助産師|養成学校の概要と助産師資格に関する試験・過去問(2017/11/12)
助産師の就業人数は、平成27年(2015年)時点で38,486人、同年の出生数が1,008,000人であり、就業人数の増加、少子高齢化に伴い、助産師の不足状態は解消されつつありますが、それでもまだまだ足りていないのが現状です。
ここでは、助産師養成学校や助産師国家試験など、助産師になるために理解しておくべき情報を詳細かつ分かりやすく解説していますので、助産師を目指している方は、最後までしっかりとお読みください。
1、助産師とは
助産師とは、厚生労働大臣の免許を受けて、正常な分娩の介助をはじめ、妊娠から産後に至るまでの母子への精神的・身体的ケア、母性保険全般における指導を行う者のことを言います。
≪助産師の就業者数≫
年次 | 総数(人) | 前年との比較増減(人) |
平成18年末(2006年) | 27,352 | +305 |
平成19年(2007年) | 27,927 | +575 |
平成20年(2008年) | 30,130 | +2,203 |
平成21年(2009年) | 31,312 | +1,182 |
平成22年(2010年) | 32,480 | +1,168 |
平成23年(2011年) | 33,606 | +1,126 |
平成24年(2012年) | 35,185 | +1,579 |
平成25年(2013年) | 36,395 | +1,210 |
平成26年(2014年) | 37,572 | +1,177 |
平成27年(2015年) | 38,486 | +914 |
参照:平成28年 看護関係統計資料集(日本看護協会)
≪出生数の推移≫
年次 | 総数(人) | 前年との比較増減(人) |
平成18年(2006年) | 1,092,674 | +30,144 |
平成19年(2007年) | 1,089,818 | -2,856 |
平成20年(2008年) | 1,091,156 | +1,338 |
平成21年(2009年) | 1,070,035 | -21,121 |
平成22年(2010年) | 1,071,304 | +1,269 |
平成23年(2011年) | 1,050,806 | -20,498 |
平成24年(2012年) | 1,037,231 | -13,575 |
平成25年(2013年) | 1,029,816 | -7,415 |
平成26年(2014年) | 1,003,539 | -26,277 |
平成27年(2015年) | 1,008,000 | +4,461 |
参照:平成27年(2015)人口動態統計の年間推計(厚生労働省)
上表からわかるように、助産師は増加傾向、出生数は減少傾向にあります。しかしながら、助産師の不足状態はまだまだ深刻であり、奨学金制度の導入や受け入れ体制の強化など、国や自治体が一丸となって助産師の就業者数の増加に取り組んでいます。
2、助産師への道
助産師になるためには、まず高等学校卒業(高等学校卒業程度認定試験合格)後に、看護専門学校などで看護関連の教育課程を学び、看護師国家試験に合格することが必要です。さらに看護師国家試験に合格した後、助産師養成学校で1年以上、助産師に必要となる所定の教育課程を学び、助産師国家試験に合格しなければいけません。
1. 高等学校卒業(高等学校卒業程度認定試験合格)
2. 看護関連の教育課程を受講(3~4年)、看護師国家試験に合格 3. 助産師関連の教育課程を受講(1年以上)、助産師国家試験に合格 |
出典:助産師になる-未来のあなたのために-(公益社団法人 全国助産師教育協議会)
助産関連の教育課程は、専修学校、短大専攻科、大学別科、大学専攻科、大学院など、全国で約200の教育機関で受けることができます。
3、助産師学校における教育課程
助産師学校では、主に「基礎助産学」「助産診断・技術学」「地域母子保健「地域母子保健」とともに、病院や助産所、周産期センターなどで「臨床実習」を行い、1年かけて助産に必要となる知識・技術を習得していきます。
基礎助産学 | 助産学概論や女性の人権、家族社会学、人間関係論など、助産の基礎となる知識を学びます。 |
助産診断・技術学 | 検診の方法や分娩介助、沐浴、産褥期の指導、新生児への援助など、助産活動における技術を習得します。 |
地域母子保健 | 地域における母子保健、地域行政の活動を学び、安心して産み育てることができる地域づくりの考察を深めます。 |
助産管理 | 助産業務管理に必要となる知識、法的範囲・責任、法律や産院・産科のあり方について学びます。 |
臨地実習 | 臨床現場での実習を通して、妊婦検診、分娩介助、産褥介助の指導など、助産全般における技術の習得を図ります。 |
助産師学校は全国で約200校あり、そのうちの約7割が全国助産師教育協議会に加入しています。助産関連の教育課程を受講できる教育機関については、「全国助産師教育協議会 正会員一覧(地区毎)」のページをご参照ください。
