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CPA(心肺停止)の看護|看護記録と処置の5ポイント、蘇生後の看護(2019/12/14)

公開日: : 最終更新日:2020/10/24 看護技術 東京都 全科共通 

CPAとは心肺停止のことです。CPAは迅速に処置をすることで蘇生可能ですので、看護師はCPAの処置に必要な知識を身につけておかなくてはいけません。また、CPAの蘇生後は患者だけでなく、家族に対しての看護も重要になります。CPAの基礎知識や看護記録、処置をする時の看護のポイント、蘇生後の看護をまとめました。実際に看護をする時の参考にしてください。

 

1、心肺停止(CPA)とは

心肺停止のことをCPA(Cardiopulmonary arrest)と言います。心肺停止は、文字通り心臓も呼吸も止まった状態のことです。CPAになると、意識なし・呼吸なし・脈拍なしの状態になります。心停止後でも、はじめの数分間は死線期呼吸(ギャスピング、下顎呼吸)が出ますが、顎が動いているだけで、胸郭は動いていませんので、呼吸停止と同じ状態と考える必要があります。

看護師なら理解していると思いますが、「CPA=死」ではありません。CPAになっても、即時に適切な救命処置を行えば、蘇生できる可能性はあります。

 

生存退院率

出典:第3回 日本循環器学会プレスセミナー

そのため、看護師はCPAの処置や看護を適切に行えるようにしておかなくてはいけません。

 

2、心肺停止(CPA)の看護記録

CPAの処置をする時の看護記録は、経時記録が基本になります。CPAとなった時刻、CRPを開始した時刻、薬剤を投与した時刻、薬剤の種類・量などを詳細に記録していかなければいけないので、経時記録が適しているのです。

普段はSOAPやフォーカスチャーティングで看護記録を記載していても、CPAの処置や急変時は経時記録で書かないと、CPA後の経過を追うことができません。看護記録は2年間の保管義務があり、万が一、患者側から医療ミスではないかと訴えられた時に、看護記録は病院側が適切な治療・処置を行ったという証拠になりますので、分単位で詳細に、そして正確に記録していきましょう。

CPAの処置をする看護師は慌ててしまって、看護記録を記載するのを忘れてしまう人もいますが、処置と看護記録は同時進行で行わなくてはいけません。看護記録については、「看護記録の構成・SOAP、POSの書き方、法に基づく保存期間」で詳しく説明していますので、参考にしてください。

 

3、心肺停止(CPA)の処置をする時の看護の5つのポイント

CPAの処置をする時の看護のポイントを説明していきます。CPAの患者を病棟で発見した時、また救急外来や救命救急センターでCPAの患者が搬送されてきた時に適切な処置を行えるように、CPAの処置の看護のポイントを押さえておきましょう。

 

■人を呼んでCPRを開始する

病棟でCPAの患者を発見したら、とにかく人を集めることが大切です。意識・呼吸・脈拍を確認し、「CPAかも?」と思ったら、すぐにその場でナースコールをするなり、近くの看護師を呼ぶなりして、人を集めてください。そして、CPRを開始しましょう。

人を呼ぶことは基本中の基本ですが、急変対応に慣れていない新人看護師や若手看護師は、頭が真っ白になってしまって、すぐに行動に移せないことも多いと思うので、まずは「人を呼ぶ」ということだけは覚えておいてください。先輩看護師を呼べば、あとは先輩看護師の指示に従って行動すれば良いので心配する必要はありません。

 

■DNARではないかを確認する

CPAになった患者は、必ず全員蘇生させるというわけではありません。救急搬送されてきた患者は原則として全員に救命処置を行いますが、入院患者の場合は違いますよね。本人や家族の意思でDNARの同意書が取れている患者に対しては、積極的な救命処置は行いません。そのため、入院患者がCPAになった場合は、DNARではないかどうかも確認しておかなくてはいけません。DNRの看護は、「DNRの看護|Do Not Resuscitateのガイドライン・同意書と看護研究」で詳しく説明しています。

 

■プライバシーの配慮を忘れない

CPAの処置をする時には、看護師は慌てていることが多いので、ついプライバシーの配慮を忘れがちになります。胸骨圧迫や経口挿管、除細動などの処置は病衣を脱がせて胸が見える状態で行いますので、カーテンやパーテーションで患者を周囲から見えないようにしないといけません。また、そのような処置をしているところをほかの患者が見てしまったら、患者の間で不安が広がります。だから、CPAの処置をする時には、プライバシーの配慮を忘れないようにしてください。

 

環境整備をする

CPAの処置をする時には、環境整備をすることも大切です。CPAの処置をする時は、とりあえず救急カートを持ってくれば大丈夫ですので、救急カートを用意しましょう。そして、ベッド周りのスペースを確保できるように、床頭台やオーバーベッドテーブル、イスなどは片付けて下さい。状況によっては、個室に移動して処置をする必要もありますので、余裕があればリーダー看護師に個室の状況を確認すると良いでしょう。

