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アンプタの術後看護|合併症の予防と疼痛・精神不安へのケア(2016/04/28)

公開日: : 最終更新日:2017/12/09 看護用語 愛知県 外科 

アンプタ看護

アンプタ後の合併症は多岐に渡り、合併症の種類や程度によっては再切断を行う必要がでることもあります。また、四肢の喪失に伴う精神的負担は多大であり、中には精神障害を患う患者もいるほどです。

看護師の少しの努力で患者のQOLの向上、リハビリテーションへの積極的な参加、早期の社会復帰を援助することができますので、当ページでアンプタの概要や起こりうる合併症の種類、看護のポイントなどについて詳しく学び、今後の看護実践にお役立てください。

 

1、アンプタとは

アンプタとは、“四肢の切断”または“切除術”を意味する医療用語のこと。事故などによる重度の外傷、凍傷、糖尿病や動脈硬化症などの重度の血管障害、重度の感染症、悪性腫瘍など、アンプタ以外での治療が困難な場合の最終手段として行われます。

近年では、義肢の製作技術・装置技術が進歩したことで体幹に近い高位の部位での切断が可能になりましたが、原則的には患者の負担や生活・社会復帰における影響などを考慮して、なるべく長い断端を残すように切断しています。

アンプタを行えば多くは原因となる症例・疾患がなくなりますが、それで完結というわけではなく、アンプタ後に起こりえるさまざまな合併症に対処していく必要があり、また四肢切除に伴う精神的不安を呈する患者が非常に多いため、合併症への対処に加え精神的安楽を図るための看護が重要となってきます。

 

2、アンプタの適応

アンプタが適応となる症例・疾患、「重度の外傷・凍傷」「血管障害に伴う四肢壊死」「重度の感染症」「悪性腫瘍」など多岐に渡りますが、医療技術の発展に伴い、アンプタを回避できる場合も多々あります。

経済の発展や食生活の変化に伴い、動脈硬化症や糖尿病によるアンプタの症例が増加してきており、これらは他の多くの原因症例・疾患と異なり、予後良好とは言えず薬物療法や生活習慣の改善など継続的な治療が必要となります。

 

重度の外傷・凍傷

事故などにより、すでに広域に切断されている、主要となる血管が損傷し修復が困難、そのほか重度の軟部組織・神経の損傷など、いわゆる重度四肢外傷で外科的治療が困難な場合にアンプタが適応となります。また、凍傷では組織の壊疽が進行し修復が困難な場合にアンプタが実施されます。

 

血管障害に伴う四肢壊死

動脈硬化症に伴う血管の閉塞(閉塞性動脈硬化症)、糖尿病による壊疽(糖尿病性壊疽)など、重度の血管障害に陥った場合に適応されます。ただし、近年ではインターベンション治療によって拡張する新たな治療法が開発され、これによりアンプタを回避できる場合もあります。

 

重度の感染症

壊死性蜂巣炎や壊死性筋膜炎、ガス壊疽など重度の感染症に陥ると、抗生物質で改善がみられなく進行し続けるためにアンプタを実施する必要があります。また、細菌性の軽度の感染症であっても、感染が広域に達したり深部にまで広がってしまうと抗生物質の効果が追い付かず、全身感染を防ぐために早期にアンプタを行う場合もあります。

 

悪性腫瘍

骨肉腫・軟部肉腫などで血管や神経を巻き込んでいる症例、または転移の可能性のある場合で、患肢温存術での効果がみられない場合にアンプタが実施されます。

 

3、アンプタ後の合併症

アンプタ後の合併症には大きく分けて「身体的合併症」と「精神的合併症」の2つがあります。

「身体的合併症」には、皮膚創部の壊死、血液の循環不良・再灌流症候群、筋肉・腱の機能障害、感染、浮腫、幻肢痛、断端神経腫などがあり、「精神的合併症」には、社会復帰への不安、生活の変化に対する不安などがあります。

精神的な問題は厳密に言えば合併症に分類されませんが、四肢切断に伴う精神的負担は多大であり、看護師の支援が重要となってくるため、ここでは精神的な問題も合併症の1つとして考えます。

 

3-1、身体的合併症

皮膚創部の壊死

アンプタ後には断端の皮膚縫合部が壊死しやすく、中でも血管障害や循環障害が原因の場合には壊死が起こりやすい傾向があり、一度壊死が起こると壊死した皮膚を切除して再縫合する、または高位での再切断が必要となります。

 

血液の循環不良・再灌流症候群

アンプタ後に血液の流れがつまって循環状態が悪くなり、再切断が必要となることがあります。また、上肢や大腿部での再接着においては、アンプタ後に急な血流の再開が起こり、それに伴って腎障害などの再灌流症候群を起こすこともあります。

 

筋肉・腱の機能障害

癒着などにより筋肉や腱の動きが悪くなり、手足が十分に曲げることができない機能障害が残ることがあります。ただし、リハビリテーションで機能の改善・再生を図ることができます。

 

感染

アンプタ後まもなくの断端は縫合が不完全であり、細菌感染を起こしやすい状態にあります。一度感染を起こすと深部へと広がることが多く、その場合には高位での再切断が必要になるため、厳重な清潔保持と観察が不可欠。また、義肢着用における接触皮膚炎、外傷後表皮嚢腫、毛嚢炎、白癬、摩擦性皮膚炎などの合併症も懸念されます。

