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ライフサイクルと看護|各発達段階の特徴と看護のポイント(2020/12/12)

公開日: : 看護師 看護用語 東京都 全科共通 

私たちは生まれてから死ぬまで、様々な発達段階を経ていきます。そして、各年代で直面する健康問題・発達課題は異なります。

あなたは患者さんの看護をする上で、ライフサイクルを意識しているでしょうか?疾患に加えて、患者のライフサイクルを考慮することで、より良い看護ができるようになります。ライフサイクルの基礎知識と各発達段階の特徴、発達段階ごとの看護のポイントをまとめました。

 

1、ライフサイクルとは

ライフサイクルとは、人生の成長過程のことです。人生の経過を誕生から死まで円環に描いて説明するため、「ライフサイクル」と言います。

ライフサイクル理論はユング、エリクソン、レビンソン、スーパーがそれぞれ提唱していますが、医療・看護の世界でもっとも有名なものはエリクソンの心理社会的発達理論(漸成的発達理論)です。

エリクソンは人生の発達段階を8つに分けて、それぞれの発達段階には発達課題(心理社会的危機)があり、その発達課題を克服することで獲得できる要素があると提唱しています。

エリクソンのライフサイクルの8つの発達段階はこちらです。

発達段階 年齢
乳児期 0歳~1歳半
幼児前期 1歳半~3歳
幼児後期(遊戯期) 3歳~6歳
学童期 6歳~13歳ごろ
青年期(思春期) 13歳ごろ~22歳
成人期(初期成人期) 22歳~40歳
壮年期 40歳~65歳
老年期 65歳~

※文献により、各発達段階の名称や年齢は異なることがあります。

エリクソンは「アイデンティティ」という概念を提唱した人物でもあります。

 

2、ライフサイクルの各発達段階の特徴

エリクソンのライフサイクルは、8つの発達段階に分けられています。このライフサイクルの8つの各発達段階の特徴を説明していきます。

 

■乳児期(0歳~1歳半)

・発達課題=基本的信頼感VS不信

・獲得=希望

乳児期は自分が信頼できる母親や保護者に出会い、身の回りの世話をしてもらうことで、自分自身と他者に対する信頼が生まれます。しかし、信頼できる母親や保護者に出会うことができなければ不信が生まれ、精神機能が正常に発達しないことがあります。

 

■幼児前期(1歳半~3歳)

・発達課題=自律性VS恥や疑惑

・獲得=意思

幼児前期は言葉が発達し、「自分でやる」という自己主張が出てきます。その中で、自律性を持ち、「自分でできた」と思えることが大切ですが、うまくいかなかった時には葛藤が生まれて、恥や疑惑が出てきます。

 

■幼児後期(3歳~6歳)

・発達課題=積極性VS罪悪感

・獲得=目的

幼児後期は幼児前期で育まれた自律性や意思から、「自分でやってみる」と自ら行動を起こす積極性が生まれてきます。しかし、この行動で保護者や周囲から否定されたり、怒られたりすると、罪悪感が生じます。

 

■学童期(6歳~13歳ごろ)

・発達課題=勤勉性VS劣等感

・獲得=有能感(自己効力感

学童期は学校生活の中で、勝ち負け・優劣を経験していくことになります。この中で、目的を達成するために勤勉性を身につけていきます。

勤勉性を身につけることで、「やればできる」と思えたり、教師や保護者から「頑張ったね。よくできたね」とほめられると、有能感・自己効力感を得ることができます。

しかし、勤勉性を身につけることができないと、「何をやってもできない」という劣等感を持つことになります。

 

■青年期(13歳ごろ~22歳)

・発達課題=アイデンティティの確立VSアイデンティティの拡散

・獲得=忠誠(帰属感)

青年期(思春期)は学校以外の様々な社会とかかわりを持つ年代です。その中で「自分は何者か?」、「自分の存在・役割とは?」という疑問や葛藤を持つようになります。

「自分はこういう人間だ」と自信を持つことができれば、自我同一性(アイデンティティ)を確立できます。アイデンティティを確立できれば、自分の居場所を見つけることができますが、アイデンティティが拡散すれば、悩み続けることになります。

 

■成人期(22歳~40歳)

・発達課題=親密性VS孤立

・獲得=愛

成人期は親密になれる恋人・配偶者・友人を見つけ、関係性を構築する時期ですが、それができないと孤立することになります。

 

■壮年期(40歳~65歳)

・発達課題=生殖VS停滞

・獲得=世話

壮年期は次の世代を育てる時期です。子供を育てたり、自分が今までのライフサイクルの中で培ってきたものを次世代に伝えます。これが「生殖」です。しかし、次世代とのかかわりが少ないと停滞し、何も生み出さなくなります。

 

■老年期(65歳~)

・発達課題=自己統合VS絶望

・獲得=賢さ

老年期は老いの時期です。そして、死が近づきつつあることを実感します。

その時に、今までの自分を振り返り自分を肯定し「良い人生だった」思えるか、絶望するかは大きな問題です。

 

3、ライフサイクルに応じた看護のポイント

ライフサイクルの各発達段階に応じた看護のポイントを見ていきましょう。

 