3-1、助産師学校における奨学金制度
助産師不足に伴い、多くの医療機関・教育機関が助産師の受け入れを積極的に行い、現在では助産師学校の奨学金制度が充実しています。代表的なものには、日本助産師会の「助産師学生奨学金」や東京都福祉保険局の「東京都看護師等修学資金」があります。
≪助産師学生奨学金≫
対象者 | 全国の助産師学校(大学は4年次)に在学する者 | 全国の専門職大学院(助産)および助産学専攻修士課程に在学する者 |
貸与額 | 月額3万円/年間36万円以内 | 月額5万円/年間60万円 全額120万円以内 |
貸与期間 | 12ヶ月 | 24ヶ月 |
返済期間 | 1年以内卒業後2ヶ月より | 2年以内卒業後2ヶ月より |
貸与人数 | 2名程度 | 2名程度 |
引用元:奨学金貸与制度(日本助産師会)
≪東京都看護師等修学資金≫
貸与種別 | 養成所等 | 貸与月額 | 貸与期間 (最大) |
貸与口数 | |
課程 | 設置主体 | ||||
第一種
|
保健師 助産師 看護師 |
国公立 | 32,000円 | 正規の修業年限 | 一口 |
その他 | 36,000円 | ||||
准看護師 | 21,000円 | ||||
大学院修士課程 | 83,000円 | ||||
第二種 | 対象となる
全ての課程・設置主体 |
25,000円 | 同上 | 最大二口まで貸与可
(25,000円×2口) |
引用元:制度の概要(東京都福祉保険局)
ほかにも、さまざまな機関・団体が奨学金制度を提供していますので、まずは志望校や都道府県の奨学金制度を確認しておきましょう。
4、助産師国家試験の受験資格
助産師国家試験を受けるためには、看護師国家試験に合格後、助産関連の所定の教育課程を修了する必要があります。要件の詳細は以下の通りです。
次のいずれかに該当する者
(1) 文部科学省令・厚生労働省令で定める基準に適合するものとして、文部科学大臣の指定した学校(以下「指定学校」という。)において1年以上助産に関する学科を修めた者 (2) 文部科学省令・厚生労働省令で定める基準に適合するものとして、都道府県知事の指定した助産師養成所(以下「指定養成所」という。)を卒業した者 (3) 保健師助産師看護師法第3条に規定する業務に関する外国の学校若しくは養成所を卒業し、又は外国において助産師免許に相当する免許を受けた者で、厚生労働大臣が(1)又は(2)に掲げる者と同等以上の知識及び技能を有すると認めたもの (4) 保健師助産師看護師法及び看護師等の人材確保の促進に関する法律の一部を改正する法律(平成21年法律第78号。以下「改正法」という。)の施行の際(平成22年4月1日)現に改正法による改正前の保健師助産師看護師法(以下「旧法」という。)第20条第1号に該当する者 (5) 改正法の施行の日(平成22年4月1日)前に旧法第20条第1号に規定する学校に在学し、施行日以後に同号に規定する要件に該当することとなった者(施行日以後に同号に規定する学校に入学し、当該学校において6月以上助産に関する学科を修めた者を除く。) |
引用元:助産師国家試験の施行(厚生労働省|平成29年8月1日)一部省略
5、助産師国家試験の概要
助産師国家試験は、1年間の教育課程で学ぶ「基礎助産学」「助産診断・技術学」「地域母子保健」「助産管理」の中から出題されます。試験時間は午前(75分)と午後(80分)に分かれ、一般問題(計75問)と状況設定問題(計35問)を解答します。
≪試験地と試験科目≫
試験地 | 試験科目 |
北海道、青森県、宮城県、東京都、愛知県、石川県、大阪府、広島県、香川県、福岡県、沖縄県 | 基礎助産学、助産診断・技術学、地域母子保健、助産管理 |
≪試験内容≫
出題形式 | 問題数/得点 | 解答時間 | |
午前 | 一般問題
(四肢択一、五肢択一、五肢複択) |
40問(各1点) | 75分 |
状況設定問題
(四肢択一、五肢択一) |
15問(各2点) | ||
午後 | 一般問題
(四肢択一、五肢択一、五肢複択) |
35問(各1点) | 80分 |
状況設定問題
(四肢択一、五肢択一、五肢複択) |
20問(各2点) |
合格基準は年度によって異なりますが、多くの年度では145点満点中87点以上で、正答率がおよそ60%以上で合格となります。過去問は、厚生労働省が公表していますので、受験勉強の際には公表されている限りすべての過去問を複数回解いておきましょう。
≪過去問≫
平成25年(2013年)
第96回助産師国家試験 |
⇒午前
⇒午前別冊 ⇒午後 ⇒正答 |
平成26年(2014年)
第97回助産師国家試験 |
⇒午前
⇒午前別冊 ⇒午後 ⇒正答 |
平成27年(2015年)
第98回助産師国家試験 |
⇒午前
⇒午前別冊 ⇒午後 ⇒正答 |
平成28年(2016年)
第99回助産師国家試験 |
⇒午前
⇒午前別冊 ⇒午後 ⇒正答 |
平成29年(2017年)
