週案の書き方|0歳、1歳、2歳、3歳児の週案のねらいと保育(2017/04/21)
1週間の生活の見通しを立てて月案や年間計画を実施していく為に保育者は週案を立てていきます。充実した保育の活動をしていく為には、週案のような指導計画は必要不可欠となってきます。これから、今一度週案とは何かから、年齢ごとに応じた週案の書き方についてもまとめていくので、週案を立てる際に、是非参考にしてみてください。
目次
1、週案とは
保育を行っていく際に、保育者は保育の計画を立てていきます。
保育所保育指針の第1章総則によると、全体的な計画は、「保育計画」とし、入所している子ども及び家庭の状況や保護者の意向、地域の実態を考慮し、それぞれの保育所に適したものとなるように作成します。保育計画は、保育の目標とそれを具体化した各年齢ごとのねらいと内容で構成され、さらに、それらが各年齢を通じて一貫性のあるものとする必要があります。また、保育計画に基づいて保育を展開するために、具体的な計画として、「指導計画」を作成していきます。
1-1、指導計画とは
保育所保育指針の第11章の長期的指導計画と短期的指導計画の作成の項目にて、各保育所では、子どもの生活や発達を見通した年、期、月など長期的な指導計画と、それと関連しながらより具体的な子どもの生活に即した、週、日などの短期的な指導計画を作成して、保育が適切に展開されるようにすることと記載されています。つまり、年間計画として立てた目標を実現していくために月案や週案、日案といった具合に一貫した流れを持った上で、日々のねらいとして落とし込んでくることが必要です。単位が小さくなってくるにつれて、年間計画や月案では書ききれなかった部分を具体的に計画していくことが出来るとされています。
お茶の水女子大学子ども発達教育研究センター『幼児教育ハンドブック』によると、週案は、月案実施のために、子どもの生活の継続性を考えながら 1週間を見通して活動を具体化して立てる指導案のことを表します。一般的に日常生活は、1週間という流れで捉えられるので、子どもの生活単位として1週間の生活を継続的な視点をもって構成していきます。週案はかなり具体的で実践的なものとなってきます。また、最近では、週案と日案を合わせた週日案を設けている保育園もあったり、週案と保育日誌を合わせた週案日誌としてまとめている保育園もあります。
1-2、週案日誌
保育所保母業務の効率化に関する調査研究から生まれた保育に活かす記録を参考に週案日誌について見ていきましょう。
保育日誌とはその日子どもたちが行っていた遊びや生活の様子などといった保育の状況を1日ごとに記録として残していくもののことを指しますが、遊びなどはその日1日では終わらず継続的に続いていくことも考えられます。そうした時に、保育日誌と週案が同じ用紙に記載されていると、次の日以降の展開を予想した上で、新たに目標やねらいを設定したり、子どもたちが求めている内容により近い案が立てられるなど、保育の活動が円滑に進んでいく効果的な手法だと言えます。
週案日誌として、まとめて記録していく際に、必要となってくる項目は、週案としては、ねらいと内容を具体的に定めた上で、子どもの動きを想定した今後の子どもたちの展開を記載していかなくてはいけません。また、ねらいに沿った遊びが発展していく為に必要なものなども併せて記載していきます。日誌としては、その日の子どもたちの様子や保育の状況はもちろんのこと、子どもたちに対する保育者の対応や感じたことなども記載します。評価や反省なども一緒に記入して、次の週案を立てる時に活かしていける材料としていきましょう。
2、週案のねらい
週案のねらいは、長期指導計画に基づき、その週の計画をより具体的に記録することにあると保育に活かす記録にて、考えられています。実践の方法や配慮点などを文章化することにより、保育者がより具体的に目指していく目標を意識することも出来る大切な過程となってきます。
また、月案作製の段階では、書き表せなかった部分も具体的になるので、保育現場では欠かすことの出来ない必要な書類として定着しているものとなっています。
2-1、ねらいを決めるうえで重要なこと
今度は、週案のねらいの立て方について誠和幼稚園を参考に考えていきましょう。
