1歳児保育のねらい|泣く対処法、保育室の環境と室内遊び、保育参観(2017/04/25)
1歳児の子どもは、心身ともに急激な発達過程にあります。ですから、1歳児の保育では、安全性はもちろん、子どもの成長に寄り添った保育が求められます。「ねらい」をはじめ、環境や遊び、保育参観の内容など、どういった保育をしていくのかを具体的に確認してみましょう。
目次
1、1歳児保育について
1歳児保育は、0歳児保育からつながるように、子どもの発達や成長を重点的に支えていく保育となります。では、一体どのようなことを考えながら保育をしていくのかを見てみましょう。
1-1、1歳児を保育する上での目標・ねらい
1歳児保育を行ううえでも、もちろん保育目標やねらいを立てていきます。まえにも述べたように、1歳児は大きな発達過程を遂げる時期です。よって保育では、一人ひとりの発達に合わせた保育士の細やかな援助が必要になります。「保育所保育指針」をみると、「ねらい」では0歳児から引き続き保健的な安全で快適な生活環境を整えることとともに、(5)安心できる保育士との関係の下で、食事、排泄などの活動を通して、自分でしようとする気持ちが芽生える。(6)安全で活動しやすい環境の中で、自由に体を動かすことを楽しむ。(7)安心できる保育士の見守りの中で、身の回りの大人や子どもに関心を持ち関わろうとする。(8)身の回りの様々なものを自由にいじって遊び、外界に対する好奇心や関心を持つ。といった自発的性や遊びの広がり、保育士や周囲の子どもとのかかわりもうまれてくる様子がわかります。保育士は、子どもの気持ちを捉えながら、その場に合った適切なかかわりをしていくことが求められています。指導計画などの目標やねらいを立てる際には、このようなことを踏まえながら考えましょう。
1-2、1歳児に向けた保育室の適切な環境とは
0歳児と比べ、1歳児は一気に子どもの動きが広がっていきます。歩きはじめると探索を楽しむようになり、棚にあるものに手を伸ばす、落ちているものを拾う、隙間に入り込むなど、とにかく何に対しても興味津々なのです。そこで必要になってくるのが、保育室の環境構成への配慮。安心できる生活の場であるとともに、動き回る子どもにとって安全であることも求められます。さらに、興味や関心を育む環境づくりも大切です。二橋香代子氏、上田敏丈氏の「保育における環境構成のねらいに関する研究」にも、子どもが主体的に生きるための保育であり、 子どもからの出発の保育である。そのための環境構成は遊びの多様性を保障することを前提とし、幼児の興味や関心、生活や活動の流れ、発達の時期に即したものであること。そして、遊具や素材の選択、配列、空間への配慮により環境が作られる。とあり、子どもの発達段階や興味関心の状況に応じて、環境をつくっていくことが重要であることがわかります。
2、1歳児保育における室内遊び
1歳児は、身の回りのあらゆるものに興味関心をもちはじめるので、室内遊びもそれに応じたものにしていきたいところです。では、1歳児の子どもには、どういった室内遊びが考えられるのでしょう。
2-1、室内を自由に探索する遊び
保育士が主導となる遊びも楽しいのですが、1歳児は自発的に「探索」する時間も重要になります。「保育所保育指針」に生活空間が広がり、子どもはこれまでに培われた安心できる関係を基盤として、目の前に開かれた未知の世界の探索行動に心をそそられ、身近な人や身の回りにある物に自発的に働きかけていく。とあるように、子どもの方から働きかけていく機会もつくっていきましょう。「○○遊び」という具体的な保育内容を設定するほかにも、生活の延長で安心して黙々と探索できる自由な時間も設けていきましょう。
2-2、室内での音楽遊び
「保育所保育指針」には、1歳児から(11)身近な音楽に親しみ、それに合わせた体の動きを楽しむ。ろ音楽に関するねらいの記述があり、子どもが音楽に触れる楽しさを感じられる遊びも求められることがわかります。「音楽」といってもさまざまな遊びができます。たとえば、ピアノに合わせて手を叩くリズム遊びも立派な音楽遊びの一つ。また、曲を流して身体を動かして踊ることもできます。季節に応じた簡単な歌をうたう時間を設けても楽しいですね。そのときの子どもの様子に合わせ、「楽しむ」ことを大切にしながら、室内遊びに音楽をとり入れていきましょう。このように、保育士は日々の遊びを淡々と設定するのではなく、1歳児の子どもの心身の発達や興味関心を広げていける遊びを心がけていきましょう。
3、保育参観について
保育園の中には、1歳児の保育参観を行う園もあります。保護者に日常の遊びや活動内容を見てもらうきっかけになることはもちろん、家庭の子育てと連携をはかることにもつながります。では、1歳児の保育参観はどのような内容で行えばよいのでしょう。
3-1、「普段の様子」を自然体で
1歳児の場合、保護者が求める保育参観の内容は、特別なものでなく「普段の様子」を見ることかもしれません。「登園時泣いて離れているけど、日中はどうしているのだろう」「どのように遊んでいるのだろう」「給食はよく食べているのだろうか」など、保護者の知りたいことはたくさんあると思います。連絡ノートでは表せない子どもの姿を見てもらえるよう、保育参観で日常通りの保育をすることも一つの方法になるでしょう。ただし、保護者の姿を見つけると泣いてしまう子や保育に参加できなくなる子もいます。できる限り離れたところで、安心して参観できる環境づくりを心がけましょう。
