イブプロフェンとは?効果・副作用や作用機序を徹底解説!(2021/07/01)
普段からよく用いられる解熱鎮痛薬の1つにイブプロフェンがあります。イブプロフェンは具体的にどのような効果・副作用を持つ薬剤なのかを把握していますか?イブプロフェンの用法・用量や作用機序、効果や副作用などを詳しくまとめました。
目次
1、イブプロフェンとは
イブプロフェンとはプロピオン酸誘導体のNSAIDsの1種です。NASAIDs(Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drug)とは、非ステロイド性抗炎症薬のことで、抗炎症作用・鎮痛作用・解熱作用の3つの効果を持っている薬剤の総称です。
イブプロフェンは、イギリス最大級の薬品小売企業のBoots Groupの研究部門が開発した薬剤で1950年代に合成され、イギリスでは1969年に関節リウマチの治療薬として認可されています。
また、アセトアミノフェンと並び、世界で最も広く使われている解熱鎮痛薬であり、WHO(世界保健機関)の「エッセンシャル・ドラッグ」にも含まれている医薬品です。
日本では、イブプロフェンは次のような商品名で流通しています。
<処方薬>
・ブルフェン
・タイヨー(ジェネリック)
・タツミ(ジェネリック)
<市販薬>
・イブクイック頭痛薬
・イブA錠
・バファリンプレミアム
・バファリンルナi
・ノーシンピュア
・エルペインコーワ
イブプロフェンは処方薬よりも市販薬としての方が使われる機会が多い医薬品かもしれません。
1-1、イブプロフェンの用法・用量
イブプロフェンの用法・用量を確認しておきましょう。
イブプロフェンは経口投与になり、年齢によって投与量は異なります。
<一般的なイブプロフェンの用量>
・成人:600mg/日
・11~15歳:400~600mg/日
・8~10歳:300~400mg/日
・5~7歳:200~300mg/日
この用量を一般的には1日3回に分けて服用します。
イブプロフェンはこの用法・用量で使用しますが、急性上気道炎の治療で処方される場合は用法・用量が異なります。
<急性上気道炎でのイブプロフェンの用量>
・成人:200mg/回
成人は1回200mgを頓用で使用しますが、年齢や症状によって、この用量は適宜増減することが可能です。1日2回が上限となり、1日最大600mgが限度となります。
1-2、イブプロフェンの作用機序
イブプロフェンはNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)ですので、次の3つの効果があります。
・抗炎症作用
・鎮痛作用
・解熱作用
イブプロフェンを服用すると、なぜこれらの効果が得られるのか?その作用機序を確認していきます。
イブプロフェンはプロスタグランジンの合成を抑制する作用があります。
プロスタグランジンは起炎物質・発痛増強物質です。プロスタグランジンは炎症や疼痛の原因になります。また、脳の視床下部にある体温調節中枢に、体温を上昇させるように伝えます。このことで、体温調節中枢は身体の各部に体温上昇の指令を出し発熱します。
プロスタグランジンはアラキドン酸という物質からシクロオキシゲナーゼ(COX)という酵素の働きで合成されます。
イブプロフェンはこのシクロオキシゲナーゼの働きを阻害することで、プロスタグランジンの合成を抑制し、抗炎症・鎮痛・解熱作用が現れます。
2、イブプロフェンの効果
イブプロフェンはNSAIDsの1種ですので、抗炎症作用・鎮痛作用・解熱作用の3つの効果があります。
イブプロフェンはこの抗炎症・鎮痛・解熱の3つの効果をバランスよく持っていることや解熱効果時間がアセトアミノフェンに比べて長いことが特徴です。
また、末梢でのプロスタグランジン合成阻害作用が強いことも特徴の1つです。そのため、末梢での炎症・疼痛の治療に用いられることが多いです。
イブプロフェンは、次のような疾患に処方されます。
・関節痛
・関節炎
・神経痛や神経炎
・背部痛や腰痛
・痛風
・腎結石
・尿路結石
・片頭痛
・月経困難症
・紅斑(結節性紅斑、多形滲出性紅斑、遠心性環状紅斑)
・小規模から中規模な手術後
・急性上気道炎
イブプロフェンは、抗炎症・鎮痛・解熱の効果のバランスが良いので、非常に幅広い疾患が適応になりますが、先ほども言ったように末梢での炎症・疼痛効果が高いので、関節リウマチや関節痛・関節炎で処方されることが多いです。
