保育所保育指針とは|保育所保育指針の改定と改定後のポイントを解説(2017/03/16)
保育所保育指針は、すでに保育所で活躍されている保育士の方々でしたら、その存在、その内容はご存知だと思います。また、これから保育士資格を取得される方々も、資格取得の過程で学習されることでしょう。
今回は、そんな保育所保育指針についてより理解を深めて頂くため、改定の経緯や保育所保育指針解説書の活用法などについて説明していきます。
1、保育所保育指針の概要
保育所保育指針は、1965(昭和40)年に保育所における保育内容の基本原則として制定されたものであり、保育所における保育の内容に関する事項と、その他関連する運営に関する事項が定められています。
保育所は、この基本原則に沿いながら、保育所の実情や地域性などに応じて、創意工夫を図り、保育所の機能や質の向上に努めていかなければなりません。これは、保育所保育指針においても、各保育所の独自性や創意工夫が第一義的に尊重されるべきであるとしたうえで、保育所における一定の保育水準を保持するためには、各保育所が行うべき保育の内容等に関する全国共通の枠組みとして、各保育所が拠るべき保育の基本的事項を定める必要があることを示しています。
2、保育所保育指針の改定の経緯について
保育所保育指針は、1965(昭和40)年に制定されました後、1990(平成2)年、2000(平成12)年、2008(平成20)年に改定が行われました。2008(平成20)年の改定では、
①地域における子育て支援の活動が活発になる中で、保育所はもとより多様な支援の担い手など、地域の保育・子育て支援の資源が蓄積されつつあること
②延長保育や一時保育などの保護者の多様なニーズに応じた保育サービスの普及が進むとともに、保育所職員と保護者との適切な関わりが求められていること ③2006(平成18)年に保育所と幼稚園の機能を一体化した認定こども園制度が創設されたこと ④2006(平成18)年の教育基本法改正によって、幼児期の教育の振興が盛り込まれ、就学前の教育の充実が課題になっていること ⑤仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の実現が求められる中で、働きながら子育てをしている家庭を支える地域の担い手として、保育所に対する期待が高まっていること |
などを受けて、様々な見直しが図られました。なお、この改定により、これまでの局長通知から厚生労働大臣による告示に変更され、規範性を有する基準としての性格が明確になりました。
次回の改定は、2017(平成29)年度に厚生労働省から告示され、2018(平成30)年4月1日に施行される予定となっています。この改定は、
①2015(平成27)年度から子ども・子育て支援新制度が施行されたこと
②0~2歳児を中心とした保育所利用児童数が増加していること ③児童虐待相談件数が増加していること |
などの社会情勢の変化を受けて、以下の保育所保育指針の改定の方向性に沿った見直しが図られています。
■保育所保育指針の改定の方向性(平成30年4月施行予定)
①乳児、1歳以上3歳未満児の保育に関する記載の充実
②保育所保育における幼児教育の積極的な位置づけ ③子どもの育ちをめぐる環境の変化を踏まえた健康及び安全の記載の見直し ④保護者・家庭 及び地域と連携した子育て支援の必要性 ⑤職員の資質・専門性の向上 |
出典:『保育所保育指針の改定に関する中間とりまとめ』の情報を基に作成(平成29年2月現在)
2017(平成29)年2月末現在では、『保育所保育指針の改定に関する中間とりまとめ』や厚生労働省告示(案)から次回の改定の内容を確認することができます。
次回改定で注目すべき点としては、指針の構成が現行の7章立てから、「第1章:総則」「第2章:保育の内容」「第3章:健康及び安全」「第4章:子育て支援」「第5章:職員の資質向上」の5章立てに変更される点、「第2章:保育の内容」において、「1.乳児保育に関わるねらい及び内容」「2.1歳以上3歳未満児の保育に関わるねらい及び内容」「3.3歳以上児の保育に関わるねらい及び内容」に項目分けして、乳児から2歳児までの保育の在り方を重要視して、保育に関する記載の充実を図ろうとしている点、「第4章:子育て支援」において、東日本大震災を経て、安全に対する社会的意識が高まっていることを受け、「4.災害への備え」の項目を設け、以前よりもより具体的な内容を明記している点が挙げられます。
