五領域の保育|五領域の保育内容と保育所保育指針の五領域の定め(2017/04/18)
子どもが保育の現場を通して身につけていくべき姿を考える時に、保育所保育指針にも幼稚園教育要領にも共通して目標として挙げられているのが五領域です。五領域はこの時期に子どもが身につけていくべきことがまとめられたものですが、それを保育の現場で求められるのは専門的な知識を有している立場から子どもたちの発達を促していくことが期待されているからではないでしょうか。これから五領域について改めてまとめていくので、是非参考にしてみてください。
1、五領域保育とは
五領域保育について、厚生労働省がまとめた保育所保育指針解説書を参考にまとめていきます。保育所は、子どもが生涯にわたる人間形成にとって極めて重要な時期に、その時間の多くを過ごす場となります。このため、子どもが現在を最も良く生き、輝かしい未来をつくり出すための力の基礎を固めるために、それぞれの保育所の目指していくべきである保育目標としているのが、十分に配慮の行き届いた環境の下に、くつろいだ雰囲気の中で子どもの様々な欲求を満たし、生命の保持及び情緒の安定を図ることとしている「養護」に関わる視点と、五領域と呼ばれる「健康」「人間関係」「環境」「言葉」「表現」となります。
生涯にわたる人間形成の基礎を築いていくべく、保育者はこの五領域を意識して指導案を作成するなどして保育の現場に五領域保育を取り組んでいく必要があるといえます。この五領域に関わる保育の目標は、改定前の保育指針と同様、学校教育法(昭和22年法律第26号)に規定されている幼稚園の目標と共通のものとなっています。幼稚園教育要領でも、五領域について解説されています。
文部科学省がまとめる幼稚園教育要領と保育所保育指針の対比表を見ると、保育所の場合は養護と教育が一体になって、豊かな人間性を持った子どもを育成することが基本原理となり、「養護」が加わることが幼稚園との違いではあるものの、目標としていくべきねらいは五領域として同じであることが分かります。この五領域のねらいに従い目標達成していくことが、小学校入学までに育つことが期待される心情、意欲、態度を習得していくことに繋がっていくとされています。
2、五領域を踏まえた保育内容
保育所保育指針で五領域について項目ごとに目標が定められているので、まずそちらを見ていきましょう。
■健康
健康、安全など生活に必要な基本的な習慣や態度を養い、心身の健康の基礎を培うこと。
■人間関係
人との関わりの中で、人に対する愛情と信頼感、そして人権を大切にする心を育てるとともに、自主、自立及び協調の態度を養い、道徳性の 芽生えを培うこと。
■環境
生命、自然及び社会の事象についての興味や関心を育て、それらに対する豊かな心情や思考力の芽生えを培うこと。
■言葉
生活の中で、言葉への興味や関心を育て、話したり、聞いたり、相手の話を理解しようとするなど、言葉の豊かさを養うこと。
■表現
様々な体験を通して、豊かな感性や表現力を育み、創造性の芽生えを培うこと。
上記のように項目ごとに目標が設定され、それらを取り込んで保育を行っていく必要があります。また、ここに示された保育の目標を、一人一人の保育士等が、自分自身の保育目標とする保育観を子どもたちと照らし合わせながら、より強く心に決めて保育していくとともに、保育所全体で確認しながら取り組んでいくことが求められます。
ですが、保育の現場で五領域を取り入れるのは然程難しいことではありません。例えば、保育所で「お花屋さんごっこ」をする場合に、五領域を踏まえて考えてみると、花屋に並べる花を折り紙や画用紙などで作成する時に道具を安全に使用することが「健康」の項目の中となります。そして、保育者や友達と一緒に遊ぶことが「人間関係」に繋がります。花屋を見立てることが「環境」に繋がって、「いらっしゃいませ」や「このお花をください」という言葉のやりとりが「言葉」を養っていくことになります。更に、花に見立てる道具を作成したことや、店員や客になりきることが「表現」の項目を満たすことになります。
このように普段何気なく行っているごっこ遊びの中にも五領域は含まれているので、遊びを行う際に五領域を意識しながら保育者が働きかけていくと、より質の高いものへとなっていくものと考えられます。
2-1、五領域に関する書籍
次に、保育内容に五領域を取り組む際に疑問が生じた際に参考になりそうな本を紹介します。
出典:保育の学校 第2巻5領域編 (フレーベル館|無籐隆|2011/4)
幼稚園教育要領と保育所保育指針を分かりやすくまとめ、五領域の保育内容についての概略を平成20年の改定ポイントを中心に解説されています。五領域にターゲットを絞って解説されている為、内容も充実していて参考にしやすいと思います。
3、保育所保育指針の五領域から今後の保育のあり方を考える
厚生労働省のまとめた保育所保育指針によると、保育の内容は、「ねらい」及び「内容」から構成され「ねらい」は、保育の目標をより具体化したものであるのに対し、「内容」は、これらのねらいを達成するために、子どもの状況に応じて保育士が適切に行うべき基礎的な事項及び保育士が援助する事項を子どもの発達の側面から示したもののことを指します。
この保育士が援助して子どもが身に付けることが望まれる事項が五領域となります。子どもが保育所で安定した生活を送るために必要な基礎的な事項として、心身の健康に関す領域である「健康」、 人との関わりに関する領域である「人間関係」、身近な環境との関わりに関する領域である「環境」、言葉の獲得に関する領域である「言葉」及び感性と表現に関する領域である「表現」の五領域を設定して示されています。
3-1、五領域保育のポイント
五領域を踏まえた育児を行うポイントを、白梅学園大学がまとめた今後の幼児教育とはを参考に考えていきます。保育内容の五領域はすべての幼稚園・保育所・認定こども園の3歳以上について同一のものが指導されています。幼児教育の構造としては、乳児保育や家庭での養育を行った上で、保育所などの生活の全体を通じて総合的に指導するという幼児教育の特質を踏まえ、ねらいや内容を「健康」「人間関係」「環境」「言葉」「表現」の領域別に示し指導を行っていきます。こうした指導を続けていくことによって、幼児期の終わりまでに育って欲しい姿に到達していくとされます。こうした流れを小学校の教員と引き継ぎ共有していくと、小学校教育がゼロからのスタートではなくなり、幼児教育で身に付けたことを生かしながら教科等の学びに子供たちの資質・能力を伸ばしていくことに繋がっていくと考えられます。
まとめ
五領域についてまとめてみて、厚生労働省や文部科学省が保育者や幼稚園教諭に求めることが浮き彫りになってきました。子どもの発達段階を踏まえながら「健康」「人間関係」「環境」「言葉」「表現」と項目ごとに分かれた目標に応じた指導を専門知識を持つ保育者が行っていくことにより、子どもの資質や能力を伸ばし、小学校へ上がってからの生活や教育にも繋がっていくことが期待されます。五領域は3歳未満児は特に単体では成り立たず作用し合っているものだと考えられます。それを踏まえて保育所での生活での様々な体験を通じて、相互作用を図りながら目標達成を目指していきましょう。
参考文献
保育所保育指針解説書 厚生労働省(2008/04)
今後の幼児教育とは 白梅学園大学|無籐隆(2017/01/16)
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