保育実習の準備と目標設定(例あり)、日誌・感想文の書き方(2016/06/09)
保育実習は、これまで校内で勉強してきた知識を生かすよい機会であるとともに、保育の難しさや保育者との関わり合いなど、さまざまなことを学ぶことができます。
実りのある実習にするためには、周到な準備から始まり、実習中の積極的な行動が重要となります。いかに自分を成長できるかは、自分の行動次第と言っても過言ではありません。
保育実習を行うにあたって、どのような準備をすればよいのか、どのようなことに気をつければよいのかなど、当ページでは準備~終了までに必要なことについて詳しく解説しますので、これから保育実習に臨む学生や実習中の学生は、ぜひ最後までしっかりお読みください。
目次
1、保育実習とは
保育実習とは、実際に幼稚園や保育所、学校、児童館などへ訪れ、約10日~1か月かけて授業で学んできた知識を活用しながら、子供たちとの関わりや保育者としての在り方などを学ぶ校外学習のことです。
校内での勉強は保育の仕事をする上の基礎となり、非常に重要な知識ではありますが、そのすべてが実践で役に立つとは限りません。また、子供たちへの接し方や保育者との関わり合い、ご家族への対応など、現場でしか学べないことがたくさんあります。さらに、保育施設によって活動内容が異なりますので、各保育施設がどのような活動を行っているのかをみるいい機会でもあります。
これまで校内での授業だけを受けてきた学生にとっては、保育実習は1つの壁であり、多くの学生が戸惑いを感じたり、時には逃げ出したいと感じることもあるでしょう。しかし、保育の仕事に就くにあたって、最も大切なのは校内の授業ではなく現場での実践であり、実践なくして保育の根本を知ることは不可能です。さらに、保育の難しさは実践を通さなければ分かりません。
1回の実習では約10日~1か月という長い期間行いますのが、現場でしか学べないことがたくさんあり、これらすべては今後の保育に欠かせないものですので、しっかりと準備し、実習中はよく観察する、積極的に行動するなど、実りのある実習になるよう努めましょう。また、次の実習に生かせるよう、時間をかけて振り返ることも非常に大切です。
2、保育実習の準備
保育実習を始めるにあたって、まずはしっかりとした準備が必要です。実習を通して何がしたいのか、何を学びたいのか「目標設定」をし、首尾よく実習に参加できるよう「遊び」を覚えておきましょう。
また、子供たちに名前を覚えてもらうための「名札作り」も大切です。準備も実習の一部と考え、周到に準備しておいてください。
2-1、目標設定
実習に際する目標は人それぞれで正解はありませんので、どのような目標でも構いません。実習を通して自分がしたいこと、学びたいことを掘り下げてピックアップしてみましょう。
■目標例
・ 子供たちの名前を覚える
・ 子供たちに名前を覚えてもらう ・ 子供たちの生活を把握する ・ 保育者の言葉がけを学ぶ ・ 多くの子供たちと積極的に関わる |
準備段階での目標であれば、このような簡単で当たり前の目標でも全く問題ありません。とにかく、何がしたいのか、何を学びたいのかを中心に、出来る限り多くの目標を考えておいてください。
2-2、遊び
保育実習には、「見学実習」、「参加実習」、「部分実習」、「責任実習」の4つが基本となり、「部分実習」と「責任実習」では1日の一部または全日を通して保育に関わります。この際、子供たちへの関わり合いの中で、“遊び”という活動が大きな役割を占めます。
“遊び”には、「絵本」、「手遊び」、「ピアノ」などがありますが、事前にどのように遊ぶかを考えておくだけで遊びの幅が広がり、実習中に何をしたらよいのか戸惑うことが少なくなります。
遊ぶ時間は意外にも長く、すぐにレパートリーがなくなってしまうことがあるため、遊びの種類は多ければ多いほどよいでしょう。
「絵本」を用いた読み聞かせであれば、ゆっくりハッキリ読む、話しのトーンに強弱をつけるなど、子供たちが興味を持てるような読み方を練習しておきましょう。
「手遊び」や「ピアノ」を用いた遊びであれば、間違わずスムーズにできるよう練習しておきましょう。特に「ピアノ」は遊びの中で大きな比重を占め、音楽に力を入れている保育施設では必須となりますので、事前に簡単な曲は弾けるようにしておいてください。