■乳児期

乳児期は赤ちゃんと母親(保護者)の関係性に注意して、看護をしていく必要があります。

次のような要因があると、赤ちゃんと母親の関係性に問題が生じることがあります。

・赤ちゃん:未熟児、発達が遅い

・母親:虐待体験がある、育児ノイローゼ、産後うつ、その他の健康問題

乳児期に赤ちゃんが母親を全面的に信頼できない場合、精神機能が正常に発達しないなどの健康問題が生じるリスクがあります。

そのため、看護師はそのような問題が生じていないかを観察し、問題があるなら早期に介入し、解決するための適切な看護をする必要があります。

また、不慮の事故で亡くなることが多い時期でもありますので、家庭内外での不慮の事故の具体例などを看護師が保護者に伝え、注意喚起していくことも大切です。

 

■幼児前期・後期

ライフサイクルを考慮した幼児期の看護のポイントは発育です。

年齢に応じた正常な発達をしているのか?発達の遅れはないかを観察していきましょう。

ライフサイクルの中で、自律性や積極性を養う幼児期において、「うちの子、成長が遅いかも」、「何か障害があるかも」、「発達障害があるかも」、と不安になる保護者はたくさんいます。

それを放っておくと、虐待につながることもあります。保護者をむやみに安心させる必要はありませんが、看護師として適切な情報提供をし、必要であれば他職種と連携しながら支援していくことが重要です。

また、保護者のライフスタイルが子どもの生活リズムに大きく関係する時期です。

看護師は子どもの生活リズムは整っているか、睡眠時間は確保されているか、食生活は乱れていないかなどの情報収集を行い、保護者の生活環境を考慮しつつ、必要があれば改善を促していく必要があります。

 

■学童期

学童期の健康問題には次のようなものがあります。

・肥満や痩せ

・永久歯の虫歯

学童期において、これらの問題は保護者の協力が必要不可欠になりますので、看護師はこれらの問題の指導をする時には子供と保護者を一緒に指導するようにしましょう。

また、学童期にはADHDや自閉症スペクトラム障害、LDなどが目立つようになります。チックも同様です。これらは非常にセンシティブな問題ですが、看護師はこれらの障害に対して正しい知識を身につけ、適切な看護・情報提供ができるようにしておきましょう。

小児看護については、「小児看護のポイント|最適なケアのための看護技術・看護計画、小児専門看護師について | ナースのヒント」で詳しく説明していますので、参考にしてください。

 

■青年期(思春期)

ライフサイクルにおける青年期(思春期)の健康問題には、次のようなものがあります。

・性行動(避妊や予期せぬ妊娠、性感染症)

・酒やタバコ

・精神面(引きこもりや統合失調症等)

また、女性の場合は、月経異常や摂食障害なども青年期には起こりやすい健康問題です。

青年期に限ったことではないものの、これらの健康問題には看護師だけでなく、多職種で取り組む必要があります。

看護師はチーム医療の調整役になることが多いので、多職種の連携がうまくいくようにしていきましょう。

 

■成人期

成人期は壮年期や老年期に比べると、明らかな健康問題を抱えている人は少ないです。

成人期の生活習慣が壮年期以降の健康状態に大きく影響しますので、成人期から生活習慣予防のための看護をしていきましょう。

 

■壮年期

壮年期は高血圧糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病の基礎疾患を抱える割合が増えてきます。また、働き盛りの年代でもあります。

そのため、看護師は生活習慣病の予防を重視した生活指導をしながらも、患者の日常を考慮しなければいけません。忙しい日常の中でも無理なく続けていけるように、1人1人の家庭環境・仕事・経済状況などを考慮して、生活習慣病予防の指導していきましょう。

また、壮年期は男女ともにホルモンバランスの変化による更年期障害が現れる時期でもあります。更年期障害は男女共に起こるものであることや家族の協力や理解が必要であることを説明し、適切な治療を受けられるような看護をしていきましょう。

 

■老年期

老年期になると、ほとんどの人が何かしらの基礎疾患を抱えることになります。

また、介護の問題も生じてくる時期でもあります。

老年期の看護をする時には、患者への看護だけではなく、家族への看護も必要不可欠です。

患者の治療・療養に協力してくれるキーパーソンは誰か、どの程度の協力を得られるのか、同居か別居かなどの情報収集をしながら、看護をしていきましょう。

また、介護をする家族の疲労度にも注意していく必要があります。

老年期・高齢者の看護は「高齢者の看護計画|特徴・役割と看護過程・看護目標の3つの大切なこと | ナースのヒント」で説明していますので、参考にしてください。

 

まとめ

ライフサイクルの基礎知識とライフサイクルの各発達段階の特徴と看護のポイントをまとめました。

より良い看護をするためには、ライフサイクルの各発達段階の特徴や健康問題などを把握しておく必要があります。ライフサイクルと発達段階における健康課題を今後の看護に活かしてください。

 

参考文献

河井亨「E. H. Erikson のアイデンティティ理論と社会理論についての考察」京都大学大学院教育学研究科紀要 (2013), 59: 639-651

ライフサイクル | 武蔵浦和メンタルクリニック | さいたま市南区

・ライフステージに応じた目標と取り組み-宇都宮市

山岸愛梨 看護師

東京都在住、正看護師。自身が幼少期にアトピー体質だったこともあり、看護学生の頃から皮膚科への就職を熱願。看護学校を経て、看護師国家資格取得後に都内の皮膚科クリニックへ就職。ネット上に間違った情報が散見することに疑問を感じ、現在は同クリニックで働きながら、正しい情報を広めるべく、ライターとしても活動している。

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