子どもに食べさせて大丈夫?白砂糖にまつわるウソホント4選(2015/12/08)
平成17年に「食育基本法」が成立したことにより、国をあげて「食」を通じて健康増進をめざす「食育」の取り組みがはじまりました。特に小さい子どもの望ましい食習慣の形成は将来の生活習慣病予防につながるものですから、食育分野での保育所の役割はとても重要なものとして期待されています。
ところが、食育と称して子どもたち向けに配られるパンフレットや食育指導の教材に、オカシナものが紛れ込んでいるケースがいくつもある事は意外と知られておりません。食事や栄養の専門家ではない保育士の方がそういった情報を見分けることは難しいことでしょう。そこで、小さい子どもにとって本当に必要な食事と栄養のお話しや、いい加減な食育の見分け方などについてのお話しをしていきたいと考えています。
目次
これって安全、それとも危険?
今回は一回目ということで、見分けることが比較的簡単な「子どもに食べさせちゃダメ系」の話について検証をしてみます。食育の場面でよくみかけるものというと、「白砂糖」、「動物性食品」、「牛乳」、「食品添加物」、「農薬を使用した野菜」、「マーガリン」あたりでしょうか。その中からネットでも話題になることの多い「白砂糖」をとりあげてみます。
子どもがキレる?白砂糖の怖い噂
甘くてついついたくさん採りすぎてしまう白砂糖、しかし食べ過ぎには落とし穴が。怖い噂の真偽について○×で評価してみました。
砂糖を食べるとキレやすい子どもになる→×
近頃の子どもはキレやすい・・・それは昔はなかった甘い砂糖をたっぷりつかったお菓子のせいだ!というように砂糖の有害性をあおるお話しがありますが、砂糖にはそんな効果はありませんし、それを支持する検証実験の結果もありません。砂糖をたくさん食べると急激に血糖値があがりインスリンが大量に分泌され、それによって低血糖が起こりイライラするのだ、というもっともらしい理屈をつけたお話しもありますが、それもデタラメです。だって砂糖よりも普通のご飯の方が血糖をたくさんあげることが分かっているのです。ご飯を食べるたびに子どもがキレていたらたまったものではありません。もう一つ、最近の少年による凶悪犯罪はいわゆる団塊の世代の人が子どもの頃に比べると低い水準で推移していますし、昔はあまりなかったような印象がありますが、戦前にも同様の凶悪犯罪も行われておりました(※。最近の子どもがキレやすいという話し自体が幻想なのかも知れません。
砂糖は虫歯の原因になる→○
砂糖やでんぷんなどは虫歯の原因菌にとって大事な栄養源です。食べた後にきちんと歯をみがいたりうがいをしないと虫歯ができやすくなります。とはいえ、子どもの虫歯は年々減少傾向で、甘いお菓子を食べる習慣が少なかった昔の方が虫歯は多かったことを忘れてはなりません。甘い物を食べた後には歯磨きやうがいをしっかり行う事が大切です。
カルシウムや成長に必要なミネラルを奪う→×
砂糖を食べ過ぎると骨がスカスカになってしまうから子どもに白砂糖の使われたおやつはあげません、という人がいらっしゃいました。砂糖が体に入ると乳酸がつくられ血液が酸性になるために中和するためにカルシウムなどのミネラルが使われてしまう、という理屈のようです。
本当に血液が酸性になってしまえば生命の危機になる大変な状況ですので、骨のカルシウムを使って調整するという働きはあります。しかし、それは病気の場合で、健康な人が砂糖を食べすぎたくらいでカルシウムが溶け出してしまうなんてことはありません。激しい運動をしたあとには血液中の乳酸濃度は高くなりますが、骨が溶け出すなんてことはありませんよね。それではスポーツ選手の骨はスカスカなはずです。馬鹿臭い話とおもって大丈夫です。
ビタミンB1不足になる→△
確かに白砂糖は精製された炭水化物ですので、ビタミンは含まれておりません。なので、ごはんの代わりに砂糖だけを食べるような生活をしていればビタミンB1欠乏になり、脚気になってしまうでしょう。
でも、よく考えて下さい。砂糖はあくまでも嗜好品です。ビタミンB1やその他大切な栄養素は、ご飯やおかずから採れば良いのです。砂糖にビタミンB1が入っていなくても、他の食事がキチンとしていればなんの心配もありません。
砂糖はあくまで嗜好品
その他、アトピーを悪化させる、低血糖症をおこす等々、やたらと悪ものにされがちな砂糖ですが、健康な人が、ほどほど食べる分には心配はありません。ただし、ソフトドリンクには意外とたくさんの砂糖が入っていますし、ガブガブと飲んでしまえば気がつかないうちにとりすぎてしまうことも。また、一度に沢山食べられない子どもにとって間食は成長に必要な栄養素を確保する大事な手段です。砂糖は危険な食品ではないからといって与えすぎてしまえば子どもにとって良くない食品になってしまいます。
砂糖の危険性を煽るお話しは、アトピーなど治療の難しい子どもの病気に悩む親御さんなどをターゲットに、不安を煽って、商品を販売する時の手法としてもおなじみのものです。皆様もどうぞ気をつけて下さいね。
次回は成長期の子どもにとって大事な食品である「牛乳」の噂の真偽を検証してみたいと思います。
※『戦前の少年犯罪』管賀 江留郎 著 築地書館 (2007)
東京都在住、根拠のない健康法や食事法で体を壊したり、子どもの成長が阻害されないことを願い、ネット上ではどらねこ名義で情報提供などの活動を行っている。著書:管理栄養士パパの親子の食育BOOK(メタモル出版)共著:謎解き超科学(彩図社)
こちらの記事もおすすめ
- お役立ち
-
グッズ・用品|保育実習や入園準備で使える手作り自己紹介・収納グッズ
保育園で保育を行っていると、さまざまな専用グッズや用品を使用します。専門の販売企業では、保育
- あそび
-
幼児の遊び|幼児園児に適したゲームなどの室内遊び10のアイデア
幼児は遊びを通して様々なことを学んでいきます。それには発達段階に応じた遊びを保育者が提案して
- まなぶ
-
ハーバード大学院の研究によると、人種・文化そして年収や階級関係なく、「あ
- あそび
-
プレゼントと保育|実習での手作り製作とメダルなどのプレゼント交換
保育園ではお誕生会などで、子どもたちにプレゼントを渡す機会があります。父の日や母の日など、子
- まなぶ
-
保育目標|保育理念、保育方針との違いと0~4歳児など年齢別の例
それぞれの園で掲げられている「保育目標」とは、保育者が保育をしていくうえでとても重要な役割を