育薬

育薬とは

一度販売された医薬品に関して、一定期間、製薬会社がその薬の情報を収集します。副作用や有効性、安全性に関する情報は勿論、この形状だと飲みにくい、半分に割りにくいなどの情報も収集されます。市販後、実際の患者さんが長期間服用することによって、創薬の段階では分からなかったような情報が入ってきます。この情報を活かすことで、より安全性の高い、服用しやすい薬へと育てていきます。これを育薬と呼びます。逆に、医薬品が発売されるまでの研究や開発の過程を創薬と呼びます。製薬会社の人が直接患者さんに聞くことはできないので、対象の薬を扱っている医師に情報をまとめてもらい、それを製薬会社に提供します。医療現場では実際の薬の使用状況を収集するために製造販売後調査(PMS:Post Marketing Surveillance)というものが行われています。これは製薬会社が行うことが義務化されており、新薬の販売後に、医療情報担当者より医師へPMSの依頼をします。

製造販売後調査について

製造販売後調査では育薬の基礎となる情報を収集するために、医薬品製造販売後安全基準(GVP:Good Vigilance Practice)や医薬品の製造販売後の調査及び試験の実施の基準(GPSP:Good Post-marketing Study Practice)によって定められています。製造販売後調査には再調査、再評価などの制度により成り立っています。再調査は再審査とも言います。薬の販売後6ヶ月間行います。有効性や安全性について原則8年間調査を行います。ただし、薬によっては多少前後することもあります。対象は新医薬品のみです。再評価とは薬の開発時には分からなかったようなことも存在するため、最新の医学水準、薬学水準に則って再び有効性や安全性を確認することです。新医薬品だけでなく既存の医薬品も対象となる場合があります。

より安全で使いやすい医薬品を作るために

一つの薬を開発するのにおよそ10年~20年の月日を要します。とても長い年月をかけて開発されるのです。それだけの年月が経てば当然、発売されたころには当初分からなかったようなことが多々見つかります。薬は開発され発売するまでがゴールではありません。むしろそこから、更に成長していかなければならないのです。医療は日々進歩しています。薬もそれについていかなければなりません。育薬によって適応や形状が変わったものも存在します。アスピリンは当初は解熱鎮痛薬として発売されていました。しかし使っていくうちに血が止まりにくい、という情報が寄せられ今では血栓の予防などにも用いられるようになっています。またニトログリセリンは最初は舌下錠しかありませんでした。しかし舌下投与では効果の持続時間が短いということが問題となっていました。そこで、より持続時間の長い経皮吸収剤が開発されたのです。今となっては当たり前のことでも、開発時には分からないことがたくさんあります。育薬は医療の進歩にとても大事な役割を果たしています。