巧技台を用いた保育|幼児期に獲得しておきたい身体能力とねらい(2017/04/19)
心身の発達に極めて重要であるにも関わらず全ての幼児が十分に身体を動かす機会に恵まれていないのが現状で平成24年3月幼児期運動指針でも毎日60分以上楽しく身体を動かす事を推進しており年間カリキュラムを見直す保育園や幼稚園も多いと思われます。そこで幼児期において獲得しておきたい基本的な動き(身体のバランスをとる動き・身体を移動する動き・用具を操作する動き)といった多種多様な動きを獲得できる巧技台を取り入れた遊びを主に紹介していきたいと思います。
1、功技台とは
平均台・鉄棒・跳び箱・すべり台・はしごなどの複合遊具で多種多様な粗大運動が体験できます。固定遊具ではないため組み立ての状態や安全面には十分な配慮が必要です。継続的に行い運動能力の向上につなげましょう。
出典:聖徳大学付属浦安幼稚園
2、功技台を用いた保育のねらい
道具を使う事によって多様な動きを経験できます。運動能力の向上・柔軟性・平行性・集中力・注意力・気力・自立・忍耐・自信・バランス・持久力・チャレンジ精神・協調性・闘争心・心身の成長などがあげられます。下記に個別の効果や遊び方を紹介していきます。
■平均台(バランス感覚・注意力・集中力・平衡感覚)
- ビニールテープを床に貼り平均台に見立てて遊んでみる
- 様々な高さの平均台を使いまたぐ、くぐる、飛び越すなど様々な動作を経験してみる
- まっすぐ歩けるようになったら横歩き、後ろ歩き、頭に障害物をのせて歩く、高ばい(四つん這い)になって歩くなど多様な歩き方で遊んでみる
■鉄棒(握力・腕力・腹筋力・支持力・タイミング、リズム能力・ジャンプ力など総合的な基礎体力向上)
- ぶら下がる(3秒→5秒→10秒と増やしていく)
- 肘を曲げてぶら下がる(慣れて来たら秒数を増やしていく)
- ツバメポーズ(ジャンプして鉄棒に飛び乗り腕で身体を支える)
- ツバメから足を振って後ろへジャンプ
- 前回りにチャレンジ
- 前回り着地の時落ちるのではなく、ぶら下がってゆっくり着地する
- 足をかけてぶら下がる
- 足抜き回り
- 逆上がりにチャレンジ
鉄棒はまずは恐怖心を取り除く事が大切です。出来ないからやらないではなく、出来る事から順番にステップアップしていきましょう。前回り、逆上がりはジャンプ力、握力、腕力などの総合的な基礎体力が備わっていなければ出来るようにはなりません。最近はスポーツクラブなどの指導員の先生が来る園も多いですが、まずは遊びの中で毎日鉄棒に触れる、慣れる事からはじめてみましょう。
■跳び箱(リズム・タイミング・挑戦・判断・勇気・跳躍力・瞬発力・巧緻性)
- 床に手をつく
- ビニールテープなどで2本の線路を作り線上を歩く
- 線路をカエル歩き
- 手は床に付き足打ちする(必ずマットの上で行いましょう)
- 跳び箱に手をつき座る
- 跳び箱に手をつき足で跳び箱に乗り、ジャンプして降りる
- 跳び箱にチャレンジ
跳び箱は手をしっかりつく、何度もカエル歩きを練習する事が重要なポイントです。
■はしご(勇気・注意力・腕力・筋力)
- 横向きに置いてくぐる
- マットの上に置き手すりを歩く
- 位置を高くして手すりを歩く
- 縦に置きよじ登る
- 高い所に設置してうんていとして使用する
■滑り台(バランス感覚・注意力・平衡感覚)
はしごとセットで使用。登る、降りるの繰り返しが運動能力の向上に繋がります。
2-1、巧技台と組み合わせて使いたい遊具
■マット(回転運動・柔軟性・平行感覚・巧緻性)
- マット準備、片付け(数人で引きずる、持ち上げる、友達を乗せて運ぶ)
- お尻歩き→四つん這い歩き→膝歩き→手歩き→足揃えて跳ぶ(うさぎ跳び)→手を前について次に足を揃えて跳ぶ(カエル跳び)
- マットの下にマットを丸めたもの入れて少し勾配をつけてゴロゴロ
- バンザイして頭の上で手を合わせて自分でゴロゴロ、友達にゴロゴロしてもらう
