低血糖の看護|症状や看護観察、看護計画や対処法、予防法(2017/05/22)
低血糖とは、血糖値が低くなりすぎて、冷や汗や震えなどの症状が現れた状態のことです。糖尿病や胃切除後の患者は、低血糖を起こしやすいので注意が必要です。
低血糖の基礎知識や症状、看護観察、看護計画・対処法、予防法をまとめました。低血糖を起こした患者に、慌てず適切に対応できるようになりましょう。
1、低血糖とは
低血糖とは、血糖値が正常範囲内よりも低くなり、それに伴って身体症状が現れた状態のことです。健康な人の血糖値は70~100mg/dlにコントロールされています。ただ、低血糖は70mg/dl以下のことと定義することはできません。
なぜなら、70mg/dl以上でも低血糖の症状が現れることもありますし、60mg/dl以下に血糖値が下がっても、低血糖の症状が現れないことがあるからです。そのため、血糖値がどのくらいまで下がると低血糖であると定義づけることは難しいのです。
低血糖の原因は、内因性と外因性の2つの分けることができます。
■低血糖の外因性の原因
低血糖の外因性の原因は、糖尿病の治療に関連したものです。例えば、糖尿病治療薬を多く飲んでしまったり、インスリンの投与単位を間違ってしまったりなどです。
また、体調が悪くて食事を食べれないのに、いつもどおりに血糖降下剤を飲んでしまったり、いつも以上に激しい運動をしたという場合も、低血糖を起こすことがあります。
糖尿病の治療をしている患者は、低血糖を起こしやすいので注意が必要なのです。
またリスモダンやシベノールなどの抗不整脈を服薬している場合も、低血糖を起こしやすくなります。
このほか、アルコールの代謝に伴って、糖新生が抑制されるため、アルコールの過剰摂取でも低血糖を起こすことがあります。
■低血糖の内因性の原因
低血糖の内因性の原因は、胃切除後のダンピング症候群やインスリノーマ、インスリン自己免疫症候群などがあります。
ダンピング症候群は、胃を切除したことで胃に食べ物を溜めておくことができないため、一度に小腸に食べ物が流れ込みます。
そうすると、一気に血糖値が上がり、それに伴って、インスリンが多量に分泌されるため、低血糖になりやすいのです。
また、インスリノーマやインスリン自己免疫症候群の患者も、インスリンが過剰分泌されますので、低血糖を起こすことがあります。
2、低血糖の症状
低血糖の症状は、低血糖の程度によって、どのような症状が現れるかは異なります。最初は異常な空腹感などの症状が現れますが、低血糖が進むと、昏睡状態になり、死に至ることもあるのです。
血糖値 | 低血糖の症状 |
60~70mg/dl | 異常な空腹感、あくび、イライラ感、悪心 |
40~50mg/dl | 無気力、倦怠感、計算力減退、無表情、会話の停滞 |
30~40mg/dl | 冷や汗、脈が速い、腹痛、震え、動悸、顔面蒼白、脱力感、頭痛 |
20~30mg/dl | 意識消失、異常行動 |
20mg/dl以下 | 痙攣、深い昏睡 |
低血糖の症状は、「血糖値が○○mg/dl以下になると起こる」という定義はありません。普段から血糖値が高い人は、健康な人なら正常範囲である100mg/dl前後でも、低血糖症状を起こすことがあります。でも、50mg/dl以下になっても、明らかな症状が現れない人もいます。
3、低血糖のリスクがある患者の看護観察ポイント
低血糖を起こしたら、すぐに発見して適切な対処ができるように、低血糖のリスクがある患者に対して、看護師は日常的に観察を行っておく必要があります。
低血糖を起こすリスクがある患者は、次のような患者です。
・糖尿病患者
・胃切除後の患者
・抗不整脈薬を服用している患者
特に、糖尿病患者の中でも、血糖降下剤やインスリン投与をしている患者は、低血糖を起こすリスクが高いので注意が必要です。
低血糖のリスクがある患者の観察ポイントは、次のようなものです。
・食前・食後の血糖値
・内服薬の種類や量
・血糖降下剤やインスリンの使用状況
・いつもの食事摂取量
・意識レベル
・病識(低血糖を起こすリスクの把握や低血糖症状)
低血糖を起こすリスクがある患者は、日ごろからこのようなことを観察しておくと、万が一低血糖を起こした時でも、すぐに気づくことができますし、適切な対処をすることができるのです。
4、低血糖の看護計画・対処法
低血糖を起こすリスクがある患者には、「血糖不安定リスク状態」で看護計画を立てて、看護介入をしていきましょう。糖尿病患者の血糖不安定リスク状態の看護計画の一例をご紹介します。
