月案と保育|年齢別(0歳児、1歳児、2歳児、3歳児)の月案の立て方(2017/03/30)
保育園での生活で中心となってくるのが指導計画に基づいた保育内容です。指導計画は、年間計画から細かくいくと日案と細かく分かれていますが、今回はその中の月案について考えていきたいと思います。年間計画で定めたねらいに基づきながら、目標とする姿に向かって生活していけるようその月ごとの生活を計画していく必要があります。参考となる保育書も紹介するので、月案作成に是非お役立てください。
目次
1、月案の持つ役割
指導計画を立てることにより、行っていく保育のねらいが明確となり、また保育園全体で保育の内容を共有することが出来ます。
保育所保育指針より抜粋すると、「保育の計画はすべての子どもが、入所している間、常に適切な養護と教育を受け、安定した生活を送り、充実した活動ができるように柔軟で、発展的なものとし、また、一貫性のあるものとなるように配慮すること」が重要であるとされています。指導計画を作成する際は、子どもの状況を考慮して、乳幼児期にふさわしい生活の中で、一人一人の子どもに必要な体験が得られる保育が展開されるように具体的に作成していく必要があります。
指導計画には大きく分けて二種類あります。長期指導計画と短期指導計画です。月案は長期指導計画の方に分類されます。年間指導計画に基づき、また前の月の子どもたちの様子を見つつ、断片的なものとならないよう関連性を持たせることに留意しながら、その季節や行事も取り入れた内容を作成していきます。年間指導計画を具体化し、1ヶ月の目標を決めたうえで、生活の見通しを立てていき、ひとつひとつこなしていきましょう。
2、月案の立て方~0歳児~
保育所保育指針によると、6ヶ月未満の乳児の保育のねらいは、保険的で安全な環境をつくり、常に体の状態を細かく観察し、疾病や異常は早く発見し、快適に生活できるようにすることです。また、一人一人の子どもの状態に応じて、スキンシップを十分にとりながら心身ともに快適な状態をつくり、情緒の安定を図ります。その為には、安心できる人的、物的環境のもとで、聞く、見る、触れるなど感覚の働きが豊かになるようにするとされています。
2-1、0歳児保育の本の紹介
6ヶ月から1歳3ケ月未満児は、6ヶ月未満児と同様に安心出来る環境づくりを整えた上で、離乳を進め、様々な食品に慣れさせながら幼児食への移行を図っていきます。そして絵本や玩具、身近な生活用具が用意された中で、身の回りのものに対する興味や好奇心が芽生えることがねらいとなります。季節に応じた活動や行事を意識しながら、1ヶ月ごとに行動指針を月案として作成していきます。
以下では、0歳児の月案作成に参考にしてほしい本をいくつか紹介します。
出典:記入に役立つ0歳児の指導計画(ナツメ社 2013年2月15日)
年間指導計画から月案、さらに個人案や保育日誌の書き方まで丁寧に、かつ具体的にまとめられています。何をどのように書いたらいいのかが分かりやすく解説されているので、文章を書くのが苦手な方の強い味方になる一冊となっています。また、CD-Rに本書の中で出てくる全ての文例のデータが収録されているので、パソコンを使って指導計画を作成する時に活用出来ます。
出典:これなら書ける!0歳児の指導計画CD-ROMつき(ひかりのくに 2016年3月15日)
0歳児保育の個別計画の文例15人分の1年の成長が分かる内容となっています。実例が載っているので活きた事例として、指導計画を作成する際の参考になります。月案以外にも、保育課程、食育や避難訓練、健康支援まで様々な状況に応じた計画の書き方が収録されています。
出典:朱書きでわかる!0歳児の指導計画ハンドブック(ひかりのくに 2015年3月2日)
年間計画・月案や1日の保育の流れを保育のポイントと共に分かりやすく朱書きでまとめられた一冊です。0歳児の発達の資料や離乳食の献立案も収録されているので、指導計画を作成する際の参考になります。
3、1歳児の月案の立て方
