日案の書き方|0歳、1歳、2歳、3歳児の年齢別の書き方とその保育(2017/04/20)
保育園で保育を行う時に欠かせないのが日案を含む指導計画だと思います。必要不可欠なものであるだけに、日案の立て方に迷ったりマンネリになってしまったりなど悩みの種になることもあるかと思います。今一度、日案とは何かを振り返ると共に、年連別に応じた日案の立て方などもまとめていくので、是非参考にしてみてください。
目次
1、日案とは
日案とは何かについてまとめていきます。ざっくり言うと園児の1日の流れのことを指しますが、ただこの日に何をしようといった予定のように単独の視点で考えるのではなく長期的な目標を見据えた上でのその中の1日といった流れの中での1日を捉えたものが日案となってきます。
では、厚生労働省による保育所保育指針を参考に日案とは何かを見ていきましょう。保育所では、子どもの発達を見通した年間指導計画、月案と呼ばれる年・期・月など長期的な指導計画と、それに関連しながらより具体的な子どもの生活に即した週案、日案と呼ばれる週・日な どの短期的な指導計画を作成します。
1-1、年間指導計画について
年間(期)指導計画は、1年間の生活を見通した最も長期の計画であり、 子どもの発達や生活の節目に配慮し、1年間をいくつかの期に区分した、それぞれの時期にふさわしい保育の内容を計画します。日案は、年間指導計画で立てた1年の目標やねらいを達成するべく落とし込んでいく1番短期の目標となります。保育者は、年間指導計画で立てた目標達成に向かい細かく日案としてもその日に行う目標を設定して、長期的な指導計画の具体化を図り、その時期の子どもの実態や生活に即して、柔軟に保育が展開されるように、また、長期の指導計画との関連性や生活の連続性が尊重されるようにします。 更に、保育時間が長時間化している今日、1日の生活の流れの中に、子どもの多様な活動が調和的に組み込まれるように配慮することが求められます。
これらの指導計画は、保育課程に基づいて、保育目標や保育方針を具体化する実践計画となります。指導計画は、保育実践の具体的な方向性を示すものであり、一人一人の子どもが、乳幼児期にふさわしい生活の中で、必要な体験が得られるよう見通しを持って作成していきます。
1-2、指導計画作成の基本
保育所保育指針解説書によると、子どもの実態を把握し、理解することから指導計画の作成はスタートします。指導計画は、保育士等から一方的にある活動を子どもに与え、させる計画ではなく、子どもと保育士等との相互作用の中で創っていくものだからです。
目に見えることだけではなく、育っている、育とうとしている子どもの心情、意欲や態度を理解することが大切です。 3歳未満児は、特に心身の発育・発達が顕著な時期であると同時にその個人差も大きいため、一人一人の子どもの状態に即した保育が展開できるよう個別の指導計画を作成することが必要となってきます。計画は、月ごとに個別の計画を立てることを基本として、子どもの状況や季節の変化などにより、月ごとの区分にも幅を持たせ、ゆったりとした 保育を心がけることが必要です。
1-3、日案について
今度はお茶の水女子大学子ども発達教育研究センター『幼児教育ハンドブック』を参考に日案の作成の仕方を見ていきましょう。
子どもの生活の基本単位は1日です。朝、登園してから降園するまでの1日の生活が楽しく充実したものとなるように、幼児の活動を予想しつつ、環境を構成し、指導の方法を考えながら日案を作成していきます。日案は、その日の保育をどのように展開するのか、1日の子どもの生活時間を見通して細かく立てる指導案で、もっとも実践的で具体的な指導計画です。 また、日案で立てた目標を達成する為に使用する教材などは決まりがあるわけではないので、保育者の発想を豊かにして、今ある環境を整え、手に入る教材の利用方法や活動の仕方、展開への援助など、いろいろと工夫してみましょう。
そして、保育者が計画した通りに子どもが活動するとは限りません。時間の経過とともに、また経験 を重ねてきたことで、子どもはどんどん成長、変化していきます。子どもの姿をよく見て、いつでも子どもの姿に合わせた計画に修正していくことが大切です。 保育者は年間指導計画で立てた目標を子どもたちが達成していけるように、子どもの現在の様子をしっかり把握して子どもに合わせた日案を細かに組み直しながら最終的に目指すところへと到達していけるような柔軟性も必要となってきます。