保育士として活躍される際にはどれも欠かせない内容ですので、施行後に必ず確認してください。
3、保育所保育指針のポイント
現行の保育所保育士指針の内容は、どれも大切なものばかりですが、今回は、その中から最も優先して理解して頂きたい「子どもの発達」について確認していきましょう。
現行の保育所保育指針では、子どもの発達過程を以下の8つの区分として捉えています。保育所保育指針では、この区分について「同年齢の子どもの均一的な発達の基準ではなく、一人一人の子どもの発達過程としてとらえるべきものである」としたうえで、「様々な条件により、子どもに発達上の課題や保育所の生活になじみにくいなどの状態が見られても、保育士等は、子ども自身の力を十分に認め、一人一人の発達過程や心身の状態に応じた適切な援助及び環境構成を行うことが重要である」としています。これは、保育所保育指針の発達過程はあくまで1つの指標であり、参考にすることは大切であるが、子どもの個別性を大切にして個別的に発達を捉えていきましょうということを伝えています。
■子どもの発達過程の8区分
①おおむね6か月未満 ②おおむね6か月から1歳3か月未満
③おおむね1歳3か月から2歳未満 ④おおむね2歳 ⑤おおむね3歳 ⑥おおむね4歳 ⑦おおむね5歳 ⑧おおむね6歳 |
出典:『保育所保育指針』の情報を基に作成(平成29年2月現在)
保育士の方々は、子どもへの保育を実践していく過程で、健全な発達を促す役割も担っています。この役割には、障害・疾病の早期発見ということも含まれます。その役割を果たすためには、発達の遅れが、個性によるものなのか、障害・疾病によるものなのかを見極める力が求められます。ですから、一つの指標として、この保育所保育指針で示した発達過程を参考にしつつ、子どもとのかかわりの中で、個々の発達に目を向けていきましょう。
4、保育所保育指針解説書の活用法
保育所保育指針解説書は、保育所保育指針の2008(平成20)年改定時に、指針の内容が保育現場により広く浸透し、その趣旨が理解されることや、指針に示される基本原則をしっかりと踏まえた上で、各保育所がそれぞれの特色を生かし、創意工夫を図っていくための助けとなることを目的に作成されたものです。
保育所保育指針解説書は、基本的に保育所保育指針の構成に沿って、保育所保育指針で定めた内容を詳しく、そして具体的に説明しています。つまり、保育所保育指針を理解するためのテキストのようなものです。ですから、保育所保育指針を読んで疑問に感じた部分は、この解説書でその部分を確認し、理解を深めるというような活用の仕方をおすすめします。
また、保育士が実際に保育を行ううえでのツールの1つとして活用することができるほか、子ども発達について理解を深められるよう、保育関係者や子どもの保護者などにも読んでもらえるような工夫もされています。さらに、これから保育士として活躍したいという方についても、「保育所」「保育士」「子ども」というものを理解するうえで有効なテキストになるといえます。
まとめ
保育所保育指針について説明していきましたが、いかがでしたでしょうか。社会情勢を踏まえながら子どもの発達を捉えていく保育所保育指針は、保育士として活躍されている方だけでなく、保育士を目指している方、保護者の方なども活用できる「子どもを理解する、そして子どもとかかわる際のツール」の1つであるといえます。是非、この機会に保育所保育指針に目を通して、保育の在り方について今一度考えて頂きたいと切に願います。
参考文献
『保育所保育指針』厚生労働省告示第百四十一号
『保育所保育指針解説書』(平成20年4月 厚生労働省雇用均等・児童家庭局保育課)
『保育所保育指針の改定に関する中間とりまとめ』(平成28年8月2日 社会保障審議会児童部会保育専門委員会)
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