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クッシング症候群の看護|症状や原因、5つの看護ポイント(2020/12/02)

公開日: : 最終更新日:2021/10/05 北海道 看護用語 

私たちの身体では様々なホルモンが分泌され、それによって身体の機能・健康が保たれています。しかし、ホルモン分泌のバランスが崩れてしまったら、病気になり、様々な症状が現れます。

クッシング症候群は体内のホルモンの1つが過剰に産生されることで起こる疾患です。クッシング症候群の基礎知識や原因、症状、看護のポイントをまとめましたので、実際の看護の参考にしてください。

 

1、クッシング症候群とは

クッシング症候群とは、副腎から分泌されるコルチゾールが過剰に分泌されることで起こる疾患です。

コルチゾールは副腎から分泌される糖質コルチコイドの一種でステロイドです。

炭水化物やたんぱく質、脂質の代謝をコントロールする役割があり、体の機能を維持する上で非常に重要なホルモンです。

通常、コルチゾールはCRH(視床下部から分泌)→ACTH(下垂体から分泌)→コルチゾール(副腎から分泌)という流れで、分泌量が調節されています。

このコルチゾールの調節機能に何らかの異常が生じると、コルチゾールが慢性的に過剰に分泌されることになります。

このコルチゾールが慢性的に過剰に分泌される疾患が、クッシング症候群です。

クッシング症候群は年間約100例が発症し、患者の男女比は1:4と女性の方が多いことがわかっています。1

 

2、クッシング症候群の原因

クッシング症候群の原因はACTH(副腎皮質刺激ホルモン)がコルチゾールの過剰分泌の原因になるACTH依存性と、ACTHとは関係ない原因で起こるACTH非依存性に分けることができます。

 

2-1、ACTH依存性のクッシング症候群

ACTH依存性のクッシング症候群は、何らかの原因でコルチゾールの分泌をコントロールするACTH(副腎皮質刺激ホルモン)が過剰に分泌されることで、コルチゾールも過剰に分泌されるようになります。

ACTHが過剰に分泌される原因には、主に3つがあります。

 

■下垂体からのACTHの過剰分泌

下垂体腺腫のように下垂体に腫瘍ができると、ACTHが過剰に分泌されるようになります。

この下垂体からACTHが過剰に分泌されることが原因で起こるクッシング症候群をクッシング病と呼びます。

 

■下垂体以外からのACTHの分泌

ACTHは基本的に下垂体から分泌されますが、下垂体以外の腫瘍からACTHが分泌されることがあります。これを異所性ACTH症候群と言います。

異所性ACTH症候群の原因になる腫瘍には、肺小細胞がんや胸腺腫、カルチノイド腫瘍などがあります。

 

■ACTHの投与

ACTHは点頭てんかん気管支喘息関節リウマチなどの治療で投与することがあります2。このACTHの投与量が多すぎると、クッシング症候群になることがあります。

 

2-2、ACTH非依存性のクッシング症候群

クッシング症候群の原因にはACTHに依存しないものもあります。

ACTH非依存性のクッシング症候群の原因には、次のようなものがあります。

・治療でのステロイドの投与

・副腎線種

・副腎がん

また稀に、原発性色素性結節性副腎異形成や大結節性過形成などがクッシング症候群の原因になることもあります。

 

  • クッシング症候群の症状

引用:山口大学医学部附属病院

クッシング症候群でコルチゾールが過剰に分泌されると次のような症状が出てきます。

 

■身体的な症状・特徴

・満月様顔貌(ムーンフェイス)

・中心性肥満

・野牛肩(バッファローハンプ)

・手足が細くなり、筋力が低下する

・皮膚が薄くなり、毛細血管が透けて、まだら模様に見える

・多毛

・ニキビ

・腹部や臀部に赤い筋ができる

・女性の男性化徴候

 

■その他の症状

高血圧

・耐糖能異常(高血糖

・骨粗しょう症

・脂質異常症

・月経異常

・うつ症状

・易感染状態

・腎結石

 

クッシング症候群では、外見上の様々な症状が出てくるほか、代謝のコントロールが狂うことで、生活習慣病のような症状も現れるようになります。

 

3、クッシング症候群の看護のポイント

クッシング症候群の看護のポイントを見ていきましょう。

看護のポイントが分かれば、その患者さんに合わせた看護計画を立てやすくなります。

 