3-2、親子のふれあいを楽しむ保育参観
一方で、子どもを通して同じクラスの親御さんや保育士とのふれあいを求める保護者もいます。保育参観は、「親子のふれあい」を楽しむ時間にしてもよいでしょう。音楽に合わせて手遊びをしたり、ダンスを踊ったりして親子の時間を楽しみながら、親同士の交流の時間ももてるようにします。また、保護者と保育士の距離を縮めることで、気軽に子どもの相談をすることができる関係性を築けるといいですね。
3-3、家庭の「食育」サポートも
1歳児の多くは、離乳をしはじめるとともに離乳食や幼児食に発展しています。しかし、保護者には、食べが悪い、栄養バランスへの不安など、子どもの食育に関する悩みが増える時期でもあります。厚生労働省雇用均等・児童家庭局による「楽しく食べる子どもに」には、食べることは、すべての子どもが、家庭、保育所、幼稚園、学校、地域等さまざまな環境との関わりの中で、毎日行う営みです。すべての子どもが、豊かな食の体験を積み重ねていくことができるように、個々の場での取組を充実させていくとともに、関連する機関が連携して、子どもの成長に応じた取組を推進していく必要があります。とあり、家庭と保育園の食育の連携がいかに重要になるかが記述されています。栄養士を中心に、食育をサポートする講習会などを開くことも1歳児の保育参観には大切な機会となります。この他にも、1歳児の保育参観は工夫次第で多様に活用ができます。保護者の気持ちや思いを汲み取りながら、保育を知ってもらうきっかけとしていきましょう。
4、保育園の登園時に泣く子どもへの対処
子どもによって異なりますが、登園時、保護者と離れる際に泣く子どもはもちろんたくさんいます。他のクラスの子どもと同様、保育士は子どもにとって負担にならないような対応をしてあげることが求められます。
4-1、迷うまえに一気に引き離す
1歳児になると、保護者と離れなくてはいけないことを早い段階で悟るようになります。保護者や子どもに迷いがあると、泣いてつらい時間が長くなってしまうだけです。登園して必要な準備や連絡を済ませたら、保育士から一気に引き離すサポートをしてあげましょう。子どもが泣いてしまっても、自身で納得して楽しい遊びを見つけると、1歳児でも自然に保育に入ってくることができます。保育士は、子どもの反応をみながら、適切な言葉かけや対応をしていきましょう。
4-2、病気の可能性も視野に
「保育所保育指針」の配慮事項に(1)感染症にかかることが多いので、発熱など体の状態、機嫌、食欲、元気さなどの日常の状態の観察を十分に行い、変化が見られたときは、適切に対応する。とあるように、1歳児は感染症や病気にかかりやすい時期です。登園時や保育中に、理由がわからず泣いているときは、体調不良のサインであることも考えられます。保育士はそのことも視野に入れながら、朝の視診や保育中の健康観察を慎重に行うよう心がけましょう。
5、1歳児保育におすすめの絵本の紹介
1歳児は、興味関心が広がり、自発的に絵本にも手を伸ばすようになります。「保育所保育指針」のねらいには(17)興味ある絵本を保育士と一緒に見ながら、簡単な言葉の繰り返しや模倣をしたりして遊ぶ。とあり、その重要性がわかります。まずは、子どもが自由に手に取れる場所に、いくつか絵本を置いてあげましょう。また、簡単なものであれば保育士の読み聞かせを聞くこともできます。ここでは、いくつか絵本の例をみてみましょう。
5-1、「きんぎょがにげた」
五味太郎作の「きんぎょがにげた」は、シンプルなストーリー展開とカラフルな絵が子どもの興味をひきつける絵本です。絵の中から金魚をみつける遊びを楽しむこともでき、保育士と子どもが1対1ではもちろん、数人での読み聞かせでも活用できます。子どもの指差しが始まったら、ぜひとり入れてみましょう。
出典元:株式会社ピクティオ(五味太郎|福音館)
5-2、「だるまさんが」
登場人物は、真っ赤なだるまさんだけのかがくいひろし作の絵本。「だるまさんが…」と同じフレーズをくりかえし、だるまさんの動きや擬音を楽しみます。子どもはだるまさんの真似をしてみたり、「だるまさんが…」と一緒に口ずさんでみたりして、参加できる楽しい絵本です。
出典元:絵本ナビ(かがくいひろし|ブロンズ新社)
5-3、「いただきますあそび」
人気の木村祐一作「あかちゃんのあそびえほん」シリーズの中の「いただきますあそび」です。こいぬのコロやねこのミケなど、かわいらしいキャラクターたちがそれぞれ食べ物を大きな口で食べていきます。子どもが自発的に食事をし始める1歳児には「楽しく食べる」ためにピッタリの絵本です。
出典元:絵本ナビ(木村祐一|偕成社)
この他にも、1歳児向けの絵本はたくさんあります。クラスの子どもたちを思い浮かべながら絵本選びをするのも楽しいですね。単純で大きな絵のものを中心にチェックしてみましょう。
まとめ
1歳児保育では、0歳児と比較し子どもの様子や環境が大きく変化していきます。適切に対応していくためにも、保育士は日々の子どもの様子や気持ちに柔軟に気付いていくよう心がけましょう。また、子どもの健康的な成長を見守るためには、家庭との連携も重要になります。連絡をとり合い、協力し合える関係性を築いていきましょう。
参考文献
保育における環境構成のねらいに関する研究(二橋香代子・上田敏丈|2012)
楽しく食べる子どもに(厚生労働省雇用均等・児童家庭局|2004)