発達障害の保育|保育園や幼稚園での保育士の対応と支援

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発達障害の保育|保育園や幼稚園での保育士の対応と支援(2017/02/08)

公開日: 2017/02/08 : 最終更新日:2017/02/09 保育士 病気 

発達障害の保育

「発達障害」をご存じですか?最近では、タレントの栗原類さんが自身の発達障害について語った本を出版し話題になりました。さらに文部科学省では、特別支援教育における発達障害について大まかな定義がなされています。ここでは、保育士さんが保育園や幼稚園で発達障害を抱えたお子さんとどう接していくべきか、ということについて述べていきたいと思います。

 

目次

  • 1、発達障害とは
    • 1―1、発達障害の原因は?
    • 1―2、発達障害の種類と特徴
  • 2、発達障害を見分けるには
  • 3、発達障害に気付いたら
  • 4、発達障害と加配保育士
    • 4―1、発達障害と幼稚園
  • まとめ

1、発達障害とは

発達障害とは、脳の発達が関係する生まれつきの障害です。そのため、他者とのコミュニケ-ションや対人関係を形成するのが難しく、その行動や言動、態度から時には「わがまま」「自分勝手」「独善的」などと判断されることもあります。子どもの場合は、「協調性がない」「言うことをきかない」「落ち着きがない」など、扱いにくい子どもとして不当な扱いを受けることがあります。

 

1―1、発達障害の原因は?

なぜこのような脳機能障害が起こるのでしょうか。それはいまだ解明されておらず、症状の発現によっては大人になるまで疾患を認定されないまま、ぎくしゃくした人間関係の中で過ごすケ-スもあります。わが子の発達障害が判明し、それは自分のせいだとご自身を責めてしまう親御さんもいます。しかしそれは家庭でのしつけや育て方、環境、本人の正確や怠慢などが原因ではないのです。

 

1―2、発達障害の種類と特徴

ひとくちに発達障害と言っても障害にはいくつかあり、症状や発症するシチュエ-ションなどによって分類することができます。ここでは発達障害の種類とその特徴について説明したいと思います。

 

■広汎性発達障害

広汎性発達障害とは、コミュニケ-ション能力や社会性に関わる脳の領域(言葉、行動)の発達が何らかの原因で阻害されている状態を示す総称で、自閉症スペクトラム(Autistic Spectrum Disorder/ASD)とも言います。時に知的障害を伴う自閉症や知的障害を伴わない高次機能自閉症のほか、アスペルガ-症候群、レット症候群、小児期崩壊性障害なども含み、特定不能の広汎性発達障害もこれに含みます。この「特定不能の」とはどういうことでしょうか。広汎性発達障害は症状の強さや特徴などが個人によって異なります。特徴的な症状によって診断名を当てはめているにすぎず、特定はできないけれど、明らかに脳の機能の障害によって発達障害が起きていることを示しているのです。以下の表でその種類についてまとめました。

 

広汎性発達障害の種類 どんな病気か 特徴
自閉症 女児よりも男児に多いとされ、症状の程度には個人差があります。てんかん発作や睡眠障害を起こしやすいとの報告もあります。対人関係やコミュニケ-ションで困難が見られる傾向が強いのが特徴で、知的障害がない場合には高機能自閉症と呼ばれています。 ・目を合わせられない。

・言葉の遅れやオウム返しがみられる。

・多動で落ち着きがない。

・こだわりが強く、執着する。

・パニックをおこす。

・要望がある場合、言葉が話せるようになっても言葉で示さず相手の手を引っ張って要望をかなえようとする(クレ-ン現象)。

アスペルガ-症候群 女性に比べ男性の割合が圧倒的に多いことがわかっています。知的な障害はないものの、対人との関係がうまく築けず、高機能自閉症と同じものと思われがちです。特にこだわり行動で特徴がみられ、「変わった人」「付き合いづらい」などの印象を持たれることが多いようです。 ・社会的なル-ルが理解しにくい。

・場の空気が読めず、自己中心的に見られがち。

・思ったままを言ってしまうことがあり、相手を傷つけてしまう。

・ジェスチャ-やアイコンタクトなどを使って相手と話すことができない。

・特定のものに強いこだわりがある

・興味のあるものに対する集中力や記憶力に優れている。

・自分が決めたル-ルを変えることに嫌悪感を覚える。

小児期崩壊性障害 有病率は約0.01%で男児に多いとされ、2歳ぐらいまでは正常に発達していくものの、社会的に退行していく現象をいいます。退行現象は半年ぐらいでおさまるも、自閉的な状態はその後も続くとされています。 ・2歳以降に症状があらわれる。

