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血球貪食症候群の看護|症状や治療法、看護の5つのポイント(2020/12/19)

公開日: : 最終更新日:2022/03/10 北海道 看護師 看護用語 内科 

血球貪食症候群は国内での発症者は数百人程度で、年間発症者は数十人程度と比較的珍しい病気1で、症例数は多くありません。しかし、致死的な経過をたどることが多いので、看護師は正しい知識を持ち、適切な看護ができるようにしておく必要があります。

血球貪食症候群の基礎知識や症状、治療方法、5つの看護のポイントをまとめましたので、実際の看護の参考にしてください。

 

1、血球貪食症候群とは

引用:甲状腺と血球貪食症候群[甲状腺 専門医 橋本病 バセドウ病 超音波エコー 長崎甲状腺クリニック大阪

血球貪食症候群(Hemophagocytic syndrome; HPS)とは、活性化したマクロファージが白血球・赤血球・血小板を食べてしまう病気です。

何らかの原因で、骨髄や脾臓、リンパ節などの網内系でマクロファージや組織球が活性化すると、血液成分の血球(白血球・赤血球・血小板)を貪食するようになります。

血球貪食症候群は、一次性(遺伝性)と二次性(反応性)に分かれます。

一次性(遺伝性)血球貪食症候群 ・家族性血球貪食性リンパ組織球症

・X連鎖リンパ増殖性疾患(XLP)

・Griscelli症候群

・Chediak-Higashi症候群

二次性(反応性)血球貪食症候群 感染症関連血球貪食症候群

①ウイルス性

②細菌性

③真菌性

④その他

・悪性腫瘍関連血球貪食症候群

悪性リンパ腫などリンパ腫関連

②その他の悪性腫瘍

・自己免疫疾患(全身性エリテマトーデスなど)

・薬剤アレルギーに起因するもの

・移植関連血球貪食症候群

家族性の血球貪食症候群の原因となる遺伝子はいくつか発見されていますが、遺伝性の約50%の症例では原因は不明です。

また、二次性血球貪食症候群は様々な疾患が原因で発症することが分かっています。しかし、二次性血球貪食症候群を発症する共通の原因は解明されていません。

 

2、血球貪食症候群の症状

血球貪食症候群は、発熱や全身倦怠感、肝臓や脾臓の腫大、リンパ節の腫脹、血球減少、凝固異常、DIC播種性血管内凝固症候群)、下痢、皮疹、肝障害による黄疸、高LDH血症、高フェリチン血症、高トリグリセリド血症、腹水、けいれん、意識障害などの症状が出ます。

抗生剤投与に反応しない持続する発熱が最も典型的な症状で、血球貪食症候群の87%の患者で発熱が見られ、肝臓や脾臓の腫大やリンパ節の腫脹は40~50%の患者に見られます。2

二次性血球貪食症候群の場合、症状の程度は基礎疾患の病勢に左右されます。病勢をコントロールできなければ、血球貪食症候群の症状は重篤化し、多臓器不全に移行して死亡することもあります。

 

3、血球貪食症候群の治療

血球貪食症候群の治療方法は、一次性血球貪食症候群か二次性血球貪食症候群かによって異なります。

 

■一次性血球貪食症候群の治療

国際組織球学会の「HLH-2004プロトコール」によると、一次性血球貪食症候群の場合はまずは、抗がん剤と免疫抑制剤(エトポシド・シクロスポリン・デキサメタゾン)を併用した治療法が推奨されます。

ただ、家族性の血球貪食症候群や遺伝子異常が同定された症例、その他重篤な状態が継続または再燃を繰り返す場合は、造血幹細胞移植の適応となります。造血幹細胞移植を行った場合は治癒が期待できますが、移植治療成績は3年生存率は約60%とそれほど高くありません。

 

■二次性血球貪食症候群の治療

二次性血球貪食症候群の治療は、基礎疾患の治療と逸脱した免疫制御機構を是正することが基本になります。

ステロイド剤やシクロスポリンによる免疫抑制療法、また高サイトカイン血症を是正するために血漿交換療法が行われることもあります。

 

4、血球貪食症候群の5つの看護のポイント

血球貪食症候群の患者に適切な看護ができるように、血球貪食症候群の看護のポイントを確認しておきましょう。

 

 

