ナースのヒント
いまさら聞けない!看護技術

シャワー浴の看護|目的・看護手順と留意点(2017/02/09)

公開日: : 最終更新日:2020/06/08 看護技術 東京都 全科共通 

シャワー浴の看護

健康な人にとって「シャワー浴」は、体を清潔に保つための日常生活の行動の一部となっています。入浴によるメリットは多数あるものの、看護が必要な患者にとっては、皮膚状態の考慮、浴中の体力消耗や転倒の危険性など、多くの観察と注意を必要とする行為となります。シャワー浴の目的と方法を再確認し、適切な観察を行いながら保清看護を提供していきます。

 

1、シャワー浴とは

シャワー浴とは、シャワーで洗体浴を行うことです。シャワー浴は入浴に比べてエネルギー代謝率が少ないため、夏の簡易入浴、高齢者の体力消耗の軽減、病状や身体機能の低下によって入浴動作の困難な患者に対して行われます。

シャワー浴によって体を清潔に保つと同時に、睡眠、食欲、便通が促進される、褥瘡の予防やマッサージ効果なども期待することができます。疲労回復の研究によって、シャワー浴後は、筋肉疲労が回復しリラクゼーション効果が得られるとのデータが明らかになっています。またシャワー浴は、患者の清潔欲求を満たし、温熱刺激による爽快感などの心理機能への効果ももたらすことができます。

シャワー浴とは

東京ガス(株) 千葉大学との共同研究

 

2、シャワー浴の目的と目標

シャワー浴は、病状や機能障害、体力の低下により自力で入浴が困難な患者や、浴中の転倒や熱傷など危険を伴う可能性がある患者に対し、下記の目的と目標によって行われます。

・洗体によって全身を清潔に保つ。

・患者の清潔に対する欲求を満たす。

・温熱刺激が生体や心理に影響を与え、心地よさ、爽快感やリラックス感を得る。

・血液循環が促進され、代謝を高めることができる。

・代謝の促進によって、内臓の機能を高めることができる。

・筋肉の緊張が緩み、疲労回復につながる。

・浴槽につかる入浴よりも消費エネルギーが少ないため、体への負担や疲労感の軽減ができる。

 

3、シャワー浴の看護計画

医師の許可を得た後に、必要であればシャワー浴の看護計画(看護目標、OP-観察項目、TP-ケア項目、EP-教育・指導項目)を作成していきます。

 

■看護目標:安全・安楽なシャワー浴介を行い、体を清潔にする。保清によって褥瘡の改善や予防を行う。リラックス効果を高め、睡眠・食欲などの活動意欲を促進させる。など。

■OP:最終シャワー浴の日付と頻度の確認。シャワー浴への意欲を含め、介助可能な全身状態であるかを観察する。褥瘡や創部などの皮膚状態に注意する。浴中の表情や訴え、疲労度合いなどに注意をはらう。

■TP:羞恥心に注意をする。患者の意向に沿った洗体方法を選択する。体温の低下を避けるため、保温などに留意する。体力の消耗に注意し、無理のないシャワー浴介助を行う。

■EP:保清の重要性を患者に伝える。シャワー浴の方法を説明する。

 

3-1、シャワー浴 看護観察項目

シャワー浴はエネルギー代謝の少ない洗体方法ではありますが、体力の消耗につながるため、シャワー浴全体を通して全身状態の看護観察が重要になってきます。また、肌に直接水分や石鹸などに付着する為、特に皮膚状態には注意をはらい観察していきます。

・シャワー浴前後のバイタルサイン

・創部の皮膚状態:出血、腫れ、痛み、熱感など

・皮膚状態:乾燥、発疹、褥瘡、掻痒感など

・入浴中の表情や意向

 

3-2、シャワー浴の事前準備

シャワー浴では、患者の体温の低下や転倒の危険性を軽減するために、素早く適切な看護か求められます。 そのため、身体状況のチェックと備品の確認などの事前準備を行い、スムーズなシャワー浴を心がけていきます。

・主治医の同意が得られているかの確認をする。

・患者のシャワー浴に対する理解と同意があるかを確認する。

・食事摂取後や検査時間と重なることを避け、適切なシャワー浴の時間を確保し設定する。

・入浴可能な全身状態であるかを確認する。

・使用する着替えや、チェアーや滑り止めマットなどの備品の準備を行う。

・事前に排泄をすませて待機してもらう。

・創部やドレーン挿入部位など汚染を防止し漏らしてはならない部分がある際は、フィルムドレッシング材を貼付し、汚染防止を行う。

・洗体方法やシャワーキャップの使用有無など、患者の意思確認を行う。

 