2、0歳児の日案の立て方
社会福祉法人江東会エンゼル保育園に掲載されている0歳児の1日の流れを参考に0歳児の日案について考えていきましょう。
エンゼル保育園では7時から早朝保育が始まります。その後9時までは、保育室や様々な遊具で年齢も飛び越え異年齢児と関わりながら過ごしていきます。
■9時
歌や曲に合わせて触れ合い遊びなどをして保育士とスキンシップを図ります。その後、授乳・果汁・くだものなどで朝のおやつを行います。
■10時から昼食まで
日光浴・お散歩・園庭遊びなどその日のメイン活動が始まっていきます。(夏期の場合はこの時間にプール遊び・水遊び・泥んこ遊びを取り入れます。)
■午後
昼食から昼寝の流れを迎え17時より、また異年齢保育が始まり18時に夕食、19時に閉園となります。
東北生活文化大学短期大学部付属ますみ保育園や長谷川キッズライフ株式会社保育園・保育サービスのホームページの1日の流れを見ると、7時半前後に登園受付が始まり、18時から延長保育になるのでどこの園も同じような1日の流れだと推測できます。おおよそ決まっている1日の流れを軸に、達成したい目標やねらいに向けて日案を組んでいくことが必要となってきます。目標達成に向けての活動に取り組みやすい時間は、その日のメイン活動となる10時から昼食までの時間帯ですが、食事の前に挨拶が出来るようになるといった小さな目標をいつもの1日の流れの中で取り組んでいくことも可能です。
3、1歳児の日案の立て方
次に1歳児の1日の流れを先程のエンゼル保育園を例に見ていきましょう。
0歳児の1日の流れと然程大きな違いはなく7時から登園受付が始まり、9時までは異年齢児と触れ合いながら自由に過ごしていきます。0歳児と違うのは9時に朝の集まりという時間が加わってきます。具体的には朝のお話や絵本の読み聞かせなどを行います。そして、0歳児と同様10時からその日のメイン活動に入り、昼食、お昼寝となり、16:30より室内にて自由遊び、17時から異年齢児保育、18時から夕食前のおやつで19時に閉園となります。
3-1、0歳児との1日の流れの違い
集団行動の要素が組み込まれてくることがエンゼル保育園の例から分かります。0歳児は対保育者で保育が進んできていたのが、1歳児になるにつれ朝の集まりなど他の子どもと一緒に活動するようになってくるので、1歳児の日案で0歳児の時との違いは友達が活動に加わってくることではないかと思います。また保育所保育指針にも記載されている通り、1歳児は個人差の大きい時期なので、一人一人の子どもの発育・発達状態をよく知り、楽しい雰囲気を作るなどして、子どもが興味を持ち、自分から遊びを楽しめるように配慮をしていく必要があります。
4、2歳児の日案の立て方
2歳児の1日の流れは、エンゼル保育園では1歳児とほぼ同様の流れとなってきますが、昼寝がおわった後に排泄の時間が設けられていることが大きな変化となってきます。
「生活環境を常に清潔な状態に保つとともに、身の回りの清潔や安全の習慣が少しずつ身につく ようにする」と保育所保育指針の2歳児の保育の内容としても記載されているので、身の回りのことを自分で行っていけるよう日案でも生活習慣を整えていくことを組み込んでいくことが0歳児、1歳児の日案との違いではないかとエンゼル保育園の2歳児の生活の流れからも考えられます。
5、3歳児の日案の立て方
3歳児の1日の流れもエンゼル保育園を例に見ていきましょう。
1、2歳児とは少しずつ流れが異なってきて、朝の集まりまでの流れは同じなのですが、3歳児はミルクタイムというのが始まります。(朝のおやつの代わりに牛乳を飲む。)その日のメイン活動が始まる前に排泄の時間が加わり、昼食後昼寝の時間の前に絵本の読み聞かせの時間も加わります。昼寝の後には帰りの集まりも新たに設けられています。帰りの歌や帰りの挨拶を全員で行ってから順次降園もしくは延長保育という流れに入っていきます。
