劇と保育園|オススメの題材・台本・衣装・小道具・CD・効果音を紹介(2017/06/11)
歌やセリフで物語を演じる劇は、保育園でも発表会やお誕生会などの機会に幅広くとり入れられています。子どもが劇を楽しく演じられるようにするためには、保育士はどのように働きかけていけばよいのでしょう。また、どのような内容の物語を選んでいけばよいのでしょう。ここでは、保育園での劇についてご紹介します。
目次
1、保育園の「劇あそび」の進め方
「発表会に向けて劇を子どもに教えていかなければならない」と考えると、保育士のプレッシャーも大きくなってしまいますよね。焦って練習を重ねても、子どもはその過程を楽しむことができなくなってしまいます。なるべく早い段階で劇の準備を整え、子どもたちと「あそび」の感覚で練習ができるような余裕をもっておきましょう。では、劇の準備にはどのようなことを考えておけばよいのかを確認しましょう。
1-1、保育園の劇 「題材・台本」
まず、なにより先に考えなければならないのが劇の内容となる「題材」や「台本」です。子どもの年齢や発達段階、さらには過去の劇と重ならないことなどを配慮していかなければならず、保育士にとって難しい課題です。そこで、とり入れやすい題材や台本の選び方としておすすめなのが、「子どもの好きなお話」を選ぶこと。普段読み聞かせをしている絵本や、子どもの知っているお話は、セリフやストーリーが自然と入りやすくなります。また、子どもの興味を引き出しやすいので、練習も進めやすくなるでしょう。
1-2、保育園の劇 「小道具・衣装・背景」
次に、劇で必要となってくる「小道具」や「衣装」、「背景」を考えます。特に、保護者に衣装の制作を手伝ってもらう園の場合は、早めにデザインや素材などを考えておきましょう。小道具や背景は、子どもと一緒に作ることで劇をより一層盛り上げることができます。
1-3、保育園の劇 「CD・効果音」
劇の練習を進めながら考えたいのが、「CD」や「効果音」です。劇によっては、ピアノ保育士のピアノのみで展開するものがあれば、CDや楽器などによって音楽や効果音を加えるものもあります。子どもがつくりあげる劇の雰囲気を壊さないように、適切な方法を選んでいきましょう。「保育のヒント」にて紹介した「CDと保育」も併せてご覧ください。
2、保育園の劇 年齢別「発表会の練習」で大切なこと
保育園で劇をとり入れる場面として、もっとも多いのが「発表会」です。クラスが団結するだけでなく、保護者に子どもの成長を見つめてもらう機会となり、とても大切な行事です。子どもの年齢に合った内容にすることはもちろん、本番までの過程も楽しく練習ができるよう工夫しましょう。
2-1、保育園の劇 発表会の練習『年少』
年少クラスの劇は、同じセリフの繰り返しやストーリーの展開が簡潔な題材がおすすめです。練習というよりは、普段のあそびの中に劇中の歌やセリフをとり入れ、楽しむことを第一に考えていきましょう。宮内太一氏らによる「一人ひとりを大切にした表現活動」には、
子どもたちは音楽や歌に合わせ,体を動かす楽しさをまず自分自身が味わい,その次の段階として保育者や他の子どもたちと一緒に表現することを心地良いと感じるようになってきた
とあります。すぐにセリフや動きを覚えようとするのではなく、まずはごっこあそびや表現あそびからはじめていくことが、楽しむためのポイントとなりそうです。
2-2、保育園の劇 発表会の練習『年中』
年中クラスになると、年長への憧れや自発的な「やってみたい」という思いが強くなります。子どもの好きな絵本やお話を題材にとり入れ、役ごとに見せ場をつくっていきましょう。同論文では、
「保育者主体」ではなく,「子ども主体」という観点の基,活動に対して子どもに主体性をもたせるため子どもの考えや意見を大切にし,イメージを引き出し,一緒に作り上げていくことを大切にした