3-3、シャワー浴の看護手順

  • 浴室床の段差や転倒に注意しながら移動を行う。
  • 湯の温度を調節する。
  • 湯の温度を確認しながら、患者の身体にかける。
  • 患者の意向に沿った手順や方法で洗体を行っていく。
  • 褥瘡や創部は力加減や温度により気を付けながら患部を洗っていく。
  • 再度、湯の温度を確認しながら、患者の身体にかける。
  • 滑らないように注意しながら、チェアーからの立ち上がりや、浴室内の移動の介助を行う。
  • シャワー浴後は保温に注意するため、体表面の水分を手早くタオルで拭き取る
  • 皮膚状態をチェックし、必要であればドレッシング材の交換や薬の塗付を行う。
  • 脱水予防のために、飲水をしてもらう。
  • 疲労感などを観察しながら、バイタルサインを再度測定する。

シャワー浴の看護手順

国立循環器病研究センター 循環器病情報サービス

 

4、シャワー浴を行う際の留意点

 

・主治医の許可を必ず得るようにする。

・装具を外す必要がある場合にも医師の確認をとり、注意を払いながら行う。

・シャワー浴前に創傷や褥瘡などの皮膚状態を含めた、全身状態の観察を十分に行う。

・創傷のある患者のシャワー浴前には、必ず防水性のフィルムドレッシング材を貼り、皮膚への浸水を防ぐ。

・シャワー浴中、浴後に患者の体を冷やさないように注意する。体温を保ちやすい首にタオルやシャワーの湯をかけるなど、体温を下げないよう配慮する。

・浴室内は滑りやすいため、段差や転倒に気を付ける。

 

4-1、浴室内事故と平均気温

浴室内事故と平均気温

【事故数/国民生活センター資料  (東京都監察医務院統計) 気温/気象庁資料】

 

まとめ

シャワー浴は、患者の身体の保清や清潔欲求を満たすなど、様々な身体的・心理的メリットを得られます。一方でシャワー浴は体力や全身状態が安定した患者にのみ行われるため、浴前、浴中、浴後の観察と注意が非常に重要です。看護師は日ごろから患者の観察を行い、安全性の高いシャワー浴を提供できるようにサポートを行っていきましょう。

山岸愛梨 看護師

東京都在住、正看護師。自身が幼少期にアトピー体質だったこともあり、看護学生の頃から皮膚科への就職を熱願。看護学校を経て、看護師国家資格取得後に都内の皮膚科クリニックへ就職。ネット上に間違った情報が散見することに疑問を感じ、現在は同クリニックで働きながら、正しい情報を広めるべく、ライターとしても活動している。

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

ナースのヒント の最新記事を毎日お届けします

こちらの記事もおすすめ

看護師夜勤 お役立ち

看護師の仕事は大変!夜勤つらい…行きたくない…から抜け出す5つの方法

看護師の仕事は本当に大変です。毎日毎日、「仕事に行きたくない」、「夜勤が辛い」、そう思いなが

記事を読む

ルンバール 看護用語

ルンバールの検査手順と副作用(頭痛など)発現時の看護ケア

ルンバールはありふれた検査の一つですが、数多くある検査の中でも合併症のリスクが高く、軽度なも

記事を読む

看護用語

もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症)の症状や治療、看護のポイント

「もやもや病」はその病名から、それほど重篤な病気ではないというイメージを持つ人もいますが、も

記事を読む

ヒトデ お役立ち

【やっぱ白って透けるの?】看護師さん達に気になる事を全部インタビューしてみた!

こんにちは☆←ヒトデといいます! 本日はこちら、「ナースのヒント」様に寄稿させて頂く事

記事を読む

看護計画

TUR-Btの看護計画|経尿道的膀胱腫瘍切除術の術後、看護問題

泌尿器科は尿路(腎、尿管、膀胱、尿道)と男性性器(前立腺、精巣、陰茎など)の疾患を対象とした

記事を読む

風疹・麻疹看護 看護用語

【2024年最新】麻疹・風疹の看護|予防接種や症状・合併症、発熱時の看護

麻疹(はしか)や風疹は予防接種がありますので、そこまで感染者数

授乳看護 看護技術

【2024年最新】授乳の看護|目標や姿勢、観察項目と看護ポイント

産科病棟で勤務している看護師は、出産後の母親の授乳の看護ケアを

食中毒看護 看護用語

【2024年最新】食中毒の看護|原因・症状・看護・予防

食中毒は腹痛や嘔吐、下痢などを引き起こす疾患です。 以前

スキンケアの看護 看護計画

【2024年最新】スキンケアの看護|看護目標・計画と手順・資格

あなたはスキンケアに力を入れて看護していますか?入院中の患者さ

腹痛の看護 看護計画

【2024年最新】腹痛の看護|観察ポイントやアセスメント・部位別疾患と看護計画

腹痛の患者さんを看ることは多いと思いますが、あなたはきちんと腹