測定
・処置(創傷処置や排便処置を含む) ・点滴 ・投薬(麻薬含む)管理 ・患者の訴えの傾聴 ・急な疼痛や急変時の対応 ・コメディカルを含めたカンファレンス ・家族との連絡調整 |
ホスピスに入る患者も、高齢化が進んでいます。癌そのものによるものだけではなく、高齢による身体機能の低下に対するADLの介助も必要です。また、癌の皮膚転移や癌そのものが皮膚を侵食してくることにより、処置を必要とすることもあります。口腔領域の癌では頬に穴が開いてしまうこともありますし、乳癌では乳房全体が潰瘍化して溶けてくることもあります。ホスピスでは必須となる疼痛コントロールは、患者の訴えをよく傾聴して医師と連携をとることが必要ですし、同時に麻薬による便秘や嘔気への対応がセットになります。そして最終的なセデーションにどこで踏み切るか・・・患者本人と家族、そして医師との調整役を担うことになります。
ホスピスだからといって身体的ケアがないかといえばそうではないし、もちろん精神的ケアも重要です。何より、やり直しのきかない最期の場面を共に過ごす立場にあり、人として誠意あるコミュニケーションをとることが一番求められるのかもしれません。
4、ホスピス(緩和ケア病棟)に勤務する看護師は、給料で決めてはいけない!?
ホスピスは人生の最期に寄り添う場であり、病状が軽快して退院するということはまずありません。医療機関の中でも常に死と隣り合わせの場で働く看護師には、より一層精神的負担が伴います。
しかし、ホスピスだからといって一般病棟勤務と比べて年収が100万も200万も上がるわけではありません。実際のお給料を見ると、愕然とするかもしれません。ですから、ホスピスへの勤務を検討する場合には、年収ではなくホスピスで働くことへのやりがいで選択するべきでしょう。
まとめ
人には向き・不向きというものが存在します。看護師も十人十色ですから、ICUや救急などでバリバリに働くことが向いている人もいれば、患者に寄り添ってゆっくりとした時間を過ごすことが向いている人もいます。ホスピスは人間性を問われる場ですが、その分仕事内容に正解はなく、一生を捧げてもよい職場です。自分の適性を考えた上で、緩和ケアに挑戦して欲しいですね。ホスピスでの看護が、あなたの生きがいになるかもしれません。
参考文献
死因順位(1~5位)別死亡数・死亡率(人口10万対)性・年齢(5歳階級)別(厚労省|平成27年人口動態統計月報年計(概数)の概況|平成28年6月)
認定看護師(Certified Nurse)とは(日本看護協会)
1986年生まれ。北海道札幌市出身・在住。同市内の看護学校を卒業後、北海道大学病院の内科で2年勤務。その後、同市内の個人病院で6年間勤務し、結婚・出産を機に離職。現在は育児をしながら、看護師としての経験を生かし、WEBライターとして活動中。
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