看護師が申し送りをする時に心がけたい、目的や留意点など5つのヒント(2017/10/12)
看護は365日、24時間継続して行われます。また、1人の人間が全ての業務を担うことはできません。そこで必須となるのが、申し送りです。申し送りはなぜ必要で、何を伝えれば漏れずに無駄のない、効率的な申し送りとなるのかまとめました。
目次
1、看護師の申し送りとは
1-1、申し送りとは
病院や施設では、盆暮れ正月問わず365日24時間体制で患者・入居者の看護が必要です。
自分が休んでいる間にも病院は機能していますから、病棟単位・チーム単位で連携して途切れなく患者への看護を提供することが必要です。自分が対応できないときのことや緊急時などのことも踏まえ、常にスタッフ間で情報を共有しておかなくてはなりません。
<情報共有のために使用するもの>
・電子カルテ
・(紙)カルテ ・カーデックス ・申し送りノート ・(患者と共有の)クリニカルパス ・掲示板 |
これらのツールを使っても伝えきれない情報を伝えるのが、各勤務の始めと終わりに行う申し送りです。近年は患者のベッドサイドへ回って行う、ベッドサイドカンファレンス形式をとる医療機関も増えました。
1-2、申し送りの実状
情報共有のために大切なことはわかっていても、実はこの申し送りが現場の看護師の負担となっていることをご存じでしょうか。申し送りは昔から行われてきたもので看護の世界では習慣となっているものですが、廃止にむけた見直しも行われているのです。
<申し送りは現場の負担!?>
・申し送りにかかる時間が長い
・申し送りがうまくできない(まとめられない) ・申し送りの間、ナースコールの対応ができない ・申し送り内容が重複する ・ベッドサイドの申し送りと別に、ナースステーションでの申し送りが必要 |
これらの理由から、廃止を視野に入れた業務改善に乗り出した病院もあります。東京医科大学の看護部では、申し送りの不要性を検証という研究も行っています。しかし、このような研究がされていても申し送りが廃止されないのは、なぜでしょうか?いくら簡略化したとしても、ゼロにはできないものだからです。
2、申し送りは、何のためにするの?
申し送りは作業の途中でも決まった時間に集まらなくてはならないし、遅れる人を待たされることもあります。申し送りにかける時間を他のことにまわせたら・・・と思ったことはありませんか?そもそも、申し送りはなぜ必要なのでしょうか。情報の共有とは、具体的に何を伝えることを言うのでしょうか。
<申し送りの目的>
・次の担当者に、その時間までの患者の様子を伝えるため
・患者からの希望や要望を伝えるため ・医師からの指示を正しく伝え、安全で確実な検査や処置を行うため ・目標を共有し、常に同じレベル・同じ方針の看護を提供するため |
確かに、これらを全て文書化し、リアルタイムの情報を伝えることは難しいかもしれません。では、廃止まではいかずとも効率を重視した申し送りを行うためには、どのようにしたらよいでしょうか。
3、無駄なく必要な申し送りをするための、申し送り事項とは?
時間がかかる割には重複していたり要領を得ない申し送りを改善すれば、効率的な申し送りをすることが可能になります。短縮した分の時間を他の業務にあてたり、残業の短縮につなげることもできますね。では、効率的に行うにはどんなことを申し送りすれば良いのでしょうか。
<必要な申し送り事項とは>
➀その勤務帯で患者の状態に変化があったのか
・無しなら、「〇〇と〇〇と〇〇変化なし」と簡単に伝える ・ありなら、「△△が、前勤務帯から○:○○に、どう変化したか」を伝える ②時間と量を伝える ・点滴を交換した時間(定時でない場合)と量(本数) ・ドレーンや尿などの前回破棄した時間と量・性状 ・臨時薬の使用時間(解熱鎮痛薬・麻薬・降圧薬など) ➂次の勤務帯にお願いしたいこと ・ムンテラの調整など、家族からの依頼 ・医師への報告 ・やってもらいたい処置や投薬 |
「家族がムンテラを希望している」「薬剤師から薬についての説明が欲しい」など、看護記録にも残さないようなことに関しては、あなたが伝え忘れたら終わりです。こういったことから情報の共有ができず、大問題に発展するケースもあります。何を申し送り、何は不要な(既に知っている)情報なのか。それをよく考えて、伝える内容を吟味しましょう。
4、効率的な申し送りをするための5つのヒント
患者の状態は、刻一刻と変化しています。突発的な出来事や急変ほど、看護記録を書く余裕がありません。とくに夜勤帯は、最後の3時間に多くの業務が凝縮されていて、日勤帯の看護師が情報収集をするまでの間にはカルテ記載のできていないことがほとんどです。必要なことは伝えつつ、申し送りに費やす時間と労力を軽減させる方法を5つにまとめました。
<申し送りはこれに留意すれば、漏れない&無駄がない>
➀二重になるようなことを話さない、話さなくて済むような仕組みを作る
・既にカルテに記載した内容や過ぎたことは、申し送らない。
・会議や提出物、病院からの職員への通達など全体への申し送りは、掲示板や連絡ノートを活用する。 ・情報収集しやすいよう、電子カルテのメモ欄や特記事項の欄を常に整理する。 |
②必要なことを端的に申し送れるよう、トレーニングする
・必ず伝えなくてはならないキーワードを念頭におく。
・言葉に出してまとめるのが苦手な人は、頭の中でリハーサルする。 ・申し送りの場をカンファレンスの場にせず、「伝達の場」であることを意識する。 |
③ベッドサイドで行う場合、観てわかることは送らない。
・ドレーンの排液量や性状(交代時に同時にチェックしておけば、後で記録すればOK)
・バイタルサイン(モニター上の数値からかけ離れていなければ、記録でOK) |
④転記する回数を減らす
・カーデックスを廃止し、情報収集の際に見る場所を減らす。
・患者個々の連絡事項は電子カルテのメモ欄等で統一する。 |
⑤できるだけリアルタイムに記録をし、次の勤務者が読めるようにしておく
・看護記録を患者のもとでつけられるように、PCと一緒に動けるようにする。
・タイピング速度を上げる。 ・単語登録をしておく(医療情報室に協力を依頼する) ・フローシートの観察項目を活用し、タイピングを減らす。 ・隙間時間を活用し、「保留」「一時保存」の形でキーワードだけでも残しておく。 ・手持ちの板(ノート)に記載→カルテ記載という転記をやめる。 |
個人や部署の努力だけでは改善できないものもあります。申し送りを減らす一番望ましいことは⑤の、次の勤務帯の看護師が情報収集を始める前に入力(記載)を済ませることです。痛みがどうだったか、食事量がどうだったかなどは患者に聞いたその場で温度版などのフローシートに書き込んでおけば、あえて申し送りで口にする必要はありません。また、ベッドサイドカンファレンスで本人の前で話せないことも隙間時間で入力できれば、ベッドサイドに移動する前のナースステーションで行う二重の申し送りを短縮できますし、自分が伝え忘れるという伝達ミスも防ぐことができるのです。
まとめ
申し送りは看護師にとって必要不可欠な業務ではありますが、そのために手間暇とストレスを抱えるのは望ましくありません。効率だけを重視していると必要な情報が次につながらなくなってしまうという危うさもありますから、漏れない&無駄のない申し送りができるように、5つのヒントのうち個人で改善できるところから始めてみてはいかがでしょうか。
参考文献
申し送りの不要性を検証―申し送りの全廃に向けての現状調査―(東京医科大学病院看護研究集録28巻55-58|粒来沙矢香 他|2008年)
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