とあり、劇をつくっていく過程で子どもに参加してもらうことの重要性を述べています。保育士の援助は必要ですが、子どもが「自分でできる」ことは積極的に取り組める環境を整えましょう。
2-3、保育園の劇 発表会の練習『年長』
年長クラスになると、子どもはさらに本格的な劇やオペレッタを演じたいと張り切ります。題材を考える段階で、「どんなお話の劇をしたい?」と子どもに意見を委ねてもよいでしょう。「このとき、おばあさんはどんな気持ちかな?」などと問いかけながら、登場人物になりきる楽しさを伝えていくことも劇を深めるポイントです。遠藤晶氏らの「子どもの劇つくりにおける保育者の援助」には
「せりふを合わせる」「動きをつくる」などの活動を十分に行い,せりふや動きを確実に子どもたちのものにすることができているかどうかが劇つくりには欠かせない
とあり、あくまで「子どもたちがつくりあげる」ことを大切にして練習を重ねていきましょう。
また、乳児から音や感覚あそびなどを保育にとり入れることは、その後の子どもの表現力につながっていきます。詳しくは、「保育のヒント」にある乳幼児保育や1歳児、2歳児、3歳児の保育を確認してみましょう。
3、保育園の劇 おすすめの「昔話」
ここからは、おすすめの劇の題材をテーマ別にご紹介していきます。まずは、子どもが親しみやすい「昔話」です。知っているストーリーを題材にとり入れることで、セリフや流れをつかみやすく、ごっこあそびの延長としても楽しむことができるでしょう。
3-1、「西遊記」
出典:日本伝統文化振興財団(2015)
個性的な登場人物が楽しい「西遊記」は、年長クラスの劇におすすめです。それぞれのキャラクターを活かした歌やセリフをクラスのみんなで楽しみましょう。
3-2、「桃太郎」
出典:日本伝統文化振興財団(2010)
みんなが知っている昔話の代表作である「桃太郎」。ストーリーがわかりやすいため、子どもも劇づくりに積極的に参加しやすい作品です。衣装や小道具の準備も子どもと行うことで、さらに想像が膨らみます。
3-3、「浦島太郎」
出典:日本伝統文化振興財団(2012)
「浦島太郎」は、海をテーマに繰り広げられる作品。衣装や背景は、華やかなものにして子どもの気持ちをさらに盛り上げましょう。登場人物の気持ちを考えながら、劇の展開を子どもと考えていくことで、セリフの表現も豊かになります。
3-4、「おむすびころりん」
出典:コロンビア(2009)
「おむすびころりん」は、登場人物が少ないお話なので、オリジナルの役を付け足したり、同じ役を前半と後半に分担するなどの工夫をしましょう。子ども一人ひとりの見せ場をつくることで、やる気や達成感が変わります。
4、保育園の劇 おすすめの「絵本」
子どもを劇の世界に引き込みやすいのが「絵本」を題材にした劇です。読み聞かせの中で子どもがイメージしたものを、少しずつ劇に反映していきましょう。きっと、劇をすることでそのお話がさらに好きになるはずです。
4-1、「はらぺこあおむし」
出典:偕成社(エリック・カール|1976)
多くの子どもに読まれている「はらぺこあおむし」。展開が単純なものなので、幼いクラスでも楽しく劇ができます。衣装や背景は、絵本と同じようにカラフルなものを心がけましょう。
4-2、「三匹のこぶた」
出典:福音館書店(瀬田貞二訳|1967)
みんながよく知る「三匹のこぶた」は、保育園の劇でもよくとり入れられる作品です。まずは、絵本を読み聞かせて、その世界観や登場人物の気持ちを子どもにイメージさせていきましょう。
4-3、「ブレーメンの音楽隊」
出典:福音館書店(瀬田貞二訳|1964)
「ブレーメンのおんがくたい」もおすすめの劇の題材です。その名のとおり、劇中に音楽をたくさんとり入れることで、内容も盛り上がっていきます。歌だけでなく、楽器などをつかって楽しい「おんがくたい」を演じましょう。
4-4、「泣いた赤鬼」
出典:偕成社(浜田廣介作|1992)
