医薬分業

医薬分業とは

医師は患者さんの病態を確認し診察、治療及び薬の処方をします。薬剤師は医師の処方に基づいて薬を調剤し、服薬指導や薬歴の管理を行います。このように医師と薬剤師が各々の専門性を発揮し、役割を分担して医療を提供することを医薬分業と呼んでいます。この制度は最近よく耳にすることが多くなってきていますが、ドイツやフランスなどヨーロッパ地方では実は数百年も前から行われていました。13世紀には既にフリードリヒ二世によって医師と薬剤師の癒着、また、医師が薬局を持つことを禁止する条項が定められていました。これはフリードリヒ二世が毒を盛られていないかを恐れて医師に処方された薬を別の者に安全かどうかチェックさせたことが始まりです。ヨーロッパでは800年近い歴史がありますが、日本で医薬分業がなされたのは明治時代ですのでかなり遅れてのスタートなのです。

医薬分業のメリット

一番のメリットは最小限の薬で最大の治療効果を患者さんに提供できるという事です。医師は医学の専門家です。患者さんを診察し、病状を把握しそれに適した薬を処方します。どの薬がどのような疾病に適しているかは医師でも知っています。しかし、薬というのは化学物質であり、複数飲んだ場合の化学反応、いわゆる飲み合わせについては薬剤師の専門となります。患者さんの病状は一つとは限りません。いくつもの症状を抱えていることが多くあります。そのため医師は患者の症状に合わせて複数の薬を処方します。薬剤師はその複数の薬の飲み合わせを確認すると同時に、不必要な薬が処方されていた場合はその旨を医師に伝え、いらない薬は削減してもらいます。数カ所の病院に通っている患者さんの中には各病院で似たような薬を処方されているケースも多々あります。必要な薬だけを残し、不要な薬を排除することは患者さんの服薬の手間や、無駄な副作用の危険性を減らすことに繋がります。また、医療費の削減にも貢献します。他にも以下のようなメリットがあります。①患者さんの都合に合わせて好きな日に好きな調剤薬局で薬を調剤してもらえる。②医師と薬剤師のダブルチェックにより医療ミスを防ぐことができる。③お薬手帳を採用することで、患者さんの治療経過やその他の疾患について把握しやすくなる。

医薬分業のデメリット

患者さんが一番実感する機会の多いデメリットは「二度手間になる」という事です。病院でも待たされ、更に薬局でも待たされてしまい、余計に時間が必要となってしまいます。また、病院で一度説明したことを再び薬局で同じ内容を説明しなければいけないという面倒臭さもあります。患者さんが好きな薬局を選べる事により、通常では在庫をしていない薬を確保しなければならない事もあります。これはデッドストックが増えてしまう原因にもなってしまいます。薬が入荷されるまで数日かかってしまう事もあるので薬局にも負担がかかってしまいます。患者さんに薬を渡せない事で、治療が進まない事態になってしまうのです。早く病気を良くしたい人にとって薬の取り扱いがないということは、かなり困ります。また、薬を入荷した際に再び患者さんに薬局に足を運んでもらわなければなりません。