トイレトレーニングと保育園|開始時期や方法、園と家庭の連携の方法(2017/07/05)
「トイレトレーニング」は、保育園で排泄の自立を促していくための活動です。トレーニングの方法や時期は園によって異なりますが、子どもの負担にならないよう楽しく進めていけるようにする必要があります。ここでは、トイレトレーニングの内容について詳しくご紹介しましょう。
目次
1、「トイレトレーニング」とは
トイレトレーニングとは、「オムツはずし」とも呼ばれ、子どものトイレでの排泄を自立させるための練習を指しています。食事と同様、排泄を自立していくことは子どもの成長で重要なことです。達成していくためには、保育士や保護者の適切な援助が大切になります。
1-1、トイレトレーニングの重要性
近年、子どもの排泄の自立は遅れ気味の傾向があります。「3~5歳児クラスでもオムツを穿いて過ごす子が多い」「小学校の就学までオムツがはずれていない」などの声も多く聞かれています。村上智子氏の「保育園における幼児の排泄自立とトイレ環境・排泄援助の影響」には、20年以上勤務している保育士に、「3歳未満児の様子で気になることや、昔の子どもと現在の子どもの様子の違い」を尋ねると、基本的生活習慣の項目において「排泄の自立が遅い」との回答が際立って多かった。とあり、その変化は保育現場でも実感されているようです。では、なぜそのような状況になってしまっているのでしょう。
1-2、排泄の自立が遅れる理由
排泄の自立が遅れてしまっている理由は、子どもの成長に限らず子どもをとりまく環境にもいくつか原因があると考えられます。まず、「オムツの進化」です。昔は布オムツを使用していたため、尿や便が出ると不快な状態になりやすく、子ども自身が早めにトイレで排泄をしようという意欲をもてるような環境でした。しかし、近年のオムツは吸収率が良く、半日付けていても子どもが心地良いよう進化しています。ですから、排泄の自立への意欲をもちにくいことが指摘されているのです。また、共働きの家庭が急増したことによって、トレーニングに付き合う時間がもてない、つい利便性を優先しオムツに頼ってしまう、なども原因の一つと言えそうです。
2、「保育園」でのトイレトレーニング
では、保育園ではどのような意識をもってトイレトレーニングを実行していけばよいのでしょう。ここでは、その時期や方法などを確認してみましょう。
2-1、保育園でのトイレトレーニングは「いつ」から?
トイレトレーニングを開始する時期は、園の方針や保育方法によってさまざまです。園の中には、子どもが興味をもちはじめた時期から、または家庭の意向に沿って開始するというところもあります。保育所保育指針では、1歳児の「保育のねらい」の中に安心できる保育士との関係の下で、食事、排泄などの活動を通して、自分でしようとする気持ちが芽生える。とあります。園の多くは、1歳児クラスになると、タイミングを見計らって言葉をかける、トイレに座らせてみるなどの働きかけを始めます。
2-2、はじめは「言葉かけ」から
トイレトレーニングは、子どもの自発的な意欲が成功のカギになります。無理に押し付けるのではなく、子どもの気持ちを大切にして進めていきましょう。トイレトレーニングのはじめは、「言葉かけ」から始まります。「おしっこ出るかな?」「トイレに行ってみようか?」と、子どもを促してみましょう。子どもは次第にトイレへの興味をもち、尿意に気付けるようになっていきます。尿意に気付けたときには「よくわかったね、偉いね」などと、褒めてあげましょう。
2-3、生活リズムと「排泄リズム」を合わせていく
活動に入る前や食前、午睡の前など、生活に合わせてトイレに座る時間を設定しておくことで、子どもの排泄にリズムができます。もちろん、子どもによって排泄のタイミングや頻度は異なるので、保育士はそれを把握して援助していく必要があります。子どもは自らトイレに行くことを覚え、それに合わせて尿意や便意もコントロールしやすくなっていくのです。焦らず子どもの気持ちに寄り添って、トイレ体験を重ねていきましょう。
