非常勤看護師のパート・アルバイト・夜勤専従における利点と欠点

看護師の非常勤・パート・アルバイト

看護師としてブランクのある方や、勉強や趣味など仕事の傍らで挑戦したいことがある方、自分の時間を有効活用したいという方の中には、常勤で働くことに対して不安に感じる部分が多々あるのではないでしょうか。

そんな場合には、非常勤(パート・アルバイト)という、常勤とは異なる勤務形態で働くという道を選ぶのも1つの手です。看護師の常に人材不足ですので、他の職種と比べて時給・日給が非常に高く、非常勤でも十分な収入を得ることができます。

常勤のメリットとして就業上における“安定性”が挙げられますが、非常勤にはプライベートに多くの時間が割けるという大きなメリットが存在します。また、一般的な企業では就職・転職に際して「経歴」が重視されますが、看護師の場合には「経験」が重視されるため、非常勤から常勤に移行する場合でも何ら不利益となることはありません。

ひとえに非常勤といっても勤務形態はさまざまですので、非常勤で働くことを考えている方は、それぞれの特徴やメリット・デメリットなどについて理解しておいてください。

 

1、看護師の勤務形態

看護師の勤務形態には、大きく分けて「常勤」、「非常勤」「夜勤専従」の3つがあります。ちなみに現在、日本看護協会は「短時間正職員制度」の普及に力を入れており、これに伴い、看護師の勤務形態は多様性を持つようになりました。

現在、主流となっているのは「常勤」、「非常勤」、「夜勤専従」の3つの勤務形態ですが、同じ医療施設で継続的に、また安定的に働きたいという場合には「常勤」が第一選択となります。

看護師不足が嘆かれる昨今においては、看護師の就職率は100%と言っても過言ではなく、准看護師であっても就職に困ることはありません。それゆえ、仕事を第一優先にするのなら「常勤」が最良の選択となります。

しかしながら、人材不足に伴う過労やストレスなど、常勤で働くことでの弊害は多く存在します。そこで、最近ではパートやアルバイトといった「非常勤」という非正規雇用に人気が集まり、また多くの医療施設が非正規雇用者の受け入れを積極的に行うようになりました。

非正規雇用では、時間がきっちりと決められているため、「サービス残業」がほとんどなく、多くは自身が望む時間帯で働くことができます。また、いかなる勤務形態であっても、①6カ月間の継続勤務、②全労働日の8割以上の出勤、③週5日以上の勤務、の3つの要件を満たすことで、有給休暇を使うことができます。

さらに、①2か月以上の継続勤務、②1日もしくは1週間あたりの所定労働時間が一般社員のおおむね4分の3以上、の2つの要件を満たせば「社会保険」に加入できるため、長期間に渡って非正規雇用で働いても全く問題はありません。

しかしながら、非正規雇用であっても、看護師資格は必須であり、患者の命を預かる立場にあるということをしっかり肝に銘じ、責任を持った行動をとらなければいけません。非正規雇用だからといって怠惰な行動や、患者の安全面を考えない行動は決して許されるものではありません。

 

2、勤務形態①【常勤】

常勤とは、「フルタイム」のことを指し、看護師の勤務形態においては日勤・夜勤を含む、就業施設側が決めた日時で働くのが一般的です。正規雇用であるため、収入が安定している、福利厚生がしっかりしている、昇進のチャンスがあるなど、非正規雇用と比べて就業上における「安定性」が確保されています。

その反面、サービス残業がある、まとまった休日がとりにくい、ハードワークを強いられるなどのデメリットも存在します。

しかし、安定性というメリットは多大であり、生涯賃金においても非正規雇用よりも多いため、看護師として長く就業したい場合には「常勤」として働くのが得策と言えます。

また、看護師不足により、就職や転職、はたまた復職は他の職種よりも容易であるため、非正規雇用で働く理由がない限り、「常勤」として働く方が結果的に、多くの恩恵を受けることができます。

 

3、勤務形態②【非常勤】

非常勤とは、一般的にパートやアルバイトといった非正規雇用のことを指します。1日の就業時間や週・月単位の総就業時間は、就業施設側が決める場合もありますが、就業者自身で決められることも多く、常勤よりも融通が利くという特徴があります。

給与の支払いは、月単位(月給制)はもちろん、日単位(日給制)や時間単位(時給制)など、勤務形態によってさまざまです。時間単位(時給制)の場合、各医療施設によってはもちろん、領域によって変わってきますが、病棟勤務の場合は正看護師が1800円程度、准看護師が1500円程度の時給が平均的となっています。

非常勤は常勤と比べて“安定性”はありませんが、就業時間がきっちり決まっているため、サービス残業が発生することはほとんどありません。

 

