准看護師|養成所の概要と准看護師資格に関する試験・過去問(2017/11/21)
患者への看護業務を行う人材には、大きく分けて「(正)看護師」と「(准)看護師」があります。これら2つは、資格取得や給与など、さまざまな面において違いがありますが、多くの医療機関において業務内容に大きな相違はありません。
これから准看護師を目指そうと考えている方や現在目指している方のために、ここでは准看護師の概要や看護師との違い、准看護師養成所、資格取得の過程・試験などについて詳しく解説いたします。
目次
1、准看護師とは
保健師助産師看護師法において、准看護師とは「都道府県知事の免許を受けて、医師、歯科医師又は看護師の指示を受けて、前条に規定することを行うことを業とする者」のことを言い、簡単に言えば医師や看護師の指示を受けて患者の看護を行っていくことが業務となります。
看護師よりも短期的に、また容易に資格取得でき、また就労環境においても融通が利きやすいなど、准看護師を選ぶことのメリットが多大に存在します。
1-1、看護師と准看護師の違い
看護師と准看護師は、「教育課程」「免許交付」「業務内容」「給与」など、さまざまな違いがあります。
■教育課程
看護師になるためには、3~5年の教育を受ける必要がありますが、准看護師の場合は最短2年の教育で資格を取得することができます。詳しく後述しますが、中学校卒業もしくは中等教育学校の前期過程を終了した上で、准看護師教育所の2年間の教育課程の後、准看護師試験に合格することで准看護師の免許を受けることができます。
■免許交付
看護師の免許は、厚生労働省から発行されるのに対して、准看護師の免許は、試験地の各都道府県から発行されます。
■業務内容
前提として、看護師が医師から指示を受けて業務を行うのに対して、准看護師は医師または看護師から指示を受けて業務を行います。准看護師は、医師や看護師の補佐役であることから、医療機関によっては看護師と准看護師の業務内容を明確に区別しているところもあります。しかしながら、遂行できる業務内容自体に大差はありませんので、区別なく同様の業務を任されるケースが多いのが現状です。看護師の仕事内容を徹底解説していますのでご覧ください。
■給与
厚生労働省の「平成28年賃金構造基本統計調査」によると、10人以上の医療施設に勤務する看護師(男女)の平均年収は平均480万8500円。准看護師の統計は公表されていませんが、准看護師の年収は看護師のそれを下回ります。これは主に資格取得までの期間や費用などが関わっており、期間が長く費用がかかる看護師の方が必然と給与が高くなります。看護師の病院別の月給・賞与・年収が気になる方は一例が載っていますのでご覧ください。
2、准看護師への道
准看護師にはなるためには、いくつかのルートがあります。1つは高校卒業後に「准看護師学校(看護短大)に2年間通う方法」、もう1つは中学校卒業後に「高等学校衛生看護科に3年間または4年間通う方法」です。
■准看護師学校(看護短大)
高校卒業後に、准看護師学校(看護短大)にて2年間、所定の教育課程を受講し修了すると准看護師の受験資格を得ることができます。
■高等学校衛生看護科
高等学校衛生看護科にて、3年間(全日制)または4年間(定時制)、所定の教育課程を受講し修了すると准看護師の受験資格を得ることができます。
3、准看護師の教育課程
准看護師になるためには、准看護師養成所において1,890時間以上の教育課程を受けることが義務付けられています。ちなみに看護師の場合は、93単位以上かつ2,895時間以上が必要となります。
≪准看護師の基本的な教育課程≫
科目 | 時間数 | ||||
講義 | 実習 | 計 | |||
基礎科目 | 国語 | 35 | 35 | ||
外国語 | 35 | 35 | |||
その他 | 35 | 35 | |||
専門基礎科目 | 人体の仕組みと働き | 105 | 105 | ||
食生活と栄養 | 35 | 35 | |||
薬物と看護 | 35 | 35 | |||
疾病の成り立ち | 70 | 70 | |||
感染と予防 | 35 | 35 | |||
看護と倫理 | 35 | 35 | |||
患者の心理 | 35 | 35 | |||
保健医療福祉の仕組み | 35 | 35 | |||
看護と法律 | |||||
専門科目 | 基礎看護 | 315 | 315 | ||
看護概論 | 35 | 35 | |||
基礎看護技術 | 210 | 210 | |||
臨床看護概論 | 70 | 70 | |||
成人看護 | 210 | 210 | |||
老年看護 | |||||
母子看護 | 70 | 70 | |||
精神看護 | 70 | 70 | |||
臨地実習 | 735 | 735 | |||
基礎看護 | 210 | 210 | |||
成人看護 | 385 | 385 | |||
老年看護 | |||||
母子看護 | 70 | 70 | |||
精神看護 | 70 | 70 | |||
合計 | 1,155 | 735 | 1,890 |
引用元:看護師等学校養成所における教育内容等について(厚生労働省)
上表の教育課程を「全日制・定時制」または「通信制」で受講し、2~3年の教育を経て准看護師試験に臨むことになります。
4、准看護師試験の受験資格
准看護師試験を受けるためには、准看護師学校で2年間、または高等学校衛生看護科で3~4年間、所定の教育課程を受講し修了することが必要になります。要件の詳細は以下の通りです。
次の(1)から(7)までのいずれかに該当する者