3、イブプロフェンの副作用
イブプロフェンでの主な副作用は胃腸障害です。イブプロフェンはシクロオキシゲナーゼ(COX)の働きを阻害することで、プロスタグランジンの合成を抑制します。プロスタグランジンは炎症・疼痛・発熱の原因物質になりますが、同時に胃の粘膜を保護している物質でもあります。
イブプロフェンを服用することで、プロスタグランジンの合成が抑制されますので、抗炎症・鎮痛・解熱効果が生まれます。同時に胃の粘膜を保護していたプロスタグランジンが減少してしまうので、胃腸障害が起こりやすくなります。
また、イブプロフェン自体が胃の粘膜に直接刺激を与えることも、胃腸障害の原因の1つになります。
イブプロフェンの副作用で胃腸障害が起こると、次のような症状が現れます。
・胃痛
・胃の膨満感
・食欲不振
・胸やけ
・嘔吐
・吐き気
また、胃潰瘍が起こることもあります。イブプロフェンによる胃潰瘍は「NSAIDs胃潰瘍」と呼ばれます。「NSAIDs胃潰瘍」の半数は無症状ですが、約20%の人には吐血や下血が起こる1)ほど重症化することがありますので、注意が必要です。
このような副作用があるため、イブプロフェンは空腹時は避けて服用しなければなりません。
ただ、イブプロフェンはほかのNSIADsに比べると、消化器系への作用は少ないので、NSIADsの中では胃腸障害のリスクは少ないです。
3-1、イブプロフェンの重篤な副作用
イブプロフェンの主な副作用は胃腸障害ですが、その他に頻度は少ないものの重篤な副作用が起こる可能性はあります。イブプロフェンの服用で起こりうる重篤な副作用には次のようなものがあります。
・ショック、アナフィラキシー様症状(血圧低下、呼吸困難、冷や汗、悪寒、四肢のしびれ、血管浮腫、蕁麻疹など)
・中毒性表皮壊死融解症、皮膚粘膜眼症候群
・無菌性髄膜炎
・肝機能障害、黄疸
・喘息発作
特に、イブプロフェンを服用したことによる喘息発作は、「NSAIDs過敏症」と呼ばれます。以前はアスピリン喘息と呼ばれていたこともありましたが、アスピリンだけでなく、イブプロフェンなどほかのNSAIDsでも起こるので、「NSAIDs過敏症」と呼ばれるようになりました。
イブプロフェンによるNSAIDs過敏症は服用後30分~数時間後に起こります。
3-2、イブプロフェンとの併用禁忌・注意薬
イブプロフェンとはHIV治療薬であるジドブジンとは併用禁忌です。これは、血友病患者において出血傾向が増強したためです。
そのほか、イブプロフェンと併用すると、作用が増強・減弱する薬剤があります。
・ワルファリン→作用増強
・メトトレキサート(関節リウマチ治療薬)→作用増強
・チアジド系抗利尿薬→作用減弱
・ループ利尿薬→作用減弱
・ペメトレキセド(抗がん剤)→作用増強
このような傾向がありますので、イブプロフェンを処方された時はもちろん、市販薬としてイブプロフェンを購入する時も、今服用している薬とイブプロフェンは併用して良いのかを薬剤師に確認するようにしましょう。
まとめ
イブプロフェンの基本情報と効果・副作用などを詳しく説明しました。イブプロフェンは関節炎や関節リウマチなどでよく使われる薬ですが、胃腸障害などの副作用がありますので、必ず用法・用量を守って服用するようにしましょう。
参考文献
1)専門医が語る病気の知識(胃潰瘍)-ながくて西クリニック-愛知県長久手市の内科、消化器内科(胃腸科)、小児科
・NSAIDsとアセトアミノフェン|日本ペインクリニック学会
・ガイドライン|日本緩和医療学会 – Japanese Society for Palliative Medicine
・痛みと鎮痛の基礎知識 – Pain Relief ーNSAIDs/ピリン系/ステロイド性抗炎症薬|大学病院医療情報ネットワークセンター
東京都在住、正看護師。自身が幼少期にアトピー体質だったこともあり、看護学生の頃から皮膚科への就職を熱願。看護学校を経て、看護師国家資格取得後に都内の皮膚科クリニックへ就職。ネット上に間違った情報が散見することに疑問を感じ、現在は同クリニックで働きながら、正しい情報を広めるべく、ライターとしても活動している。
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