経皮吸収型製剤

経皮吸収型製剤とは

皮膚に貼付して用いる製剤です。皮膚を通して薬剤を吸収させることで、全身への作用を示します。transdermal therapeutic systemの頭文字を取ってTTSとも呼ばれます。製剤に含まれている有効成分が血液に乗って全身へ回るので、貼るだけで経口薬のように全身作用を示すのです。

一般的な貼り薬と経皮吸収型製剤の違い

同じように貼って使う製剤でも薬の効き方に違いがあります。ではなぜそのような違いが出るのでしょうか。①局所作用型貼付剤:いわゆる湿布薬のように、貼った所にだけ作用が現われるもののことです。製剤中の薬剤が皮膚から吸収されて、組織中に薬物が移行していきます。血管には移行しないため、全身作用は示しません。②経皮吸収型製剤:皮膚から吸収された薬剤は組織ではなく毛細血管へと移行していきます。血管に乗って全身を回るため、局所作用ではなく全身作用を示します。

経皮吸収型製剤の代表例

硝酸イソソルビド:狭心症の治療薬です。経口で投与した場合、ほとんどが肝初回通過効果により消失してしまいます。また半減期も短いため効果の持続性がありません。そこで経皮吸収型製剤とすることで肝初回通過効果を回避し、持続した効果を現せるようにしました。ニトログリセリン:こちらも狭心症の治療薬です。スプレーや舌下錠と違い、1日1回の貼付で24時間効果を持続させることができます。ツロブテロール:喘息の治療薬です。β2受容体を刺激することで気管支を広げ呼吸を楽にします。24時間持続した効果を現すことで、早朝に起こりやすい喘息の発作を予防し、喘息患者のQOLを向上させます。エストラジオール:卵胞ホルモンを補う薬剤です。経皮から吸収させることにより、経口投与による胃腸障害や肝障害、また血栓などの副作用を少なくすることができます。ニコチン:禁煙補助剤として使われます。禁煙ガムとは違い、貼っている間はニコチンが補給されるため、仕事中で禁煙ガムを中々使えない人にも使用しやすいものとなっています。フェンタニル:麻薬性鎮痛剤です。静脈注射では作用時間の短さが弱点となっていましたが、脂溶性が高く経皮吸収されやすいことから経皮吸収型製剤として用いられるようになりました。

経皮吸収型製剤のメリット、デメリット

経皮吸収型製剤の何よりのメリットは、作用の持続時間が長いということです。皮膚から吸収される薬剤の量には限度があるため少しずつ吸収されていきます。また、肝初回通過効果を受けないので経口投与に向いていない薬剤の血中濃度を安定させるのにとても適しています。そのためバイオアベイラビリティの向上も図れます。他に、何か副作用などの症状が出た際には皮膚から剥がすだけで投与を中止できるので、安全管理もしやすくなっています。逆にデメリットとして挙げられるのは、正しい使い方をしなければ副作用が起きやすくなるということです。貼っている箇所を温めたりすると薬剤の吸収が促進され、副作用が起きやすくなることもあります。また、剥がし忘れや何日貼ったのか分からなくなるといったことも度々起こるので、投薬の際に薬剤師がしっかりと説明することが重要となります。