登場人物の心の変化が大切なテーマとなる「泣いた赤おに」は、絵本を何度も読んで気持ちを想像することを大切にしましょう。「このときはどんな気持ちだったのかな?」と問いかけながら劇あそびを進めていきましょう。
4-5、「どろぼうがっこう」
出典:偕成社 (かこさとし|1973)
「どろぼうのがっこうってどんなところなんだろう」とワクワクしてしまうストーリーの絵本、「どろぼうがっこう」。絵本をそのまま台本にとり入れると、リズミカルなセリフやナレーションが楽しめます。
4、保育園の劇 おすすめの「ミュージカル」
主に歌やダンスでストーリーが展開していく「ミュージカル」は、発表会の劇にピッタリです。音楽に合わせて劇を楽しんでいきましょう。ここでは、その中でも子どもの劇にとり入れやすい作品をご紹介します。
4-1、「ピーターパン」
出典:日本伝統文化振興財団(2013)
ゆかいな登場人物が魅力的な「ピーターパン」は、演劇界でも多くとり入れられる作品です。歌やダンスを登場人物の雰囲気に合わせて、劇の内容を深めていきましょう。
4-2、「ライオンキング」
出典:ウォルト・ディズニー・レコード(2011)
劇団四季の作品としても有名な「ライオンキング」は、さまざまな動物が登場する作品です。その動物になりきって劇を楽しむことで、子どもも見ている保護者も感動を味わえることでしょう。
4-3、「シンデレラ」
出典:日本伝統文化振興財団(2013)
「シンデレラ」も人気のミュージカル作品の一つです。劇に使用する衣装や小道具を本格的にすることで、子どもの気持ちも盛り上がります。歌やダンスは、子ども一人ひとりが主役となれるよう配置を工夫しましょう。
5、保育園の劇 「行事別の題材」
保育園で劇を行う場面は、発表会だけではありません。さまざまな行事に劇あそびをとり入れることで、子どもの表現力を引き出していきましょう。ここでは、行事別におすすめの劇の題材をご紹介します。
5-1、保育園の劇 「七夕」
出典:教育画劇(舟崎克彦作)
七夕の由来となる物語を子どもに知ってもらう方法として、劇あそびをとり入れてみてはいかがですか?まずは絵本などからお話に触れ、保育士とともに劇に展開していきましょう。きっと、「七夕」という行事への思い入れが深まっていくはずです。
5-2、保育園の劇 「誕生会」
出典:乳幼児教育研究所(あさのななみ)
こちらは「ねずみくんのたんじょうかい」という作品です。ねずみくんのプレゼントを巡って展開されていくストーリーは、毎月行われる誕生会に劇としてとり入れても飽きずに楽しめます。
5-3、保育園の劇 「お別れ会」
出典:岩崎書店(さくらともこ|1986)
卒園式のまえに行われる「お別れ会」で、卒園児から、または在園児からのプレゼントとして劇を贈ってみましょう。「ともだちほしいなおおかみくん」は、友達の大切さに気づかされる絵本です。お別れ会の劇の題材にもおすすめなので、ぜひとり入れてみましょう。
5-4、保育園の劇 「クリスマス」
出典:キングレコード(2016)
クリスマス会をより盛り上げるために、お馴染みの歌を劇にしてみましょう。「あわてんぼうのサンタクロース」や「赤鼻のトナカイ」など、劇にとり入れるだけで子どもたちはワクワクします。保育士が出し物として演じてみせても楽しめますね。
まとめ
劇は、子どもの表現力だけでなく、クラスの団結や達成感の共有なども高めてくれる大切にしたいあそびの一つです。結果やクオリティーにとらわれるのではなく、劇の準備や練習する過程を楽しむことに重点をおきましょう。
参考文献
一人ひとりを大切にした表現活動 (宮内太一・益田薫子・大勝愛・坂本絵梨子・入江沙耶佳・横溝文・岡泉英子・室井眞紀子・田中香織・中辻梢 |2008)
子どもの劇つくりにおける保育者の援助 (遠藤晶・江原千恵・松山由美子・内藤真希|2010)
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