レッジョエミリア保育|実践入門と保育環境にどう取り入れるか(2017/02/20)
「先進的」「世界で最も前衛的」と世界各国から高い評価を受ける幼児教育法、「レッジョエミリア・アプローチ」をご存じですか?
レッジョエミリアとはイタリア北部にある人口が16万人程度の小さな都市。この都市がなぜここまで教育関係者から注目されるような都市になったのか、またレッジョエミリア・アプローチの魅力や日本の保育園にどう取り入れていくかについて、これから詳しくお伝えしていきたいと思います。
目次
1、レッジョエミリア・アプローチの起源
子ども達の可能性を最大限に引き出し、豊かな表現力を生み出すレッジョエミリア・アプローチ保育法。
元々レッジョエミリア市ではイタリアで初めて公立幼稚園を創設するなど、幼児教育に力を入れていた都市でしたが、現在のように世界から高く評価されるものではありませんでした。
それを「未来の教育のあり方の見本」と称されるまでにしたのは、レッジョエミリア市で教育改革を進めていたローリス・マラグッツィ氏です。
彼がレッジョエミリア・アプローチの様式を確立。その考え方が広く知れ渡り、現在では世界各国の教育関係者が訪れる町へと変化を遂げています。
1-1、レッジョエミリア・アプローチ、保育の基本理念
レッジョエミリア・アプローチは具体的にどんな保育方法なのでしょうか。
創設者であるローリス・マラグッツィ氏が書いた「冗談じゃない 百のものはここにある」という詩を見てみましょう。
レッジョエミリア・アプローチはこの考えを軸に成り立っているといっても過言ではありません。
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引用:「冗談じゃない 百のものはここにある」(ローリス・マラグッツィ)
無理に足並みを揃えさせるのではなく、子ども達それぞれの意思や個性を尊重しつつ、表現力やコミュニケーション能力、探求心を育む保育方法である事がお判りになるのではないかと思います。
2、レッジョエミリア・アプローチを実践してみよう【入門編】
実際にレッジョエミリアを取り入れている施設で行われているのが、「プロジェクト活動」という活動方法です。
これは少人数のグループを組み、長期的に取り組む活動の事を指します。
一つのテーマ(展示する作品の制作等)を与え、「何を作るか」「どうやって作るか」「誰が作るか」「どうやって飾るか」等を話し合い、一つの目的に向けて話し合い、計画し、実行し、達成感を味わう事を目的としています。
2-1、プロジェクト活動での保育士の役割は?
保育士も子ども達と同じグループに参加しているのですが、ここでは「指導」はしません。
保育士に求められているのは子ども達に寄り添い、会話をしつつ、子ども達と一緒に作品が出来るまでの課程を体験するだけです。
必要に応じて保護者や地域住民にも協力をしてもらう事もありますが、これも子ども達で話し合って決めていきます。大人がリーダーになる事はありません。
2-2、プロジェクト活動から学べる事
一般的な保育は先生が子どもに「指導」をする事で成り立っています。子どもは「指導」されたように活動する事を義務づけられているのです。
しかし子どもが成長していく過程で必ず「指導」してくれる人がいるとは限りません。
自分で考え、自分の意思を伝えるために自分の言葉で話し、他人の意見にも耳を傾ける必要があります。どういう話し方をすれば相手に伝わるかを考えさせる事は子どもの成長にとってはプラスになります。
プロジェクト活動では子どもが主体となって進めるので、当然意見のぶつかり合いもあるでしょう。これは自然な事です。
創設者マラグッツィが言うように、子どもはそれぞれの考え方があり、みんなが同じ考えでスムーズに物事が進む事の方がとても不自然な事なのです。
ぶつかり合った時にどうするか、考え、悩みながら、共通の目標に向かって進んでいく事にこそプロジェクト活動を行う意味があるのではないでしょうか。
こういった理由から、プロジェクト活動では、コミュニケーション能力、協調性、思考力、言葉等の表現力を大きく伸ばす結果につながると言われています。
2-3、ドキュメンテーションで日々の活動やプロジェクト活動を「記録」
子ども達がプロジェクト活動において学んだこと、結果だけでなく、その過程である話し合いの内容等を写真や動画、メモなどで記録し、誰でも閲覧できるように展示します。これによって、保育士だけではなく子ども達もこれまでの過程を振り返る事が出来ますし、次の学びにも生かす事が出来ます。また、地域の人に日々の活動を伝える役目も果たしてくれます。
3、驚くべき保育環境
もう一つ、レッジョエミリア・アプローチの特徴的な活動の一つが、美術専門家や教育専門家といったプロフェッショナルが保育士とともに子どもの創作活動のお手伝いをしています。
子どもが自分の好きなように自由に表現する場として、室内に「アトリエ」が設けられており、園庭さえも「表現の場」として活躍しています。
保育園で子どもが表現するものといえば、画用紙やクレヨン、粘土等を思い浮かべるものですが、ここでは小石や落ち葉、木の実、石、砂といった自然のものから、金属や電気製品等の人工物、パソコン、ドラムセット等さまざまなものがあります。
誰かに「〇〇を作りなさい」と指示をされた訳ではなく、自らの感性で創作し、他の子どもの創作物も目にする事が出来る環境で、子ども達は日々、五感が磨かれていき、想像力や創造力を刺激される毎日を送る事が出来ます。
また、通常の保育であれば当然次の活動に移る前にお片付けをさせるものですが、レッジョエミリア市の保育園では子どもが作ったものをそのままの状態にしています。
子ども達の感性がたくさんつまった園全体が「近代美術のギャラリー」として高い評価を受けているのはそういった理由からではないでしょうか。
4、日本のレッジョエミリアを取り入れている保育園
レッジョエミリア・アプローチを取り入れている保育園は東京にもある事をご存じでしょうか?2つの保育園をご紹介します。
4-1、Kids Oasis
「ダメ」を封印して「やってみよう」を応援するというコンセプトの元、レッジョエミ
リアアプローチの教育原理を取り入れ、体全体を使ってダイナミックな創作活動を行っています。雨の日にはレインコートを着てお散歩に出かけ、水たまりに足を入れる等、雨の日にしかできない体験をさせ、子どもの五感を刺激するプログラムが用意されています。
参考元:Kids Oasis
4-2、familiar PRESCHOOL
子供服ブランドとして有名なfamiliarが運営するPRESCHOOLです。
レッジョエミリア・アプローチを軸としつつ、英語を習得、また食育にも力を注いでいる保育園で、英語、アート、音楽等、幅広い講師がいるのも特徴です。保育スタッフは「活動を見守る」というスタイルで関わる事を目指しています。
まとめ
「指導」を押し付けるのではなく、個を尊重し、自由な発想を大切にするレッジョエミリア・アプローチ。保育士、子ども、保護者、地域住民が対等な立場であり、お互いに学び合う事が大前提です。それこそがこの保育方法の大きな魅力であり、世界中の教育者から「未来の教育のあり方の見本」と言われる所以なのでしょうか。
レッジョエミリア・アプローチの考え方が日本にもっと広がり、保育士たちが「指導」ではなく、「見守り」を意識する事で子どもの可能性を無限に広げる事が出来るといいですね。
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