■絵本の一例
1~2歳 | どうぶつのおやこ、もりのなか、くんくん,いいにおい、くだもの、うずらちゃんのかくれんぼ、ノンタンぶらんこのせて、いろいろばあ、くっついた、おおきなかぶ、きんぎょがにげた、わたしのワンピース、こりゃまてまて、しろくまちゃんのほっとけーき、おつきさまこんばんは、もこ もこもこ |
3~4歳 | こんとあき、できるかな?あたまからつまさきまで、999ひきのきょうだい、あめのひのえんそく、はじめてのおつかい、バムとケロのそらのたび、ぐりとぐら、ピヨピヨスーパーマーケット、せんろはつづく、どうぞのいす、ちょっとだけ、そらまめくんのベッド |
5~6歳 | バムとケロのもりのこや、おおきなおおきなおいも、おこだでませんように、さっちゃんのまほうのて、からすのパンやさん、おおきくなるっていうことは、きょうはなんのひ?、100かいだてのいえ、エルマーのぼうけん、おしいれのぼうけん、ともだちや |
活用できる絵本の種類は実に豊富に存在しますので、その他の絵本についてはネット上で探してみてください。
■手遊びの一例
お弁当箱の歌、パン屋さんにおかいもの、いわしの開き、はじまるよー、おはなしおはなし、ひげじいさん、3匹のこぶた、食いしん坊のゴリラ、ポキポキ(チョキチョキ)ダンス |
動画つきで覚えたいという方は、「保育士が教える!園児が大好きな手遊び7選」をご参考ください。
■ピアノ曲の一例
きらきらぼし、おおきなくりの木の下で、チューリップ、ちょうちょう、どんぐりころころ、むすんでひらいて、森の熊さん、山の音楽家、アイアイ、あめふりくまのこ、チュリップ、こいのぼり、かたつむり、海、やきいもグーチーパー、赤鼻のトナカイ、もちつき、豆まき、春が来た、ぼよよん行進曲、はたらくくるま |
ピアノ弾けない、音符読みが苦手という方は、「やさしく弾けるピアノ伴奏保育のうた12か月―幼稚園・保育園現場の声から選ばれた全141曲」や、「子どもたちの歌いたいうた 保育のピアノ伴奏150曲」から始めるとよいでしょう。
2-3、名札製作
保育施設の多くが実習生に名札を作ってくるように依頼します。名札は先生の顔であり、子供たちに早く名前を覚えてもらえれば、それだけ早く馴染むことができます。
動物や流行りのキャラクター、自身の顔を模したフェルトなど、いろいろと工夫してみましょう。子供は赤色、桃色、青色、水色、緑色など原色の明るい色が好きですので、カラフルにデザインしてみてください。
3、保育実習の開始
保育実習を開始するにあたって、「自己紹介」からすべてが始まります。自己紹介は概ね1分~5分程度ですが、この短い時間の中で子供たちに印象づけることができれば、今後の実習に溶け込みやすくなるでしょう。
また、実習中は保育者の動き、話し方・言葉遣い、子供たちの行動、一日の流れなど、しっかり「観察」しておきましょう。実習中には「実習日誌」をつけますが、これが評価の基準であり、今後の実習の参考にもなる非常に役立つ情報です。時間をかけてでも入念に書くようにしてください。
3-1、自己紹介
何事も第一印象は非常に大切です。特に子供たちは五感の影響を素直に受け取りますので、最初に印象づけることができれば、すぐに名前を覚えてもらえ、子供たちに溶け込みやすくなります。
注意点として、大人に対する話し方と子供に対する話し方は大きく異なります。“元気な先生”、“優しい先生”を印象づけるために、まずは以下のことを念頭に置いておきましょう。
・ 明るく元気にあいさつする
・ ゆっくりとした口調で分かりやすく話す ・ 子供たちが親近感を感じる内容を離す ・ 自分の得意な遊びについて話す |
これらのことを念頭に置けば、ある程度よい自己紹介になるはずです。子供たちが相手でも人前に立って話すのが苦手であれば、事前に練習しておきましょう。
スケッチブックやパペットを使ったりすれば、子供たちの興味をそそり、覚えてもらいやすくなります。“何を話したら子供たちが興味を持つのか“を自分なりにしっかり考えてみてください。
3-2、実習中の観察
観察は実習で最も大切な勉強です。一日の流れを把握するのはもちろん、各時間帯の中での保育者の活動内容、子供の活動内容など、まずは大きな枠組みで把握しておく必要があります。