・言葉が出にくくなる(有意味語消失)。

・対人反応に異常がみられる(対人反応障害)。

・排便機能に問題が生じる。

・運動能力の退行。

・ものに対する執着心が強くなる。

・常同行動なども見られることがある。

レット症候群 主に女児に発症する進行性の神経疾患です。1万~1万5千人に1人の割合で発症し、生後6カ月ころまでは正常な発達を見せますが、それ以降に筋緊張低下、自閉傾向が現れ、その後、四つ這いなどのロコモ-ションの障害、重度の知的障害が現れます。 ・意味なく手をもむような動作をする。

・知能や言葉、運動能力に遅れが見られる。

・手をたたく、手を口に入れるなどの常同行動が見られる。

・昼夜の区別ができず睡眠のリズムが不安定である。

 

■注意欠陥多動性障害

注意欠陥多動性障害は英語でAttention Deficit Hyperactivity Disorderと表記し、ADHDと略されます。

 

・集中力がない(不注意である)

・じっとしていられない(多動性がある)

・考えずに行動してしまう(衝動的である)

 

以上の3つの特徴的な症状がみられます。

ADHDは生後すぐには確認できません。保育園や幼稚園に通うようになる3~4歳ごろ、社会のル-ルを学び始める時期に、集団行動が難しい、保育士の指示を聞けない、じっと座って待つことができないなどの多動症状が際立つようになり、発見される場合が多いとされています。

 

■学習障害

学習障害は英語でLearning Disabilityと表記し、LDと略されます。知的発達には問題がなく、一見すると遅れがないように見えるのですが、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算・推論する」の5つの能力のうち、単一または複数で習得・使用において困難が顕著な場合に学習障害と判断されます。医学的な分類では学習障害は主に以下の3つに分類されます。

 

・読むのが苦手:難読字障害(ディスレクシア)→文字が読めない、単語を理解できない

・書くのが苦手:書字表出障害(ディスグラフィア)→文字を書き写すのが難しい

・算数、推論が苦手:算数障害(ディスカリキュリア)→数字に関する能力が低い、推論できない

 

知的面の遅れが無いことから学習障害を日常生活の中で判断するのは困難を極めます。本格的な学習に入る就学前までに気づくのは難しい症状です。

 

■発達性協調運動障害

発達性協調運動障害とは、日常生活における協調運動(手と手、手と目、足と手などの個別の動きを一緒に行う運動)が、本人の年齢や知能に応じて期待されるものよりも低かったり、不正確であったり、困難を伴うというもの。かつて「不器用症候群」という不名誉な呼ばれ方をしていました。人の運動は、粗大運動と微細運動の2つに大別されますが、この2つの運動は人が成長するにつれ感覚器官から得た多くの情報をもとに伸展していくことがわかっています。人に生まれつき備わっている基本的な運動能力が粗大運動能力で、寝返り、這う、歩く、走るといった基本動作ができた後、泳ぐ、自転車に乗るなどの後天的に学ぶ粗大運動を体得します。さらに感覚器官や粗大運動で得られた情報をもとに、小さい筋肉(指先など)が調整できるようになり、次第に段階を踏みながらより細かい運動(微細運動)ができるようになります。たとえば指先で物をつまんだり、ひっぱったり、絵を描いたり、ボタンをかけたりする運動が微細運動にあたります。発達性協調運動障害があると、協調運動が粗大運動と微細運動のいずれか、またはその両方で、同年代の子どもと比較したとき、ぎこちなかったり、遅かったり、不正確になります。成長の途中で微細運動を問われる場面に出会うことで障害が発見されることが多いようです。

 

2、発達障害を見分けるには

発達障害はこのように幅広く、特徴もそれぞれ違うことがおわかり頂けたでしょうか。未就学児童のうちに発現する発達障害の、共通する特徴があることをここでおさらいしておきましょう。発達障害は多くの場合、子ども同志の関わり合いや小競り合いの中で発見されることが多いものです。子ども達をしっかりと観察し、ちょっとしたことに気付く、それが大切になって来ます。以下、発達障害の特徴的な症状になります。

 

・物の用途が言えない

・会話が成立しにくい

・指示が理解できない

・ル-ルの理解が遅い

・ル-ルのある遊びができない

・愛情を示しても反応しない

・目を合わせることができない

・みんなと一緒に行動できない

・突然の環境変化に対応できずパニックを起こす

・自分独自のル-ルなどへ固執する

・変わったもの(数字などパタ-ン的なもの)に興味を示す

・落ち着きがない

・過度にしゃべる、しゃべり出したらとまらない

・遊びの順番が守れない

・集中できない

・遊びがコロコロ変わる

・気が散りやすい

・人の話を聞いていない

・不器用である

 