- 数人で高ばいになりトンネルを作りくぐる。くぐり終わったら最終尾で自分もトンネルになる
- 後ろ向きで二人組になり足を開き、足の間から顔を出しジャンケン
- 前転にチャレンジ
マット運動は他の遊具にはない転がる動きが中心となって足腰や全身を使った運動ができます。跳び箱と似た動きもたくさんありますので一緒に取り組むと効果的です。
■トランポリン(脳幹活性化・バランス・正しい姿勢を保つ)
不安定な場所を一定の速度で跳ぶという事は足首や体幹が鍛えられます。なわとびや巧技台と組み合わせて運動すると効果的です。
■フラフープ・なわとび(リズム・タイミング・全身運動)
- フラフープを数個並べて両足そろえでジャンプ
- 片足ピョンピョン
- ケンケンパ
- なわとびを片手で回す
- 両手で回し縄が手前にきたらジャンプをゆっくり何回も繰り返す
- 前跳びにチャレンジ
- 大なわとびにチャレンジ(へび、大波小波など比較的容易なものからチャレンジしてみましょう)
フラフープは巧技台と組み合わせたり、自由遊びの時にコーナーを作ったり普段の遊びの中にも取り入れていきましょう。なわとびは毎日の積み重ねが「出来た」に繋がります。縄を自分で結んで片付ける事も子どもにとってはとても難しい事なので毎日の自由遊びを使って個別に励まし応援しながら練習していきましょう。
■ボール(体のバランス、移動・コントロール・腕力、脚力などの総合的な基礎体力向上)
- ボール転がし
- バウンドキャッチ
- 投げ上げキャッチ
- 並んで股下転がし・股下渡し・横向き渡し・上から渡し
- ふたり組になり転がす・バウンド・ノーバウンドで受ける
- 円上に立ちダンボールに玉入れ→カゴを背負い追いかけ玉入れ遊び
- 中あてやドッチボールにチャレンジ
ボール遊びは予期しないボールの動きや走る、歩く、よけるなどの機敏な動きなど多種多様な動きが経験できます。グループ遊びにも発展できるので仲間との協調性や闘争心など心身の成長にも繋がりますよ。
2-2、運動会に向けた運動遊びの導入例
■サーキット遊び
功技台を使った遊びとして柏木みどり幼稚園では運動会に向けて功技台を取り入れた遊びを紹介されています。運動会の課題としてだけでなく日常の遊びとして年間を通して身体を動かせるよう取り入れられているようですね。
■オリンピック遊び
- どうぶつになろう!コーナー(うさぎ、カエル、カニ、とどなどの親子お面などを作って、なりきり競争)
- ボール遊びコーナー(マジックテープでくっつくキャッチボールのようなものを用意)
- ジャンプコーナー(柱にジャンプしてシールなどで記録をつける)
- 紙飛行機飛ばしコーナー(紙飛行機を作り飛ばし最高地点にマークをつける。遊んだ後は持ち帰る)
オリンピック遊びは簡単に全身運動できる遊びです。保護者がお迎えに来た時などに親子で簡単に楽しく身体を動かせます。各コーナーや表彰台で写真を撮れるなどのオリンピック特設コーナーを作るなどして園全体で運動会に向けて盛り上げていきましょう。
まとめ
幼児期の全身を使った遊びは精神面(楽しむ)、社会面(仲間)、身体を動かす(体力向上)といった運動機能の発達や困難に立ち向かうたくましさを身につけ、達成感や出来なくても頑張って諦めない力が自信に繋がり総合的な発達を促す事に繋がります。
運動機能・感覚機能の発達を促す粗大運動、手先などを使った認知面の発達を促す微細運動は運動と知能が平行してバランスよく発達していかなければ発達の遅れに繋がる可能性もあります。ぜひこの機会に実践事例報告集などを参考に健康な身体作りを意識し、運動遊びの時間の確保及び運動能力の向上に取り組んでいただければと思います。
参考文献
幼児期運動指針 文部科学省(2012/03)
実践事例報告集 文武科学省
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