その中で、保育者が気をつけるべきこと、子供たちへの対応・配慮、環境の整備など、学ぶべきことがたくさん存在します。特に保育の大きな役割である“安全”に配慮し、子供たちを危険から守る取り組みをしっかり学んでください。
また、すべての子供が同じ性格、同じ好み、同じ境遇にあるわけではありません。元気に楽しく遊んでいるようなら問題はありませんが、楽しそうにしていなかったり、表情が暗い場合には、なにか悩みがあるのかもしれません。慣れてきたら子供たちの行動や表情もしっかり観察しておき、悩みのある子供に対して積極的に介入していきましょう。
序盤 | ・ 一日の流れ(活動内容)を把握する
・ 子供たちの顔と名前を覚える ・ 子供たちに名前を覚えてもらう ・ 多くの子供たちと関わる |
中盤 | ・ どのような安全管理が行われているのかを知る
・ 保育者・保護者との連携を学ぶ ・ 遊びを通して子供たちと積極的に関わる ・ 保育技術(言葉がけ、日常生活援助、対応など) |
終盤 | ・ 保育者の関わりの意図を知る
・ 子供の発達への援助法を知る ・ 問題発生時の対処法を知る ・ 子供たちの行動の理由を知る |
すべてのことを一度に学ぶのは不可能ですので、1日ごとに目標を立て、それを中心に観察していくとよいでしょう。また、1日の中で気になったことがあれば随時メモをとっておきましょう。それが次の日の課題にもなりますし、課題があれば意欲も出ます。些細なことでも気づいた時にしっかりメモをとっておいてください。
3-3、実習日誌
実習日誌の記入は、実習の大きな役割を担っています。どのような活動が行われたのか、自身がどのように保育介入を行ったのか、そのほか気づいたことや課題などをしっかり振り返ることで、翌日の実習や次の実習に必ず役に立ちます。
学校から与えられる課題として考えるのではなく、“自分の成長のため”と考え、時間が許す限りしっかりと記入しておきましょう。
引用:富山国際大学子ども育成学部 紀要 第3巻(2012年3月)
実習日誌の様式は学校によって異なりますが、主に「時間」「環境構成」「子供の活動」「保保育者の援助・配慮、動き」、「感想」などで構成されています。
書き方で悩む学生は多いのですが、難しく考える必要はありません。各時間帯に行われる活動の中での子供の活動や保育者の援助をしっかり観察すれば、書く内容に困ることはありません。
何を書けばよいのか分からないという場合には、しっかり観察できていないということです。そのような状況にあれば、「より詳細に観察する」ということも翌日に目標に設定し、子供の活動や保育者の援助をしっかり観察し、どんどんメモをとっておきましょう。
なお、実習が初めての方は、書き方が分からないのも無理はありませんので、以下のサイトに掲載の実習日誌を参考にするとよいでしょう。
・ 保育士・幼稚園教諭のための学研 保育CAN
・ 茨城キリスト教大学 児童教育学科 |
4、保育実習を終えて
保育実習が終わっても、まだまだやることはたくさんあります。これまでの実習の中で、自分がどのような保育介入ができたのか、課題や問題点はなかったかなどを振り返り、自己評価することで次の実習や就職時に非常に役に立ちます。
振り返れば振り返るほど、また考えれば考えるほど、自身の保育に対する情熱が増し、自身の保育レベルの向上に繋がります。一段落したと思わず、次に生かすための復習としてしっかり振り返っておきましょう。
4-1、感想文・レポート
感想文・レポートは何を書いても構いませんが、今後の実習に必ず役に立つものですので、時間をかけてしっかり書いてください。また、誤字脱字など基本的なことは抑えておきましょう。
ただし、文章の質にこだわりすぎる必要はありません。実習の中で何を学んだのか、どんな失敗をしたのか、今後どのようにすればよいのかなど、自分の言葉で具体的に書かれていればOKです。文章の質よりも内容を重視して、時間をかけて入念に書くようにしてください。
なお、何について書けばよいのか分からないという方は、以下のような項目を参考に、1つ1つ振り返ってみてください。些細なことでも1つ1つピックアップすることで、自ずと内容の幅が生まれるはずです。また、これまでとったメモを参考にするのもよいでしょう。
・ 積極的に行った取り組み、それに対する結果
