【2024年最新】食中毒の看護|原因・症状・看護・予防(2023/06/26)
以前は夏に起こりやすいと考えられていましたが、現在は季節を問わずに年間を通して起こる可能性があることがわかっていますので、看護師は原因や症状を知って、正しい看護ができるようにしておく必要があります。
食中毒の原因や症状、看護のポイント、予防策を解説していきます。
1、食中毒とは
食中毒とは、細菌やウイルス、有害物質が付着した食べ物を食べることで引き起こされる疾患のことです。
細菌は食べ物の中で増殖し、その食べ物を食べることで食中毒を引き起こします。ウイルスは食べ物の中では増殖することはありませんが、ウイルスが付着したものを食べると、体内でウイルスが増殖して食中毒を引き起こします。
厚生労働省の食中毒統計によると、2021年の食中毒発生件数は717件で、患者数は11,080人です。うち2人が死亡しています。1)
食中毒は死亡する可能性が恐ろしい疾患なのです。
2、食中毒の原因
食中毒の原因は、大きく次の5つの種類に分けることができます。
・細菌性食中毒
・ウイルス性食中毒 ・寄生虫食中毒 ・化学性食中毒 ・自然毒食中毒 |
■細菌性食中毒
細菌性食中毒は感染型と毒素型に分けることができます。
感染型は腸管内で細菌が増殖し、そこで毒素を産生することで引き起こる食中毒です。
主な原因菌には、腸炎ビブリオ、サルモネラ属菌、病原大腸菌、カンピロバクター、ウェルシュ菌などがあります。
毒素型は細菌が食品の中で毒素を産生しそれが原因で引き起こる食中毒です。
主な原因菌には、黄色ブドウ球菌、セレウス菌、ボツリヌス菌などがあります。
■ウイルス性食中毒
ウイルス性食中毒はウイルスが付着している食品の摂取だけでなく、人の手を介して感染が起こることが特徴です。
日本におけるウイルス性食中毒はほとんどがノロウイルスによるものです。2021年に発生したウイルス性食中毒の原因ウイルスはすべてノロウイルスでした。
■寄生虫食中毒
寄生虫食中毒は、寄生虫原因となる食中毒です。動物や人間の体内で生息する生物を寄生虫と呼びますが、寄生虫が付着した食品を摂取すると、食中毒を引き起こします。寄生虫食中毒の代表例にはアニサキスがあります。そのほか、クドアやクリプトスポリジウムなどがあります。
■化学性食中毒
化学物質による食中毒もあります。食中毒を引き起こす原因物質には洗剤や漂白剤、農薬、食品添加物、水銀や鉛などがあります。
また、鮮度が落ちた魚介類の中で蓄積されたヒスタミンによる食中毒も、化学性食中毒に分類されます。
■自然毒食中毒
自然毒食中毒には、動物性食中毒と植物性食中毒があります。
動物性食中毒にはふぐ毒(テトロドトキシン)や貝毒、シガテラ毒などがあり、植物性食中毒にはトリカブトや毒キノコ、ジャガイモの芽、カビなどがあります。
2-1、食中毒の原因一覧
食中毒の原因を一覧にしてまとめました。
食中毒菌も一覧でまとめています。
細菌性食中毒 | 感染型 | 腸炎ビブリオ、サルモネラ属菌、病原大腸菌、カンピロバクター、ウェルシュ菌 |
毒素型 | 黄色ブドウ球菌、セレウス菌、ボツリヌス菌 | |
ウイルス性食中毒 | ノロウイルス | |
寄生虫食中毒 | アニサキス、クドアやクリプトスポリジウム | |
化学性食中毒 | 洗剤や漂白剤、農薬、食品添加物、水銀、鉛、ヒスタミン | |
自然毒食中毒 | 動物性 | ふぐ毒(テトロドトキシン)や貝毒、シガテラ毒 |
植物性 | トリカブトや毒キノコ、ジャガイモの芽、カビ |
3、食中毒の症状
食中毒の症状は、腹痛や下痢、嘔吐、嘔気、発熱などがありますが、潜伏期間や詳細な症状などは原因菌・ウイルスによって異なります。
食中毒の症状を食中毒菌一覧でまとめました。
原因菌・ウイルス | 代表的な食品 | 潜伏期間 | 主な症状 |
サルモネラ菌 | 十分に加熱していない卵・肉・魚 | 食後6~48時間 | 嘔気、腹痛、下痢、発熱、頭痛 |
腸炎ビブリオ菌 | 生の魚や貝 | 食後4~96時間 | 激しい下痢や腹痛 |
腸管出血性大腸菌(O157やO111など) | 生肉や加熱不十分な肉 | 食後12~60時間 | 激しい腹痛、下痢、血便 |
カンピロバクター | 食肉(鶏肉)、飲料水 | 食後2~7日間 | 下痢、発熱 |
ウエルシュ菌 | 水、土壌、食肉加熱調理品(カレー、シチュー) | 食後6~18時間 | 腹痛、下痢 |
黄色ブドウ球菌 | 手作業で作る食品(おにぎり、お弁当、巻きずし) | 食後30分~6時間 | 嘔気、嘔吐、腹痛 |
セレウス菌 | 穀物加工品 | 食後8~16時間(下痢型) 食後30分~6時間(嘔吐型) |
嘔気・嘔吐、下痢、腹痛 |
ボツリヌス菌 | はちみつ、真空パック食品、魚肉発酵食品 | 食後5~72時間 | めまい、頭痛、かすみ目、言語障害、呼吸困難 |
ノロウイルス | 二枚貝、二次汚染された食品 | 食後1~2日 | 嘔気、嘔吐、腹痛、下痢、頭痛、発熱 |