1歳3ケ月から2歳児未満は、保育所保育指針によると、この時期は保育士は子どもの生活の安定を図りながら、自分でしようとする気持ちを尊重することが必要だと言います。
自分の気持ちをうま く言葉で表現できないことや、思い通りにいかないことで、時には大人が困るようなことをすることも発育・ 発達の過程であると理解して対応することも必要です。また歩行の確立により、盛んになる探索活動が十分できるように環境を 整え、応答的に関わることが求められます。以上を踏まえて、1歳児のねらいを立てていきましょう。
3-1、1歳児保育の本の紹介
0歳児の頃と同じで、安心出来る環境作りが大切ですが、それに加えて1歳児はねらいに、保育士とのコミュニケーションや、話すことが促されたりすることにより、言葉を使うことを楽しむことや身近な音楽に親しみ、それに合わせた体の動きを楽しむことが保育所保育指針には付け加えられています。
1歳児も0歳児と同様にねらいが決まったら、季節や行事の流れを意識しながら、1ヶ月ごとに細かく決めていきましょう。身体を動かすことが上手になってくるので、保育者や友達とリズム遊びをしてみることもお勧めです。
出典:CD-ROM付き 記入に役立つ1歳児の指導計画(ナツメ社 2013年2月15日)
0歳児の本と同様に指導計画の書き方が具体的に解説されているので新米保育士の方でもすぐに月案を作成することが出来ます。
出典:これなら書ける!1歳児の指導計画CD-ROMつき (ひかりのくに 2016年3月15日)
0歳児の本と同様に1歳児の個別の指導案が15名分、1年間の流れに沿って収録されています。
現場の活きた事例が載っているので参考になります。
出典:1歳児の発達にあったあそびアイデアBOOK (ナツメ社 2010年2月23日)
保育園での室内遊びから外遊び、造形遊び、シアター遊び、歌遊びなど1歳児の成長に合わせた遊びの紹介や言葉掛けなどの案が収録されています。月案を作成する上で、1歳児に見合った遊びに迷った際に参考になりそうです。
4、2歳児の月案の立て方について
2歳児は、保育所保育指針によると、この時期は全身運動、手指などの微細な運動の発達により、探索活動が盛んになるので、安全に留意して十分活動できるようにするとされています。また生活に必要な行動が徐々にできるようになり、自分でやろうとするが、時には甘えたり、思い通りにいかないとかんしゃくを起こすなど感情が揺れ動く時期であり、それは自我の順調な育ちであることを理解して、一人一人の気持ちを受け止め、さりげなく援助をしていく必要があります。また、模倣やごっこ遊びの中で保育士が仲立ちすることにより、友達と一緒に遊ぶ楽しさを次第に体験できるようにすると記されています。
4-1、2歳児保育の本の紹介
2歳児のねらいは以上を踏まえて、保育士を仲立ちとして、生活や遊びの中で言葉のやりとりを楽しむことや保育士と一緒に人や動物などの模倣をしたり、経験したことを思い浮かべたりして、ごっこ遊びを楽しむこと、興味のあることや経験したことなどを生活や遊びの中で、保育士とともに好きなように表現することが保育所保育指針に挙げられています。それらを意識して月案を細かく決めていきましょう。運動面でも身体の発達が目覚ましい時期なので、夏の時期は水遊びなども楽しめるようになってきます。
出典:CD-ROM付き 記入に役立つ2歳児の指導計画(ナツメ社 2015年2月15日)
年齢に即した指導計画の書き方が詳しく解説されています。各年齢ごとに揃えている方もいるほど、支持されています。新米保育士の方はもちろん、2歳児ってどうだったかな?と振り返りたい時などにも実用的です。
出典:2歳児のクラス運営(ひかりのくに 2010年2月2日)
指導計画はもちろん、クラス運営に必要なものがこの一冊に全て詰まっています。遊びやお便りの事例など、クラス運営のコツが凝縮されています。また、指針を保育に活かすコツも収録されているので、自分の行動や保育観について迷ったときは参考に出来そうです。
5、3歳児の月案の立て方は?