 

■ACLSのアルゴリズムを理解しておく

CPAの処置の基本は、ACLSのアルゴリズムに沿ったものです。ほとんどの医師がACLSのアルゴリズムを理解し、ACLSのアルゴリズム通りにCPAの処置を行っていくはずです。看護師もACLSのアルゴリズムを理解しておけば、時間のロスがなく、効率的に処置を進めていくことができます。

救命処置は時間との勝負ですから、看護師もACLSの基本的なアルゴリズムを理解しておくと良いでしょう。CPAの処置のアルゴリズムは、「VF/Pulseless VT」と「PEA/asystole」の2通りがありますので、あらかじめ理解をしておいて、CPAの処置をする時に慌てないようにしましょう。

 

4、心肺停止(CPA)の蘇生後の看護

CPAの患者に処置を行い蘇生に成功したら、それで終了というわけではありません。看護師は蘇生後のケアもしていく必要があります。蘇生後の看護は、蘇生後の治療方針によって異なります。CPAの蘇生後は、次の2ケースに分けられます。

・積極的な治療をする場合

・DNARとなる場合

この2ケース別に、蘇生後の看護のポイントを説明します。

 

4-1、積極的な治療をする場合の蘇生後の看護

積極的な治療をする場合は、全身管理と家族ケアが重要になります。

 

■全身管理

CPAの蘇生後は、脳低温療法を行ったり、PCPSを用いて循環動態の補助を行ったりします。CPAの蘇生後は薬剤を適切に投与し、全身管理を行って、異常の早期発見に努めなければいけません。

脳低温療法を行う場合は、温度管理を行うほかに、低体温になることで感染のリスクが上がりますので、感染予防も徹底しなければいけません。また、循環動態が悪くなることで、褥瘡の発生リスクが上がりますので褥瘡予防のケアも行いましょう。

 

■家族ケア

CPAの蘇生後、家族は混乱し現実を受け入れられないことが多いです。積極的な治療を行う場合、全身至る所からカテーテルを挿入することがあるため、家族は「見ているだけで辛い」という状態になることも少なくありません。看護師はそのような家族に対し、適切な情報提供を行い、不安を傾聴しながら、家族ケアを行っていく必要があります。

 

4-2、DNARの場合

CPAは蘇生できたとしても、それ以上の回復は見込めないことも少なくありません。そのような場合は、家族に説明して同意が取れたら、積極的な治療は行わずにDNARとなることもあります。蘇生後にDNARとなった場合は、残された時間を患者と家族が望む形で過ごせるような看護をしていく必要があります。

 

■共感・支持的な態度で接する

家族は突然CPAになったことをすぐには受け入れられません。また、DNARという選択をしたことに悩み、自分たちを責めることもあります。看護師は家族に寄り添い、共感しながら支持的な態度で接することで、家族ケアをしていくようにしましょう。

 

■適宜、情報提供を行う

家族がDNARになった現状を受け入れるためには、情報提供も必要です。面会に来た家族に対し、患者の状況を説明したり、必要時は医師から何度でも家族に説明してもらったり、その日に行ったケアなどを伝えたりすることで、家族は少しずつ状況把握ができ、現状を受け入れやすくなります。

 

■家族の休息に配慮する

CPAから蘇生してDNARになった場合、家族はずっと病室に泊まり込んで、患者につきそうことが少なくありません。それが家族の希望であれば、できるだけそれを実現できるようにするのが看護師の仕事ですが、家族の疲労度を見て、休息を取ることを促す必要があることも忘れてはいけません。

 

■家族と一緒にケアをする

CPAから蘇生したけれど、DNARとなった場合、家族と一緒に清拭や洗髪などの清潔ケアを行うのも良いでしょう。人工呼吸器を付けた状態の患者を前に、「患者に触れて良いのかどうかわからない」、「触れるのが怖い」と感じる家族もいます。そのような家族に対して、一緒にケアをすることを提案し、できる範囲で介入してもらうことで、家族は目の前の現状を受け入れ、患者に対して「最後にしてあげられることがあった」という思いを持つことができます。

 

まとめ

CPAの基礎知識と看護記録、処置をする時の看護のポイント、蘇生後の看護についてまとめました。CPAの患者を目の前にすると、慌ててしまって適切な看護ができない人も多いですが、冷静に処置ができるように必要な知識は身につけておくようにしましょう。また、CPAは蘇生後の看護も重要になりますので、積極的に治療する場合も、DNARとなる場合も、しっかり看護ができるようにしてください。

山岸愛梨 看護師

東京都在住、正看護師。自身が幼少期にアトピー体質だったこともあり、看護学生の頃から皮膚科への就職を熱願。看護学校を経て、看護師国家資格取得後に都内の皮膚科クリニックへ就職。ネット上に間違った情報が散見することに疑問を感じ、現在は同クリニックで働きながら、正しい情報を広めるべく、ライターとしても活動している。

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