医療過誤

医療過誤とは

診療過誤ともいいます。医療行為の一般的な誤りのことを指します。医療従事者の知識不足、技術の未熟さ、適切でない薬剤の使用、注射過誤、輸血事故など医療従事者の注意不足や遂行すべき業務を怠ったために患者に危害を与えるものを医療過誤と呼んでいます。しかし、医療現場ではいつ何が起こるか分かりません。医療従事者に過失が無くとも患者の容態が急変したり、治療の効果が思うように出なかったりする場合もあります。そのような場合の責任が医療従事者の負担になるのかどうかという問題もあります。医療過誤と似たようなものに医療事故という言葉があります。患者さんが廊下で転倒、看護師が誤って注射を自分の手に刺してしまった、院内感染にかかってしまったなど、医療で起こるすべての事故が含まれます。人為的なミスや過誤を表すヒューマンエラーという言葉もあります。中でも特に医療従事者の過失によって患者さんに害を与えてしまった場合を医療過誤と呼んでいます。医療事故と医療過誤の厳密な区別は難しく、責任を明確化するには注意が必要となります。

医療過誤を起こした場合の責任

意図せずとも医療過誤を起こしてしまった場合、医療従事者には法的責任が問われます。問われる責任には民事責任、刑事責任、行政責任の三種類があります。民事責任とは加害者である医療従事者が被害者に民法に基づいて損害賠償金を支払う責任です。示談又は法的手続きによって損害賠償を解決することができます。刑事責任は刑罰を課せられる責任です。医療過誤の場合は業務上過失致死罪に該当します。罰金刑か執行猶予が課せられる場合がほとんどです。行政責任は医師法で不正行為や医師の品位を損ねる行為があった場合には厚生労働大臣が戒告や3年以内の医業停止、免許の取り消しなどの処分を行なうことができると規定されています。厚生労働大臣はこの際、医道審議会の意見を聴くこととなっています。

医療過誤を起こさないために

医療過誤を防止するために、各病院でマニュアルを設けている所が多くあります。マニュアルでは各医療従事者の責任や役割を始め、口頭指示に関する注意、輸血や注射をする際の手順、医薬品添付文書の内容の遵守など事細かく記載されています。他に、日本医師会からは医療従事者のための医療安全対策マニュアルというものも発行されています。こちらはネットでも閲覧することが可能です。何かが起きたときはどう対応すれば良いか、など現場ですぐに使うことのできる事故防止対策方法がカテゴリごとに分かりやすく記載されています。このようなマニュアルに目を通しておくだけでも過誤の防止に繋がります。勿論、マニュアルがなくても実践できることはたくさんあります。間違いは間違いだとすぐに指摘できる人間関係作り、口頭で指示された場合には同じことを繰り返し口に出して確認、どんなに小さいヒヤリ・ハットでも記録して周りの人に共有するなど様々な対策が可能です。他に、薬局内でできる対策として名前の似ている薬は離れた棚に置くなどして取り違えないようにする方法が良く行われています。「アマリール」と「アルマール」、「アモリン」と「アモバン」は名前が似ているため取り違えや処方ミスが今までに多く報告されている医薬品です。取り違えの多い薬に関しては名前を変えてしまうという対策が講じられることもあり、2012年6月に実際にアルマールは「アロチノロール塩酸塩」という一般名を使用することになりました。