3、発達障害に気付いたら

保育士は医師ではないので、疾病の特定をする必要はありません。しかし、保育士として子どもと関わって行く以上、子どもの発達障害の兆しを見過ごしては立ちゆきません。障害を抱えているお子さんは、周囲のお子さんとコミュニケ-ションがうまく取れず、とても苦しい思いをしています。当該のお子さんのみならず、その子をとりまく子ども達も、互いを理解できずトラブルを生んでしまうのです。

観察はそうした子ども達のちょっとしたことに気付くためであり、発達障害探しに躍起にならないようにしましょう。病気の診断はお医者さまの仕事。保育士は障害を持っている子どもの立場にたって、障害の有無関係なく、預かったお子さんが楽しく安全に、平穏に過ごせるようできる限りの事をする、発達障害を見分けることもその一つなのです。

 

4、発達障害と加配保育士

療育手帳を持っている場合は、すでにお子さんの発達障害を受け入れているので、園でどのようなことに気を付けるべきか、話し合っておきましょう。また、加配保育士がいる場合はそのことを伝えます。加配保育士は発達障害を持つお子さんを専門に見てくれますので、障害を持つ子どもが保育園での生活をスムーズに、安全に生活を送ることができます。また、療育手帳があれば発達障害の療育に関しての情報が多く入手できるようになり、適切な療育を受けることができます。

親御さんがお子さんの発達障害を認定していない場合は、保育士としてそのことをきちんとお話しする事が大切です。発達障害を断定するような、直接的な言葉は避け、園でどのように過ごしているかを話しましょう。同時に家庭での子どもの様子をききましょう。親御さんの子育ての悩みなどを尋ねると良いかも知れません。このとき親御さんに問題意識がある場合は、発達障害をお互いに共有し、連携して子育てにあたることを示しながら、療育しやすい環境を協調してつくっていくことを話しましょう。認定を受けることをお勧めする必要があるかも知れません。親御さんにその認識が無い場合は、障害により子どもが園での生活で困難を感じているので、過ごしやすい環境を一緒に作りたいということを伝え、専門医に一度見てもらうことを勧めてみましょう。発達障害の事実を知らされた瞬間、親御さんは激しく傷付くかも知れません。しかし、安全に楽しく園で生活させてあげたいという誠実さは必ず良い結果を生みます。障害を指摘し排斥するのではなく、共有し、その子を支えるという意志を伝えることが大切です。

 

4―1、発達障害と幼稚園

発達障害のお子さんを受け入れるかそうでないかは、幼稚園の場合、その園の方針によります。保育士として幼稚園が勤務先になった場合、その点はどのように対応しているのかをまずよく見る必要があります。

子どもと親御さんに面談を課して、疑わしいお子さんは入れないという主義の幼稚園もあります。発達障害のお子さんには別途加配保育士をつけて保育する必要があり、人材不足の現在、受け入れることができないとの理由に帰結する園もあります。それを理由に退園させるケースもあるほどです。悪質なケースでは、発達障害の疑いがあると勝手に決めつけ、園での生活が親御さんに見えないことをいいことに、当該の子どもだけ席を別にするなどの待遇をする保育士もいます。保育士に必要なのは、どんな子どもでも人として尊重し、育む心です。ご自分がどんな保育士になりたいのかというビジョンに、子どもを尊重することを忘れず入れていただきたいと思います。

 

まとめ

発達障害は正しく理解し、適切に対処すれば、障害をもつお子さんにも、その子を取り巻く周りの人々も平穏に過ごすことができます。

障害について正しい知識を持つことは、障害を抱えて保育園や幼稚園で苦しい思いをしているお子さんに寄り添い、少しでも過ごしやすくするための一助になります。保育園や幼稚園に通っているそうした子ども達は、保育士が一番長く接する初めての「社会」であり、そこで接する家族とは違う人たちが、障害を抱えていても普通に接してくれることを知り、自分の障害を受け入れ、ゆっくりとした成長の歩みにも付き合ってくれることを知れば、未来は明るいという事を理解してくれるでしょう。その子の障害を特定し、隔離し、その事実を指摘することが保育士の仕事ではありません。愛情深く子ども達の成長を見守るのが保育士のあるべき姿です。障害の有無にかかわらず、人のぬくもりを必要としている子ども達に手を差し伸べるお仕事なのです。だからこそ、発達障害のお子さんを理解して、そうでないお子さん同様に愛情をもって接してください。

jdepo

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