第100回助産師国家試験 |
⇒午前
⇒午前別冊 ⇒午後 ⇒正答 |
≪合格率≫
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
平成25年
(2013年) |
2,113人 | 2,072人 | 98.1% |
平成26年
(2014年) |
2,095人 | 2,015人 | 96.9% |
平成27年
(2015年) |
2,037人 | 2,034人 | 99.9% |
平成28年
(2016年) |
2,008人 | 2,003人 | 99.8% |
平成29年
(2017年) |
2,053人 | 1,909人 | 93.0% |
合格率は、毎年98~99%を推移していますが、平成29年(第100回助産師国家試験)においては93.0%と、例年に比べて5~6%下回る結果となっています。各年度で問題は異なり、年度によっては難しい問題が出されることがありますので、試験に向けてしっかりと準備しておく必要があります。
6、助産師の仕事内容
助産師国家試験に合格し、厚生労働大臣の免許を受けると、晴れて助産師として就業することができます。助産師の仕事内容は主に、「妊娠中」「お産」「産後」の3つのステージに分かれ、母子の生活や身体的・精神的支援を行っていきます。
■妊娠期
器具や検査による妊娠診断
聴診や触診、エコーなどによる胎児の健康診断 問診や内診、体重測定、各種検査による妊婦の健康診断 正常妊娠の経過観察、異常妊娠の発見 妊婦に対する食事・運動の指導、身体的・精神的ケア |
妊娠確定の後、妊婦は定期的に産婦人科に通い妊娠健診を受けます。助産師はその際の各種測定・検査、食事や運動の制限、体重管理などの安全な妊娠経過のための生活指導を行います。また、妊娠に伴い、身体的・精神的変化が起きますので、不安や心配、ストレスを緩和させるための妊婦に対する身体的・精神的ケア、さらには父親に対するケアや指導も助産師の重要の役割です。
■分娩期
安全分娩のための診断(母子の健康状態の把握)
医師との連携による分娩の介助 異常発生時の対処 産婦に対する精神的ケア |
分娩に際して、まず母子の健康状態を把握し、正常分娩・異常分娩の診断を医師とともに行い、医師と連携して分娩を介助します。分娩期における助産師の仕事は、分娩介助が主体となってきますが、分娩に伴う産婦の苦痛に対する援助、精神的不安の緩和なども重要な役割です。
■産褥期
褥婦に対する食事・排泄の介助
新生児の健康状態の把握・異常発生時の対処 産褥経過の診断、身体的・精神的ケア 食事や活動など褥婦の生活全般における指導 母乳や排泄、皮膚ケアなど新生児に関する指導 1ヶ月検診の補助 |
産後は身体的回復のために数日間、入院することになりますので、その間の母子の看護や健康状態の把握、異常発生時には医師との連携のもと速やかに対処します。入院中だけでなく、入院後の母子への援助も助産師の仕事です。入院後に適切な健康管理、育児ができるよう、食事や活動などの生活指導、母乳のあげ方やオムツ替え、皮膚ケアなどの育児指導をしっかりと行います。
まとめ
助産師として活動するためには、看護師免許を取得後に教育機関で所定の教育課程を1年以上受講し、助産師国家試験に合格する必要があります。資格取得に至るまでの期間が長く、看護・助産に関わる深い知識を要する必要がありますので、一般的に看護師の給与を大きく上回ります。助産師の求人も多く、就業年数やスキルに関わらず、就職・復職に困ることはありません。
しかしながら、母子の命を預かるという大きな役割を担っていますので、積極的にスキルアップを図らなければいけません。助産師を目指している方は、まずは所定の教育課程で基礎をしっかりと学び、免許取得後は安全確実に助産ケアが行えるよう、常に学ぶ姿勢で自身のスキルアップを図っていきましょう。
なお、准看護師と保健師の学校・試験の情報は、それぞれ准看護師養成所の概要と准看護師資格に関する試験・過去問、保健師養成学校の概要と保健師資格に関する試験・過去問にまとめてありますので、併せてお読みください。
参考文献
平成28年 看護関係統計資料集(日本看護協会)
平成27年(2015)人口動態統計の年間推計(厚生労働省|2016年1月1日)
助産師になる-未来のあなたのために-(公益社団法人 全国助産師教育協議会)
奨学金貸与制度(日本助産師会)
制度の概要(東京都福祉保険局)
助産師国家試験の施行(厚生労働省|2016年8月1日)
新卒助産師研修ガイド(公益社団法人 日本看護協会|2012年3月31日)
1983年生まれ。宮城県石巻市出身。正看護師歴10年。看護短大を経て、仙台市立病院の小児科で勤務。その後、小児科での経験を生かし、保育園看護師として同市内の保育園に就職。現在は1児のママとして、育児の傍らWEBライター・ブロガーとして活動している。
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