3歳児クラスはこれまで以上に集団の中での生活を意識してエンゼル保育園でも1日の流れを組んでいるように見えますし、保育所保育指針でも、この時期に仲間と一緒にいて、その行動を観察し模倣することの喜びを十分に味わうことは、社会性の発達を促し、ひいてはより豊かな人間理解へとつながっていく大切な基礎固めになると考えられています。これらを踏まえて、友達との関わりや集団の中で生活していく力をつけていくことをこの時期のねらいとして、日々の目標を日案として立てていくことが求められます。
5-1、3歳児の日案の具体例
また、埼玉県の公式ホームページに掲載されていた加須市立三俣幼稚園の3歳児クラスうさぎ組の日案も参考になります。
うさぎ組では、「友達と同じ場で遊びながら、つながりや一緒に遊ぶ楽しさを味わう」ことをねらいとして、積極的に異年齢児保育を取り入れたり、友達のしている遊びに興味をもって一緒に遊ぶことや遊びの中でルールを守って遊ぶ大切さを知ることを目標にクラスでも活動を進めています。
例えば、「友達と同じものを使いたい」という要求に応えられるよう、素材や遊具を十分に用意をし、更にそこに保育者も仲間に加わり、一緒に遊びを楽しんだり、遊びが盛り上がるようにリードをして、楽しさやうれしさに共感していきます。保育者が加わることにより、まだうまく伝えることの出来ない気持ちを代弁してあげることで、友達同士の遊びも円滑に進んでいくと考えられます。また、「○○くんバスの運転上手だったね」「大きなおいもが掘れたね」など友達の動きに気付かせたり、明日への期待が高まったりするような言葉掛けをしていくことで、友達と関わることの楽しさを子どもが感じていくことが出来るように日案として計画されています。
加須市立三俣幼稚園のように、友達と遊ぶ楽しさを味わうという明確なねらいを定めた上で、その為にはどうしたらいいかを日案として立ち上げ、保育者がそれに従って働きかけていくという流れがまとまると、非常に充実した保育内容にもなりますし、指導計画として完成されているのではないかと思います。
6、日案の立て方で参考になりそうな書籍の紹介
出典:保育指導案 大百科事典(開仁志|一藝社|2012/04)
指導案の意味や指導案の作成のポイントなどを、豊富な事例と共に解説された一冊となっています。生活の流れが書かれた指導案、特別支援の指導案、手遊びやパネルシアターなどの指導案、ものづくりをする時の指導案、体を使って遊ぶ時の指導案など非常に細分化されて各章にてまとめられている為、ありとあらゆる場面での指導案の立て方で困ったときに対応出来る作りとなっています。
出典:書き方・あそび・保育のコツがわかる 実習の日誌と指導案サポートブック(大元千種 監修|ナツメ社|2016/05)
指導案の文例を紹介すると共に、保育日誌の書き方についても文例が豊富に紹介されています。また、各年齢ごとに、書き方だけでなく、遊びの進め方や保育のコツまでトータルでこの一冊にまとめられているので、これから保育者になるという方にも適している保育書だと言えます。
出典:これで安心! 保育指導案の書き方 実習生・初任者からベテランまで(開仁志|北大路書房|2008/09)
富山短期大学幼児教育学科講師がまとめた指導案の書き方の解説書となります。指導案に使う用語解説が掲載されていたり、指導案によくある間違い事例といったものも掲載されているので実用的な一冊となっています。他にも各年齢ごとの指導案はもちろんのこと、行事における指導案や特別な配慮が必要な子どもへの指導案などもまとめられています。
まとめ
保育園における日案とは何かから始まり、指導計画の立て方の基本や各年齢ごとの日案についてまとめてきました。指導計画は、保育所保育指針(第11章)の中で、子どもの状況を考慮して、乳幼児期にふさわしい生活の中で、 一人一人の子どもに必要な体験が得られる保育が展開されるように具体的に作成していくと明記されている通り、柔軟に対応していくことが求められます。時に、想定していた通りに保育が進んでいかないような時に、目標に向かって軌道修正を図っていく1番の近道が日案になるのではないかと思います。子どもの様子を日々よく見て把握しながら、日案を組み直すなどして、充実した保育活動を行っていけるように保育者が対応していくことが求められます。
参考文献
保育所保育指針解説書(厚生労働省)
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