■セルフケアの援助

血球貪食症候群では、抗がん剤を用いた治療が行われることがあります。「HLH-2004プロトコール」では、早期から抗がん剤と免疫抑制剤を併用した治療が行われますが、推奨されているエトポシドは効果が強い分、副作用も強い抗がん剤です。

そのため、副作用の出現により、患者はセルフケア不足のリスクがあります。

看護師は患者のADLや副作用の程度、身体的状態・精神的状態、その他の要因から総合的にアセスメントし、セルフケアの支援をしていきましょう。

また、看護師主導でセルフケアの支援を行うのではなく、看護師が考えるセルフケアの問題点と患者が考える問題点をすり合わせた上で、必要な援助を行っていくことが重要です。

セルフケアについては「セルフケアの看護|オレムの看護理論や看護目標・看護計画、看護研究」を参考にしてください。

 

■感染予防への援助

血球貪食症候群の治療では、免疫抑制療法を行います。造血幹細胞移植後にも免疫抑制剤を用います。

そのため、血球貪食症候群の患者の看護では、感染予防への援助をしなければいけません。

看護師がスタンダードプリコーションを徹底するのはもちろんですが、環境整備をしたり、患者の清潔ケア・口腔ケア等を行いましょう。

また、患者や家族への感染予防の重要性の説明や感染予防方法を指導してください。

感染の看護は「感染の看護|経路、予防、徴候、スタンダードプリコーションと看護計画」で説明しています。

 

■異常の早期発見

血球貪食症候群の患者の看護をする時には、異常の早期発見に努めましょう。

血球貪食症候群では、様々な症状が現れますし、治療に用いる抗がん剤や免疫抑制剤は効果が高い分、副作用が現れやすいです。

また、感染予防を行っていても、感染症を発症するリスクはあります。

そのため、看護師は患者の状態をしっかり観察し、自覚症状や他覚症状の変化に留意すると共に、検査結果にも注意を払って、異常の早期発見に努めなければいけません。

 

■安楽への援助

血球貪食症候群の看護では、安楽への援助も重要なポイントです。

血球貪食症候群では発熱や全身倦怠感の症状が現れます。

さらに抗がん剤などの副作用で悪心や嘔吐が現れることがあります。

造血幹細胞移植を前には大量の抗がん剤を投与し、副作用に苦しむ患者は多いです。

そのため、看護師は患者が少しでも安楽な療養生活を送ることができるように、できる限り苦痛を取り除き、安楽のための援助を行っていくようにしましょう。

どのようなケアが「安楽なケア」なのかは、患者1人1人異なります。患者のニーズを的確にとらえ、ストレスに感じていることをできるだけ取り除いていくようにしましょう。体位ポジショニングを工夫するだけでも、安楽な看護につながります。体位や体位変換については、「看護師が行う6つの体位と体位変換の方法および注意点」で詳しく説明しています。

 

■精神面の援助

血球貪食症候群の看護では、精神面の援助も忘れないようにしましょう。

「血球貪食症候群」という耳慣れない病気になり、副作用の強い薬剤を使い、さらに予後が悪い病気になったら、患者とその家族は不安になり、精神的に不安定になります。

不安から不眠になったり、うつ状態になることも珍しくありません。

血球貪食症候群の患者と家族には、不安を傾聴し、適切な情報提供を行うなどのケアをしていきましょう。また、不眠やうつ状態などが見られたら、すぐに主治医に報告するなどの対処が必要です。

 

まとめ

血球貪食症候群の基礎知識や症状、治療法、5つの看護のポイントをまとめました。血球貪食症候群は症例数は多くありません。しかし、感染症や悪性腫瘍、全身性エリテマトーデスの患者が発症することもありますから、適切な看護ができるように、正しい知識をしっかり身につけておきましょう。

 

参考文献

1)血球貪食症候群(HPS、HLH) | 京都府立医科大学での小児がん治療 | 京都府立医科大学 小児科学教室

2)熊倉俊一「血球貪食症候群」臨床リウマチ30巻241~251 2018年

熊倉俊一「9.HPS の病態・診断・治療」血栓止血誌 19(2) : 210~215,2008年

・神戸大学医学部附属病院 土井久容「造血幹細胞移植の看護」

岡本麻衣 看護師

1986年生まれ。北海道札幌市出身・在住。同市内の看護学校を卒業後、北海道大学病院の内科で2年勤務。その後、同市内の個人病院で6年間勤務し、結婚・出産を機に離職。現在は育児をしながら、看護師としての経験を生かし、WEBライターとして活動中。

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