3-1、非常勤のメリット

プライベートとの両立を図りやすい

就業日数や就業時間は看護師側で決められることが多く、まとまった休みがとりやすいため、多くの時間を勉強や趣味、育児などに割くことができます。

また、常勤であれば日勤のみを希望していても夜勤を任されることが少なくありませんが、非常勤の場合には夜勤を強制されることはほとんどありません。さらに、サービス残業も少ないため、自分のライフスタイルに合わせて働くことができます。

 

行う看護行為が限定的な場合が多い

一般的に、常勤の看護師と比べて行う看護行為は限られています。いわゆる、患者に直接的な危険が及ばない範囲の看護行為が基本となるため、ブランクのある方や看護に対して不安のある方は比較的に安心して勤務することができます。

しかしながら、看護行為が限られていると言っても、業務における責任は常勤の看護師と変わりはありませんので、患者の命を預かるという立場をしっかりと肝に銘じ、責任を持って看護を行わなければいけません。

 

昇給の可能性は十分にある

非常勤といってもスキルや経験、勤続年数に応じて昇給の機会があります。就業まもなくの平均時給は正看護師が1800円程度、准看護師が1500円程度となっていますが、2500円~3000円程度に昇給されることもあります。これは就業する医療施設の判断によるものなので、就業する際に確認しておくとよいでしょう。

 

3-2、非常勤のデメリット

長期の勤務が困難な場合がある

多くの場合、非常勤は契約制(1年~数年)になっており、就業者と就業先の同意のもと、継続の可否が決定されます。看護師不足が深刻な現状において、ほとんどの場合は継続されますが、職務怠慢など就業者側の問題はもちろん、勤務者が充足している場合には、契約が打ち切られることもあります。

 

社会的格差に伴う過労の可能性

危険を伴う看護行為を除いて、一般的には常勤も非常勤も行う業務は同様ですが、常勤の看護師が非常勤の看護師を下に見る、いわゆる社会的格差が存在するという事実も否定はできません。

 

ボーナスが支給されない

支給される年間ボーナス額は、医療施設によって大きく異なることがありますが、日本看護協会が行った「病院勤務の看護職の賃金に関する調査(2012年)」によると、平均998,271円(約100万円)支払われています。非常勤の場合にはボーナスが支給されませんので、年あたりの収入は必然的に常勤よりも低くなります。

 

3-3、非常勤の社会保険・手当・待遇などについて

非常勤であっても健康保険や国民年金、介護保険、雇用保険、労災保険などの社会保険への加入は可能です。これらの保険は、常時5人以上の従業員がいるすべての会社で、雇用者側の加入義務がありますが、規模の小さいクリニックなどでは加入していないところもあるため、就業時にはしっかりと確認しておく必要があります。なお、各種保険の加入要件は以下の通りです。

保険の種類 加入要件
健康保険

国民年金

介護保険

①1日または1週間の労働時間が正社員(常勤)の4分の3以上

②1ヶ月の所定労働日数が正社員(常勤)の4分の3以上

雇用保険 ①1週間の所定労働時間が20時間以上

②31日以上の雇用見込がある人

労災保険 無条件。すべての労働者が対象

※健康保険・国民年金・介護保険の目安として、1日7時間、週4日であれば加入対象となります。

 

また、手当においては、住宅手当や資格手当、調整手当など常勤を対象としたものは支給されませんが、通勤手当のほか、必要に応じて残業手当は支給されます。金額は医療施設によって異なりますので、必ず確認しておいてください。

なお、待遇においては、要件を満たすことで有給休暇や育児休暇、産前・産後休暇を取得することができます。ただし、育児休暇と産前・産後休暇の場合には、要件を満たしても休暇中の賃金は医療施設側の定めによるため、無給となることもあります。

待遇の種類 取得要件
有給休暇 ①6カ月間の継続勤務

②全労働日の8割以上の出勤

③週5日以上の勤務

(以上の3つの要件を満たせば正社員(常勤)と同日数の有給休暇が取得可能。週30時間未満の勤務では比例付与)

育児休暇 ①同一の事業主に引き続き1年以上雇用されている

②子どもの1歳の誕生日以降も引き続き雇用されることが見込まれる ③子どもの2歳の誕生日の前々日までに、労働契約の期間が満了し  ており、かつ、契約が更新されないことが明らかでない

(1年以内に雇用関係が終了する場合、または週の所定労働日数が2日以下の場合は取得不可)

産前・産後休暇 誰でも取得可能。産前休暇の場合は出産予定日の6週間前(双子以上の場合は14週間前)から請求により取得可能。産後休暇は原則として出産から8週間。

 

3-4、単発アルバイトについて

看護師のアルバイトには、1日~できる単発アルバイトが存在します。継続的な勤務ではないだけに、仕事内容は簡単なものが多く、経験の浅い人やブランクのある人でも気軽に働くことができます。

なお、単発アルバイトの業務の種類には、「デイサービス」、「訪問入浴」、「健康診断」、「ツアーナース」、「採血」、「診療(クリニック)」などがあります。

 