看護目標 | ・低血糖を起こさない
・血糖値が変動しない ・低血糖のリスクや症状を理解できる |
OP(観察項目) | ・倦怠感や冷や汗、震え、動悸等の低血糖症状の有無
・バイタルサイン ・食前・食後の血糖値 ・血液検査のデータ ・食事摂取量 ・間食の有無 ・病識 ・体重の増減 ・ストレスの有無 ・運動量 |
TP(ケア項目) | ・指示通りの血糖値測定
・確実な内服薬、インスリンの投与 ・低血糖時の医師の指示の施行 |
EP(教育項目) | ・シックデイの時の対処の説明
・インスリン自己注射の指導 ・低血糖のリスクの説明 ・低血糖の症状の説明 ・低血糖の症状が出たら、すぐに伝えてもらうように指導する ・食事量や運動量と血糖値の関係の説明 |
低血糖を起こしている患者がいたら、まずはドクターへ報告しましょう。低血糖を起こすリスクが高い患者には、すでに指示が出ていることもあります。
報告後は指示に従って、指示通りにケアを行うのですが、入院中に低血糖を起こした患者には、基本的にブドウ糖を10gを摂取してもらいます。
ブドウ糖は飴やチョコレートに比べて、すぐに血糖値を上げる作用があるので、臨床現場ではよく用いられます。ブドウ糖10gを摂取すると、血糖値は50mg/dl程度上昇します。
低血糖を起こした場合、意識がある患者はブドウ糖を経口摂取できますが、意識がない患者は経口摂取ができませんので、50%ブドウ糖液20ml静注します。50%ブドウ糖液20mlは、ブドウ糖が10g含まれていますので、経口摂取するのと同じだけのブドウ糖を摂取できるのです。
ブドウ糖を投与した後は、症状の変化を観察し、10分後に血糖値を測定しましょう。ブドウ糖を投与しても、症状の改善・血糖値上昇が見られない場合は、再度医師に報告して、指示を仰いでください。
5、低血糖の予防方法
低血糖を予防するためには、低血糖を起こすリスクがある患者に、次のことを指導しましょう。
・血糖降下剤の正しい内服方法
・インスリンの自己注射の正しいやり方
・シックデイに関する約束を守る
・食前や空腹時に運動をしない
・空腹時の入浴を避ける
・糖尿病連携手帳を持ち歩く
・ブドウ糖や飴などを持ち歩く
退院指導の際は、これらのことを指導することで、退院後の低血糖を予防することができます。低血糖を起こす人は、血糖降下剤やインスリンの量を自分で調整したり、血糖値を見て、食事量を調節したりしますので、自己判断での調節は絶対に止めるように指導してください。
また、体調不良時の血糖降下剤やインスリン注射の対処法も、退院前にはもう一度確認して、必ず守るように指導して下さい。
まとめ
低血糖の基礎知識や症状、看護観察のポイント、看護計画・対処法、予防法をまとめました。低血糖を起こした患者を発見したら、看護師は慌てずに、医師に報告すると同時に、ブドウ糖を用意して投与するようにしましょう。
また、患者が退院する時には、退院後に低血糖を起こさないように、低血糖の予防法を指導してください。この時には、患者だけでなく家族にも一緒に指導すると良いでしょう。
1986年生まれ。北海道札幌市出身・在住。同市内の看護学校を卒業後、北海道大学病院の内科で2年勤務。その後、同市内の個人病院で6年間勤務し、結婚・出産を機に離職。現在は育児をしながら、看護師としての経験を生かし、WEBライターとして活動中。
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
ナースのヒント の最新記事を毎日お届けします
こちらの記事もおすすめ
- 看護計画
-
リハビリテーションの看護計画|看護目標や定義と看護師の3つの役割
リハビリテーションは今や医療になくてはならない存在であり、あらゆる時期にあらゆる場所で行われ
- 看護技術
-
【2023年最新】授乳の看護|目標や姿勢、観察項目と看護ポイント
産科病棟で勤務している看護師は、出産後の母親の授乳の看護ケアを担当することが多いと思います。
- 看護計画
-
一過性脳虚血発作(TIA)の看護|原因・症状からみる3つの看護ポイント
一過性脳虚血発作(TIA)は、文字通り一時的に脳の血管に虚血が起こることによる様々な症状のこ
- 看護師あるある
-
何も実行できなくて休みが終わる|看護師あるある【vol.12】
休みの日の前日は、めちゃくちゃテンションが上がる!特に給料日後の最初の休日の場合は、自分の中でテ
- 看護用語
-
ここ数年の間に急激に、日常や企業、医療現場などさまざまな場面で「コンプライアンス」という言葉