■患者の不安を傾聴する

まずは、患者さんの不安をしっかり傾聴しましょう。

クッシング症候群は満月様顔貌で顔が丸くなり、中心性肥満でお腹が出て、肩がいかり肩のようになり、手足は細くなります。

さらに、ニキビができやすくなり、皮膚が薄くなることで、皮膚がまだら模様に見えて、皮下出血を起こしやすくなるなど、外見上でたくさんの変化が現れます。

クッシング症候群は女性の患者の割合が多いです。

女性にとって、顔が丸くなり、お腹が出て、ニキビができて、皮膚がまだら模様になるなどルックスが変化することは、ショックが大きく、受け入れがたいことです。

もちろん、男性の患者さんも同じです。

医師からの説明によって、この外見上の変化はクッシング症候群によるものだと頭ではわかっていても、不安はありますし、外見の変化にストレスを感じていることが多いです。

だから、まずは患者さんの不安をしっかりと傾聴し、正しい適切な情報を提供するようにしましょう。

 

■合併症の早期発見

クッシング症候群では、糖尿病や高血圧、低カリウム血症などの合併症を発症しやすくなります。

糖尿病や高血圧、低カリウム血症を発症すれば、それらに対する治療が必要になります。

看護師はバイタルサインや検査結果、患者の自覚症状・他覚症状、その他訴え等に中止し、早期発見に努める必要があります。

糖尿病、高血圧、低カリウム血症の看護のポイントは、こちらで詳しく解説しています。

高血圧(HT)の看護|症状と治療における看護アセスメント、わかりやすい看護計画の提案

糖尿病の看護、看護の視点とアプローチをする方法とは

低カリウム血症・高カリウム血症患者への看護のポイント

 

■骨折予防のための指導

クッシング症候群は、骨粗しょう症を合併することもあります。

骨粗しょう症を発症すると、骨折しやすくなります。

特に、クッシング症候群では、手足の筋力が低下しますので、普段よりも転倒しやすくなります。

そのため、クッシング症候群の患者は骨折しやすい状態であることを認識し、日常生活内で注意しなければいけません。

看護師は転倒による骨折や脊椎の圧迫骨折を起こしやすいことを伝え、日常生活内で注意するように指導する必要があります。

必要なら、離床時にはナースコールで看護師を呼ぶように指導したり、ベッド周りの環境整備や患者の履物・衣服の調整を行ったり、歩行器等の使用を検討しましょう。

骨粗しょう症の看護は「骨粗鬆症の看護|治療における各種療法と骨折予防のための指導」で説明しています。

 

■感染症への注意

クッシング症候群が進行すると、感染症への抵抗力が低下します。

それにより、肺炎敗血症を発症することがあります。

感染リスクが高いことを考慮し、バイタルサインや検査結果の変化に注意することはもちろん、スタンダードプリコーションや患者への指導、環境整備等などの感染対策を行っていきましょう。

感染症の看護については、「感染の看護|経路、予防、徴候、スタンダードプリコーションと看護計画 」で詳しく説明しています。

 

■精神状態の観察

クッシング症候群は抑うつ症状が現れることがあります。

うつ状態になることで、治療への積極的な参加が妨げられることがありますし、最悪の場合、自殺企図につながることもあります。

特に、クッシング症候群は外見上の変化があり、それによるストレスを抱えている患者さんも少なくありません。

そのため、看護師は抑うつ症状が出ていないかなど患者の精神状態を観察し、早期に気づくことができるようにしましょう。

 

まとめ

クッシング症候群の基礎知識や原因、症状、看護の5つのポイントをまとめました。

クッシング症候群の治療は長期にわたることが多いです。下垂体腺腫を手術で全部取り除いても、治療が終わるまでには1~2年もかかります。

看護師はそれを踏まえて、患者に寄り添った看護をしていきましょう。

 

参考文献

岡本麻衣 看護師

1986年生まれ。北海道札幌市出身・在住。同市内の看護学校を卒業後、北海道大学病院の内科で2年勤務。その後、同市内の個人病院で6年間勤務し、結婚・出産を機に離職。現在は育児をしながら、看護師としての経験を生かし、WEBライターとして活動中。

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