誠和幼稚園では、月案や週案は養護に包まれて教育があるということを忘れずに立案していくことを提唱しています。養護とは、乳幼児が困難を乗り切る力や〇〇をするという主体的な行為を身につける前に、保育者が子どもを守り、情緒の安定を図り、衛生が保たれた環境を提供しながら子どもたちの生理的欲求を満たすことを指します。また、1週間のねらいは1つだけではありません。例えば「身体を動かして遊ぶことを楽しむ」という立案だけでなく年案や月案の「ねらい」を考慮しなければなりません。
ねらいとは発達の方向性であり、発達過程として『おおむね○歳』を参考にした到達目標でないことを見直していく必要があると誠和幼稚園は訴えています。週案のねらい作成は、保育所保育指針第二章の発達の特性で記載されている子ども同士の発達において「身体的・知的・情緒的・社会的・道徳的発達」が促されることを充分に理解した上で、ねらいの中に反映させていく必要があります。更に、子どもの発達は人間関係と言葉、社会的発達と道徳的発達など絡み合って発達していることを考慮すると発達の方向性として園の行事、季節や地域の実態、子どもの実情、保護者の要望を含めた保育方針をチェックしながら保育課程にふさわしいかどうかのねらいを立案したいものです。
3、週案の書き方
具体的な週案の書き方で参考になりそうな保育書を紹介していきます。
是非、作成する際に迷ったら参考にしてみてください。
出典:0~5歳児 指導計画の書き方がよくわかる本 (ひかりのくに|2013/01)
「保育とカリキュラム」から生まれた150名以上の編集委員による指導計画の入門書となっています。朱書きで解説されているので、注意すべき点がすぐに分かり活用しやすい作りとなっています。
出典:発達が見える! 0・1・2歳児の指導計画と保育 (学研プラス|2013/02)
毎月の指導計画と保育資料を連動して掲載されているので、その時期の子どもとどう関わったらいいかが分かります。指導計画Q&Aも収録されているので、疑問に思いがちなことを解決することが出来ます。
出典:保育サポートブック 0・1歳児クラスの教育 (世界文化社|2013/01)
保育計画の作成から保育プロジェクトの計画立案、記録の取り方など日々の保育で必要となるあらゆるものが網羅された一冊となっています。今回紹介したのは、0・1歳児クラスのものですが2歳児クラス向け、3歳児クラス向けのものもそれぞれ発刊されています。
3-1、0歳児の週案
習志野市の公開指導案として紹介されている0歳児の週案を参考に0歳児の週案について見ていきましょう。
習志野市の保育園では、0歳児の目指す姿として、自分の気持ちを表情や仕草、喃語で表現しようとする「心豊かさ」と、周囲の物などに興味を示し自ら手を伸ばすような「たくましさ」とした上で、週のねらいを、養護面では、気温に応じて防寒着を用意するなど、衣服の調整をしながら健康に過ごせるようにすることを、教育面ではお座りやハイハイをしたり、歩いたりしながら秋の自然物に触れて機嫌よく過ごすこととしています。一見、目指すべき姿との関連はなさそうに思えますが、上記の週案のねらい通り保育を行ってみた結果、戸外に出ようと帽子や靴を取りに行こうとしたり、外を指差して「あっ、あっ」と戸外に出たいと いう要求を表したりしている姿が見られたそうです。また、
指先で小石を拾ったり、拾った葉や石を持ち歩いたりする子どももいました。自分の気持ちを伝えようとする心豊かさや、自分で興味を持ったものを触ってみるたくましさという目指す姿に即した結果に結びついたと言えます。
このように、こうなるであろうという子どもの行動を予測して、目指す姿(ねらい)に近づいていけるよう保育者が働きかけることが必要となってきます。
3-2、1歳児の週案
同じく習志野市の公開指導案として紹介されている1歳児の週案を見ていきましょう。
1歳児の目指すべき姿は0歳児と同じで「心豊かさ」と「たくましさ」を設定しています。そして週のねらいを養護は入室時や食事前には介助や見守りをしながら、手を洗うことに興味がもてるようにすること、教育は見つけたこと、感じたことを保育者や周りの子どもに身振りや片言で伝えようとすることと、秋の自然に触れながら、興味や関心をもった場所で保育者と一緒に体を動かして遊ぶことを喜ぶこととしています。0歳児同様自分の気持ちを伝えようとする意思を大切に育てながら、歩けるようになりよりダイナミックに体を動かせることが出来るので探索の幅も広げていけます。