2-4、「トレーニングパンツ」へ
トイレでの排泄の成功回数が増える、尿意に気付くことが多くなる、など、トイレトレーニングに前進がみられたら、子どもの気持ちに合わせてオムツから「トレーニングパンツ」に穿き替えていきましょう。家庭との連携を図るためにも、保護者には事前にその旨を伝え、トレーニングパンツの準備をお願いしておきましょう。子どもの中には、パンツへの憧れをもつ子もいます。その気持ちを大切にし、失敗しても前向きに進めていけるように援助していきましょう。
2-5、トレーニングの「環境」
トイレトレーニングを進めていくうえで、トイレの「環境」を整えることも重要なポイントになります。同論文の調査では、オマルからトイレ(洋式)への移行は早いが、トイレに行くのを嫌がる期間があったり、トイレで排泄するまでに期間がかかる。という結果があり、一部の子どもにトイレに対する抵抗感があることがわかります。その理由として、トイレが保育室から遠い、寒々しい、暗いなど、環境によるものも考えられます。かわいい壁面で飾る、孤立感のないよう仕切りをなくしオープンスペースにするなどの工夫をして、安心してじっくり排泄できるトイレ環境にしていきましょう。また、トイレトレーニングに使えるトイレグッズはたくさんあります。ぜひチェックしてみてください。
出典元:「Gakken」
トイレと同じようにイス型のオマルなので、またぐ必要がありません。また、取手が付いているので、自分で座ったり立ったりしやすいのも便利。子どもの自立を促しやすいオマルです。
出典元:「Gakken」
パンツの着脱をするためのベンチ。トイレの近くや保育室に置いておくことで、自分で着脱をしやすくなります。ベンチでなくても、冷たい床に直接座ることにならないよう、マットや着脱用のシートなどを敷いてあげるとよいでしょう。
出典元:「Gakken」
男の子が立って排尿するとき、飛び散りを防ぐためのシールです。的を意識して排尿することで、コントロールの練習になります。
3、トイレトレーニングが「保育園任せ」にならないように
前にも述べたように、排泄の自立が遅れる原因の一つとして、家庭の意識の低さがあげられます。仕事が忙しい、お漏らししてしまうので面倒だということから、トレーニングに非協力的な家庭も多いようです。しかし、子どもの排泄を自立させるためには、園と家庭の連携は必須です。「保育園任せ」にならないためには、どのように働きかけていけばよいのでしょう。
3-1、「トレーニング」の方法を伝える
子どもが第一子である場合、保護者の多くはトイレトレーニングの方法がわからないケースがほとんどです。保育園ではどのように進めていくのかを保護者にわかりやすく伝えることで、家庭でも同じように援助することができます。
3-2、「タイミング」を合わせる
食事前や就寝前など、家庭でも園と同じタイミングでトイレを促す習慣をつけてもらうことも大切なことです。せっかく子どもに排泄のリズムができても、家庭で失敗を繰り返してしまっては意味がありません。トレーニングのはじめの時期は特に、大人からこまめにトイレへ促す言葉かけをしてあげましょう。
3-3、「進行状況」を交換する
「尿意を伝えられた」「トイレでの排泄ができた」「パンツの着脱ができた」「おねしょをしてしまった」など、トレーニングの状況を園と家庭でこまめに交換していきましょう。そうすることで、トレーニングの足並みを揃えやすくなるだけでなく、成功したときの喜びをみんなで共感することができます。子どもの成長を多くの人で見守っていけるように心がけましょう。
まとめ
トイレトレーニングは、子どもにとって大きな自立の一歩となります。成功を急ぐのではなく、その子の意欲やペースを大切にして、園と家庭で援助していけるようにしましょう。また、成功しても失敗してしまっても、前向きな言葉かけで子どもの気持ちを維持していけるようにしましょう。
参考文献
「保育園における幼児の排泄自立とトイレ環境・排泄援助の影響」(東北文教大学・東北文教大学短期大学部紀要第2号 25-40|村上智子|2012年)