■デイサービス

デイサービスでの主な業務内容は、利用者の健康状態の観察、バイタルチェック、主治医の指示に基づく処置などです。また、入浴や食事の介助を任されることもあります。

 

■訪問入浴

一般的に看護師1名、介護職員2名で巡回入浴車で各家庭へ訪問し、利用者の入浴の介助や入浴前後の健康チェックなどを行います。

 

■健康診断

健康診断では主に、身長、体重、胸囲の計測、血圧測定、心電図、採血(真空管)などを行います。企業検診、教育施設(小学校・中学校・高校など)、各家庭など、出張先はさまざま。多くは春~夏にかけて募集がかかりますのでチェックしておきましょう。

 

■ツアーナース

ツアーナースは、修学旅行や自然学校、一般の団体などに同行して、生徒や旅行者の健康管理や健康チェック、ケガや病気への処置を行います。業務日数が1週間を超えるものもありますので、事前に必ず確認しておきましょう。

 

■採血

献血ルームや健診センターなどで採血を行います。当然ながら採血のスキルが伴っていることが必須。1日の受診者が数百人にのぼることもあるため、単調さによる針刺し事故や検体の取り違え、深部への刺入による末梢神経障害などの医療事故に注意する必要があります。

 

■診療(クリニック)

クリニックにて、受付や診療の介助、採血、点滴、各種検査などを行います。勤務形態は午前中のみ、午後のみ、全日というように選択肢が多いのが特徴。1日のみの単発だけでなく、週1~5日の非常勤としての募集もたくさんあります。

 

4、勤務形態③【夜勤専従】

夜勤専従とは、夜勤のみを行う勤務形態のことを言います。一般的に、非常勤であることが多いものの、常勤で働くことも可能です。夜勤は特殊な時間帯での勤務であることから、給与(時給・日給)が非常に高く、准看護師でも安定した給与を得ることができます。

また、夜勤時間の上限は144時間/月と定められているため、3交代制(1回8時間の場合)では18回、2交代制(1回16時間の場合)では9回と、月あたりの労働日数が少なく、まとまった時間をプライベートに費やせるというメリットがあります。

その反面、体調管理が難しく、心身ともに疲労するというデメリットも存在します。しかしながら、総じて高待遇であり、一昔前と比べて夜勤体制が良好(人数の増加や労働時間の減少など)になっているため、昨今では夜勤専従の勤務体制に人気が集まっています。

 

4-1、夜勤専従のメリット

1回あたりの支給額が高い

就業する医療施設によって異なりますが、2交代制の場合、正看護師が30,000円程度、准看護師が27,000円程度の給与が平均的となっています。勤務回数を9回とすると月27万円(正看護師)、勤務回数を8回とすると月24万円になります。

常勤として働ける医療施設では、これにボーナスや各種手当などが付加されますので、さらに高い給与を得ることができます。ちなみに、夜勤専従の多くは2交代制であり、3交代制で働ける機会はほとんどありません。

 

プライベートとの両立を図りやすい

夜勤で働ける労働時間が144時間/月と定められているため、プライベートに多くの時間を割くことができます。特に資格取得など勉強をしながら働きたいという方にとって夜勤専従はうってつけと言えるでしょう。しかしながら、特殊な労働時間により、育児との両立には向いていません。

 

4-2、夜勤専従のデメリット

身体的・肉体的な疲労が大きい

夜勤では3人または4人体制が一般的で、日勤と比べて人手が少なく、1人あたり多くの患者を診なければいけません。また、定期的な巡回はもちろん、各患者への対応、申し送りのための準備など、やるべき業務がたくさんあります。救急患者の入院や患者の死亡などがあると、さらに多忙を極めます。

通常、人間は朝に活動して夜に寝るという生体リズムが存在するため、勤務中の疲労に加え、睡眠障害に陥りやすくなります。

 

豊富な経験・高度のスキルが必要

人手が少ないために、多くの場合、1人で患者の対応にあたらなければいけません。特に急変時には看護師の対処が生死に大きく影響するため、夜勤専従として勤務する場合には豊富な経験と高度なスキルが必要になります。経験・スキルがなくても働くことは可能ですが、5年以上の勤務経験を1つの条件にしている医療施設もありますので、事前に確認しておきましょう。

 

まとめ

このように、非常勤にも多種多様な勤務形態・業務内容があり、メリットやデメリットもさまざまです。人材不足に伴い、非常勤の募集が非常に多く、また非常勤として長く就業した場合でも、容易に常勤(正規雇用)の職に就くことができます。

看護師としてブランドのある方や、プライベートに多くの時間を割きたいという方だけでなく、さまざまな形で経験を積みたいという方にも非常勤はおすすめの勤務形態となりますので、自分のライフスタイルに照らし合わせながら、非常勤で働くことを検討してみてはいかがでしょうか。