(1) 文部科学大臣の指定した学校において2年の看護に関する学科を修めた者 (2) 文部科学省令・厚生労働省令で定める基準に従い、都道府県知事の指定した准看護師養成所を卒業した者 (3) 文部科学大臣の指定した学校教育法(昭和22年法律第26号)に基づく大学(短期大学を除く。)において看護師になるのに必要な学科を修めて卒業した者 (4) 文部科学大臣の指定した学校において3年以上看護師になるのに必要な学科を修めた者 (5) 文部科学省令・厚生労働省令で定める基準に適合するものとして、都道府県知事の指定した看護師養成所を卒業した者 (6) 外国の看護師学校若しくは養成所を卒業し、又は外国において看護師免許に相当する免許を受けた者で、厚生労働大臣が前記(3)から(5)までに掲げる者と同等以上の知識及び技能を有すると認めたもの (7) 外国の看護師学校若しくは養成所を卒業し、又は外国において看護師免許に相当する免許を受けた者のうち、前記(6)に該当しない者で、厚生労働大臣の定める基準に従い、都道府県知事が適当と認めたもの |
引用元:東京都准看護師試験受験要項一部改変(東京都福祉保健局)
5、准看護師試験
規定の教育課程を修了しただけでは准看護師として就業することはできず、各都道府県が実施する准看護師試験を受け、合格する必要があります。都道府県によって、試験内容に違いはありますが、一般的には以下のような試験範囲、形式に基づいて行われます。
≪試験科目例≫
人体の仕組みと働き
食生活と栄養 薬物と看護 疾病の成り立ち 感染と予防 看護と倫理 患者の心理 保健医療福祉の仕組み 看護と法律 基礎看護 成人看護 老年看護 母子看護及び精神看護 |
引用元:東京都准看護師試験受験要項(東京都福祉保健局)
試験は、教育課程から出題されますので、受講した内容をしっかりと復習しておきましょう。なお、都道府県によって異なりますが、合格率はおよそ98%となっています。
≪試験内容≫
出題数/点数 | 1問10点とする。(問題150問×10点=1500点) |
出題形式 | 四肢択一(4つの中から1つ選ぶ) |
試験時間 | 2時間30分(1題に対して1分) |
合格到達点 | 900点以上を合格者とする。(満点1500点の6割以上の得点) |
≪合格率≫
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
平成26年(2013年) | 17,926人 | 17,611人 | 98.2% |
平成27年(2014年) | 17,433人 | 17,236人 | 98.9% |
平成28年(2015年) | 17,841人 | 17,473人 | 97.9% |
6、准看護師から看護師へのステップアップ
准看護師の資格取得の後、以下の方法で看護師を目指すことが可能です。准看護師として就業し続けるのも1つの手ですが、資格取得にかかる時間や費用などの関係、さらには知識の習熟度などによって、給与面や待遇面においては看護師の方がやや優遇されますので、准看護師から看護師へのステップアップを検討してみてはいかがでしょうか。
高等学校専攻科、看護短大または看護師養成所で2年間(全日制)もしくは3年間(定時制)学んだ後、国家試験を受ける。(看護師2年課程)
准看護師の資格取得後、通算就業経験10年※(120か月以上)業務に従事し、看護短大もしくは看護師養成所で2年間学んだ後、国家試験を受ける。(看護師2年課程 通信制) |
※2018年(平成30年)4月1日から“7年以上”に変更
また、看護職には、看護師・准看護師のほかに助産師と保健師があります。看護師免許の取得後にはそれぞれに必要となる1年以上の教育課程を受講・修了することで、国家試験の受験資格を得ることができます。助産師、保健師の資格取得も考えている方は助産師資格の試験の内容や過去問、保健師資格の試験の内容や過去問にはそれぞれ特徴がありますのでお読みください。
7、准看護師の廃止について
かねてより日本看護協会が“准看護師資格の撤廃”を主張し、上述の准看護師から看護師へのステップアップにある就業経験10年から7年への短縮からもわかるように、これは現在進行形で取り組まれているものです。
日本看護協会は、“看護の質向上”のために、准看護師資格の撤廃を提案し続けていますが、そもそも現在は懸念されるほどに看護師不足が顕著であり、准看護師資格の撤廃運動が本格化すると看護師不足(看護職不足)はさらに加速の一途を辿ることになります。そのため多方面から准看護師資格の撤廃に反対する声が挙がっています。
今後どのような経過を辿るのかは分かりませんが、現職の准看護師にとって不利益となることはまずないでしょう。また現在、准看護師を目指している方にとっても不利益にならず、看護師への移行がスムーズに行える援助体制が確立していくことでしょう。
まとめ
准看護師になるためには、所定の教育課程を准看護師学校で2年、または高等学校衛生看護科で3~4年受講し、修了することが必要となります。給与や待遇などにおいて、看護師と准看護師に違いはありますが、准看護師は最短18歳で資格を取得することができ、さらに資格取得への道が看護師よりも容易のため、准看護師を目指すメリットは多大にあります。
日本看護協会の准看護師資格撤廃(看護師一本化)への動きが本格化している現状において、看護師・准看護師どちらを目指すべきなのか迷われている方も多いと思いますが、時間や費用などの兼ね合いもありますし、准看護師資格取得者が不利益を被ることはありませんので、准看護師を目指そうと考えている方や目指している方は、心配せずに資格取得へ向けて取り組んでいってください。
なお、資格撤廃の動きに伴い、准看護師養成所の募集が中止される可能性がありますので(例:神奈川県)、お住まい(試験地)の都道府県の情報はしっかりと確認しておきましょう。
参考文献
平成28年賃金構造基本統計調査(厚生労働省)
看護師等学校養成所における教育内容等について(厚生労働省|平成17年9月5日)
東京都准看護師試験受験要項(東京都福祉保健局)
東京都在住、正看護師。自身が幼少期にアトピー体質だったこともあり、看護学生の頃から皮膚科への就職を熱願。看護学校を経て、看護師国家資格取得後に都内の皮膚科クリニックへ就職。ネット上に間違った情報が散見することに疑問を感じ、現在は同クリニックで働きながら、正しい情報を広めるべく、ライターとしても活動している。
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