3歳児は保育所保育指針によると、心身ともに、めざましい発育・発達を示すときであり、それだけにていねいな対応が求められるとされます。自我もはっきりしてくる頃です。また、進んで保育士の手伝いを行ったりするようになり、人の役に立つことに誇りや喜びを抱くようになります。そのような成長を大切に受け止めて3歳児のねらいを定めていきましょう。
保育所保育指針では、身近な環境に興味を持ち、自分から関わり、生活を広げていくことや絵本、童話、視聴覚教材などを見たり聞いたりして、その内容や面白さを楽しむことが新たに挙げられています。
5-1、3歳児保育の本の紹介
3歳児の成長を伸ばせるような月案を季節ならではのことを織り交ぜながら組んでいきたいところです。友達との関りも増えてくる頃なので友達と一緒に何かを体験したり、一緒にやり遂げる楽しさを経験することも成長へと繋がっていくのではないでしょうか。お絵描きも上手になってくるので、作品を展示してみんなで鑑賞し感想を交換する機会を設けるのも楽しいかもしれません。
出典:CD-ROM付き 記入に役立つ!3歳児の指導計画(ナツメ社 2015年2月15日)
今までの年齢同様、指導計画の書き方が分かりやすく解説されています。初めて指導計画を立てる方向けの解説が充実しているので、年齢の成長に合った指導計画の立て方が豊富な事例と共に紹介されています。
出典:3歳児の保育資料 12か月のあそび百科(ひかりのくに 2008年2月13日)
保育園で活用出来そうな遊びの案が多数紹介されています。すべての遊びにねらいや主な活動内容が注釈として掲載されているので、月案を作成するときに参考に出来そうです。また、絵本の読み聞かせや紙芝居の演じ方も収録されていますので、発表会などの際も活用できそうですね。
6、1月~12月、季節を意識した月案を作成するには
0歳から3歳まで発達に応じて作成する月案は異なってきますが、月案の作成は、お茶の水女子大学子ども発達教育研究センターの幼児教育ハンドブックを参考にすると、季節からとらえたその月の様子や行事、子どもの成長の姿、生活の変化などを考慮しながら立てていくのが理想的とされます。子どもたちが自然と共生していくためにも、その季節の変化を受けとめ、豊かな感性が育つような保育計画が期待されます。
季節を意識した月案の立て方ですが、幼児教育ハンドブックによると、四季の移り変わりがある日本でも、北と南では自然環境も文化も大きく違います。それぞれの地域の文化、自然環境、慣れ親しんでいる伝統や風習を出来るだけ取り入れ、それらを軸としながら指導計画を作成していくことが魅力ある教育活動になるとしています。それを踏まえて花見や水遊び、どんぐり拾い、雪遊びなどその季節ならではの自然遊びを取り入れて月案を作成してみるのはいかがでしょうか。
更に、その月にある節分やひなまつり、クリスマスといった行事を月案に取り入れて、保育者が盛り上げていくと子どもたちのも浸透し楽しんでいけるのではないでしょうか。
まとめ
0歳から3歳の年齢ごとに月案の書き方についてまとめてきました。年齢に応じて内容は異なってはきますが、基本となるのは保育園での生活が安心して過ごせるように、子どもと保育者の信頼関係を築くことを大切にして、基本的な生活習慣を身に着けていけるよう指導していくことです。その上で、季節を楽しんでいけるような指導計画を立てて、四季を子どもたちが感じていけるような工夫をしていきましょう。
参考文献
保育所保育指針 (平成11年10月29日発行 児発第七九九号)
幼児教育ハンドブック(2004年発行 お茶の水女子大 子ども発達教育研究センター)