 

浮腫

アンプタに伴う外部刺激や血管障害・循環障害では、断端浮腫が生じやすく、多くは浮腫による大きな影響はありませんが、義肢の装着が困難となりますので、リジッドドレッシングの実施、四肢の拳上や体位(姿勢)の変換などを行い、早期に浮腫の予防に努めることが大切です。

浮腫(むくみ)の原因からみる看護計画の立案とケアの実施

 

幻肢痛

失った四肢が存在していた空間に温冷感や痺れ感、激しい痛みを感じることがあり、これはアンプタを行った患者の約8割が経験すると言われています。時間の経過とともに痛みは消失していきますが、幻肢痛に耐えられずQOLが著しく低下する患者は少なくありません。

 

断端神経腫

神経線維は切断されるとその末梢部に神経線維の絡み合った腫瘤を形成します。これは切断方法に関わらず形成され、腫自体には自発痛は生じませんが、圧迫などの刺激を受けた時に激しい痛みが生じます。痛みの程度が強ければ切除し、修復には神経縫合術を行います。

 

3-2、精神的合併症

喪失に対する悲哀

これまで使えていた四肢を失うことで悲しみを訴える患者は少なくありません。喪失に対する悲哀の程度は、アンプタ後まもなくはそれほど強くはないものの時間の経過とともに強くなっていき、事実を受け入れることで次第に消失していきます。

 

生活上の不安

これまで行えていた生活動作が困難となることで、不自由な生活に対する不安を呈します。特に利き腕・利き足(または両腕・両足)を喪失した場合の不安の程度は大きく、思うように生活動作が行えない葛藤に苛まれます。

 

社会復帰に対する不安

四肢切断に伴い退職を余儀なくされるケースは少なくありません。また、これまで問題なく行えていた業務に支障をきたし、業務の幅が著しく狭くなることで就職・転職が困難となるなど、アンプタを実施した患者のほぼ全てが社会復帰に対する不安を抱えています。

 

4、アンプタの看護

このことから、アンプタ後の看護は身体的・精神的の両面からの支援が必要不可欠となります。アンプタ後まもなく断端部の疼痛が生じるケースは多く、また感染症などの合併症の発症率は高い傾向にあります。

さらに、ほぼすべての患者が四肢の喪失により情緒不安定に陥るため、患者のQOL向上ならびに早期に社会復帰できるよう、身体的な支援だけでなく精神的な支援も積極的に行ってください。

 

疼痛の緩和

アンプタに伴う断端の疼痛に対しては鎮痛剤などの薬物の投与や皮膚管理、幻肢痛に対しては抗うつ剤や受容体拮抗薬など薬物の投与、義肢の早期着用、リジッドドレッシングなどで対処します。疼痛の原因によって対処が異なりますので、患者の訴えや断端の観察、各種薬物の効果などで原因を正しく判断して対処してください。

 

合併症の予防

皮膚創部の壊死、血液の循環不良・再灌流症候群、筋肉・腱の機能障害、感染・浮腫、断端神経腫など、アンプタに伴う身体的合併症は数多く存在します。特に断端部の皮膚トラブルや感染は起こりやすいため、皮膚ケアが非常に重要です。症状の悪化・進行具合によっては再切断が必要になってしまいます。早期発見・早期治療が行えるよう綿密に観察してください。

 

精神安楽への支援

アンプタに伴う精神的不安は多大であり、喪失に対する悲哀、生活上の不安、社会復帰に対する不安などさまざまです。中には、鬱などの精神障害が発現する患者もいますので、アンプタ後まもなくから精神的安楽を図ることが大切です。コミュニケーションにより精神的不安が軽減できることも多いため、まずは積極的にコミュニケーションを図ってください。

看護コミュニケーションの目的と意義、信頼獲得のための術

 

リハビリテーションケア

リハビリテーションの実施において看護師が積極的に介入することはほとんどありませんが、理学療法士などリハビリ担当者と連携を図ることで補助的にケアを行うことができます。また、接触皮膚炎、外傷後表皮嚢腫、毛嚢炎、白癬、摩擦性皮膚炎など、義肢装着に伴う合併症は多岐に渡りますので、患者からの訴えの傾聴はもちろん、リハビリ担当者としっかり連携を図り、合併症の早期発見・早期治療に努めてください。

 

まとめ

アンプタ後の合併症の発症率は高く、また疼痛や精神的負担によりQOLが著しく低下する患者は非常に多いのが実情です。

看護師不足が顕著な昨今、精神的な支援まで手が回らないこともあるでしょうが、患者家族にはできない、医療従事者だからできる精神的支援が多々あります。

数多くの患者と接してきた看護師は患者にとって落ち着く存在であり、不安に関する話を傾聴したり積極的にコミュニケーションを図ることで精神的負担が大きく軽減することも少なくありませんので、多忙であっても可能な範囲でコミュニケーションを図っていってください。

豊田仁美 看護師

愛知県名古屋市在住、看護師歴5年。愛知県内の総合病院(消化器外科)で日勤常勤として勤務する傍ら、ライター・ブロガーとしても活動中。写真を撮ることが趣味で、その腕前からアマチュア写真家としても活躍している。

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