・ 嬉しかったこと(子供たちとの触れ合い、保育者との連携の中で) ・ 気づいたこと・学んだこと(保育の難しさ、保育技術、安全管理など) ・ 自分に足りていない部分、自己評価 ・ 当初の目標を達成できたか ・ 疑問点、反省点、今後の学習課題 |
なお、どうしても書き方が分からないという方は、以下のサイトを参考にするとよいでしょう。ただし、真似をして書くのはお勧めしません。必ず自分の想いを自分の言葉で書くようにしてください。
・ 旭中央病院付属看護専門学校 |
4-2、お礼状
実習が終わると、これまでお世話になった保育施設へ感謝の気持ちを込めてお礼状を送ります。ほとんどの学生が書き方に関して難しく考えますが、形式にこだわる必要はありません。
実際、多くの教育機関では形式を大事にし、学生に教授していますが、それは今後社会に出る上で必要になることがあるからです。しかし、形式にこだわりすぎる余り、感謝の気持ちが相手に伝わらなければ意味がありません。
最低限の基本を念頭に置くのは常識として当然ですが、自分の気持ちを自分の言葉で表現するということを忘れないでください。読み返してみて幼稚な文章だと感じても、自分の気持ちがしっかり表現できていれば何の問題もありません。
■最低限のルール
・ 実習終了後、遅くても半月くらいの間に送ること
・ パソコンではなく、ペンを手にして自分の字で書くこと ・ きれいない字でなくても、丁寧に書くこと ・ 誤字・脱字に注意し、略字を使用しない ・ 行を換える時には1字下げること ・ 便箋・封筒は白色のものを使用すること |
■礼状の基本
前文 | 頭語(「拝啓」)—>時候の挨拶—>安否の挨拶(相手—>自分の順) |
主文 | お世話になったこと、有意義だったこと、心に残ったこと、反省、決意・抱負など |
末文 | 先方の健康や発展を祈る言葉—>結語(「敬具」) |
後付け | 日付(2字下げくらいに)—>差出人氏名(所属大学名を添えて,下方に)—>相手先(役職名—>氏名の順。一番上に) |
何度も言いますが、形式にこだわりすぎるのはNGです。自分の言葉で自分の気持ちが表現できていれば幼稚な文章でも問題ありません。また、難しい言葉を使いすぎるのもお勧めしません。
たとえば、「御礼申し上げます」というような堅い言葉では、相手に気持ちが伝わりません。この場合、「ありがとうございました」というように日常で使う言葉で書くようにしましょう。
4-3、プレゼントはどうすべきか
最後に補足ではありますが、実習の最終日にプレゼントを渡すべきかどうか悩む学生も多いと思います。これは正直どちらでも構いませんが、プレゼント渡す際には気をつけるべきことがあります。
・ 事前に園長に相談すること
・ 個人ではなくクラス全員、または担当したクラス全員に渡すこと ・ 買ってきただけのものや食べ物を渡さないこと ・ 実習が疎かになる場合は製作せず実習に専念すること |
これらに注意し、製作する時間があるのならプレゼントのことを考えてもよいでしょう。ただし、保育実習では「学び」が最重要ですので、実習を疎かにしてはいけません。また、みんながあげているからと気負う必要はありません。挨拶だけでも“ありがとう”の気持ちは十分伝わります。
まとめ
実際に現場で保育を行うことで、校内での勉強では学べない多くのことを学ぶことができます。辛い毎日が続き、時には逃げ出したくなることもあるかもしれません。しかし、最後まで頑張れば自分を大きく成長することができますので、今後の自分のためにも最後までやり遂げてください。
また、感謝の気持ちを忘れはいけません。教育機関と保育施設の提携のもとで実習が行われますが、必ずしもすべての保育者が実習生を歓迎しているとは限りません。実習生が来ることで仕事量が増えるため、拒む人も多いのが実情です。
保育者の立場に立てば分かると思いますが、やる気がない実習生は保育者にとって邪魔な存在です。テキパキ動けない、要領が悪い場合であってもそれは経験を重ねていくうちに習得できるものですので気にしなくて大丈夫です。
ただし、感謝の気持ちをしっかり持つことを忘れずに、分からないことがあれば質問する、積極的に行動するなど、“やる気”を示してください。そうすれば、自ずと受け入れてくれるようになるでしょう。
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