4、食中毒の看護ポイント
食中毒の患者さんが来院・入院してきたら、適切な看護ができるように看護のポイントを見ていきましょう。
■正確な問診・情報収集
食中毒の食中毒の症状は腹痛や嘔吐や下痢などが多いです。
そのため、症状だけでは食中毒かどうかはわかりません。
看護師が問診をして、食中毒の原因になるものを食べたかどうか、一緒に食事をした人にも同じような症状が現れているかなどの情報が食中毒の判断基準の1つになります。
看護師は次のようなことを情報収集しましょう。
・症状はいつからか
・症状の種類 ・食事歴(いつ、どこで、どんなものを食べたか) ・一緒に食事をした人に同じような症状が出ているか ・海外渡航歴 |
必要な情報を正しく収集することが、食中毒の原因を特定するためには重要になります。
■脱水や電解質異常の予防
食中毒の患者さんは激しい嘔吐・下痢の症状が出ますので、脱水や電解質異常が起こることがあります。
看護師はバイタルサインや検査データ等を確認しながら、水分補給を促すようにしましょう。また、輸液をしている患者さんには医師に指示された滴下速度で確実に投与できるようにしてください。
■嘔吐時のケア
食中毒の患者さんは繰り返し嘔吐することがあります。
嘔吐をすると、窒息や誤嚥を起こすことがありますので、側臥位(もしくは顔を横に向ける)にするようにしてください。
■苦痛の軽減・安楽の提供
食中毒の患者さんには腹痛・悪心、激しい下痢・嘔吐などがありますので、苦痛を軽減して安楽に過ごせるようにしましょう。
・安楽な体位(膝を曲げるなど)
・環境整備 ・下痢の場合はトイレに近い病室や個室などに入室してもらう |
また、吐物はすぐに片づける、臭いがこもらないように換気するなども大切な看護ケアです。
■二次感染の予防
食中毒の患者さんの吐物や便から、周囲の人に感染するリスクがあるケースもあります。
そのため、看護師は標準予防策・感染経路別の個人防護具を使い、感染を拡大しないようにしましょう。
看護師は必要であれば患者の隔離を行い、上司や院内の関係部署に報告をしてください。
また、化学療法の患者さんや免疫抑制剤を使用している患者さん、その他免疫が低下している患者さんは感染すると重症化するリスクがありますので、看護師はしっかり二次感染を予防しましょう。
■不安の軽減
食中毒の患者さんは激しい嘔吐と下痢などの症状で、不安やストレスを抱えることになります。
看護師は患者さんと家族に適切な情報提供を行い、受容的な態度で寄り添って、患者さんの不安を軽減しましょう。
5、食中毒の予防
出典:食中毒|厚生労働省
食中毒を予防するためには、食中毒予防の3原則を確認しておきましょう。
食中毒予防の3原則は、つけない・増やさない・やっつけるです。
この予防の3原則が食中毒の解決策になります。
■つけない=細菌をつけない
食中毒を予防するためには、食品に細菌・ウイルスをつけないことが大切です。
・手洗い
・1つの食品を扱ったら、まな板や包丁などを洗う ・焼肉では生の肉と焼けた肉は別の箸を使う ・食品を保存する時には密閉容器にいれたりラップをかける |
食品に細菌やウイルスをつけなければ、食中毒は予防できます。
調理前、生の魚や肉などを使う前などは必ず手を洗いましょう。また、サラダなど加熱しないで食べるものを先に扱い、生肉や生魚などは最後に扱うようにすると良いでしょう。
■増やさない=細菌を増やさない
細菌を増やさないことも、食中毒予防のためには重要です。
細菌を増やさない方法は低温で保存することです。
細菌の多くは高温多湿な環境を好みますので、10度以下で増殖のスピードが遅くなり、-15度以下で増殖は止まります。
肉や魚、総菜などを購入したら、できるだけ早く冷蔵庫に保存してください。
ただ、-15度以上なら、スピードは遅くても最近はゆっくりと増殖しますので、購入後は細菌が増える前に早めに食べてください。
■やっつける=細菌をやっつける
食中毒の予防の3つ目は細菌をやっつけることです。
細菌をやっつけるためには、十分な加熱処理が有効です。
肉料理は中心部を75度・1分以上加熱することが目安になります。
ただ、加熱すれば確実に食中毒を予防できるわけではありません。
毒素型食中毒型の場合、すでに産生された毒素は加熱しても残りますので、それを食べたら食中毒を起こします。
調理器具は熱湯消毒や台所用殺菌剤で消毒すると良いでしょう。
まとめ
食中毒の原因や症状、看護のポイントや予防法などをまとめました。
食中毒は年間を通して発生していますので、看護師は正しい問診をして、適切な看護ケアを行えるようにしておきましょう。
参考文献
愛知県名古屋市在住、看護師歴5年。愛知県内の総合病院(消化器外科)で日勤常勤として勤務する傍ら、ライター・ブロガーとしても活動中。写真を撮ることが趣味で、その腕前からアマチュア写真家としても活躍している。
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