3-3、2歳児の週案
習志野市公開研の2歳児の週案を見ていきます。
週のねらいは、養護がうがいのやり方を知らせ、保育者に促されながら行えるようにしていくことと、
一人一人の気持ちを受け止め、言葉や表情で自分の思いを表せるようにしていくこととし、教育は
どんぐりやまつぼっくり、落ち葉などに触れ、保育者や同じ場にいる友達と一緒に繰り返し遊ぶこ とを楽しむとしています。2歳児クラスでは、この週は虫探しをして、落ち葉や木の実拾いなどを喜び、保育者や気の合う友達と一緒に探したり、虫が動く様子を一緒に見たり、たくさん集めたりする姿が子どもたちの間で見られました。また、拾ったものを「ぼくの」と言って大切そうに持ち歩く姿もありました。このように、自然を観察しながら楽しむ「たくましさ」と保育者や友達と共に楽しむ「心豊かさ」が0歳児から継続してテーマとして掲げていくことで流れに一貫性が出て、子どもたちの成長にも繋がっていっていると考えられます。
3-4、3歳児の週案
加須市立加須幼稚園の週案も参考になります。
まず、週案を組む前の週の子どもたちの様子をまとめていきます。加須幼稚園では、友達と簡単なルールのある遊びを楽しんでいたり、どんぐりなど秋の自然のものに触れて楽しんでいたことを踏まえて、週案のねらいの中に、引き続きたくさんの友達と簡単なルールのある遊びを楽しむことと、自然のものを拾ったり使って遊んだりして、秋の自然にふれて遊ぶことを加えています。前の週の子どもたちの様子を引き継いでいくことにより、子どもたちの今1番興味のある保育活動を行いながら、戸外で思い切り体を動かしたり、教師や友達と一緒に遊んだりするといったことや、落ち葉や木の実を拾ったり、葉の形や大きさなどに気付いたりするといった保育者が子どもたちに身に着けていって欲しいと望む保育の内容も実現していくことが出来ます。
また、友達と簡単なルール遊びをしていくことをねらいとしたら、保育者がねらいを達成する為にしていく援助として、友達のしている遊びをさりげなく知らせ、友達と同じものをもって遊びたい気持ちを受け止め援助しながら、子ども同士がかかわって遊ぶきっかけをつくっていくよう働きかけたり、友達と一緒に遊ぶ楽しさが感じられるように、ゴザを敷いたり、段ボールのしきりを使ったりなどより遊びを楽しめるような道具を用意するなどして、同じ遊びをしている子どもたちが一緒にいることができるような環境を準備します。事前に保育者が子どもの動きを予想して、ねらいに近づくように準備を整えていくことによって質の高い保育となっていくことが期待出来ます。
まとめ
週案についてまとめてきました。週案や日案などの指導計画は保育を行う上で欠かすことの出来ない必要な書類となってきます。週案のねらい作成は、身体的・知的・情緒的・社会的・道徳が的発達が促されることを充分に理解した上で、ねらいの中に反映させていく必要があることが分かりました。どこか1つの面を達成させるのではなく関連性を持たせて子どもたちを伸ばしていかなくてはいけません。
また、実際の保育園の週案の例を見ても、年間計画で定めたねらいに従って週案を立てて保育を行っていくことにより断片的ではなく連続性と一貫性のある保育が成り立っていることが分かりました。保育内容の質を高めていく為にも、是非これらのことを意識して週案を立ててみて下さい。
参考文献
こちらの記事もおすすめ
- まなぶ
-
保育士も必見!子どもの新しい習慣がはじまるときに実践したい5つのヒント
ほんとんどの人は、毎日の習慣が、日々を豊かかつ効率的にしてくれると知っています。子どもの成長
- まなぶ
-
ハーバード大学院の研究によると、人種・文化そして年収や階級関係なく、「あ
- あそび
-
巧技台を用いた保育|幼児期に獲得しておきたい身体能力とねらい
心身の発達に極めて重要であるにも関わらず全ての幼児が十分に身体を動かす機会に恵まれていないの
- まなぶ
-
「身につけるなら幼いうちから」という考えが広がり、小学校でも必修科目となった英語教育。いまで